■頚城/能生川イカズ谷[遡行]〜能生川タジマ谷[下降]

2004.9.11-.12
治田敬人、寺本久敏、高橋弘、鮎島仁助朗、青山方子
イカズ。行かず、行けず、行くな。いや行きたい、行かなければならず。誰の言葉か、 「イカズに行かずにはいられない」 そう、僕らは昨年のダム手前、林道で嵐の大雨と増水に撃退され、涙の酒を飲まされた。態勢を整え再度この夏に向かった。 新潟上越のゴルジュ堪能探勝突破会のはじまりである。

F2「イカズの門」をサクッと登る高橋さん
 予報は不安定で出発も代替案が出たくらいだが、何とか落としたいの一念で、「とにかく現地に行こう」の鮎島と「まず大荒れはないだろう」のワイの言で決まった。

 高速を飛ばすこと、数時間、現地スキー場で1時間半の仮眠。
 さて、西飛山ダムへの林道は入口から通行止め、余計に1時間歩かされる。そのダムは水を貯めていず、一面ゴーロの河原でどう見ても、利水や治水のためと思われず、首を傾げてしまう代物だ。
 水は多いと感じたが、フヨ谷で半減するからそんなもんだろう。
 えんえんと河原歩きで体をほぐす。フヨ谷からすぐで両岸が高まり、なにやら息苦しくなる。なるほど、噂にたがわず嫌なゴルジュである。歩を進めれば、さらに凄みを増し、まったく高巻きは不可能の様相だ。行動にピンと筋が入り、CS凹角のF1は大股開きで抜けるが、その上に小さな6mほどの直瀑。簡単そうだがスキがない。これが問題のイカズの門だ。なるほど左からの巻きルートは一見行けそうだが、外傾し土砂も乗り相当悪そうだ。どうやるかと考えているうち、特攻隊長の高橋が取り付く。無心ですーと近づいたか思うとシャワーを喰らいながら安定した姿勢で抜けてしまう。なんとあっけない。トエルブの実力か、簡単そうだが続く僕らはホールドがはがれ、何度も落ちてしまう。僕は高巻きルートから言ってみようとリードをするが中間バンド手前で止まってしまう。どうにも悪いのだ。いやらしく足も手もいい置き場がない。この先はさらに悪いトラバースがあるらしい。鮎島の声に振り向くと、なんと青山さんもフリーでさくっと行ってしまった。これではやはり水線をせめるかしかない。再度のフリー挑戦も水の流れが変わり凄いシャワーのため断念。自分の力のなさを痛感したが、とにかく上がらなくてはならない。最後の力はごぼう登りで切り抜ける(しかし、これもハンパでない)。やっと5人が滝上に揃う。出だしだがとにかくうれしい。最大の核心をようやく抜けたのだ。
 一大支流のカクラ沢を分け、 さらに壁が高くなると、イカズの大滝だ。弱点があれば登ろうと考えていた が想像よりも悪い。特に上部が立っており、時間が喰いそうだ。存分に眺め 巻くことにするが、はてどこをどうするか? 過去の記録からやはり右岸巻きが良いだろうと行動する。しかし、ひねくれて 奥の草付きを簡単そうだと取り付いたが、これがスラブを部分に隠し、極めて 悪かった。それぞれが3ヶ所のラインから稜に抜けたが、どれも不安定で嫌な ものだ。
 肩の荷もおり、遡行に専念。幾つもの小滝を超え、小さな瀞の小滝は右に取り付くが無理で、やはり 高橋が水線左のラインをクライム。これは楽しい。
 過去皆が巻いているだろう滝に遭遇。かなり 不安定と感じるがヒョとしていけるか?となり僕が取り付く。 しかし、右中段でセミとなり下降するが、打ったハーケンが抜けてバランスを 崩し転落する。うまく足から止めながら落ちたのがよく、足首と手首を強打し た割には軽症で行動に支障が出なかったのが幸いだった。 もっと落ち着き浮き足立たず、冷静な行動をとらねばと反省する。
 つめは稜線にとらず、右岸の小沢からの乗越しを図ったが、手前を登り、藪をこぐはめになったしまう。
 タジマ谷へは急降下。ズルズル滑りやすいがあっという間に小さな本流に乗っかる。勢いで下ると滝の連瀑帯、最初はクライムダウンが可能だが、どうにも危険で「懸垂がよかろう」の滝が続きだす。右か支沢が合わさると目の前が急に開けてなくなる。大滝の出現である。覗いても足場と危険性からとても全容は把握できない。50mロープ2本で懸垂だ。空中に身を投げ、水しぶきを浴びながら、まったく冷や汗もんの恐怖の懸垂だ。
 泊りの時間も迫ってはいたが、とにかくいい幕地は今まで一つとしてない。やっと広がりを見せた右左折の曲がり部分に最高の地が見つかった。整地なし、焚き木山ほど、のベリグーの地だ。
 今宵、空は満点の星空。天空を分ける天の川もご登場。クラクラするほど杯を酌み、なんでも鍋に箸をつつく。やっとイカズは心に残る谷となった。その余韻がさらに宴をいいムードにさせる。誰もがそう思っただろう。

 二日目はゆっくり起床し、朝の茶会から体をほぐし、いざ出発。
 一回20mの懸垂を入れ、ひたすら河原を歩き、ダムに着く。ほてる体を流れに浸し、ほふく前進し汚れも落とし大休止。
 舗装道をススキの穂を愛でながら、秋の気配と異常に暑い残暑を感じながらこの地を後にする。

記 治田

【記録】
9月11日(土)晴
 駐車地0630〜ダム0740〜イカズの門上1015〜タジマ谷大滝下
9月12日(土)晴
 幕地0800〜ダム0940〜駐車地1050


フヨ谷を分けると両岸が立ってきた。天気は快晴!
だんだん圧倒的なゴルジュに。高橋さんも満足げ(?)
F1。大股開きで越えていたが、左のスラブでも抜けられた。
F2の「イカズの門」を苦労している寺本さん。
イカズ大滝60m。迫力がある。
大滝上の釜を持つ3m滝を右壁からトラバースする青山さん。
二俣下の6m滝を登る治田さん。
2日目。タジマ谷の15m滝を懸垂下降で下る青山さん。