■北海道山スキーツアー

(利尻C&R函岳暑寒別岳チトカニウシ山富良野岳C&R)

2007.4.28-5.6
鮎島仁助朗、治田敬人
 利尻は岳人にとり憧れの山であるに違いない。私もいろいろな媒体で情報を得るにつけ、ここはぜひ行きたい山であった。しかし、ただ登ればいいというものではないのが心情である。どこか簡単でもいいのでバリエーションから登りたい。でもただバリを登るだけじゃ面白くない。できれば板を担いで滑降と組み合わせることでよりいっそうの充実感を得たい。つまるところ、前々から雪稜登攀&滑降というClimb&Rideなるものをぜひこの利尻という舞台でやってみたかったのです。  せっかく“さいはて”にいくのだから、失敗は許されぬ。ゆえにGWのフル。9日間。やったるぜ。
4月28日(土) <移動>
14時過ぎの飛行機で羽田から新千歳に向かう。東京の天気はよくなかったが、北へ向かうにつれて天気がよくなり、福島あたりの上空からはっきり窓から地形を望むことができた。鳥海山、森吉、八甲田、下北半島。これらにはまだまだ雪が纏い、魅力的だ。今後へのイマジネーションが膨らむ。
 新千歳空港に着陸すると雄大な景色が広がる。電車で札幌まで移動し、札幌の秀岳荘へと向かう。主な目的はガス缶の購入。飛行機にはもちこめないのである。その他、利尻が早めに終わった場合を想定して、函岳を考え、地図を購入した。
 さて、札幌から稚内までの移動は高速バスで夜23時発。それまでは前夜祭。お目当てのジンギスカン屋をコンビニにあったホットペッパーで探して見つけ出したのが「ヤマダモンゴル」。名前がいいね。札幌では「ヤマモン」と呼ばれているらしいが、ここでたらふく食べてしめは「あがりラーメン」。これがうまい。
 にんにく臭をプンプンさせて、夜行バスに乗り込み、札幌をあとにする。

4月29日(日) <利尻山C&R@>
 朝起きてみればすでに車窓の外はさびしい景色しかなく、すぐに稚内だった。町が小さい。フェリーターミナル前で降ろされるが、ターミナルがまだ空いていない。そのため外で待つが、やたら風が冷たい。さびぃ〜〜。さいはてにきた感じがようやくする。なんとか、6時前にはターミナルが空き、2階で朝食をとり、8時前の利尻鴛泊ゆきのフェリーに乗る。
 やっと横になれると思ったが、結構揺れ、それどころではない。この揺れは昨晩のヤマモンに利く。は・き・そ・う。外の風に当たってみるかということで、デッキに出るといつの間にか見えていた。利尻が。いや利尻山が。この風景は、言葉で表せないね。魅せられる。素晴らしい。しばらく見とれて、写真を取ろうとしたら・・。ガーン。電池忘れた。ショック。
 鴛泊でいらない装備をデポ(もちろんカメラも)し、タクシーで鬼脇林道のいけるところまで行く。どうも、昨年の大雨で林道が荒れているようだ。
 早速スキーを履いて登り始める。東稜はバリエーションということで、あまり登りでスキーが使えないイメージがあるが、下半分はほとんど緩傾斜で、スキー登高に適した斜面が続き、スキーで登ればラクチンなのだ。が、暑い。朝の寒さはなんだったんだろうかと思うほど。私は上半身裸で登るが・・。風が吹いてくると、いきなり、寒い。急いで服を着る。すると、さっきまで快晴だった空もいつのまにか雲に覆われ、風が乱暴なほど吹き付けてくる。結局、地形図で1321mをちょっとすぎたところにうまく風が防げそうなところで下が平らのところを発見し、テントを張る。

4月30日(月) <利尻山C&RA>
 本日気付いたのだが、北海道の朝はやたら早く明るくなる。4時過ぎには行動可能なぐらいだが、6時過ぎに出発と相成る。天気は快晴だ。
 さすがに朝は雪がしまっているので、スキーを背負いアイゼンを掃いてガツガツ登ると1時間で鬼脇山に到着。ここまで難しいところは一切ない。しかし、ここまで、昨日の幕営地より良い幕営ポイントはなかったので、幕営箇所は適当だったのだろう。
 ここから、両手のストックをアックス(ダブル)に持ち替える。トレースはない。昨日のタクシーの運ちゃんの話だと東北稜に入ったパーティーはいるようだが、どうも東稜は我々が今期のGW初トレースのようだ。まぁ別にロープを出すわけではないが、リッジはすっぱり切れ落ちていてこわいナイフリッジの下りから。このような「やはりダブルアックスでよかったな」と思うようなリッジが続いて、「ショートスキーが邪魔だ」と思ったところ1箇所を越えるといつの間にか直下。ここの雪壁を登りきると南峰と本峰のコルについた。あぁ天気が良くてよかった。
 ここからロープだけを持って南峰を登るが、これが結構嫌らしい。治田さんリードで微妙なバランスで雪壁を7mほど登ると頂上。でも、あぁリードしなくて良かった。ハイマツを支点に懸垂下降してコルに戻って本峰を登るが、ここもいやらしく治田さんが30mほどリード。途中1箇所残置ピンがある。本峰からちょっと下って、行くと北峰である。ここが一般の頂上となる。
 本日の天気、無風快晴。南に見えるは焼尻か?、北に見えるは礼文。絶景・・。そして、下りだ。そう、今回の目的は東稜の登攀もあるが、北稜の滑降もその一つ。見やると素晴らしい斜面が広がっている。だが・・、ガリガリ。でも、何の根拠もなくいけるんじゃないかと思ってスキーをつけて下ると、やっぱり転倒。止まるんじゃないかと思っていたが、そうは甘くない。やっぱりガリガリなのだ。止まんない、止まんない、止まんない、止まんない、止まんない、止まんない・・。あぁこれはヤバイなーと思ったら、いきなり雪が緩くなって止まった。ラッキー!!きっと、ヘルメットを被っていたのが良かったのだろう。一応、上を眺めるとどうやら200mは滑落していたのだろう。しかも傾斜35度。よく止まったなぁ。っで、治田さんがウロウロしているが、つぼ足で登山道を下りてきた。私も登山道までトラバースして合流。聞けば、どうも、私が滑落したのではなく、ここまで一気に下りたのだと思って、滑るべきか滑るまいか悩んでいたとのこと。その点、治田さんは賢明だった。八合目の小屋の上まではガリガリでツボ足で下る。小屋は埋もれていてすぐには使えないが、根性で掘れば使えそうな感じ。そのあたりまでくれば、ようやく雪も緩み、スキーが快適になる。
 長官山へ少し登れば、後は下りあるのみ。長官山からダイレクトに沢へ下る。これが傾斜35度ぐらいだが、雪は程よく緩いので安心。きもちのいい斜面を滑降していく。斜度が緩くなってからもまだまだ雪が続く。結局、登山道の横断地点近くまで滑ることができた。あとはスキーを担いで、フェリーターミナルまで1時間。フェリーターミナルから利尻山を振り返ると、やはりキレイだ。そして、長官山から滑降した斜面もダイレクトで格好がいい。名残惜しいが、16時半の船で稚内へと戻る。
 船は揺れることなく稚内に着き、電車で次の目的地の函岳の最寄り駅まで向かうとするが、あいにく途中の幌延までしか行かない。 

5月1日(火) <函岳>
 幌延駅は畳があってよかった。始発の各駅電車で、函岳の最寄り駅豊清水駅まで向かう。途中の車窓からは雪が線路脇に見ることができ、今年は貧雪だという話がウソのようだ。
 豊清水。何でこんなところに駅があるんだろうという感じで駅前には何もない。いや、いちおう駅舎と道路と廃屋はあるが、それだけだ。ここから日帰り函岳だ!重い荷物、一切合財を駅にデポして、サンダルやジョグシュで車道を歩く。13時の電車に乗れるかな・・なんていいながら。
 しかーし、まったくまったく。車道をかなりのペースで歩くこと1時間でようやくスキーを使って登り始めるところ、そして登り始めると渡渉などがあってなかなか進まない。地図で見ると頂上まで絶望的距離があるそうな感じ。13時の電車はおろか、日帰りでは無理かな・・とも思わなくはなく、さらにペースを上げること上げること。正直最後はしんどい。さらに行き先は本当にまっ平らな頂上台地。天気が良くてよかったが、晴れててもはたしてどこが頂上やら・・。まったくわからず彷徨った挙句、ようやく頂上についたときには正直、利尻の山頂に立ったときよりもはるかにうれしかった。
 あとは滑るだけ。やはり傾斜が緩いといっても快適だね。途中からは沢へと下り、渡渉をやったり木を跨いだりしてようやく車道についた。しかしまだ歩かねばならぬ。まったく車が走らない車道を歩くこと1時間ちょっとで駅にたどり着いたときには電車の時間まであと10分だった。水がなく、脱水症状気味で、さらに南へと向かう電車内はひたすら眠った。もう二度とここに来るまいと決意しながら。

5月2日(水) <移動>
 士別駅でテントを張っていると、高校生が「とうとう士別にもテントが‥」などとうるさい。そうか、下界では平日なのか。そもそも、なぜ士別なんというマイナーなところまで来たかというと、いちおう天塩岳へ向かう予定だったのだ。しかし、夜半から雨が降り続いている。そのうえ、なにせ昨日の試練の函岳のあとはまったくもってモチベーションが上がらない。あぁ温泉はいりてぇ。っで、旭川へ。なぜ、旭川か。そう、実のところ函岳であれほど長い車道歩きに懲りた我々はレンタカーを使ってアプローチすることを思いついたのだ。ないスです。となれば、やはり都会へ向かう必要があったのだ。さすがは大都会、久しぶりのエスカレーターを満喫。やっぱ上りはこうじゃないと。
 なんとか1台ゲットし、まず向かうところは‥、山道具屋である。そう、今後の日数の使い方について、完全にネタ切れだったのだ。もちろん立ち読みで新鮮な情報を得て今後3つの狙いを暑寒別、天塩岳、チトカニに絞る。
 まずは暑寒別。旭川から電車で行こうと思えば遠いが、南西へ約100Kmの距離。それでも遠いといえば遠いが、八王子から甲府までと思えば近いもんだ。温泉に立ち寄ってから、登山口にある無人の暑寒荘に宿泊。畳だし、布団もあるしで最高。

5月3日(木) <暑寒別岳>
 朝まで雨は降り続いていた。
 7時過ぎには雨がやみ、それを待ってから行く。もちろん先行者がいるが、もちろん頂上につくころには我々が一番。治田さん、すんげぇ早いぜ。
 頂上だけ雲がかかり視界が利かず、ほぼホワイトアウト状態だったが、もちろん頂上へ行って下る。あとは肩から下るが、すばらしい斜面、大斜面だぜ。でも、北海道に来てからこういうところしか滑っていないので、もう感嘆すらしなくなったのは贅沢になったものだ。
 あっちゅう間に暑寒荘につき、さて次の目的地は旭川の北の天塩岳。再び旭川に戻るわけだ。しかし登山口までの林道が除雪されていない。これは誤算だった。登山口まで10kmか‥。よし諦めよう。さっさとチトカニウシへ向かう。

5月4日(金) <チトカニウシ山>
 朝から快晴である。ゆっくり行くが、それは出だしだけ。次第に早くなり、いずれガンガン飛ばすのはこれまでのパターンどおり。そうなれば、やはり頂上には一番のりである。チトカニは北見峠から3時間で往復できた。連日の登山で疲れている我々にはあぁいい山だ。
 とはいえ、燃え尽きるわけにはいかない。あと1日山に登れるのだ。でもまたネタ切れなんだな。こういう困ったときは山道具屋。再び、旭川に戻って立ち読み物色。前回はあっさり決まったが、今回はなかなか難しい。それにしても現実味を持って真剣に資料を漁るというのはいいことだ。ピリカヌプリ、ピッシリ、ニセイカウシュッペなどの独特な名前、まったく持って知らなかった樺戸山塊などにも愛着が湧いてくる。それでもピンとくるものがない、いかんせんモチが下がり気味なのだ。こういうときはズシッと来る計画が必要なのだが・・。見つけた!!富良野岳北稜&ジャイアントスロープ。もちろん、北海道上陸するまでは一切眼中になかったルートだったが、利尻で始まった北海道ツアーがこのようなやはりクライム&ライドで終えることができようとはなんだか因縁のような気持ちになり、一気にモチベーションが上がるってものだ。

5月5日(土) <富良野岳C&R>
 夜のうち、少し雨がぱらついたようだが、朝にはやんだ。天気は高曇り。条件は悪くない。懸案の渡渉もたいしたことがなく、あとは尾根に上がってガンガンだ。ポコ岩近くまでスキーが使う。ポコ岩といえども簡単に左から巻いて少し行くと、ここから尾根が細くなるのでスキーをデポする。
 尾根が細くなり、ちょっと岩混じりになり、アイゼンをつける。1箇所雪が腐っていていやなトラバース、ナイフリッジがあり、怖いところもあるが、まぁロープを出すわけでもない。そもそも車においてきているので使いようもない。ただ次第にガスが濃くなっていき、頂上ではあまり視界がなかった。これだけガシガシ登りまくったツアーもこれで最後の山頂かと思うと、なんだか感慨深い。あとは慎重に往路を下る。
 ちょっと視界待ちして、いざジャイアントだ。これが最後の滑降だが、もう思い残すところはないほど素晴らしい斜面だ。北海道に来てからいつでも吸い込まれるような斜面しかなかったが、これもまた然りだ。しかも基本、尾根なのにっというのは初めてだなぁ。この雪質でもいいんだから、パウダーならもっと凄いんだろうな。未練があるが、レンタカー返却もあったので、扉温泉に入って帰るが、この温泉もガラガラなわりにはなんとも良かった。
 旭川で車を返し、あとは寝心地のよさそうな駅を探すだけだ。

5月6日(日) <移動>
 古山駅というなんともよさげな駅名にそそられていったが、正解。最後まで勘がいい。あとは東京へと帰るだけだ。治田さんは家族にほぼ無断で来たにもかかわらず、お土産げは白い恋人だけとはいかがなものかとは思いつつ。

 かのGW北海道、満喫しまくり報告をヒマに隠れてようやく書き上げました。
 もうタイムなんてとっくに忘れましたが、きっとどれもかなりコースタイムよりかなり早いと思います。
 それにしてもなんと言っても利尻を狙いに行ったのに、結局、一番強烈なインパクトがあったのは函岳だったというのは、やっぱ行ってみないと山のよさは分からないということなんでしょうね。

2007.7.20 鮎島 筆

【行動概要】
4月28日(土)
 羽田=新千歳=札幌=(車中泊)
4月29日(日)
 (車中泊)=稚内=鴛泊=鬼脇林道〜<利尻山東稜>〜(1321m付近幕営泊)
4月30日(月)
 幕営地〜<利尻山東稜>〜利尻山〜<利尻山北稜>〜鴛泊=稚内=幌延
5月1日(火)
 幌延=豊清水〜函岳〜豊清水=士別(駅泊)
5月2日(水)
 士別=旭川=暑寒荘(山荘泊)
5月3日(木)
 暑寒荘〜暑寒別岳〜暑寒荘=北見峠(テント泊)
5月4日(金)
 北見峠〜チトカニウシ山〜北見峠=富良野岳山麓(テント泊)
5月5日(土)
 山麓=扇温泉〜<富良野岳北尾根>〜富良野岳〜<ジャイアントスロープ>〜扇温泉=旭川=岩見沢=古山(駅泊)
5月6日(日)
 古山=追分=南千歳=新千歳=羽田

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