■北ア/黒部川弥太蔵谷〜黒部川音谷(下降)

2009.6.7
太田幸介、鮎島仁助朗
 場所までも任せてしまったのは失敗だった。「弥太蔵谷」と回答が返ってきたときは愕然とした。なにせ前の週、つまりはお盆に同じく黒部前衛の北又谷へいっていたのだから。ただでさえ、同じ山域に2週連続で行かないというポリシーをもっている上に、北又谷では虫(アブ)に教われた苦い経験もあって私としては渋りたくなるのも無理はないが、「どこでもいい」とメールに書いてしまったからなー。  それにしても、なぜこんな知名度の低いところなのか、といえば、下部廊下がまだ完全溯行されていないかららしい・・。
 宇奈月温泉の対岸の道の広場に車を止めて、弥太蔵の下部廊下へと突入する。いきなりアブが多く、やはり懸念どおり。

 まず4mを2つほどを登って核心の8mCS滝。資料によると豊野さんはCSの隙間に可能性を見出していたが、どう考えてもこの水量では息ができないだろうと容易に考えられる。太田さんは左壁のクラックに活路を開いたが、クラックが繋がっておらず途中断念。結局ゴルジュ入口に戻って左岸まき、懸垂20mで8m滝上に出る。ここから8mを右壁から登り(濡れた石灰岩で滑りやすい)、4mは左壁をトラバースする。そして、12m洞穴状滝。これはそもそもすでに完全溯行をあきらめておりモチが下がっている上に、釜が深くて取り付けそうもなく、断念。右岸を少し上がれば作業道があってそこから巻くという、結局、豊野さんの『北アルプスの沢』どおりの溯行となった。
 その後は、予想通りのオロロアブの大群を浴び(ゴルジュ内にはいなかったが)、河原を歩くこと1時間半で下の二俣。このアブの量に半狂乱になりそうだ。
 そこから中部廊下帯。「北アルプスの沢」では雪渓に埋まっていてよく分からなかったが、雪がない状態だと非常に面白いゴルジュだ。なにせこっちは人間様に優しく、どれもロープを使わずゴルジュ遊びが楽しめるところなのだ(1箇所4mCS滝は荷揚げ・空身登りをした)。また、ウヨウヨいました。岩魚ちゃん。どこの釜も走る走る。魚影は、今まで行った中で一番多かった。ただ、下部廊下完全溯行が目的で2人で1個の食器しかもってきていない徹底軽量化パーティーにもちろん釣り道具などなく、一匹もありつけなかったのは残念。

 中の二俣を左へ行き、瀬々薙沢となって少し行った河原へ幕営。夜になると今度はヤブカの出番となる。大変だ。


 翌日、すぐ上の二俣を過ぎると上部ゴルジュ帯、さらに人間様には優しくなり、これも楽しめる。うまく、音谷へのコルへと上がる支沢をつめて、音谷を下降。途中の懸垂は3回。なお、音谷も岩魚ならびにアブの影は非常に濃い。音沢駅から電車に乗って宇奈月にもどる。
 決して溯行内容としては外れではない沢だ。下部ゴルジュの大迫力は見るものはあるし、中部・上部ゴルジュは非常に楽しいゴルジュ遊びができる。確信を持ってこれが東京近郊にあったら大人気の沢になっているであろうことは断言できる。
 とは言えスッキリしないのは、やはりアブが多いのだ。非常に多いのだ。しかもそういうところだと分かっていって突っ込むのだからたちが悪い。しかも2週連続。ボクはもうイヤだーーーーーー。

2007.8.20 鮎島 筆

【記録】
8月18日(土)快晴
 出合0800ー下部廊下上1300ー下の二俣1430ー上の二俣1600ー幕営地1615
8月19日(日)快晴
 幕営地0645ー920m乗越0815ー音谷林道1220ー音沢駅1300

山登魂ホームへ