■奥三河/早木戸川「瀬戸の渓谷」ゴルジュ帯

2007.9.8
鮎島仁助朗、鳥本真司
 9月7日未明。台風上陸。飛行機欠航。出張中止。九州の沢も断念・・。
 そういえば先週、鳥本から「来週空いてますか?」と誘われていたな。まぁそのときは無下に断ったけど、まだ空いてるかな・・というわけで前日ではあるが連絡すると、「土曜夜はエヴァンゲリヲン見に行かなければいけないので、昼間だけなら・・」との返事。まぁ私も日曜日は草野球の試合だし、ちょうどいいんじゃないということで、前から私が目星をつけていた天竜川下部のゴルジュに行くことになった。


5mCS滝(この後足攣ります) 
 浜松から北へ向かうこと1時間ちょっとで天竜川の秘境っぽいところが始まる。それにしても、台風影響か?やはり川が茶色いぜ。それに流れがブットイぜ。それにしても道悪いぜ。ふつう“県道1号”となれば道いいだろう!それなのに何だこのクネクネ感。カーナビの画面は「サタデーナイトフィーバー」DVD(鳥本選択)が流れているが、まったく粗筋も分からないぜ。そんなこんなで浜松を出ること3時間弱でようやく到着。東京からだと6時間もかかっている。
 林道に車を止め、支流から早木戸川へ下り、本流を溯ること10分弱。ゴルジュが始まる。ここでまずは身ごしらえ準備。ウェットスーツにライフジャケット(鳥本には2年前に私が卒業記念品としてプレゼント)。
 それにしても暑い。9月とは思えない陽気。台風一過のおかげか。よっシャー泳ぐぞーと張り切るが、う〜ん、水が濁っている。水が多いとは思わないが台風の影響だろうか。資料(日本の渓谷’97)の写真だと透き通っているんだが・・。なんか出そうだ。ここは慎重に、つまりはとりあえず先輩の特権で鳥本にロープを引っ張らせて泳がせる。何もいないようだ。よかった。まぁ流れはほとんどなく、楽勝で滝に這い上がれ、滝も楽勝だ。
 次はさらにゴルジュが狭まり30mほどの瀞。これも水が濁っており、なんか出そうだ。躊躇なくここも鳥本をまず泳がせる。何もいないようだ。ここも流れがほとんどなく、ライジェケをもつ我らにはチョー楽勝。
ここで沢は左へ曲がり1mの段差のあと、この沢の核心部5mCS滝。とはいえ、実は左岸から簡単に巻けるのだが、これを巻いてしまってはここまで来た甲斐すらない。ワイがつっこむ。まず淵を突っ張って突っ張って突っ張って・・足攣った・・。オゥ。バシャーン。なんだ足つくじゃん。うーん、でもどうやって登るんだろう。左壁にリスが繋がっているので人工を試みるもあえなく2個目でカムがはずれ、意気消沈。やはり右壁か。ということでキャメ#1を突っ込んでアブミにのり、あとはフリーでいけば、CSを乗り越せた(落ち口はちょっと怖かったが・・)。鳥本はといえば、回収に手間取り落ちている。挙句に「回収できませーん」とつれない返事とともに登ってくる。おい、俺のキャメロット7500円、アブミ3000円が・・。まぁ冷静に考えたら、どうせもうそろそろ終わりだろうし、まぁ同ルート下れそうだし。そのとき、回収すればいいか!というわけで、何かの拍子で外れてしまったらイヤだな・・と後ろ髪を惹かれる思いはあるけれども前へ進む。
 すぐ沢はさらにちょっとした淵で左へ曲がり2mナメ滝となって、そして、なんとなくゴルジュ終わった。も、もう終わりですか・・。み、短すぎるぞ。2時間も遡行してないじゃん。
 チョイ休憩入れた後、今来たゴルジュを今度は下る。5mCS滝は左岸を巻いて下ると、キャメとアブミが滝に残っていた。涙がチョチョきれるほどうれしいっす。無事に回収したあとは30m瀞を泳ぎ下り、3mナメ滝を下ってその淵を泳げば、もうスタート地点。なんだか拍子抜け。あとはできる限り泳いで、入渓点まで下り、車に戻った。
そして上流200mにある「きよめの湯」に入って身を清め、味噌カツをたべるとあとは帰るだけ。帰りは、行きの道の教訓を生かして立派な国道151号を選択。これが正解。車内ではこんどは長渕の「桜島」DVDが流れていたが、2人で「乾杯」を熱唱する余裕もあるほどだ。17時。まだまだエヴァ上映に間に合う時間にて、浜松で解散。

 ちなみに、翌日の野球の試合はワイの3安打の活躍で見事に勝ったのだった。

 “機会費用”。私の週末の計画パターンはこれを計算することから始まる。つまり、このチャンスにどんな選択肢があって、その候補をなかで、もしやらなかった場合についてえられるであろうガッカリ感を予測し、その後悔度が一番高そうなことをやるというのが、私の思想パターンなのである。簡単に言うと、私はルートの期待度で行き先を選択しているのではない。そうではなく、もし行かなかった場合に一番後悔しそうなところ、ここにいっているわけである。私の中では、山へ行って、やっぱりあっちへ行けばよかったと思うような山行が最悪なのだ。
 この考え方、なんだか後ろ向きのようであるが、実は多くの引き出しがまず必要なのである。逆に、多くの引き出しがあってこその考え方ともいえる。私は常に状況と変化を鑑みて、いろんな選択肢を用意している。そして、今回のこの早木戸川ゴルジュについても、この条件にいけるベストな選択であったことは間違いないと思うのだ。
 まず、台風一過。増水してはいるが、クソ暑い。やはり、短いゴルジュしかない。次にスケジュール。日曜日は野球の試合があり、こちらを優先したいのでそれほどギリギリなことはしたくない。さらに、鳥本の存在。この前の週、誘われていたのに無下に断ってしまったのが頭にかかる。この中で天竜川下部のゴルジュしかも記録3時間のゴルジュがなんともBESTのような気がしてきた。なにしろ、確かにキレイなゴルジュでいつかはいきたいところ(こういうところは結構あるが、いつも“いつか”で終わってしまう)ではあったが普通はこの3時間のためにわざわざ東京から出向きはしない。それがなんともこの条件にマッチして、今回行かなかったら“一生行かないだろうティック”なところに思えてきたわけである。それで、確かに後悔はない。
 今後も、まずは引き出しを数多く持っておくことだ。そう肝に銘じたい。

2007.9.13 鮎島 筆

【記録】
9月8日(土)快晴
 入渓1050、ゴルジュ終わり1245、駐車地1345

【使用装備】
ロープ50メートル、キャメロット#1、アブミ1、ウェットスーツ(上下)、ライフジャケット

【写真】