■塩原/大蛇尾川西俣[溯行]

2006.6.3-.4
高橋弘、寺本久敏、青山方子、加藤(会外)、高田貴、小浜知弘、佐野智子
 金曜夜湯宮(ゆぐう)からの舗装された林道を奥にはいり大蛇尾川方面へ道が分かれるところでテントをはる。ここからは底をこすりそうで中古とはいえ買ったばかりのマイカーで進入を試みるつもりはない。オフロード車ならずいぶん先まで入れるが、結果的に帰りタクシーで戻ってきたのでここに車を置いて正解であった。取水口まで1時間半くらい。林道は川底からかなり高く、長い道のりを覚悟するが取水口の近くで山道となり一気に標高を落とす。
 はじめての大蛇尾は取水口に吸い込まれるエメラルドグリーンの深い透明な水で評判に違わない綺麗さである。河原はひらけ水量が多く岩は白い。初めてなのに懐かしい気持ちになってしまう、そんな沢だ。間違いはなかったことをはやくも確信してしまった。取水口から下は水が消えている。林道のトラバース中にはるか下から流れの音が聞こえていたから取水口からある程度下れば水流が復活するのであろうが、こうしてみると取水口からの入渓でよかったな。
 西股と東股が分かれる二股まではコースタイム1時間強で余裕があるので各自好きなようにのんびり行こうという事にし、釣りの用意をしてから最後尾につくが、途中の渡渉は足をとられそうな水量で大渓流の風格がありうれしくなってしまう。時々青空がのぞくというような曇空ではあるが、開けた谷に新緑がまぶしく、シーズンの開幕にふさわしい。実のところ事前の話からかなりネガティブになっていた釣果であるが高田さんが意外にも一匹目を簡単に釣り上げてしまった。俄然気合がはいり、二股まで竿を持った4人で5匹。最高の肴になった。腹の黄色い赤点のないアメマス様の岩魚ばかりで噂のレインボーはお目にかかれなかった。
 ところで二股までであるが、かなり遠かった。釣りをしている場合ではなかったかも・・・・。西股に入るとナメと釜が連続してあらわれるようになり青空のような青色の淵もあった。
 さんざん歩いて夕方になろうかという頃に角を曲がるとやっと大滝が姿を現した。瀑水を空中に躍らせここだけ水量2倍増しになったかのような迫力である。滝ノ下で暫く上を伺うがしぶきでだんだん寒くなってくるし、ますます危険にしか見えなくなってきたため巻くことにする。少し戻って右(左岸)から青山さんの絶妙のルートとりで大高巻きになることなく巻けたが、下を向いた竹やぶにつかまりながら足がつりそうになり、途中懸垂20mがはいったりして7人でやはり時間はかかった。巻きながらずっと目にしていた大滝は落ち口いっぱいに水流が広がっていてその上は延々とナメが川幅いっぱいにかなりの水勢で流れている。巻いてよかったと心より思える。
 今回の大蛇尾の水量は通常より多かったのではないだろうか。大滝の上部は途切れることなくナメがつづき素晴らしいのであるが迫る夕闇にテンバ探しに急く身には恨めしくもあった。余裕が無かったのはもったいないことだった。いいところがないまま、オバちゃんと青山さんが駆ける様に先行し、鹿の又からの支流も越えかなり上流にやっと小さな河原を見つけた。それでも7人が横になれ、脇で大きな焚き火もできたのだから文句ないテンバだった。
 なべをつつき、岩魚を肴に夜10時過ぎまで焚き火を囲む。
 明日どうする。大滝を越えてから雪渓がずいぶん出てきたし。関東周辺の沢にでている時間よりずっと時間がかかることを知った今、東股下降をやめることに特に反対はでなかった。というか無理でした。それでもここから稜線までは一投足で、塩那スカイラインの下りに5時間近くかかるとはいえ、まだ充分時間があるであろうから大佐飛山をピストンすることにして夜の作戦会議は終了。

 翌朝、一投足と思えた行程は甘くはなく、途切れることのない雪渓をたどり稜線にでるまで3時間近くかかってしまい、大佐飛を登ろうという気力体力は既に尽きていた。遠い大佐飛を見つめ、2月の山田の記録を思った。あんたはえらいよ。返す刀で男鹿岳も登ったってか。
 まさに”山紫水明”の沢筋、延々と続くナメ、豊富に残る雪渓、そして何より7人で楽しくやれたこと、文句無し!思い出に残る一本になりました。

高橋 記

【記録】
6月3日
 0630駐発 - 0800 取水口 - 1100二股 - 1630 大滝上 - 鹿又沢出合 - 1730テンバ着
6月4日
 0700 発 - 1000 稜線 - 塩那スカイライン - 1400 板室温泉側ゲート (タクシーで車回収6,300円)

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