■関東山地/湯戸ノ沢(金ヶ岳北面崩壊地)〜茅ヶ岳

2007年4月21日
鮎島仁助朗
 もともと杓子双子尾根から杓子沢というクライム&ライドプランをやる予定だった。しかし、パートナーが流行の「はしか」にかかってしまい、また天気も悪なことに加えて私の仕事も珍しく忙しく、1泊2日の山行も断念せざるをえなくなった。それでも、GWの利尻に向け、山勘を失いたくはなかったので、日帰りでは行きたかったのでなんとか頑張ることにしたが、それでも遠出をしたくもないし、また天気も北に行けば行くほど悪そうだった。
 それでどこに行くかとなったとき、思い出したのが茅ヶ岳だった。実は2007年は1年通じて「毎月未踏の300名山登頂」というのが大目標にあるのだが、茅ヶ岳は言わずもがなの200名山で、まだ私は登っておらずその目標に該当している。なにより、中央道で帰宅する際、いつもいつもあの小淵沢を過ぎるととても気持ちよく真正面に望まれる茅ヶ岳のあの一直線にせり上がっているライン−−−。ぜひここのラインから茅ヶ岳を登ってみたいと常々思っていた。
 実際のところ、地形図でよくよく見れば、実は「湯戸ノ沢」というらしいそのラインは茅ヶ岳ではなく双児峰の金ヶ岳に突き上げているらしいが、まぁよい。また、どうも崩壊地形のようで、もちろん記録なんて見当たらず、まったくどんなところかもわからなかったが、それほど遠いわけでもないし、とりあえず行くことにした。
 韮崎I.C.を下りて茅ヶ岳広域農道の気持ちのよい道を辿る。旧明野町浅尾の十字路を右に曲がり、家族健康旅行村へ行く。まだ営業してない健康村前で右の脇へ林道が続き、そちらをとるがすぐにゲート。ここに車を止める。湯戸の沢はもっと北側にあるので、ここにいくのならもっと北に車に置けばよいのだが、やはり茅ヶ岳を登るとなると下山のことも考えてここにおいたわけである。それにしても6時に起きて家を出ても、9時前には目的の駐車地につけるのだからやはり近いものだ。
 ここからはここからは茅ヶ岳東面につけられたしっかりした結構アップダウンがきつい林道を北へ2.5kmテクテク歩くと湯戸の沢である。沢の右岸にちょっと工事用道路がつけられていて、そこをちょっと辿る。やはり崩壊地の下流部ということでしっかり堰堤が作られてあり、多分その建設のための道路だろう。最終堰堤を過ぎれば、平凡な沢状となる。この巨石の多いゴーロしばし辿ると二股となる。金ヶ岳に直接突き上げる方向へ行きたかったのでもちろん右を取る。すると、稜線まで一直線に見えるようになる・・。完全に崩壊だ。崩壊といっても、傾斜の緩い間はただのゴーロ歩きと一緒で難しいところは一切ない。しかし、ガンガン上がっていくにつれ、傾斜も強くなってくる。ちょっとした岩場もある(V級の範囲内で難しくはない)。そして、予想もしなかったことに雪も・・。
 私の経験上、崩壊にもやばい季節とそうではない時期があって、およそ雪解け時期が一番ヤバい。私はGWの滝谷でステレオ大の落石をモロに当たったことがあるので、それは身を持って体験済みである。というわけで、できる限り、この融雪期に崩壊を登ることは避けていたつもりだったのだが、奥秩父は雪がないという固定観念にとらわれすぎて、かなり甘く見すぎていた。ちょっとドロドロとなった土が滑ること滑ること。さらに・・案の定、落石がきた。音を表現するならば“ヒュースパッゴロゴロ”という感じだ。しかもデカイの。3個ほど至近を通るとなんだか生きた心地がしないものだ。きっとちょっと蒼白になっていただろう。
 傾斜があまりに強すぎるのと、どん詰まりが今にも崩れそうな岩場で単独で登るのも難しそうなので、ここは穏便に左へトラバースして木の生えているところへ避難し、そのまま潅木を登ると縦走路に飛び出した。それにしても、金ヶ岳頂上に突き上げる沢に入ったつもりだったが、けっこう右へ来てしまったようだ。ちょっと歩いて金ヶ岳につく。ここからは、忠実に縦走路を辿って茅ヶ岳まで歩く。茅ヶ岳で休憩しようと思ったが、なぜかヒトがワンサカいて、自分のスペースがなくちょっといただけで下った。ガンガン下って千本桜にいき、あとは林道を再び北へ2kmほど行けば駐車地だった。

 なんだか疲れたなぁ。久しぶりに無雪期の登山ってふくらはぎにクるもんだな。それにしても、あの落石が飛んできたときにはビビッた。融雪期の崩壊地はヤバいということは、滝谷の落石直撃で身をもって学んでいたはずなのだが、ここに雪があるなんて想像もしていなかった。まぁ何もなくてよかったが、やはりこの融雪期の崩壊はやめておいたほうがいいな。
 でも、なかなか、想像通りのところで、当初想定したとおり分野・ジャンルを選ばず山登りができていて、面白いものだ。


【記録】
4月21日(土)高曇り 
 駐車地0730、入渓点0830、金ヶ岳1000、茅ヶ岳1040、千本桜1200、駐車地1230

2008.4.24 鮎島 筆