■北上/早池峰山 コメガモリ左岩稜

2007年9月23日
鮎島仁助朗
 一緒に行く予定だったヒトがケガでいけなくなったという時点から9月にある2つの三連休に対してのモチベーションは下がり気味。それに加えて、2回目の3連休は野球の試合が2試合あるという。特に土曜日の試合は、2部に上がるか4部に落ちるかの大事な試合。そうなると、お彼岸3連休は山を犠牲にして野球にかけることにした。(そういうときに利根川本流の計画があるというのは不運だったが・・)
 試合があるのは土曜日・月曜日。となると、日曜日は一日空いているわけで、日曜日だけはどこか行こうと奮発。さて、どこに行くかだ。今年の大課題は、毎月一度はまだ踏んでいない300名山に一度は登ること。これを8月までは順調にこなしてきたが、まだ9月は達成できておらず、次週はすでに登らない予定になっていることから、この条件は、はずせない。そう考えると雨飾の前沢奥壁がすぐ頭に浮かんだが、まぁ前後1日は試合とは言え、休息に当てられるのであるから、移動に時間がかかるところでもOKと考えると、ちょうど2年前、登山口まで足を運んだにもかかわらず大雨で断念した早池峰コメガモリ岩稜に関心が移ったわけである。

コメガモリ岩峰群
 都心は凄い渋滞だった。家を16時半にでてようやく東北道に乗れたのが19時過ぎ。まぁそれから450km先まで行かなければならないわけだが、いかんせん高速は金がかかるし、いたって単調だ。というわけで早速、宇都宮上三川で降りてあとはずっと国道4号にて北上。結局、仙台の北、古川まで下道を走り、そこから再度高速に乗り、長者原のSAで一夜を明かした。そして、古河からちょうど100kmの花巻南で下りて、そこからは1時間でようやく登山口へ。結局、仮眠を入れたとは言え14時間近くかかったことになる。
 なんだかすでにヘロヘロの状態だが、とはいえガンガン登山道を上がる。登山道は、途中沢から尾根に登山道が上がるが、それを無視して沢を詰めていく。それにしても快晴だ。頂上付近すべてが見渡せられ、確かに岩がポコポコある。とはいえ、どれが左岩稜でどれが右岩稜なのか・・。全然分からん。そもそも唯一の資料である登山大系にはルートは書いてあるが場所は「コメガモリ沢左俣左岸上部」としか書いていないのだ。とりあえず、沢を忠実に詰めていく。さらに沢が二俣となるが、これは右へ行く。なんとなく、大系に書いてある岩の形のものがその上部にありそうな気がしたから・・。上部に上がるにつれ、近づいていくにつれ、場所も明白になるだろうと楽観していたが、まったくわからん。どれじゃ右岩稜、左岩稜・・。そもそも下から見て右なのか、上から見て右なのか・・。どっちなんじゃい。それすらわからない。混乱してくる。ここで気付いた。こだわる必要があるのかと。自分のなかで「ここだ」と思ったところを登ればいいのではないかと。そう思うと気が楽になるものだ。
 正面の岩。右にクラックが走っていて、これがなんだか岩が固そうだ。とりあえず、近づいてみると、岩の左側のスラブにサビサビの残置ハーケンが2本ある。大系のコピーを見るとフムフム。これがやっぱり左岩稜のCルートなるものなのかな。とはいえ、このハーケンがあるところを敢えて登るのはどうなのかな。そもそも右から回り込みながら登れば簡単に上に上げれるジャン。というわけで取り付きでクライミングシューズに履き替え、リッジの右から登り始める。それにしてもクライミングシューズ久しぶりだ。考えてみると・・、おぉぉ今年初めて履くんだな。それにしても細かいところによく立てる。フリクションも凄い。やっぱ、クライミングするにはクライミングシューズだな。そう思いながらグングン高度を上げ、一つ目の岩を簡単に登った。ついでテラスがあって岩がある。これはかぶり気味のクラックから登る。V+といったところ。これを越え、後は適当に岩を登っていくと、猛どこでも登れるというか逃げられる感じになり、もういいやという雰囲気になる。ここで沢靴に履き替え、登っていくと右すぐに登山道が走っているのが見える。というわけで右にトラバースして登山道へ。あとは忠実に登山道を上がると頂上だった。
 素晴らしい景色の中、たたずみ下山。頂上から駐車場へは40分ほどで下山できた。
 結局、帰りも12時間かかった。もっとも下道を多用したというのもあるけれども、長かった。さらに言えば、コメガモリ岩稜についての評価も自分の中では低い。確かに岩は固いし、見栄えもする。しかしながら、登らないといけない必然性・切迫感がないのは致命的である。
 だが今回、後悔はない。少なくとも、これだけはいえる。今年踏んだ頂上の中で一番景色が良かったと。そしてやっぱり山っていいなと。今年の大目標は前に書いた。なぜこのような目標を置いたかというと、今年はやはりピークの大切さを再認識したいと思っているから。登山というのは思想を表す。私の中では、登山とはなんぞかということを究極的に突き詰めれば、それはスカイラインだ。そしてそれがピークへの憧れと繋がる。
 早池峰。美しい山であった。また、そこから眺める風景。きれいだった。雲上に頭を突き出す岩手山、和賀、鳥海、焼石、栗駒・・。おそらく、誰もがいいなっという景色。
 人は、このたかだか3時間の登山のために行ったことをバカらしく思う人もあるだろう。しかし、私の価値観にのっとっては、今回かかったコスト以上のものはペイされたと思っている。価値観は時代によって変わるし、自分の価値観も然りだと思うが、おそらくこの2007年9月23日のタイミングでのベストな選択であったことは生涯同じくいえるはずなのである。そう、今回が早池峰山に出向くにはベストなタイミングだったのだ。これからもいろいろ山々を勉強し、引き出しを多く持ち、その中でタイミングと状況をよく分析・把握した上で、ベストな選択が実現できたら仕合せなのだ。


【記録】
9月23日(日)快晴
 駐車地0720、取付き0900、頂上0930、駐車地1030

2007.9.25 筆