■八ヶ岳/旭岳東稜[登攀]

2008.1.12−.14
渡辺剛士、上田(会外)
 早朝池袋を出て、11時頃清里駅に到着。ところが天気は雨。
「このままUターンして帰るか?」というくらいテンションが下がったが、とりあえず天気は回復傾向のようなので、待合室で昼寝などしながら待つ。16時頃に雨が止んだので、タクシーで美し森駐車場まで行き(1000円)、林道を歩く。
 1時間ほど歩くと下山してくるパーティと会う。東海山岳会の方々で、渡渉が数カ所あって、一番酷い所では膝上まで行ったのであきらめて帰ってきたとのこと。「こんなに水量が多いのは初めて」と言われビビる。日も暮れてきたし、とりあえず渡渉点手前まで行ってテント張ろうということになった。
 2つめの堰堤の先で渡渉が出てきて、試しに渡ろうとしたが、川の近くの雪がシャーベットになっていて、踏むとずぶずぶと沈んでくるぶしまで水没してしまったので、そこで諦めて幕営。

 4時起きして6時前に出発。テント前の川は見事に涸れていたので、「これは楽勝!」と思ったらその先で何度か渡渉が出てきて、とうとう渡辺の右足がくるぶしの上までシャーベットに入水。幸い少ししか水が入ってこなかったので構わず前進。
 出合小屋から右股に入り、少し進んだ所にあったルンゼから旭岳東稜に取り付く。尾根上までラッセルし、尾根に出るとトレースがあったので楽勝。その後やせ尾根になるが、問題なく核心の5段岩峰に到着。この時点で10時過ぎだったので「楽勝だな」と思ったが、このピッチでリードのマサトが約1時間かかり、セカンドの渡辺も1時間くらいかけてしまったので、頂上に着いたのは13時過ぎになってしまった。

1P目(上田)
出だしが核心。リードのマサトが右のカンテから木にデッドするのを見て、「何ありえないムーブしてんだよ!」と思ったが、後続してみると同じムーブになり、そこでためらって時間を食ってしまった。その後のクラック状も、草付きに突っ込んだピッケルが信じられず「両方バイルで来れば良かった!」と後悔(今回の武器はカジタピッケルとバイパー)。
2P目(上田)
 良く覚えていないがそれほど難しくなかった。ここもマサトリード。
3P目(渡辺)
 残すはちょっとしたリッジと頂上直下の岩峰だけ。マサトに「せっかくだからリードしろ」と言われ渡辺リード。頂上直下の岩峰は、マサトに「正面から行ったら絶対満足するぜ〜」と煽られていたが、ちょっと無理のあるラインなので左上してからリッジを右上。高度感があって楽しい。

 頂上に着くと、予想通り風が強かった。さっさと下降開始。ツルネに着くと、なんとトレースがあったので利用。ところが、しばらく降りると「どうも北側の支尾根に入っている気がする」とマサトが言いだし、その後大天狗がガビーンと目の前に見えたことで二人とも「絶対に支尾根だ」と理解したが、めんどくさいのでこのまま降りようということになり、下降続行。ところが、先行パーティが引き返してきて、「この尾根の末端が崖で降りれないし、懸垂で降りても沢はアイスが出てる」と言う。大系で確認すると確かに30mの滝があるようだが、「厳冬期は埋まっている」って書いてるし、雪はそこそこ安定しているし、気温も下がってきたし(既に15時過ぎ)、まあなんとかなるだろうということで地獄谷を下ることにする。尾根末端まで行くと懸垂になり面倒なので、左手のルンゼから地獄谷に下降。先行Pは三ツ頭から川俣尾根を下降するとのこと。沢はガンガンにクラストしており快適そのもので、滝も全部埋まっていた。支流にアイスが出ているのがあったので、先行Pはそれを見てびびったのだろう。半分を過ぎたあたりから、水をたたえた釜や、怪しいスノーブリッジが出てきて神経を使うが、技術的には楽勝だった。デブリは1箇所出ていた。17時ごろに出合小屋着。しばらく休んで、テントに帰幕したのは18時ごろだった。帰幕後宴会していたら、例の先行Pが下山してきて、「ひょっとしたらハマってるんじゃないだろうか」と気にしていたので、ちょっと安心した。

 ちんたら下山。帰りのタクシーは1000円+迎車代約600円を取られた。駅前の喫茶店「峰の茶屋」(うろ覚え)で打ち上げ。なかなか旨かった。
 5段岩峰は、先日西面で登った小同心クラックや中山尾根より難しいと感じた。リードのマサトは「中山の方が難しかった」と言う。で、色々話しているうちに、岩が硬くてフリーっぽいムーブの出る西面の岩稜と、だましだまし登るアルパイン的な東面のリッジとでは、得意不得意が出るのではないか、という結論に達した。正直、大系に「人気ルート」とか書いてあったので舐めてた。
 核心前までの登りや、下降での草付きの高巻きでは、アイゼンワカンが大活躍だった。こんなに使える小技とは知らなかった。
 プロテクションは立木や残置で間に合った。ピトンは打たなかったが絶対持参すべき。カム・ナッツは、5段岩峰の中間部のクラックで使えそうだけど、そこでしか出番がなさそう。立木が使えるのでスリング多めで。
<以下反省>
 ・核心で時間かかりすぎ。セカンドでリードと同じ時間をかけたらイカン。(スリング類をほとんどリードに渡してしまったので、プルージック登高できなかったのも一因)
 ・下降で安易にトレースを追ってしまい、ハマリかけた。山では他人を信用したらイカン。マサトが気付いた時点で読図するなりして、登り返すべきだった。
 ・ビーコンはおろかスコップすら持たずに沢を下ってしまった。渡辺の靴が濡れていたので、ビバークは避けたいという考えから強行し、結果オーライだったが、今後は慎重に行動したい。

渡辺 記

【行動概要】
1月12日 雨のち曇
 美し森駐車場〜出合小屋の手前くらい
1月13日 晴ときどき曇
 テント〜出合小屋〜旭岳東稜〜ツルネ東稜〜支稜に迷い込む〜地獄谷〜出合小屋〜テント
1月14日 晴
 テント〜美し森駐車場

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