■支笏/支笏湖〜風不死岳〜樽前山〜苔の洞門

2008.3.8
鮎島仁助朗
 3月10日は会社の創立記念日でお休み。毎年思うことだが、創立記念日があるなんていい会社だ。他の皆は社内ゴルフコンペに繰り出すが、私はもちろん出ない。そもそも、今年は3連休になるのだから、もったいない。ということで、溜まったマイルを精算するため、2ヶ月前から北海道行きのチケットを予約していた。
 さて、北海道のどこに行くかである。3日間、ショートを3本やるっていうのも悪くはないが、晴れるのであればせっかくなら縦走したいもの。そして、北海道の中でも行ったことの山域へ・・と考えると、道南・ニセコ・札幌近郊地区だろう。『山谷』本はいろんな縦走の案を提案してくれる。しかし、その中でもニセコだ。ミーハーな北海道初級者にとっては、なんともニセコというところがウハウハものなのだ。これを軸に、まずは後方羊蹄山登頂とニセコ全山縦走、それにニセコ北壁滑降と白眉ものを3つやろうというなかなかナイスなプランを考え付いた。
 しかし、悲しいかな、どうあっても半日で後方羊蹄山の1500mアップをこなせる自信がなく、3月よりも4月のほうがは適期だと、どの資料にも書いてある。となれば、後方羊蹄山は4月に渡島駒ケ岳とセットでやり直して、1日目はもっと空港に近いところでやるべし。そう2日前に考え直し、もう一度資料漁りの開始。すると樽前山が引っかかった。なにしろ、ここは空港に近い200名山。そして、将来考えている日本海から支笏湖(春香山〜余市〜無意根〜空沼〜恵庭)縦走の途上にも含まれない。また、メインのニセコ縦走に重大な影響は与えないだろうし、かつ風不死をオプションで加えることでかなり充実しそうなのだ。
 「名山」とか呼ばれる山々のだいたいは、そういわれる理由があるってもんだ。樽前山なんて、行かなくても写真を見ればそれはわかるよ。この独特な形。内地というか、日本には、ちょっとこのような山はないんじゃないかな。新千歳に降り立つのなら、そのすぐ西に見えるので晴れていればだいたいわかるだろう。その樽前山と支笏湖の間にあるが風不死岳。なんといってもその名前がいいじゃない。まぁどうせアイヌ語の「フップシ」の当て字だろうけど、風が死なない山だからね、だから前々から二つを繋げて行きたかった山々なのだ。
 風不死岳北尾根は標識もしっかり、トレースもしっかり!私はこの看板とトレースについていくだけで、頂上まであと少しというところまではスキーが使えた。頂上付近は、さすがに急傾斜でツボ足にならざるを得ないが、すぐに風不死岳頂上に到着。天気は快晴だ。足下の支笏湖とその対岸の恵庭岳がコントラストに映えている。うーん、カッコいいぜ。まったく土地勘がなかったが、今度は札幌国際から無意根山、札幌岳、空沼岳を通って恵庭岳までの縦走もいいなぁ。今度行こうっと。そして反対に目をやれば樽前山。・・すばらしい。こんな山は内地にはないね。すごく独特な形をしている。
 とりあえず、先行トレースをつけてもらったおっちゃんに記念写真を撮ってもらい、ここからはスキーをつけて樽前山へと向かう。どうやらトレースの御仁はさっきのおっちゃん2人組と風不死からスキーで下ろうとしている若者2人(風不死からどうやって滑るんだろう?)で、支笏湖からの往復なのでここからはトレースはない。

 風不死から樽前山から積雪期に縦走をしている資料は見つからなかったが、夏道は鎖場があるそうでスキーが使えるかどうか不安だったが、別になんてことはない。フツーにスキーを履いて932mピークのコルまでいける。そこからはトラバースして、ショートカットすればなんてことなく樽前山とのコルにつける。しかし、やはり樽前山は活火山。その地熱のためか完全にクラストしている。ここではクトーが大活躍。私は始めてその存在価値がわかった。まぁ、ちょっとでも滑ったら200m滑落は間違いないのだけれどガシガシと音を立てているほどバッチリで、容易に外輪山に立ち、あとは平坦なところを東山へと進むだけ。
 樽前山の本当の山頂は真ん中の“ポコ”なんだけど、完全に湯気?が出ているし、なんか陽炎っぽくなっていて完全に「活火山です」と威張ってるんでねぇ。昔は昔、ボクもがんばって雲仙平成新山の溶岩ドーム頂上に立つ(熱かったぜ!)など登頂意欲に燃えていたときもあるけど、なんかね、もう無理はしたくないし。

 しかし外輪山から東山までの平地が長いんだな。風は強いし、足もなかなかでない。なんとかピーク下まで行き、残り10メートルはスキーをデポ、キックステップで東山ピークに立つ。やったぜ。でも疲れた。
 かなり風の強い山頂でちょっと休みつつ、さすがにアイゼンをはいてスキーまで戻り、外輪山を戻る。シシャモナイコースをたどって、苔の洞門に戻ろうと考えたが、それにしてもずっとガリガリである。その後もガリガリだとさすがにアイゼンを履かなきゃダメかなっと思うが、傾斜の緩い932mピークとのコルまではガリガリ斜面を誤魔化しながら行って、斜面をよくよく観察すると、そこの南斜面は緩んでいる!ラッキー!!

 うっしゃ一気じゃ。。傾斜は25度くらいの無木立ノートラックのおいしい斜面を独り占め。サンキュー!!でも一気に乳酸が。おぅ、芍薬甘草湯、インプット。でも、いい大斜面だった。
 しかししかし、このおいしいところも300m足らずで、ここからが長かった。国道までは地図を見るとまったく傾斜がないし、さらに4kmもある。しかもトレースもないということで、ひたすら下りラッセル・・。しかし、国道に着いたといってもまだまだ。今度は車に戻らなければならないのだ。その直線距離は5km・・。うぉぉぉぉ。スキーや荷物、しまいには兼用靴さえも道端に脱ぎ捨てて、最終的には靴下で車道をランニング!途中、おばさんに「どうしたの?」とか同情まで買うことに成功したが、車まであと100mのところで言うのは反則だろ・・。シルバーシートを譲る若者のようにさわやかに振り切ってしまった。この一日はたった6時間の行動時間だが、歩行距離は20kmも歩いてしまった。

 あぁ、いい山だった。これだけでも北海道に来た甲斐があると言ってもいいくらい、とてもいい山を存分に登ることができた。
 確かに充実したが、逆に充実しすぎだ。こんなに疲れるものとは思わなかった。すごい疲れた。

【記録】
3月8日(土)晴
 駐車地(風不死岳登山口)1020-風不死岳1215-樽前山1405-苔の洞門1600-駐車地1650

鮎島 筆