■北ア/錫杖岳前衛フェイス(左方カンテ・1ルンゼ・3ルンゼ)[登攀]

2008.7.19-.21
寺本久敏、渡辺剛士、大部良輔、鈴木さん(カリ)
 テスト期間中だったので3連休は本当は山に行かないつもりだった。しかし岐阜までのガス代を安くしたい先輩に「どうせ勉強なんてしないよ」と言われ結局3日間とも山・・・。  錫杖岳は何となくゲレンデ的雰囲気を醸し出す‘フリーのマルチピッチ’みたいなものかと思ってましたが、ヤッパリ‘本チャン’でした。
無名ライン核心ピッチのSカリさん
7/18
2130 川越駅集合。直前にアブミを取りに帰ったので少し遅れる
2430 松本で西明石から来たSカリさんをピックアップ。今回は4人パーティー
2600 中尾温泉の駐車場で幕営

7/19
0430 起床
0515 出発
 途中に渡渉がある。アプローチシューズを沢足袋にしてよかった。
 1時間半くらいで錫杖沢の出会い。もうすでに何張りかテントが張ってある。テントが張れそうな場所がポツンポツンと所々にある。思ったより狭いテン場だった。
 地均しをしてBC設営後、ギアと行動食をもって取りつきへ。取りつきまでは30分チョイ。結構な急斜面。
 カンテの真下の広場に出て、ギアを身につける。左方カンテの取りつきはそこから右に少し行ったガリーなのだが、4人とも左に行く。北沢大滝のところで水が出ていたのでわざわざ下から汲んでくる必要はなかった。
 Sカリ・渡辺チームは怪しいところから取りつきかなり悪そう。それを見たので取り付く場所を自分たちは変え、カンテと左方カンテの正規の取りつきの間のガリーから取りつく。

1P(寺本)
 寺本さんはガリーを直上して詰めようとするが、濡れ濡れで悪い、トラバースして草付きへ。草付きの木で1ピッチ切る。フォローでもやっぱりトラバースは怖いね。
2P(大部)
 草付きからクラックそして草付き。正規ルートの2P目終了点に合流。大木でビレー。取りつきからここまでナチュプロのみ。ここで順番待ちで1時間以上待つ。
3P(寺本)
 高度感があって怖い。残置スリングに足をかけてA1。
4P(大部)
 チムニー。濡れていて少し不快。背中側のハンマーが引っ掛かって少し苦戦。
5P(寺本)
 快適なフェース。ランナーもたくさんとれる。テラスに出る。結局、無名ラインから登ってきた渡辺・Sカリと合流。ここでまたかなりの順番待ち。前も後ろも人だらけ。さすが人気ルート。
6P(大部)
 チムニーからリッジに出てフェース。出だしの核心でSカリさんはデッド気味に取りに行っていたが、自分は無理なのでA0。ところどころカムが決まる。左壁だけのフェースクライミングもできそうだが、両側の壁を使って突っ張った方が楽なので普通のチムニークライミング。リッジの部分が少し脆い。最後のフェースは高度感がある。

 これより先はつまらないらしいのでここからひとまず先ほどのテラスへ懸垂。そこから2回懸垂で北沢大滝のあたりへ出る。
 鍋、酒、寝る。


7/20
 注文の多い料理店に取りつこうとするが、取りつきで雨に降られるのであきらめる。
 取り合えず、1ルンゼを見に行くと水が流れまくっている。乾くのを少し待って0930取りつく。この日は我々2パーティーだけだった。

1P(大部)
 快適フェース
2P(渡辺)
 出だしがムズイ。A1。
3P(大部)
 Vの字の左を行く。
4P(渡辺)
 途中の超濡れた所のトラバースがやばい怖かった。
5P(大部)
 核心ピッチを先輩にやってもらうため7〜8Mで切る。ビレイ点は水が垂れてくるので雨具を着る。後ろを振り返るととても景色が良い。
6P(渡辺)
 ビショビショ、最悪、グラグラハーケンでA1。核心後は左上。核心部でフォローの際セルフを取り損ねたのでアブミを残置したまま大きく4Mほど左に振られる。そこからは、ユマーリングで登る。

 同ルートを下降してきたもう1パーティーがここから先はもっと難しいよと言われたので、背骨を抜かれた我々はそこで敗退。
 懸垂時にアブミを回収しようとしたが無理だった。岩場を汚してしまった、すいません。
 カレー、酒、寝る。


7/21
 今日は、帰京の時間もあるので短い3ルンゼにする。3ルンゼの上部は遠くから見てもはっきりわかるコルになっている。先行パーティーはいないので取り付きで準備、後からも誰も来なかった。ちなみにこの日は1ルンゼにはたくさんの人がいた。3ルンゼのルンゼ自体はビチャビチャで登れず、左側壁を登る。正規の3ルンゼのルートを少しでも通ったか不明。

1P(鈴木)  Sカリさんはライン取りにこだわる人なので難しいところをフォロー。途中2か所薄っかぶりの岩があったがギリギリ登る、ビレイポイントには残置ハーケンが1本だけだったのでそれにセルフを取り腰がらみでの確保だった。
2P(大部)  トラバース後直上。トラバースがなかなか難しかった。しっかりしたビレイポイントがあったのでそこで切る。このピッチはノーピンだった。落ちたら二人とも道連れだった、落ちなくて良かった。
3P(鈴木)  普通。記憶になし。
4P(大部)  少し前に錫杖のクリーニングが有ったせいなのか、ルートファインディングの力が無い自分は、先行者もいないためかなり苦労した。一度レッジに出てそこの下部でエイリアンを決めてその先がノーピンで怖かった。難しくはなかったが、所々岩が脆く、ロープで落石を落としまくってしまった。
5P(鈴木)  右上。やばかった。一番やばかった。モロモロ。岩がモロモロ過ぎる。ガレ場を右上するのだが、ガレ場のくせに立っていやがる。難しくはないが悪い。最悪。今にも落ちそうなパコパコの巨大フレークを絶対に触らなくちゃトラバースできなかった。草付きに指先を突っ込んだ時の安心感と来たらそりゃもう最高ですよといった感じ。
 この終了点から懸垂すれば歩いてコルまで行けるが。この先も登れば?と先輩にそそのかされたのでもう1ピッチ伸ばす。
6P(大部)  草付きからクラック。5Mほどでテラスに出るがそこから先に行くのはやばい。しょうがないので大岩にスリングを巻いて懸垂。またゴミを残してしまった。

 そのまま、コルの下部まで懸垂。後続の寺本・渡辺ペアを待つ。晴れていて気持ちが良い。靴を履き替える。
 コルまでは歩いて1分。
 反対側のルンゼを2回懸垂。落石注意の懸垂だった。懸垂後はそのまま沢を下るとクリヤ谷に出る。そこからは歩いて5分ほどでBC。

 テント撤収後下山。暑い。
 温泉に入り、松本で飯を食い、関西に電車で帰るSカリさんと別れ帰京。
 アブミ・スリングを残置してしまった。濡れていて怖かった。一部を除いて岩は堅かった。景色は最高、アプローチも楽でなかなか良かった。難しいと悪いの違いが何となく分かった。
 悪い所に突っ込む時はなんかもう頭の中から大切なものが飛んで行ってしまっている気がする、脳細胞が死滅する一方だ。

記)大部

【行動概要】
7月19日(土)
 中尾温泉駐車地〜錫杖沢出合幕営地〜(前衛フェイス左方カンテ登攀)〜幕営地
7月20日(日)
 幕営地〜(前衛フェイス1ルンゼ登攀)〜幕営地
7月21日(月)
 幕営地〜(前衛フェイス3ルンゼ登攀)〜幕営地〜駐車地

【写真】
右手の顕著なルンゼが3ルンゼ。中央の切れ込みが1ルンゼ左股。
無名ライン核心ピッチのSカリさん。
今山行で、渡辺と大部は「ドント・ビリーブ・Sカリ見込」を体に刻み込まれた

左方カンテを終えて、注文経由で北沢大滝に下降。
北沢大滝より。注文は顕著なコーナーを攻めるようだ。
無名ラインは右側からリッジに回る。
ちなみに、左側の顕著なハングがかの有名な「しあわせ未満」
1ルンゼ二股。「フリーのマルチ」みたいな雰囲気は微塵も感じられない。
完全に本ちゃん。
岩が硬いのが救い。
左/3ルンゼ
右/3ルンゼ上部
3ルンゼのコルにて。
反対側ルンゼの上流。錫杖というのは凄い山だ。

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