■朝日連峰/荒川中俣沢[溯行]

2008.8.31-9.2
高橋弘、治田敬人、長嶋剛、大部良輔
 当初は、29日(金)の夜行発で、3泊4日+予備1日で飯豊連峰の大石川千代吉沢に行くはずだったが、木曜日のこっちの超大雨(最近流行りのゲリラ豪雨ってやつか??)のため、土曜の夕方発になり、結局は2泊3日で荒川中俣沢に行きました。まだ、沢登りに4回しか行ったことがないのに5級の沢(千代吉沢)に行くのかと恐れおののいていたが、転進するかもとリーダーからメールがありホットしたが、結局5級下(荒川中俣沢)じゃねーかよと、ビビりまくりました。後ろからただヒョコヒョコついて行っただけだけど、天気にも恵まれ、良い経験になりました。
8/30
 午後6時に川越駅集合。
 千代吉か荒川かはまだ未定のまま関越に乗る。
 家を出た時は雨が降っていたが、高速に乗ると止んでいた。赤城高原で夕飯を食べ、TVの天気予報を見てこの先の天気は良くなさそうなので、荒川に決定。トンネルを抜けて新潟に入ると、雨が降っていた。高速を降り、下道になってからも結構距離がある、途中泊まれそうな場所を探したが、見当たらず林道終点まで来てしまったので、針生平駐車場にテントを張る。確か24時ころついた。「明日は角楢小屋(林道終点から1時間)で様子見ですかね〜?」なんて言いながら3時まで飲む。

8/31 曇り→晴れ
 8時30分頃起床。外は晴れていやがる。沢を見るとなんか大河といった感じ。増水しているように見えた。
 朝食を食べ出発の準備をしていると、金曜に入渓したらしい男女2人組の沢屋が降りてきた。話を聞くと、入渓点から2時間ほどの大滞沢の出会い辺りに幕営適地があるらしく沢もさして増水していないらしい。そんな有力情報をGETしたので、そこまでいくことにする 有難いその2人は電車で来たのでまだ林道を歩いて下るらしい、恐ろしい。
 角楢小屋までは1時間弱。小屋はとても快適そうだった。そこで、岩魚釣りのための餌の虫を捕まえる。今回は4人パーティーだが、2人が竿を持ってきていた。
 そこから1時間ほど大朝日岳への登山道を歩き、何回か吊り橋を渡り、道が尾根に入る手前の大玉沢の出会いで入渓する。天気は曇りだが、水はそんなに冷たくない。
 大滞沢の出会いまでは平凡な河原、一か所だけ少し泳ぐところが有ったが、午後から晴れてきたので気持ち良い。
 ちなみに余談だが、今回の沢に向けてかなりウェアに投資した。下は化繊のパンツにFINE TRACKのタイツ(約4000円)・ウェットのハーフパンツ2mm厚(約5000円)・それに雨具・部から借りたスパッツ(このスパッツはもうヨレヨレで足にうまくFITしないので遡行中に何度もずり落ちた、先輩に「危ないし・意味ないから新しいの買った方がいいよ」と言われた、決して僕が使ってボロくしたわけじゃないです、元々ボロかったです)で足はカモシカの沢足袋。上は半袖ラッシュガード(約4000円)・長袖ウェット(約6000円)・釣用ライフジャケット(約2000円)で遡行した。ただライフジャケットは遡行中は上述の泳ぎでしか使わずも、幕営地でのケツのクッション・睡眠時のマット・休憩中の防寒着と大いに役立った。
 昼過ぎに、大滞沢の出会い付近につき、いざという時、大滞沢にエスケープできるように左岸の河原を整地してタープを張る。
 焚き火用の薪を集めた後、2人の先輩は釣りに出かけたので、自分は昼寝。吸血昆虫(蚊)が非常に多い。程無くして、釣りから帰ってきた二人は1人4匹ずつ釣っていた。刺身と塩焼きにして食した。塩焼きは最高であった。夕方から焚火をはじめラーメンやら炊き込みごはんやらを食べ22時位まで飲む。星がきれいだった。タープの下でシュラフカバーに潜るも虫が多く、たいして疲れてもいなかったので全然眠れなかった。この日だけで、50か所以上蚊に食われた。

9/1 晴れ
 4時起床。焚火を起こし直し、お茶漬けと岩魚汁を食し、6時前に出発。昨日の焚き火で下着やらを乾かしていたので、行動着に着替える時はさして不快ではなかった。
 100M程河原を歩くと、雰囲気が変わり、露岩帯になる。毛無沢出会いの手前で雪渓が出てきた右手から回り込んで上を歩く。毛無沢の出会いで休憩。
 曲り滝は右岸から巻く。ここではロープを出した。残置2ピンあった。もちろんA0。ちなみに、今回はロープを出した場所では全部フォローで登った。タイブロックでか上から確保してもらって登ったが、回収の必要なラストでの登攀もなく1番安全に登らせてもらった。もっとも、自分がリードできるようなところは、わざわざロープを出す必要などなかっただろう。時間の無駄だ。
 綾滝は左壁を登り、滝の落ち口へトラバース。トラバースが超怖かった。
 西俣の出会いでも休憩。大滝は右から高巻く、灌木帯を通って大きく高巻く。ウェットなので暑い。踏み跡は不明瞭。斜面も急。灌木を支点にルンゼを懸垂。30Mロープ2本なので2回に分けて懸垂。調度落ち口に降りる。懸垂せにゃこんなところ下れんと先輩達と話していたが、自分たちの1週間前に遡行した‘トマの風’のパーティーは記録によると懸垂せずにノーロープで降りたらしい。すごいな。大滝は上から見るとものすごいゴルジュの滝だった。ボルトラダー以外の登り方は考えられない。それはそれで大変だろうけど。
 大滝の上には魚影があった。源頭で漁師が放流したのか。こんなところの魚は阿呆だから俺でも釣れるよと言われたので、借りた釣竿を振ると、3回目くらいで20CMくらいのが釣れた。感動。確かに普通の釣り師はここまでは来ない(来れない?)だろう。
 東俣の出会いには快適そうな幕営適地があった。後ろ髪をひかれながらも前進。そこから少し行くと水が濁っていた。先輩曰く上流に雪渓があるかららしい。確かに少し行くと巨大な雪渓があった。左壁にロープを伸ばす。右上したあとに右にトラバース。空身で登り、荷揚げをしてもらう。そこから先は、崩れた雪渓の上を歩く。雪渓を抜けると二股になっており、左俣の滝は立派だった。右俣の意外と見た目より厳しい滝を、空身で登る。
 左俣に戻るために草付きを左へトラバースし、ブッシュで15M懸垂。やっぱり高巻きは小さく巻くのが基本で、大きく巻いていた先輩二人は、いやらしい急な斜面をノーロープで降りていた。俺だったら滑り落ちてたな。
 懸垂で降りた先の右岸でタープを張る。確か18時をすぎていた。結構下がゴツゴツしているがしょうがない。それ以上に50M先にまた雪渓があるため上流からの風が超冷たく、寒い。先程の雪渓の崩壊する轟音が鳴り響いていた。夕飯にラーメンと麻婆春雨丼を食べる。酒を飲んだらすぐに眠くなった。20時過ぎに寝る。自分は一番上流側だったので、冷たい風をもろに受けたが、疲れていたせいか意外と寝れた。タープを張っている最中は虫が気になったが、強い風のせいか夜は気にならなかった。

9/2 晴れ
 4時半起床。また茶漬けと岩魚汁を食べ、準備。外に置いておいただけの行動着を着るときは中々勇気がいる。7時前に出発。
 雪渓の手前の右俣に入る。1個目と2個目をまとめて左の草付きからノーロープで登るが、怖くて足がガタガタ震え正直泣きたかった。かなり悪かった。その先で何箇所かでロープを出した。最後にロープを出したのはチムニー滝か。つるつるそうに見えて意外と側壁はフリクションが利く。
 その後は源頭っぽくなり、適当なところで水をくむ。右方向へルンゼを詰める。池塘跡でウェットから寝るときに着ていた服に着替える。10分弱藪を漕ぐと中岳と大朝日岳のコルに12時前に出る。とりあえず遡行は終了。後は歩くだけ。エアリアのコースタイムで6時間ほど。
 大朝日岳ではガスってなにも見えなかった。そこからは急な下りの後、平岩山に登り返し、北大玉山へ。晴れてきて暑い。最初は調子に乗って名前の格好がよい祝瓶山に寄って行こう(コースタイムプラス3時間)と先輩と2人で言っていたが、分岐にきて、まだ祝瓶は遠くに見え、地図を見ると、400M下ったあと、400M登りかえすみたいなコースだったので断念。
 そこからは超急降下。疲れているので膝に来る。大玉沢の出会いからは道も平坦になり、ブナを愛でながら歩く。角楢小屋のベンチで30分ほど昼寝する。アブと蚊が多い。17時過ぎに、駐車場に着いた。水量は初日と変わっていなかった。服を着替えて車の中で後から来る先輩二人を待つ。1時間半後くらいに、先輩二人がついた。もうヘッドランプが必要な時間だった。
 帰りは、東北自動車道で帰り、終電の時間も過ぎていたので25時過ぎにウチまで送ってもらう。

 取り敢えず、生きて帰ってこれて良かった。登攀性の強い沢だった。今年は雪渓が多かった模様。ロープを出したのは確実に必要なところだけだったと思え、ロープを出したけど無くても行けたんじゃないかという箇所は無かった様に思えた。先輩達の判断力はすごいとただ感心。自分は無駄な荷物が多いようだったので、もっと軽量化に励みたい。今山行はただついて行っただけで、自分のした事と言えば、帰りの車中のBGMのCDを変えたことぐらいだろう。5級下の沢に行けたというのは非常に自信になった、ただ過信しないように日々精進したい。いつかは、この沢の悪かった箇所みたいな所をリードできるようになりたいものだ。
記)大部

【行動概要】
8月31日(日)
 駐車地〜角楢小屋〜大滞沢出合付近幕営地
9月1日(月)
 幕営地〜西俣出合〜東俣出合〜中俣右俣との二俣先幕営地
9月2日(日)
 幕営地〜稜線〜大朝日岳〜駐車地

【写真】
左/大滝を前に一発(巻き)やるぜのポーズ 右/麗しい美しき中流部。実に和む
 

左/曲滝。これから高橋登攀隊長がリードしていく 右/オオビ沢のガッツポーズ。自己記録更新・37センチ
 

山登魂ホームへ