■奥秩父/笛吹川東沢乙女の沢&西のナメ沢[アイスクライミング]

2009.2.7-.8
佐藤益弘、鮎島仁助朗、Klaus Kudielka(元会員)
 スイス在住のクラウスさんが3週間ほど日本に来るというので、少し前に「1,2回クライミングに行けたらいいね」「じゃ、アイスクライミングにしましょう」なんてやりとりをしていた。
 ところが、ここ3週間の気温が高く、ネットの氷結情報を見てもダメダメ、絶望的でどうしたものか悩んで悩んで、でも結局、東沢に行くことにした。以前、千波の大滝がダメだったときに転進したときも十分凍っていたからだ。
乙女沢大滝をリードするクラウスさん
2月7日(土)晴れ
 汐留でクラウスさん日野で鮎島を拾って現地の駐車場へ。途中の道路では-2℃の表示でなんとか氷点下らしい。でも全然寒くない、それどころか歩き始めると暑い。全面凍結していることもあるダムは、端の方にちょびっと氷が浮いてるだけ。ヌク沢なんか全く氷がない。これはやばい、東沢も普通に水が流れているし、だいたい徒渉ができるのかどうか。
 いまいちアイスクライミングの雰囲気のない谷を絶望的な気分で歩いて清兵衛沢に到着。はい、氷がありません。正直、本当にダメだと思った。でも転進したとしてもどうせ今日は移動だけになるから1時間歩いて乙女の滝を見るだけ見て戻ろうという話になった。
 しばらく歩くと右岸側にちらほら氷が出てきた。あれ?期待していい? そして高見岩沢の氷瀑、これがばっちり凍っている。一気に期待感がふくらむ。いやもう間違いない、これはいけるって。確信したところで足取り軽く行きたいところだが、徒渉がそれを許さない。3人とも足首程度だが沢に浸かった。
 そして、乙女の滝が見えた。確信した通りばっちり凍っている。前に来たときより雪が少なく氷が大きく出ていて好条件だ。乙女の沢の対岸にテントを設営し荷物をデポする。
 乙女の滝は鮎島がリード。以前来たときは雪が多かったし天気も悪かったので、こんなに立派な滝だとは思わなかった。実際大きくロープは50mいっぱい。足がぱんぱんになるし、バイルを研いでこなかったので全然刺さらず、何度も打ち直すので腕も疲れる。
 傾斜が緩いと思って舐めていたけど、結構しんどかった。
 乙女の滝の上は、氷床なんだろうなあ、という雪の中を進む。氷床の方が美しいだろうけど、足がくたびれているので助かる。景色もなかなかで、対岸の東のナメが美しい。東のナメには氷は皆無だが、白っぽい岩肌がずっと続いている。いいね、いつか登りたいね。
 我々以外誰もいないのがまたいい。無理もない、ここ数週間の気温や他の谷の氷結状況の情報などを聞けば東沢に向かおうとは思わないだろう。
 簡単だけど50mくらいありそうな滝、これはクラウスさんと佐藤で同時にリード。
 2人同時にばらばらのラインで登って、ばらばらにスクリューをセットしていたら鮎島から「スクリューの回収ができない」とクレーム。あー確かに、まったくなんにも考えてなかった、ごめんなさい。同じラインに戻って登るが、今度はビレーしている鮎島の真上のラインだったので落氷の集中攻撃を浴びせてしまい悲鳴が聞こえる。
そして今回一番大きい滝、縦にも横にもでかい。クラウスさんがリード。50mくらいだろうと思っていたらぜんぜん足りなくてピッチを切る。
 氷の中でスクリューでピッチを切るのは久しぶりだ。ビレイポイントで左を見ると懸垂でピッチを切ったと思われる残置シュリンゲが目に入る。ということはここからさらに50mあるのか。2ピッチ目は佐藤リード。実際2ピッチ目も50mあった。
懸垂4回で出合まで下降。さあ、宴会だ。いつも通り持ち寄りナベ。翌日の予定だけははっきりさせて、あとは酔っぱらって何時にねたのかもよくわからない。明日は西のナメに行き、上までぬけ、西滑頭を踏んで、石塔尾根を縦走して高見岩から西沢へという予定になった。

2月8日(日)晴れ
 5時起床。やはり寒くない。晩の残りのキャベツとエビを入れたラーメンがうまい。東沢を遡航し西のナメ沢を目指す。なかなかいい雰囲気で冬の沢登り気分だ。ちょうどへつりやすく氷が付いていたり、面倒な徒渉があったりして面白い。
 30分くらいで西のナメ出合。出合から傾斜の緩い氷が立ち上がっているがノーザイルで登った。
 正面にしょぼいルンゼが見えていてまさかそっちか?とかちょっとがっかりしそうになるが、本流は左へ曲がっておりほっとする。左へ曲がるとじきにでっかい滝が目に入る。
 ぎりぎりまで近づいてから準備。3人でジャンケンで誰がリードするかを決める。3、4度の相子の後、佐藤が勝ちリードに決定。この滝も50mいっぱいの大きな滝だった。
 もう氷はないのか穏やかな雪の沢の遡行となるが、ラッセルで結構大変だ。そういえばテントを含め全装備担いでるし。
 やがて二俣、本流は右だが、西滑頭に行くなら左だ。でも右の方が雪が少なそうなので右へ。それでも雪が多いので、すぐに雪の少なそうな左岸の尾根に上がる。3人で交代でラッセルするが、佐藤、鮎島はばて気味で、この登りの半分はクラウスさんがラッセルしていた気がする。
 傾斜がゆるくなってからが長く、やっとのことで、石塔尾根上の小ピークに立った。しかし時間かかりすぎなので、ここで作戦を練り直す。尾根上は雪が多く、どれだけ時間かかるかわからないので、すぐに西沢の林道に降りて林道を使うことにする。うまい具合に下りやすい谷があって、ぐんぐん下って谷に水が流れるようになると林道に着いた。
 林道はモナカのラッセルでしんどいが、黙々と歩くと40分くらいで橋脚のある西沢の渡渉点へ到達する。徒渉すると廃軌道だ。さて、廃軌道は歩ける程度に残っているのだろうか。
 廃軌道はところどころレールの下の土が抜け落ちていて、一見嫌な感じのトラバースがあったりするが雪の付き方が悪くないせいか順調に進む。トンネルがいくつか出てくるとじきに西沢渓谷の遊歩道に着いた。もう道の心配はない。
 西沢渓谷を鑑賞しながらもう一頑張り。西沢渓谷にもすごい氷瀑があるが、登られているのだろうか。取り付きは泳ぎかなあ?
 とにかく疲れた。帰りに寄ったラーメン屋でも身動きするたびに3人とも「あ゛ー」とか「うー」とか「いてててて」とかうなっていた。

 あきらめずに東沢にしてよかった。2日間とも誰もいなくて静かに楽しめました。乙女の沢は最高でした。大滝はほんとにでかいです。西のナメは、氷の印象は薄くなってしまったけど疲労も含めて充実しました。氷だけでなく、沢、ラッセル、廃軌道、西沢渓谷ハイキングと変化に富んでいて、いい山やったという実感があります。

2009.2.13 佐藤 記

【記録】
2月7日(土)快晴
駐車場8:45〜乙女の沢出合11:30〜大滝上14:45〜乙女の沢出合15:30
2月8日(日)快晴
乙女の沢出合6:45〜西のナメ沢出合7:15〜氷終わり8:15〜石塔尾根の小ピーク11:20〜林道12:10〜軌道跡12:50〜西沢渓谷遊歩道13:50〜駐車場15:30

【使用装備】
 ダブルロープ50m×2、スクリュー×10、2-3人テント、ダブルアックス(アクサー[佐]、バイパー[ク]、アズター[鮎])

【写真】
東沢の流れ
乙女の滝
乙女沢大滝前の滝
乙女沢大滝
乙女沢大滝
東のナメ沢出合
西のナメ沢出合
西のナメ沢2段50m滝
西沢右岸の軌道跡を下山する
廃軌道のトンネル

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