■越後/荒沢岳前嵓尾根(中退)[雪稜]

2009.3.21
清野(沼田山岳会)、鮎島仁助朗
 最初、山崎さんと戸隠に行く予定だったが、仕事が終わらないらしく、キャンセル。急遽、前嵓の日にたまたま久しぶりに電話をもらった清野さんに泣きをいれるとあっさりとOKの返事。場所は滝沢リッジとのこと・・。実のところ詳しくはあんまりよく知らないのだが・・。
 沼田山岳会のルームに行くと、なんだか重い雰囲気。ほろ酔い気味の重鎮の方々が居座って、清野さんを説教しているのだ。どうやら、一ノ倉の状況が悪いから絶対に止めとけと忠告しているようだ。清野さんは「っぅるっせい、だったらこんな会、やめてやる!」とかまったく大人気ない変な押し問答が繰り広げられていた・・。青二才のワタシがしゃしゃり出られる雰囲気でもなく、ただ呆然とやりとりを見守ることにしていると、多勢に無勢、居並ぶ一ノ倉を把握しつくした面々に明らかに理路整然とやりこまれていてとあんなに強気だった気持ちもだんだんと弱気になっていくのが手にとるようにわかる。。。。また、もう一人一緒に行く予定だった北大の猛者が新幹線に間に合わなかったということで、一気に盛り下がり、じゃぁ2人で前嵓尾根にしとくかということになったのだった。
前嵓尾根中間部をコンテで進む
 なんでもシルバーラインはこの3連休から開通するらしく、6時に開くゲートを目指し沼田山岳会のルームを出発。石抱小屋前嵓で準備していると、あのガンコオヤジから車の駐車位置やらで文句をグドグド言われ、またユンボーに追われるように出発。なんだか幸先が悪い。
 沼田の重鎮にスノーシューもって行ったほうがいいよといわれ、折角もってきたスノーシューを履いて上り始めるが・・。なんだこれ、邪魔じゃい。二人とも始めて履くのだが、すっげぇ歩きづらいのね。だいたいが堅い雪面ではまったく必要性を感じず、ツボ足で歩いたほうが速いのだ。なんだよ、こんな雪なら滝沢リッジいけるじゃん、それにスノーシュー・・。ぅくっそ~、沼田のオヤジどもに騙されたな。
 ツボ足で順調に尾根を歩いていると、下から黒いヤツが駆け上がってくる。・・・石抱小屋の犬です。っくそー、あのオヤジ、嫌がらせかよっ。なにせ、ワタシにはネギ・ピーマンなどいろいろ嫌いなものは多いけれど、実は一番ダメなのは犬なのです。小さい頃に、叔父の家で飼っていたボクサー犬に咬まれたのがトラウマになっていて、犬が3m以内に近づくと本当に冷や汗が出るのです・・。・・・。勘弁してくれ~~。こいつが、まぁすぐ帰ると思うじゃない。と思っていたら、ついてきやがる・・。というか、なんだか我々の先頭を切って歩くのよ。ずぅ~と・・。もうイヤ・・。ずっと精神緊張しっぱなしです・・。俺のアンパン取られるし・・。 なお、休憩していると、清野さんのテルモスのお茶が実は砂糖ではなく塩を入れてきたことが判明・・・。とても飲めたものじゃないので、全量破棄。う~ん、なんだか抵抗勢力が多いね。
 前嵓の取付きに犬にもっていかれないようにしっかりと木に括り付けてスノーシューやストックをデポし、鎖場を歩き始める。さすがに、犬はこの鎖場を越えられないようだ。へへへっ、ようやく開放されたぜ!鎖に導かれて左上する感じで登り、ちょっとしたコルっぽいところからロープを出す。

1P(清野、30m)
 普通の雪壁。ロープはいらないかも?木でビレイ。
2P(鮎島、40m)
 ルンゼの右端を登る。残置ハーケン一本あり。雪の状態が悪いと苦労しそうだ。鎖でビレイ。
3P(清野、45m)
 結構、急な雪壁のあと、ナイフリッジを馬乗り。チョイ怖い。
 その後、稜線をコンテ30mで進むが、前嵓の頭から荒沢岳がすぐに見えるので、テント・ナベ・シュラフなど幕営具を全部ここにデポする。これが結果的に失敗だったのだが・・。水不足のため間違って私のブランデーを一口飲んでしまった清野さんは実はめっぽう酒に弱いらしく、「味方にも抵抗勢力がいた・・」と意気消沈。
4P(清野、40m)
 5mぐらいの岩を越えるのにロープを再び出す。残置はボルトとハーケン、スリングなどがあり、一回左側から回り込むようにして登るのだが、この左に回りこむ一手が結構悪い。
5P(鮎島、45m)
 簡単な雪稜20mのあと、80度ぐらいのスラブを5m、ほぼ垂直の木登り5m。なお、いちおう、クライミング的な核心はこのスラブ5mだが、残置ありありなのがうれしい。もちろん、大いに活用させていただいた。
 簡単な雪稜をコンテ30m。
6P(清野、40m)
 最後の急な雪壁でロープを再び出す。下は木が出ているので支点は取れるが、急傾斜。抜け口は支点がなく高度感が出て怖い。

以上6ピッチで核心の前嵓の岩場は越えて、あとはコンテ100mぐらいで前嵓の頭へ。
 13時半ぐらいに抜ける予定だったが、前嵓の頭に着いたのは14時半。すぐそこに見えた荒沢岳の山頂は、果てしなく遠く見える。往復3時間というところか・・。ムリっス。アソコにテントを置いてこなければ良かったと思うが、もうしょうがない。帰ろうということになる。う~む、これで清野さんと組んだ山行3連敗決定である。
 テントを回収しつつ、一度、支点にした木が折れるなど部分的に怖くちょっと時間をかけてしまった懸垂下降を4回して前嵓を下りきる。っと、俺のバイルが一本無いっ。落としちまった、アズター・・。しょうがない。
 前嵓の下についたのは17時半なので泊まってもよかったのだが、頂上を目指すわけでもなく泊まるのも哀しいので、頑張って下山。スノーシューを履き(下りは結構有効だった)、途中からヘッドライトで行動し、19時には車に戻れたが、大湯温泉はどれもダメで、しょうがなく越後湯沢まで行って温泉に入った。
 結論から言えば、ナメてたということになるのだろうか。まぁ前嵓尾根核心部は越えたということでよろしく。でも、非常にいろいろ楽しい山行となり、かつ勉強になった山行となり、満足感いっぱいです。
 最初は錫状東尾根、戸隠P1、P3尾根、滝沢リッジの計画を経て最終的に、この前嵓尾根に行くことになったわけで、まぁもちろん具体的な情報など一切ない中、登ったわけだが、結論として、楽しいリッジクライミングであった。なにしろ、越後にありがちな「変哲なリッジ」(超マイナーなリッジ)ではなく、あまりに堂々としたリッジ、200名山荒沢岳に突き上げる最短ルート、それも夏道登山道があるところでも関わらず、これだけ難しいところなのだから。あまり、実は私は雪稜の経験なんてないもんで比較することはできないが、清野さんが言うには位置の�尾根よりもずっと難しいとのこと・・。今回、条件はよろしかったので一概にはいけないけれど、前嵓尾根もなんとかなったので一ノ倉尾根もいけるかな・・。なーんて、もう谷川は登山禁止区間に入ってしまったのでこれは来年の課題。来年の課題といえば、荒沢岳のピークも残ってしまった。もう一回、前嵓尾根を登るのはシンドイので、これは蛇子沢から狙うことにしようっと。どなたかよろしく!!。

2009.3.25 鮎島 筆

【記録】
3月21日(土)快晴
 石抱小屋0730、前嵓取付き1000、前嵓の頭1430、前嵓取付き1730、石抱小屋1900

【装備】
 ダブルロープ×1、ダブルアックス、スリング多数

【写真】
前嵓尾根の全景
2ピッチ目の雪壁
前嵓尾根をコンテで進む
前蔵の頭から振り返る
荒沢岳は遠い
懸垂下降。細い木はブチっと切れた・・
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