■奥三河/厚血川ゴルジュ(中退)[溯行]

2009.6.27
鮎島仁助朗、鳥本(一橋山岳部OB)
 浜松に朝5時半に集合。通例の映画DVDは私が選択した「ブラブ×バン●ン」というブラスバンド映画だ。これが、う〜ん、なんとも残念な部類な映画だった。少なくとも気合が入るではない・・・。大失敗。
 さて、佐久間の集落を越えて、龍王淵駐車地に到着後、着替えて遊歩道を降りる。
 10分かからずに沢へ。沢沿いの道を1分で龍王権現の淵を従えるF1。しめ縄をくぐって、様子を窺う。っえ?成瀬さんコレ登ったの??う〜ん、キビしそうなんですけど・・。いや、成瀬さんはいいさ。よく、初心者を連れて突っ込んだなぁ。少なくともフォローにもそれなりにクライミングの知識を求められるところなんですけど・・。今回の我々のパーティも成瀬さんと同じように経験者+初心者という感じで、まぁ成瀬さんたちもいけたのでいけるだろうと思ってきたわけだが、違うところはリーダーの私がそれほどの自信家じゃない点。鳥本、、、いやぁフォローは無理そうだなぁ。というわけで、これは「巻き」ということで。実のところ、わたしが登れる自信もそもそもないわけなのだが、それは責任転嫁ということで。
 左岸を巻く。巻きはそんなによくはないが、木が生えており、そんなに悪くもない感じ。ノーザイルで滝上へ。
 続いて、ゴルジュになって1m幅の水路となる。沢は右へ曲がって5mのナメ滝(F2)となっている。ウェットスーツ、ライジャケをきこんで、まずは1m幅の水路へ。まぁ足はつく感じでそれほどではない。しかし、このF2が曲者だ。水流右は確かにそれほど傾斜は強くはないが、ほんとうにツルツル。爆流を泳いで左壁を登るという手もある(成瀬さんはそう突破したようだが・・)が、左壁は傾斜も強いし、この爆流を渡るんですか・・。しかし、巻くに巻けない。まぁ、右壁は途中まではリスがありそう。途中からはツルツルだが、私はクライミングシューズだし、なんとかなるかも。まぁ落ちてもドボンだしなぁ〜。というわけで、見通しが立たないけれど、取付くことにした。
 リスにナイフブレードを2つぶち込み、アブミに立つ。そこまでは予定通り。しかし、そこから・・・。いや、突っ込むにしてももう一歩高いところまでいきたい・・。極小リスはあるので、試しにナイフブレードを刺してみるが、やっぱダメ・・・。う〜ん、どうしようかなぁ。戻ろうかなぁ・・。おっ、そういえばラープもってきてたなぁ、試しに打ってみるか・・・ッオッ(^o^)!なんか決まった感じがするんですけど。そして、恐る恐るアブミをかけて乗り込んでみる・・。ッオッ(^o^)!いいねぇ、ラープいいねぇ。最高Max!ん、でもそのあと・・・。極小リスすら何もないじゃん!!!どうする?どうする?フリーでやるしかねぇか・・・。右手の細かいカチを拾い、滑りそうなスタンスに立ちこみ、左手のカチを広い、右手のパーミングで騙しながら、左上にトラバースする感じで・・・。っツルっ、あっ。ドボンッ。落ちちまったぜ。いやぁ、あと一手だったのだけれどなぁ。でも、ラープはこの衝撃にも耐えて生き残っている!ラープすげぇっ!とにかく、あと一手だ。なんとなくいけそうな気もする。再度トライ。今度は足の置き場も完璧。悪い立ちこみを騙しながらも、なんとか落ち口までトラバースできた。もちろん、その後、ハンマー室伏張りに雄たけびを上げたのは言うまでもない。久しぶりの会心のクライムだった。
 さて、フォロー。ユマールを渡したので、何とかユマーリングで上がってこれると思ったのだが・・・。コイツ、完全に忘れていやがる・・。っえ、教わってないって?うーん、そうだったかなぁ。そういえば、教えていなかったかもしれないなぁ。いや、やっぱ教えたような・・。そんな問答はともあれ、知らないのは事実なわけで、即席で教えることに。しかし、そもそもがいい支点がなく、私の肩がらみが支点になっていて距離は離れているし、沢音だってうるさく、なかなか伝わらない。終いには怒鳴りながらとなるので、その光景はさながら即席講習というよりは、ただの叱咤激励に過ぎないのだった。結局、この5mをユマーリングするのになんと20分(!)もかかってしまった。もちろん、鳥本は疲労困憊である。しかし、ランナーはまったく回収してくれなかったので、私が再度、鳥本を支点に懸垂、回収に向かう羽目に。いやぁ疲れた。
 ゴルジュはまだ続いている。大きな釜を持った4m滝だ。しかし、これは大きな釜を持っているとはいえ、釜が埋まったのだろう足がつくので、それほど難しくはなく水流左を快適に越えられる(念のためロープ使用)。
 この滝を越えると龍王淵ゴルジュは終了し、のほほんとした、沢になるのでひとまず休憩。
 なんでもない川原は、とうとう民家の隣を流れ出し、そんなところをヘルメットと怪しい格好の二人組が通り過ぎる。堰堤2つを右から巻き(左から巻いたほうがよかったかも)、なおもフツーの川原を進むと、ドドンと20m滝が現れる。
 一見して、コレは登れない。ここは記録どおり、左岸まき。木は生えており、それほど難しくはなさそうだ。私が先行して、巻き始める。思ったとおり、簡単ではないが、それほど難しくはない。私はロープは不要だと考えたし、鳥本からも要求はなかった。さて、あと少しと思って振り返ったところ、鳥本が苦戦している。そんなに悪かったかなと思うと同時に、落ちた・・・。っえ??マジ?みるみる遠ざかっていく。っあ、ヤバっ。バスバスバス・・・。バス!幸いにも10mほど落ちたところで、木に引っかかって止まった。あぁよかった。とりあえず、<大丈夫かぁぁぁ>と聞いてみるが、返答は<うぅぅぅぅっっっ・・>という心もとないうめき声のみ。しかも、水揚げされた魚の如くピクピクしているような・・・。こりゃ、マズいかも。あわてて下り(要は簡単に下れる程度の巻きなのだ)、近くまで駆け寄ってみると、意識はあるし、受け応えもまともだし、手足にも骨折はないし、立ち上がれるので大事はないようだ。よかった。ただ、木には腹から落ちたため、腹に超激痛が走っているとのこと。内蔵はイカれていないようなのはよいが、とても続行できそうな感じじゃないので、降りることにし、念のため、懸垂下降をして沢床に降りる。
 沢どこに降りても、鳥本はまだ痛がっている。でも、自力で歩けないことはない。荷物だけ私が全部担ぎ、歩いてもらう。幸いにもさっきの堰堤まで歩いて10分弱程度で、そこまでは滝などの障害は何もない。ということは下界も近い。ゆっくり歩き、堰堤上。そこから車道までも確かに近く5分程度。駐車地もそこから10分ちょっとだった。まだ昼前で、田舎にありがちの12時ちょうどのサイレンが鳴り響く。
 さて、帰りは「うた魂!」という映画DVD。「合唱、なめてんじゃねぇぞ」という文句の青春映画。ありがちの展開だが、見所は「15の夜」合唱と「I am FULLTEEN」の絶叫シーン。これがとってもいいんだなっ!特に「15の夜」はアツいぜっ!このシーンだけ5回はリピートです。「♪だぁれもしばられたくないとぉぉぉ〜〜♪」・・・。あぁ、行く時コレを聞けばよかった。DVDをかける順番を間違えたのも敗因のようだ。
 後日の連絡によると・・・。鳥本はどうやら肋骨を一本やられていたらしい。帰り、東海地区でそれなりに勢力を張っている炭火焼チェーン「さわやか」(ネーミングに関して突っ込みどころ満載です)で大盛りハンバーグを二人してモリモリ食べたのだが・・。思ったより重傷だったが、それでもそれだけで済んでよかったというべきか・・・。
 確かに今回の事故の直接の原因は巻きの失敗。しかし、ラインが間違っていたとは思わないし、我らにあの巻きをこなせるの実力がなかったとも思わない。実際に龍王淵F1の巻きの方がよほどいやらしかったし、それもスンナリとできていたからなぁ。しかしそれでも、そんなに難しくない巻きで落ちてしまったのはなぜか?本人の不注意によるものか?それも否定はしないが、それだけに責めを負わせてしまうわけにはいかないんだろうな。やはり、あの龍王淵F2でのユマーリング20分が応えたようで、疲れきっていた。おそらく、そこに最大の原因があるといえるんだろう。
 ワタシとしてはユマーリングのやり方をすでに教えたつもりではあったが、彼が知らなかったのは揺るぎない事実。だから、少なくとも事前に確認ぐらいはすべきだった。もうひとつ、私も彼が疲れきっていた状況は把握していたわけで、それを見据えて敢えてロープを出してもよかったね。
 本当にこれだけで済んでよかった。アソコで木に引っかからなかったら、確実に最悪の事態になっていたしな。また、下界も近くてよかった。
 なお、厚血川はこの大滝の上、たっくい淵ゴルジュの方が難しいらしいのよね。今回の龍王淵の様子を見ると、無事に大滝を登れたとしても「たっくい」はムリだったかも。でも、また挑戦したいす。今度はしっかり準備をしたうえで、望みたいな。もちろん、龍王淵はもうイイのでスタートはこの大滝の巻きから・・・。

2009.7.3 鮎島 筆

【記録】
6月27日(土)晴
 駐車地0750、入渓点0800、龍王淵ゴルジュ出口1000、大滝中退点1100、駐車地1145
【使用装備】
 ダブルロープ50m×1、ラープ、ナイフブレード×2、アブミ1s、ユマール1s、クライミングシューズ
※ロープは30mで充分だったと思う。(敗退の懸垂を除けば)
※龍王淵に限ればカムはつかえない。

【写真】
左/龍王淵ゴルジュF1(巻いちゃいました)  右/龍王淵ゴルジュF2手前の水路


左/龍王淵ゴルジュF2、下から 右/龍王淵ゴルジュF3、写真はカッコいいですが簡単です


滑落後激痛に耐える鳥本


山登魂ホームへ