■北ア/剱岳源冶郎尾根〜剱岳剱尾根R4 [登攀]

2010.4.29-5.3
山崎洋介、他1
 昨年の赤谷尾根〜三の窓(チンネ)〜本峰〜東大谷スキーの途中、大阪のパーティより「R4ベストコンディション」という情報を聞いて、アイス装備を持ってこなかったことを激しく後悔したものである。
 ここ数年は暖冬でR4が上手いこと凍るのは珍しい状況が続いている。今年はいかならん、と情報を集めてみたれば、気温・降水量とも十分期待できそうな案配であった。
 それっとばかりにRCCのO氏に連絡を取ると共に、富山県に登山届けを送付した。それからも気温が上がればやきもきし、雨が降れば溶けはしないか、雨が降らなければ発達しないのではないかと仕事そっちのけで富山県の気象状況を追跡する毎日が続いた。
 確信が持てたのは4月も最終週に入って、温度は上がらず降水量も適当でしかもGWは全国的に晴天に恵まれるとの予報である。
4/29(木)ガス/雪

 勇躍富山に到着してアルペンルートに乗ったはいいが、なんと吹雪による積雪のため美女平からのバスは運転を見合わせている、というではないか。予定より二時間近く遅れてO氏と合流できた室堂は完全にガスの中であった。
 コンパスと地図を照合しつつ、視程が100m程しかない雷鳥沢乗越をこえ、剱沢小屋で泊。



剱沢を下る
4/30(金)ガス/雪

 剱沢を駆け下って、源治郎に取りつく。
 本日は終日ガスの中に小雪がちらつく天候。晴天ならさぞかし素晴らしい光景がひろがっていたであろうに、残念なことであった。

 二俣になった尾根の左股基部の左上バンドから雪の詰まった急傾斜のガリーにはいる。
 残雪期の一般ルートと甘く考えていたが、どうしてどうして。両側は鋭く切れ落ちており少しのミスも許されない。雪面はダブルアックスが必要な急傾斜の上、クラストからだんご雪とめまぐるしくコンディションが変化する。おまけに風が強く、温度が上がらないので指が凍えてしまう。
 一峰手前の岩稜でザイルを出したこともあり、本峰直下岩峰手前のコルで泊。最初に目論んでいた「二日目に三の窓のコル・三日目にR4」という計画はもろくも崩れてしまった。



主稜線

頂上直下
5/1(土)晴のちガス

 本日はどう頑張っても登攀ができる時間ではないので、のんびり出発。そう言えば積雪期の剱は何回も来ているが、主稜線を三の窓に向かうのは初めてのことだ。

 快調に飛ばして誰もいない三の窓に着く。
 初日、適当に掘ったTSに飛雪が溜まって寒かったらしいO氏、昨日に引き続いて穴掘りとブロック積みに精を出す。
 「身長の深さぐらいあればいいよね」とはO氏の弁。誰もいないのをいいことに一等地に傍若無人なでかさの穴とそれに輪をかけたでっかいブロックを積む。
 午前中は好天だったのだが、14時頃からガスがかかってくる。取りつき偵察のためにを池ノ谷に下るが、ガスが濃すぎてどうもよく分からず、「ここだろう」以上の確認は出来なかった。はたして凍ってくれているのだろうか。



R4

R4_2ピッチ目
5/2(日)晴

 さて、今日は本番。R4を登るためにはるばるここまでやって来たのである。
 日の差さない池ノ谷を下るときれいに凍ったR4が待っていた。2ピッチ以降だけど。

 1ピッチ目の右上バンドが岩と氷と雪のミックスになっているのだ。昨日も右上バンドを確認してはいたのだが、「ここは悪すぎるよな」とスルーしていた場所がまさにR4の取り付きだった。
 トラバースから一段上がるところがいちばん恐かった。その上のピンがとれるオアシスと思っていた氷はただのザラメ雪。エイリアンの緑一本を心の支えに登高し、ちゃんとした氷でピンを取れた時は冷や汗三斗状態。その上のピッチは幅広のこおりを左から回りこんで、立った凹角に入る。非常に快適。
 この辺はガイドやらたくさんの記録が出ているので割愛。
 最終ピッチ。傾斜は緩くなるが、完全な雪壁になっているので支点は取りようがない。
 60mぎりぎりいっぱいで尾根線の緩傾斜地帯に到達。ほどなくO氏が登ってきてR4は無事終了。あとはC2から降りて今晩は富山で祝杯をあげるだけ、と思われたのだが、まさかあんな罠が待っているとわ。

 かつて剱尾根に来たことがあるというO氏にしたがって、小ピーク手前のコルから尾根の右側のガリーへ懸垂。だが30mいっぱい降りても傾斜は緩くならず、あと50m〜60mは懸垂が必要な雰囲気である。どう見ても右叉に降りている。登り返した小ピークの先がコルであった。
 時間がおしてきたので本日の下山は断念し、もどってきた三の窓のコルはテント村と化していた。一等地のど真ん中に掘られた傍若無人な大穴とそれに輪をかけてでかいブロックはさぞかし邪魔だったことだろう。


5/3(月)

 昨日登攀中に響いた派手な雪崩の音をもう聞きたくないので、早朝にテントを畳む。この豪邸跡は誰が使うのだろう。
 R4の取り付きには2パーティ。さらにルートには1パーティ。聞けば昨日もわれわれの後ろに1パーティが続いていたらしい。今シーズンのR4は大盛況のようだ。
 金物にへこたれそうになりながらどんどん高度を下げる。R7?R8に素晴らしくみごとな氷がかかっていた。もう一日時間があればチャレンジできるのだが。
 池ノ谷の下部は落石とデブリの巣になっているものの、問題なく下降可能であった。
 タクシーで上市に下山して、温泉で風呂を浴びて富山へ。
山崎 記
【記録】
 4/29(木)ガス/雪
  14:30室堂-17:00雷鳥沢乗越-17:40剱沢小屋TS
 4/30(金)ガス/雪
  04:00起床-06:40出発-07:45源治郎取りつき-13:15 P1-14:40 P2-15:00コル-15:45前衛壁手前TS
 5/1(土)晴のちガス
  04:10起床-06:40出発-11:00三の窓
 5/2(日)晴
  03:30起床-05:30出発-06:15登攀開始-12:25終了-15:50TS
 5/3(月)
  三の窓-(池ノ谷)-馬場島

【写真】







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