■北八ヶ岳/稲子岳南壁左カンテルート[登攀]

2010.5.16
赤沼、佐野
 北八ヶ岳特有の疎らな針葉樹林を抜け、あくまで明るいガレの押し出しを登っていく。目指す岩壁は森のどこからでも見上げることができるので、アプローチルートははずしようもない。どピーカンの中、そこここに残る雪が反射してまぶしい。
 かなりの急登にふたりそろってへろへろで岩壁基部に到着。ま、こういう体調を英語ではハングオーバーなどとも言いますが・・・・
 見上げる南壁はフェースというよりも、大きい岩を積み上げたような様相。つまり摂理の大きな岩のパズルのような岩壁で、ルートファインディングひとつでかなり面白いクライミングができそう。こういう壁はルートにあまりこだわらないほうが楽しく登れるかも。今回はつるべで登るというテーマで来ているので、だいたいのルートどりだけを打ち合わせの上、佐野さんリードで登攀開始。

 潅木のうるさいフェースを直上後、打ち合わせどおり右のカンテラインを目指すが、佐野さんはなぜかクライムダウンしてきて、真上の急なフェースを登り出す。かなり苦労してますな。じわりじわりと一進一退を繰り返し、30メートルいっぱいで「ビレイ解除!」の声。下からは動きが見えないうえ、ときおり石が降ってくるし、ちょっと心配になっていたところでした。
 さて登りだすと・・・・いやぁ〜!脆いよここ!佐野さんよく登ったねぇ〜!
 多少脆いのは想定していたが、ここまでとは。ロープが触っただけで30センチ大の岩がはがれて落ちてくるし。8割以上の岩が触れば動く状態。これはあの悪名高い、雨飾山のふとん菱レベルの脆さですな。いつ岩を抱いてそのまま落ちてもおかしくない急なピッチをトレースして、確保点に達するとすでにぐったりとした様子の佐野さん。どうやら予定のルートは脆そうだし支点がない。上を見上げると残置のピトンがあったので、そちらに向かった・・・・ということらしい。
 そこから上を見上げると確かに残置のピトンが続いてはおり、ちょっとしたハングを越えたあとは傾斜が落ちて左カンテのほうにでられそうだ。で、その脆岩のハングを赤沼にリードせいと・・・・そういうことですな?
 こういう場合の逃げの状況判断だけは早いんだよね。さっさと予定のルートあたりまで懸垂下降をして、カンテを目指して右上。カンテにでたところでピッチを切る。
 さて佐野さんはすでに真っ白なご様子なので引き続き赤沼がリードしていく。
 カンテというよりは岩の摂理を積み上げたフェースに近く、カムも使えるし残置も多めで、ガバホールドのハングあり、ジャミングありでクライミング自体はかなり楽しめる。多くのホールドが叩けば乾いた音を返してくるという怖さだけをのぞけばの話ですが・・・
 振り返ればまだまだ雪の残る天狗岳。下を見れば北八ヶ岳の広大な樹林帯で緑がまぶしい。
 上に行くほど岩も硬くなっていき、カンテにでたところからは、きわめて楽しいクライミング3ピッチで登攀終了。

 岩壁を抜けるとすぐそこの稲子岳頂上までコンテで行き、ザイルを巻く余裕もなくしばらく寝そべって休憩。いやなんだか本当に燃え尽きた。

 海谷に行く練習で登ろうかなんて言っていた壁だったが、「海谷よりよっぽどやばい!」とは佐野さんの言。
 そして最後に重要な学びがありました。
 「登る前に飲むな。登ってから飲め。」
 これに尽きますな

(赤沼 記)

【記録】
5月16日
 6時登山口発〜9時岩壁取り付き〜12時終了〜登山口14時30分

【ガチャ】
 支点はほぼ残置&潅木&岩角利用で、各種カムを数回使用。

【Memo】
 南壁の左フェース、中央フェースあたりは顕著なクラックラインも多く見られ、岩質も比較的硬そうに見える。まだまだルート開拓の余地もありそう。。

【写真】
左/稲子岳全景
右/ガレの押し出しから取り付きへ


左/左カンテ基部
右/リード準備中の佐野さん
 

左/1ピッチ目
右/フェースからカンテに右上
 

左/2ピッチ目
右/南壁中央部
 

左/終了点
右/天狗岳を望む
 


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