■愛鷹/赤淵川「牛ヶ淵ゴルジュ(仮称)」(溯行)

2010.7.3
鮎島仁助朗、佐藤益弘、渡辺剛士
 ウワサのS竜峡を初突破する予定だったが、生憎の梅雨の季節。日本各地でゲリラ豪雨が発生している。前日午後から毎時間アメダス降水量をチェックしてみると、該当地域は完璧に豪雨の範囲だった…。「いやー、濁流ゴルジュはちょっとなぁー。普段は水流れていないんだけど、すごいぞーというところがあったら転進したいなー、でもそんな都合のいいところないよなー。」…と金曜夕方から、ネットサーフィンしてみる、、、、。
 あった。あった。あった〜〜。見つけちゃいました。。探し出しちゃいました。HP曰く「自然豊な渓流ですが〜(略)〜普段は水が無くこれから紹介する滝群の殆んどは枯滝状態です」とある赤淵川を。
 写真では、けっこうかっこよい写真があり、またゴルジュチックな雰囲気もある。ここだ〜ここに転進決定。もちろん、遡行した記録などはなく、また場所もよくわからず、ハズレの可能性も高い。が、なぜか山登魂はそんなこと気にせず、「あぁ〜面白そうだね」とノリがいい。ゴルジュ突破装備をもち、突っ込んでみることとした。

遡行開始点と終了点


下部ゴルジュの渓相
投げハンマー
 東名の富士ICを下りてから現地まではとても複雑で、完全にナビ頼り。桑崎集落を抜けて、桑崎林道(舗装)の適当な路肩に停める
。  ノリよく、ここまで来てくれたとはいえ、ナベは『どうせ2時間で溯行終了するんでしょ?!昼飯持ってきてないっす〜』みたいな感じで、気合を感じれられない…。まぁ、それでも「どうせ必要ないんでしょ?!」といいつつ、ウェット・ライジャケをザックに詰め込んでくれるので、そこはヨシとしよう。

 駐車地からフル装備を担いで作業道っぽいところから、沢へ降りる。すると、そこはゴルジュで、面白そうな淵を持った小滝が続いているところだった…。
 ン??「あれ、これけっこう楽しめそうじゃね??」一瞬にしてみんなの雰囲気が変わった…。ほら、みろー、すごいだろー。
 しかし、ゴルジュの途中に降りてきてしまった。ゴルジュとはいえ、どこでも入渓できる感じなのだが、どうせすぐに終わると思っていたので、「このゴルジュ地形、どこまで続いているんだろう…」と沢の右岸の作業道を下流に向かって探検してみる。っが、意外と意外、この面白そうなゴルジュ地形はずっと続いている…。作業道はなくなってしまったので、いちど車道に上がり、カーブミラーのある大きなヘアピンカーブのところから、再度降りてみた。すると、沢には10mぐらいの滝があり、その下はようやく平凡そうだった。そこまではゴルジュは続いていた。それにしてもこの10mぐらいの大滝…。滝つぼがデカイ。それにハングしている素晴らしい滝である。正直言って、こんな舗装林道脇にあるとも思いもよらないほどの滝である。不幸にも、弱点などなく、直登するならボルト連打しかない。

 この滝の上から溯行することにした。ちょっとずり落ちるよう(岩がヌメヌメなのよ★)にして滝上に降り立つ。さっきまでの「どうせ必要ないんだろうな〜」という雰囲気はどこへやら、「ありがたや、ありがたや〜」みたいに今回はまじめにウェットにライジャケを着込んで、さぁ溯行開始だ。
 側壁は高くないが、確かにゴルジュ地形。水量も豊富で泳ぐ。ワッフぅぅぅ〜。再度ゴルジュの小滝。泳いで突破…。いやー楽しい〜〜。でも、流れは強くないので、泳ぎはライジャケさえ着込めば楽勝である。また、小滝も“おいしい所”にガバがあるので、ロープは不要。っが、連続する〜。たっのすぅぃ〜。
 いくつかの淵と小滝を楽しむと、ゴルジュの奥に4mの滝がでてきた。これまでと違い、一見して容易な突破はムリ。ちょっと戻れば右岸から巻けるが、滝の左壁にいい感じにクラックがあり、途中からバンドが落ち口に向かって走っているので頑張れば登れるかもしれない。どうせ「すぐ終わる」と思っているので、せっかくなのでロープを出して鮎島リードで取付く。
 キャメ緑、エイリアン黄でエイドし、バンド…。うーん、このバンド、ヌルヌルでいやだー。というわけで、そのまま直上。ナイフブレードを安定しない体勢でぶち込み、あとはA0で抜けて木まで。いやー、個人的には痺れるクライミングだった。続いてナベにフォローで回収してもらうが、最初に決めたキャメを利きすぎてしまい、抜けないらしい…。サードのトーマスさんにフィックス&ユマーリングで回収してもらうが、やはりなかなか…。…ようやく10分後「取れた〜」とのお言葉が…。よかった〜。トーマスさん、ありがとうっす。

 抜け出たところは、駐車地から一番最初に降りてきたところだった。上を見るとなんか平凡そうだが、時間はまだ10時。「ま、5分歩いてゴーロだった、そこで切り上げようか?!」なーんて感じで、もう少し、登ってみる。
 っが、平凡じゃないじゃん。ゴーロっぽく見えていたが、実はところどころ、泳がされる淵があるんだな!ザックを持って登るのは厳しい淵、泳いで泳いで突っ張って登る滝、ミニザクロみたいなCS滝、ゴルジュ内のナメ…。確かに部分部分、平凡なゴーロがあるが、視界には次なるゴルジュを絶えず捉えることができ、飽きさせない。お、おもしろいぞ!

 そして、これまた淵を持ったCS2m滝。しかし、これは足場がなく、出だしハング。ま、簡単に右から巻けそうなんだけどね。それではつまらない。CSの突破といえば「投げハンマー」でしょ。せっかくなので、ナベがやってみる。が、なかなかうまく行かない。10投目。ようやくCSにかかった。…しかし、かかっているのはハンマーの、ピックではなくケツのハンマーの部分のみ…。…確実に、抜けるよね〜。にもかかわらず…
 「オトコ、魅せたるわ〜〜」
 と、なぜかナベが果敢につっこんだ…。内心「こいつ、バカじゃね?(失礼)」と思って後ろから見守っていたが、案外バッチリ決まっているらしく、アブミをかけても抜けない。恐るべし…。ただ抜け口は悪いらしく「た、たますぃぃ〜〜」と最後はジャミングを決めて越えていった。ガッツポーズ。す、すげぇぜ、なべ。感動したっっ!

 その後も、同じようなゴルジュが続いて、楽しんで、もう十分楽しんだなーというころで8m滝。これがインターネットで見た「牛ヶ淵の滝」というもの。それにしても、滝つぼがデカイ!左岸から巻く。この巻きは出だしがちょっと悪いが、少し歩くとしっかりした踏み跡があり、それをたどれば滝上に出られた。
 この上も、同じようなゴルジュが続いて、泳いだり、突っ張ったり…、大きな滝つぼを持った4m滝を右から悪いクライミングながらノーロープで越え、またしてもドカンと8m滝。…この滝つぼもデカイ!左岸から巻くが、この巻きはとても悪い!ちょっとスリルのある巻きだが、でもロープを使うほどではなく、滝上に出られた。
 さらに同じようなゴルジュが続いて、泳いだり、突っ張ったり…、もう勘弁してくれ〜というころに、またまたドカンと10m滝。…なんだよ〜。それにしても、この滝つぼもデカイ。デカイぞ、滝つぼ!今度は右岸から巻く。この巻きはいたって簡単だった。

 …当初は、{ゴルジュが途切れたら、やめようね〜}と話していたのだが、まったく終わる気配がない…。「ウェットスーツ、アツいなー、脱ぎたいなー」と思う時間すらなく、再び釜や淵に向かって浸かっていくわけで、全然やめられないのである。すでに、溯行から4時間は過ぎ、メシをあえて持ってこなかったナベは「やべぇぇ、めちゃめちゃ疲れた。明日のツイタテ、泣き入れさせてもらおうかな」とすら言う始末…。
 なんだよ〜。もうこうなりゃ、笑うしかない…あはははっ。完璧に、期待以上の渓相…。

 ようやく、ゴルジュ奥に堰堤2つが見えてきた…。「堰堤あるのかよ〜なんだよ〜」といいつつ、みんな「やっとこれで終了だ〜」と思ったに違いない。もちろん、ボクも思ったわけで「ま、あの堰堤にタッチしたら終わりにしようぜ」ということに。
 そうやって、ゴルジュを進むと、最後の最後に、泳がなければならぬ淵に1m滝…。…本当に最後の最後まで楽しませてくれる沢だネ!。泳いで、突っ張って、1m滝上に立てば、あとは堰堤。楽しませてくれた沢に感謝すべく、堰堤にKissして終了〜。

 右岸を上がって、少しヤブをこぐと、舗装林道だった。この舗装林道につくと、突然のゲリラ豪雨…。ちょうどいいときに終了したね〜☆。
 あとは舗装林道を15分(!)で駐車にたどり着いた。下山も近いっす。

 愛鷹は東京朝発日帰り圏内だろう。同じ日帰り圏内の奥多摩や丹沢でこのように楽しめるところがあるだろうか?小川谷廊下とか水根沢、丹波川本流とかの類なのだろうが、彼らと違うところは、クライミング残置物もガイドブックもないこと。新鮮な気持ちでこんなゴルジュ突破に望めるのは貴重である。
 確かに、この赤淵川だって、ゴミは多いし、パイプとかもあるし、また堰堤もあったりして、決して山深くもない。究極に卑下すれば、舗装林道の脇で流れるただの小沢にしか過ぎないのである。でも、それを良い方にと考えると、すぐにエスケープでき、下山も近いということ。このコロコロと天気が移り変わる梅雨時期にはこれまた貴重な存在でしょ。
 加えて、そんな「林道脇の小沢」という印象からは想像のつかないほど飽きの来ない渓相。次々と現れる淵、釜、そして滝、でかい滝つぼ…。連続するゴルジュは人間様には面白いほど適度なレベルで突破可能だし、また滝つぼも奥多摩でも丹沢でも見たことがないほどデカい!そして疲れた。本当に泳がされ、図らずも「ガンバ」してしまったし、ラインを見てエイドしてしまったし、投げハンマー突破もしちゃった…。あー半日だけだけど、充実したーーー。

 「水のきれいな景ヶ島渓谷だったね☆」
 遡行した三人の共通見解である。ま、両方行けばわかるよ、きっと。これが真っ当な評価だと思うよ☆。どっちも楽しいこと請け合いだが、ま一般受けするのは赤淵川ゴルジュかなっ。
 今後の課題としては、まず巻いてしまった3つの滝(入渓点の滝も合わせると4つ)の直登かな。まー、ボルトレスでは厳しいだろうけれど。また、我々は適当なところで入渓し、堰堤で終了としてしまったのだが、桑崎地区から入渓するとさらにゴルジュがあるかもしれないし、あの堰堤の上もゴルジュが続いているかもしれない。そこは、後続の方にお任せしよう。
 なお、この沢は桑崎地区の水源でもあるらしいので、もし足を運んだとしても、決して汚さぬよう心がける必要があることを追記しておきます。

 最後に、突発的な計画変更に、ノリ良く、お付き合いくださいましたトーマスさん、ナベ。まことにありがとうございました。感謝感謝でーす。

2010.7.5 鮎島 筆

【記録】
7月3日(土)曇
 駐車地0800、(入渓点さがし)、溯行開始0830、堰堤1240、林道1255、駐車地1310

【使用装備】
 キャメロット(#0.75)、エイリアン(黄)、ナイフブレード、アブミ、ユマール、ウェットスーツ、ライフジャケットなど
※ロープは50mもって行ったが、30mあれば十分。
※ずっと浸かりっぱなしなのでウェットスーツ・ライジャケはあったほうが良い。
※岩質はヌルヌルである。フェルトが利くかも知れないが、鮎島はずっとクライミングシューズで溯行(なんとかなる)

【写真】























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