西伊豆/波勝崎海金剛正面壁/スーパーレイン


※標準スタイルは高橋さん記述、イタリックはナベ記述。なお、今回正規の1〜2Pをまとめて登ったため、記録として参考にする方は、3P目→正規の2P目、4P目→正規の3P目…と読み替えて下さい。

期間:2010.年4月10日 前夜発日帰り
山域:西伊豆/波勝崎海金剛正面壁
ルート名:スーパーレイン(SUPER RAIN)
形態:クライミング(トラッド―マルチピッチ)
隊員:高橋、渡辺(治田・大部も同日に前後して登攀、アプローチ及び帰京は一緒に行動)

はっきり言って思ってたより難しかったです。
ギリギリでした。
ですが頂上に抜けるという意味では不本意に積み重ねたアメリカンエイドの技術と一式揃えたカムをもってすれば岩さえ脆くなければ我々の範疇に収まるのです。(高橋)

4/9 21:20西国分寺→中央道経由で雲見集落

某テンバで呑んだくれる(ここはオススメよ)。

4/10 テンバ→雲見オートキャンプ場→水平道→登攀→下降→帰京
土曜というのに我々しかおらずクライミングパラダイスでした。未明の雨でやめたのかな?
 
雲見オートキャンプ場で駐車場代500円を支払い、もと来た道を5分ほど戻って「登山者の方へ、このあたり駐車禁止」の看板から踏み跡とテープを辿って30分ほど歩くと海金剛。近くていいね。
高橋-渡辺組と治田-大部組に分かれて登攀開始。グレードは体感です。
このくらい見積もってたほうがいいと思います。


1P(ナベ): ロープいっぱいに伸ばしてブッシュまで。ナッツをきめてトラバースが怖いというか難しい。これで5.8?半袖で充分な陽気と裏腹に4人の前途に不安という暗雲が漂う。
1P目 5.9 ナベリード
本来の1〜2P目をまとめて登る。簡単な凹角からフェイスにぶちあたったところで本来は右にトラバースするらしいが、資料などから「ナッツが決まるところで右」と思い込んでいたので、このフェースも直上。コーナーにナッツを決めて悪いスラブを右上し、キャメ2番をきめてから下がり気味トラバース。最後はありがたい木の枝を掴んで本来の2P目終了点へ。


 
2P(高): ルーファイに悩む。ブッシュ入口のあたりからもクラックが上部に延びているがよりすっきりした割れ目を求めて灌木の中を右上10Mしたところからスタート。途中のテラスからの傾斜したフィンガーは足がなくてむずい。限界グレード。これで5.9とは・・・もっと厳しいピッチがこれから始まるってことかあ。眼下の海はべたなぎのコバルトブルーに底石が透けて見える。
2P目 5.10a/b 高橋リード
コンテで樹林帯を10m進んだ後、立ち木に目印スリングのあるあたりから、つつじが美しい壁の弱点ぽいクラックにとりつく。城塞に向かって登行していく高橋隊長の勇姿を見よ(結構苦労して上がってたが)。
フォローしてみるとクラックが細くて指が入らない。体感10a/b。初登ネイリングも納得。つーかハンマーがあったら間違いなくハーケンを叩き込んだであろうピッチ。カムは決めづらいが、決まるところは決まるし岩は硬いので危なくは無いが、ゴマカシが効かない。



3P(ナベ): 一番見栄えがし、難しい。入口にカム固め取りしてレイバックで突っ込む。ハンドジャムして左足クラック、右足壁にだしていくのかな。経験のない我々はレイバックしか考えられずつまりプロテクションはとれず、フォール!。フォールしてしまえばプロテクションとれます。アメリカ〜ン。上部はハンドジャムばちききからフィストをスルーしてワイドに広がってしまうので少し困る。
3P目 5.9 AA0 ナベリード
右上するクラックをレイバックから、松ノ木を経てワイドクラックを登る見栄えのするピッチ。
右上するレイバックのバランスが悪すぎて思いっきりフォールしてしまった。諦めてAA0連発。
カムはバッチリ決まるし岩は硬いが、はっきり言ってむずい。フリーなら10bは欲しい。下部ではエイリアン&ナッツ、上部ではキャメC4の4〜5番使用。



4P(高): 先人クラック。傾いてない分2P目より易しいフィンガー。快適。
4P目 先人クラック 5.10a 高橋リード
見るからに傾斜が強いが、取り付いてみるとフィンガーというかクラックをカチ持ちできて見た目ほど難しくは無い。ただし岩がだんだんやわらかくなってきていて、落ちるとちょっとヤバそう。核心は、第一間接までしか入っていない指がズリッと滑らない事を信じてのプロテクションセットか。暑くなったら無理と見た。



5P(ナベ): 高橋的には出だしのオフウィズスが大変だったがナベは得意系らしくあっさり。しかし上部オーバーハングを右に抜けたもんだから岩を抱えたまんま落ちそうだし、ザイルがスタック。何やってんだよ。そこは左だろうがよ!フォローまで怖えーじゃねえかよ。
5P目 5.9→W- ナベリード
城砦の右の弱点を攻める。
出だしをボルダームーブで快調に突破したものの、フレークが浮いていてカムを決めても全く安心できない。ハングから左に抜けるそうだが、ムーブがわからず、右に出る。足元のキレ落ちたフェースをトラバース。ガバばかりだが中には浮石がガッチリはまっているだけというものもあった。後半はどう考えてもデジマルよりRCCグレードW-が適当。出だしは5.9くらいか。
ちなみに同時に登ったH田さん-O部君パーティも、出だしで相当苦労したらしい。(が、上部は簡単に左へ抜けたらしい)。得意不得意の差か。



6P(高): ランナウトが全てです。途中のハーケン(1P出だしのカムの死骸を除いてルート中唯一の残置物。確保支点は除く)に納得。極小ナッツも入らない。が、大部は納得できずあのハーケンにランナーを取らずにリードしてきたそうだ。アンビリバボー!
6P目 5・10a→W+ 高橋
出だしがふざけるなって感じの垂直クラック。実はジャムは1手目だけであとはガバなのだが、それに気付かないと厳しい。ワイはジャムで行こうとしてフォローなのに1テン。ムーブに気付いたら楽勝だった。
上部はカムが決まるクラックが無く恐怖のランナウト(W+くらい)。しかもあんまりホールドがよくない。唯一の支点は残置のピトンのみ。
ちなみに、大部君はこのピトンに思想上の理由(残置無視)からクリップしなかったらしい。



終了〜
終了点から懸垂4発で取り付きへ。
以上
 
ナベ・高橋組の顛末です。

<感想/高橋>
また行ってもいいかも。ピッチの順番変えて。
それだけ楽しく、かつ課題を与えてくれた。

<感想/治田>
ハルす。Lの申すとおり、歯ごたえ、いやてごたえ十分でワイにはおつりの来るほど楽しめたクライムデイでした。
んま、報告として、同日同ルート・別パーティでまた書くのもなんだし、大部勝負師が、ぜひ書きたいというのならそれも良しですが、ワイは追記とします。
 
まったくもってクッラクは難しい。手も足も体の動きも決まられず、悶絶の連続だ。
ワイは奇数ピッチをリードしたが、相棒の大部偶数ピッチの方が格段に難しかったな。特に2ピッチはセカンドでもビビリまくりで、
安物のシューズはズリズリ滑り、冷や汗は出るわ、やばくなって「は、はってくれー」を数度連発。
先人クラックも繊細なクライムで小ハングの乗り越しの先が微妙なバランスを強いられる。核心2ピッチ以外でも上部もそれなりに悪く、ジャムが決まらないので、離陸できないし、次の体は上がらないし、苦労するは、体はこするは、時間は喰うは、で楽しさも超絶。何とか、ノーテンの意地で登れたけど、ワイにはギリギリ限界すよ。
余裕はゼロでした。
 
でもね、また行きたいんだもーん。
今度はトリトンか、近くの直上裏参道か、黒潮ロックだもーん。
いや、Sレインだって、もう一度行っても良しですy0。それぐらいいいルートだね、ほんま。
クッラク登りが、よくわからないということが、よーくわかったので、修行は必要。少し積んで、また再訪すな…。


<感想/ナベ>
大して脆くは無いし、支点もバッチリ取れるけど、難しい。
特に2P目(正規の3P目)は、「いざとなればAA0で」というゴマカシが効かないという意味で厳しい。
クラックから支点をとる技術が大前提。ないと死にます。
ジャムはハンドとフィストができればOK。できなくてもなんとかなるがそうすると上記グレードからさらに1ランクアップする。
核心が先人クラックと喧伝され、いかにもフィンガージャムが大事そうだが、実は先人クラックはフィンガージャムというよりもクラックのカチ持ちなのでジャムは必要ない。
それよりも、フェースを登る力と持久力、パワー(今回の2〜3P目ではレイバックが有効)が必要。
ギアはBDストッパー1S、エイリアン1S+マスターカム3つ(#1〜3)、C4キャメ0.5〜3番2S+4〜5番各1。ザイルは8mm×50mのダブル。
過不足無かったと思う。うまい人ならキャメは0.5〜5を1Sで十分。
マイクロナッツも欲しかった。ヘキセンを持っていったが使わなかった。


<時間>
9:30ごろ登山口 10:00取り付き 15:15終了点 16:15登山口


黒潮ロック&雲見崎 スーパーレイン1P目バリエーションのトラバース
黒潮ロックと、奥に見える雲見崎&千貫門 1P目ラストをトラバースする高橋隊長。木の枝が無いと無理。
スーパーレイン2P目 スーパーレイン2P目終了点
2P目をリードする高橋隊長。見た目よりはるかにむずい。 2P目終了点でナベを迎える高橋隊長。
スーパーレイン3P目
この二人は、どこで撮っても同じ顔だな。 3P目。やたらカムを決めているのはAA0だから(笑)。
先人クラック

スーパーレイン最終ピッチ

先人クラックをフォローするナベ。 最終ピッチをリードする高橋隊長。

スーパーレイン最終ピッチ2

最終ピッチのランナウトを突破しガッツポーズの隊長。 最終ピッチをリードしてきた大部。最後のピトンすら無視。
治田隊。 高橋隊。
懸垂するナベと、下でハイライトをフカす隊長。 登山口に降り立ち、セルフタイマーで記念撮影。右端は雲見崎。


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