■北ア/横尾尾根〜槍ヶ岳〜大喰岳西尾根下降

2011年12月24日‐28日
L落石、伊佐見(記録)
【概要】
12月24日
 小淵沢駅から松本駅に電車で移動。松本―高山間を走る濃飛バスで松本から中の湯へ。釜トンネルから歩き、上高地経由で横尾の冬期小屋。冬期小屋入口には流水があり、採水可。
12月25日
 橋を渡り、横尾沢左岸を詰める。結構アップダウンがあり、疲れる。屏風岩正面が見え出す頃、一のガリー、二のガリーを横切り、少し離れて三のガリーと出合う。高度差400m。三のガリーは最初、右岸側の尾根が疎林なので登りやすかった。コルに着くと三のガリー二俣が見えるので、沢に下りて左俣を3・4のコルまで詰める。両岸、特に右岸側は露岩となって切り立っているので雪崩が起きると逃げ場が無い。4峰への登りは小さなクーロアールをつなげて登っていく。フィックスロープがあるが、今回はほとんど埋没し、あまり利用できなかった。
12月26日
 4峰(2323m)までクーロアールをつなげる。5峰(2520m)より一つ手前のピークたりで森林限界を抜ける。抜けた後は北からの強烈な風が吹き抜ける。コルに幕営は危険。そこから高低差はあまり無く、5峰手前で急な登りがある。ここから横尾の歯までは広い稜線である。二重稜線状となっており、この頭を6峰とする(日本登山大系を参考にする限り場所がよく分からないため)。
12月27日
 横尾の歯まで登る。横尾の歯は左へそしてまた真っ直ぐとクランク状に曲がっている。すぐクランク状を過ぎると1つ目の岩峰を左から巻き、2つ目は右から、3つ目の上付近でロープを出すのを止めた。7峰(2729m)を過ぎ、アップダウンを繰り返すと8峰がそそり立っている。正面のクーロアールをツァッケで立ちこんで登る。ここから天狗のコルへ下り、270mほどひたすら登れば横尾の頭へ出る。ハイマツが多く、踏み抜きが多いので、出来るだけ右よりのしっかりクラストしている部分を歩くと良かった。主稜線を左へ30分ほど歩けば南岳小屋。
12月28日
 主稜線上を槍ヶ岳まで歩く。通常は風が強いため積雪はほとんどなく、クラストした尾根上を歩く。中岳への登りで少しラッセルがあり、下りは梯子である。大喰岳へ登り返し、もう一つコルを過ぎると肩の小屋である。槍ヶ岳へはチェーンが出ていたのでロープを出すほど難しくなかった。
 帰りは大喰岳西尾根であったので、肩の小屋と大喰岳の間のコルから大喰岳北西面をトラバースしてから西尾根を下った。ラッセル跡がないと尾根基部から槍平までのラッセルで大変な苦労をすることになる。

横尾尾根取付きに向けてラッセルをする

横尾尾根下部をラッセルする

横尾尾根を順調にラッセルする

横尾の歯まで目前

横尾の歯通過中@


主稜線上

山頂にて
【報告】
 どうだ!この充足感は!いくら厳冬期の槍ヶ岳入門ルートとはいえ、「厳冬期絶好調クリスマス寒波中オールラッセル完登」だ。
 かと言って、我々は特に無理をしたわけではない。落ちている幸運を一つずつコツコツと丁寧に拾っただけだ。もう少し拾い損ねていれば槍ヶ岳は登れなかっただろう。我々には最低限の「運」が与えられ、それを活かす「能力」があった。
 僕は大学生時代からこういうAscentをしたかった。


●12月23日<移動日>


  小淵沢駅集合。準備段階で落石さんが「50Lほどのザックにパッキングする」とか言ってたし、落石さん=軽量化と思い込んでたもんだから、僕も50Lほどのザックにテント、シュラフ、食料その他を無理やり突っ込んでみた。食料はもちろん最低限だ。今回で2回目の使用となる僕の2-3人用テントが予想以上に激しく凍ってカサ増ししてしまったら、ザックに入りきらないかもしれない、そんな不安があった。
 しかし、落石さんのザックは僕のよりもひとまわりくらい大きかった。あれ?同じ50Lぐらいのザックでもこんなに違うもんなのね。重量は29kgらしい。だとすると僕のザックは20kgもないだろう。「俺燃費悪いから、1食でα化米2袋は食べるよ。伊佐見こそガッシャー80Lで来ると思ってた。(落石)」だそうな。他にも防寒着の大きさが3-4倍違うなどによってこれほどの重量差になったのだが、それは最後に付記する。


●12月24日<入山>


 松本はカラッと晴れ。松屋で急いで朝食を食べて、バス乗車。釜トンネル入口にはまだ警察の方が居られなかった。
 トンネル出口のアスファルトにはまだ積雪が無かった。上高地に着いてからはどんどん雲が厚くなり、横尾手前で風が強くなり、地吹雪となる。
 「トレース無ぇー(イサミ)」となったのだが、横尾の冬期小屋にはS大学山岳部を始め、3PTもいる。どうやら地吹雪でトレースが埋まってしまっていたようだ。
 落石さんはここまで2L水+飲み水を担いできたのだが、流水があり、無駄な苦労となってしまった。
 今日は持ち寄りキムチ鍋。武井さんみたいに上手く味付けできる自信が無かったこともあり、市販のスープをつかったので外れなく旨かった。生野菜もこの日からしばらくお預けだ。
 大学山岳部に話を聞くと、どうやら横尾尾根に取付くらしい。「こりゃ、ラッセル人数増えたな(イサミ)」と思っていたのだが、「明日5峰近くまで行きたい」といったら「えぇ!?早いですね!」とか言われた。早い?どうやら彼らの頭の中には末端から取付くことしかないらしい。恐れ入った。まぁ我々も雪の状態によってはガリーではなく、最低鞍部からという選択肢もあるわけだが・・・


●12月25日<横尾小屋〜三のガリー〜4峰手前>


 2時ごろ大学山岳部が起き出して、4時ごろ静かに出て行った。0430に起きたかったのだが、4時ごろ別のおばさんPTが起きるなり、「腰痛ぁーい」などとやかましいので僕だけ起きてしまった。落石さん爆睡。僕も昔はこれくらい図太くありたいもんだ。ラーメン食ってちょっと遅れて出発。
 橋を渡ってからしばらくすると右に分かれたトレースがあり、山岳部の彼らはここから取付いたようだ。そう、つまりここから全部我々がラッセルすることになる。
 いつまでも平行移動かと思いきや、山腹を登ったりするのでかなり疲れる。ラッセルは膝以上がずっと続いた。一、二のガリーを過ぎ、またしばらくラッセルにあえぎ続けると三のガリーに到着する。ここまで2時間。予定では1時間のつもりだったが、2倍もかかってしまった。となると今回は3・4のコルまで行ければ万々歳で、最悪は途中で支尾根に上がって、これまた最悪なビバークとなるだろう。そんなことを思った。弱層無し。
 三のガリーは当初右岸側を登っていたが、それよりも左側の尾根が疎林で登りやすそうだったのでそちらに変更する。でも、こちらもなかなか苦しかった。持っていった竹旗3本の内1本がココで折れる。コルに着くと右手の三のガリーがよく見える。尾根はココから急激に斜度を上げ、密林となっているので、ガリーに滑り降りココを詰めることにした。ここでも弱層テストをしたが、多分弱層は無かった(どうにも折れないんで、一番根元に力を入れたら、その根元で折れたんだがこれって弱層じゃないよね?)。
 苛烈なラッセル登高となった。雪質はパウダー、腰以上。下手なラッセルをするとどんどん埋まっていき、全然進まなくなることもあった。大変苦しく、どんどん時間が過ぎていくので焦りが出てきた頃、「ダブルボッカしない?(落石)」という指令があり、落石さんから空身ラッセル、彼のザックはその場に残置というスタイルとなる。先頭はどんどん進んで行ける!しかし後続の僕はあまり踏み固められていない雪面を追いかけることになるので苦しさはラッセルしているのと変わらない。それでも普通にラッセルするよりちょっと早いような気がした。
 右岸がさらに切り立ってくる。先ほどから雪も降っているので、右岸からチリ雪崩がサァーと降ってくる。初体験。人生でチリ雪崩を頭に受けながら登るなんて経験をするなんて思いもしなかった。落石さんが標高差40mくらいを稼いだところで交代。後ろを振り向くと残置したザックが見えるかどうかといったぐらい離れていた。そこへ一人戻っていく落石さん。「戻ったら、チリ雪崩でトレースが埋まってた(落石)」らしい。やだねぇ。ここから僕の番で荷物を置いてラッセル。ゴールのコルは見えているのだが、意外と遠い。雪面には5cmほど新たなパウダーが積雪しているのが分かった。危険?しかし中途半端なところでラッセルを終わらせるわけには行かないと思い、コルに着く頃には標高差60mほど登ってしまった。当然どこに自分のザックを置いたのか分からないほどになってしまう。これをまた下る・・・。一人でガリーを下るのは怖いもんだった。
 コルは2・3テンを立てられるほどの大きさがあったが、あと30分ほど進んでからでもいいだろうということで進んだ。尾根をちょっと進むとそれほど凹状になっていない狭いクーロアールとなる。雪がついているので登りやすいかと思いきや、それほど深くなく掘ると岩や土が出てきた。アイゼンのほうが登りやすいのだろうがワカンを外すのが面倒くさく、そのまま登った。結構難しい。払いどける雪が落石さんにかかってしまって申し訳ないが仕方が無い。途中フィックスロープが出ていたりして、ちょっと安心。意外と時間を食ってしまい、下手すればココをもう一度下りなおしてコルにテントを張らないといけないかもしれないなどと思っていると、クーロアールを抜けたところに偶然良いテン場発見。ギリギリ4テンが張れる程度だろうか。急いで幕営。なかなか良い場所だった。
 この日はカレーうどん。ベーコンブロックを持参していたので、大ぶりに切って食らってやった。落石さんはそれに加え、身欠きニシンやらフランスパンやら餅やらを食っていたような気がする。ちょっと貰ってしまった。明日からラーメンとα化米の組み合わせが続く。


●12月26日<4峰手前〜二重稜線の頭>


 どうしても出発が遅くなる。4峰までのクーロアールはブッシュを掴んでやはりワカンで登った。間で何度もラッセルを含むことと、昨日ほどの難しいクーロアールが無かったためだ。落石さんは荷物が多く、大変そう。4峰からは高低差が無くなり、それほど時間がかからなくなる。5峰の1つ手前のピーク(5峰だと思っていた)から森林限界を抜け、凄まじい風が吹き出す。すぐ先のコルでは地吹雪が消防車の放水のごとく吹き上げてきている。山岳部時代の後輩を歩かせすぎてこんなゲロ吐いていたなぁなんて思い出してしまった。ここまでに結構時間がかかっていたのだが、次の5峰(上述どおり6峰だと思っていた)も越えることにする。越えた先の6峰らしきなだらかなピークで幕営。それなりに頑張って暴風壁を作ったのだが、強風のため翌朝壊れていた。
 晩飯はα化米。落石さんは2食分、僕は1食分。担げる人の特権か。


●12月27日<二重稜線の頭〜横尾の頭〜南岳小屋>


 二人とも胸元で色々と乾かしながら寝たので、朝起きるとシュラフカバーが凍っていた。外はまだ風が強く、また非常に寒い。テント内で-10℃ぐらい。横尾の歯方向もガスが立ち込めており進む気にならない。それでも3回ほど出発しようとテントを出るのだが、「寒ぅ〜無理」と諦めてしまった。そうこうしている内に僕の「飢過ぎヘルメット」をセルフもせず、外に出しっぱなしにしていることを忘れてしまっていた。当然飢過ぎメットは風にあおられた。
 そして4回目の出発。「よぉし、もう行くしかない。あれ?メットが無い・・・(イサミ)」
 愕然とした。「え?えぇ!?あんなに愛着がわいてたのに、そんな・・・。俺はなんてことをしてしまったんだorz」罪悪感とともに半ば諦めていた時、「あれ、あの木の下!(落石)」
 Σ(゚Д゚ υ) !!!
 目を下にやると、かすかに黄色いものが!思わず走り寄った。あった!ちゃんと「飢過ぎ」と書いてあるじゃないか!俺のメットぉぉぉぉぉぉぉぉ 。・゚・(ノД`)・゚・。
 ヘルメットも見つけ、ようやっと出発準備。ハーネスが凍って装着に時間がかかる。ヘルメットも冷え切ったためかあご紐がパチンと締まってくれない。使い物にならん!なんだこの糞メットは!
 僕はヘルメットを装着しないまま横尾の歯を登ることにする。テン場からすぐ先が歯だった。ここからずっとアイゼン装着。1P目は落石さんリード。クランク状を越え、岩峰基部でビレイ。2P目は僕が第2岩峰を越え、3P目は落石さんだった。落ちたらめんどくさいことになりそうだが、全然難しくない。4峰への登りのほうが難しいほどだ。
 アップダウンを繰り返し、8峰は岩峰の間に走るクーロアールを登った。中間に露岩があり、ピリッとしていた。面白い。ここからは天狗のコルに下る。北風がとてつもなく強くなってくる。雪庇は未発達。
 ここから270m怒涛の登り。しかも北風がかなり強い。時に耐風姿勢で耐えながらヨロヨロとすすむ。耐風しながら雪面を観察すると雪が吹き飛ばされていくのがよく分かる。積雪はほとんどないが、尾根上はハイマツの上にクラストした雪が乗っているだけなので、誤って進入すると大変なゴジラ落しとなる。見上げるとハマってくださいと言わんばかりにポコポコ穴が開いている。北面はクラストしているので比較的歩きやすかった。
 横尾の頭が近くなるとハイマツ帯を抜け、傾斜が増してくる。風は全く弱まらず、完全防風していなかった僕の頬・鼻がピキピキ痛くなってくる。これは皮膚表面が軽い凍傷になってしまうなーと思った。一部露出している梯子を登り、横尾谷までずーっと続いている斜面上部の登高が続く。ツァッケで立ちこんで登る部分もあれば、ハイマツがまた出てきてしぶしぶトラバースといった部分もある。
 この辺で後ろを振り向く。落石さんが見当たらない。時間的に焦りつつあったこともあり、飛ばしすぎたかなーと思っていたのだが、それにしても遅い。戻って確認は面倒くさいので「おちいしさーん、おちいしさーーーん(伊佐見)」と呼んでみるが全く返事がない(強風で聞こえなかったのだろうが)。悪い予感がした。何度呼んでも(当然)返事がないので、止むを得ずバック。滑落してたらどうしようと本気で焦っていたが、しばらくするとひょっこり雪面から姿が見えた。急な雪面で苦労していたらしい。安心してなぜか吐き気がした。
 ここからは間を空けないようにしてすすむ。主稜線より東側なので登りの最中は太陽が見えなかったのだが、ここに来て夕焼けの強い光を目の当たりにする。ゴーグル内で光が分散してキラキラと虹色が見える。こんなに感動的なものか。頭付近には雪庇が発達しておらず難なく越え、横尾尾根終了!しかしこんな強風の雪が全くない場所でテントを張るわけにもいかないので、南岳の避難小屋に行くことにする。小屋まで30分とか記録には書いてあったが、左の南岳は想像以上に威圧的だ。地形図を見ると意外と遠く見え、暗くなるのも覚悟したが主稜線は雪が少なくて歩きやすいのか記録通り30分ほどで南岳避難小屋に着いた。
 小屋は鉄板2枚で蓋をされていた。安心。トイレも付属していて超快適だった。おまけに誰かがウィスキーまで置いてくれている!これ荷揚げした物じゃないよね?ちょっと拝借してしまった。ラジオを聞くと、日本海側の降雪も明日にはついに治まるらしい。ということはこちらも明日は快晴無風となるかもしれない。


●12月28日<南岳小屋〜槍ヶ岳〜大喰岳西尾根〜新穂高温泉>


 夜中何だかカサコソ音がしているなとおもっていたら、冬用デポのスチール灯油缶のふたが開いており、なかの紅茶パックなどが見えていた。ネズミだろうか?もともと開いていたのだろうか?
 飯を食って小屋の外へ出ると朝焼けが眩しい!快晴だ。遠く富士山も見えた。昨日とは打って変わって風が弱い。平らなピークの南岳を再度登頂し、中岳の東側面をトラバース。そのまま中岳を登らなくても主稜線を歩けるのかと思ったのだが、そんなに甘くは無く、左のピークまでラッセル。ここだけ吹き溜まっているようだった。中岳から急な斜面に設置されたはしごを3本くらい下り、大喰岳へ登り返す。槍ヶ岳がはっきり見えるもんだから、写真を撮りまくった。
 その先の肩の小屋に着くと、大学山岳部らしきPTが槍ヶ岳登頂を終えて懸垂中で、さらにもう1PT大学山岳部らしき団体が小屋から出てきて登頂の準備をしていた。我々もロープを取り出し、お先に槍ヶ岳へ向かう。気持ち悪いぐらい無風。昨日までの風はなんだったのか?途中危ない箇所があればスタカットで登ろうと思っていたのだが、チェーンが雪に埋まることなく露出していたので、結局ノーロープで登頂。やったぞ!僕はこれで2回目の槍、落石さんは初槍ヶ岳登頂である。ゆっくり頂上を満喫。下降はせっかくロープを持ってきていたので1回懸垂したが、あとはクライムダウンで下りた。合計30分くらい。肩の小屋にてまた大休止。
 下降のため大喰岳北西面をトラバースし、西尾根を下った。中崎尾根ならトレースがあるのになぜかこちらを下った。当然下部から猛烈なラッセルとなる。下っても下ってもきりが無い。尾根を下りきると槍平まで標高差が無いので、さらにラッセルはきつくなって進まなくなった。右手の中崎尾根には悠々と下っていく登山者が見える。あ〜あっちを下ればよかった。
 大変時間を掛けて槍平に着く。ここで泊まってもよかったのだけれど、ギリギリ新穂高温泉で温泉に浸かれるのではないかと思い、今日中に下山することになった。雲間に見える滝谷を過ぎ、白出沢を越えること日没となり、18時前に新穂高温泉に着いた。温泉に入りたかったのだが、下山連絡やどこにテントを張るかなどチンタラしていたら唯一開いていた温泉「中崎山荘」さえ閉まってしまい、途方にくれてしまった。もう諦めて寝るかと思っていたのだが、中崎山荘の女将さんが現れ、平湯なら21時まで温泉が開いているからそこまで送ってくれるということになった。えっ?いいんですか?全く人生どんな巡り会わせがあるものか分からないものだ。
 平湯では「平湯の森」温泉(500円)に入り、バスターミナルで一泊した。


●12月29日<平湯〜松本〜東京>


 バスに揺られ、朝からにごり酒を飲んで帰った。

【装備】
・僕個人のものだけだが、シュラフはイスカのダウンシュラフ(-15℃対応)、防寒着はモンベルの一番薄いダウンジャケット(350ml缶で収納できる)だった。今回、外気温は明け方に-20℃くらいまで下がったと思われるがテント(エスパースマキシムナノ2-3人用+内張り)の中であれば落石さんはどちらも僕の3倍近い大きさであり、重量差に少なからず影響した。
・アウターはミズノのカッパを使用したが、腰を曲げると背中部分が露出してしまい寒かった。その下はジャージとウールシャツとインナーウェアで問題無し。しかしウールのインナーが欲しい。またヘルメットの上からフードを被れない上、頬の部分の生地が少なく、防風性に欠けていた。やっぱり冬用のハードシェルが欲しい。
・顔の防風&防寒はバラクラバと帽子、ゴーグルで対応したが、僕のバラクラバは鼻と口の部分に穴が開いていないので覆っていると苦しかった。そのためほとんど口の下まで引き下げていたのだが、寒風によって頬・鼻・唇が凍傷になってしまった。たぶん皮膚だけだから急激な日焼けと同じようなもんで、剥がれて治ってしまうと思う。しかし鼻の穴の中まで凍傷になって鼻腔が狭くなり、鼻糞をほじれなかったのは辛かった。バラクラバは落石さんに言われたように自分で穴を開けて改造してみようと検討中。手袋は3枚重ねて使うと十分に暖かかった。
・ストックを一応持っていったが、それほど必要ではなかった。
・ガス缶は一つジェットボイル(-10℃対応)を持っていった。さいごまで使ったつもり(振っても音なし)だったが、家に帰ってみるとまだ結構残っていた。今後、雪山では使わない。やっぱりEPIの-25℃対応がいいんだろうけど・・・。

【ルート】
・三のガリー
 危険は承知だった。本格的に雪が降る前に登りきったことが良かったのだと思う。しかし危険なガリーを早く抜けるべきだった。標高差400mとはいえ、5-6時間はかかりすぎ。今回の状況で最も良いルート取りは、最低鞍部へブッシュを漕ぐことだったのだろう。このほうが緩やかなラッセルが続くため、時間的にも早かったのかもしれない。森林限界まで悪天の中進むのは良い判断だったが、個人的には森林限界を抜けた後、多少進み過ぎたように思う。5峰を過ぎた後すぐに設営。防風壁の作成に力を入れれば、気分的に安心だっただろう(どうせ強風に変わりは無いので)。
・最後の登り
 山岳部時代なら進まなかっただろうが、我々は富士山で同様の状況だったことを思い返し前進した。これも経験を伴った良い判断だったが、出発が10時過ぎと遅すぎた。準備に時間がかかりすぎ。ハーネスは凍らないように予め温めておくべきだった。
・大喰岳西尾根までのトラバース
 落石さん発案の最後の大喰岳西尾根までのトラバースはいい考えだったが、普通はトレースのある中崎尾根を下降ルートにとるのだろう。しかしこれはマゾか?そうでないのか?という趣向の問題なのかもしれない。

【記録】
12月24日(土)午前晴、午後より曇で一時強風。夜間軽く降雪(積雪はほとんど確認できないほど)
 小淵沢駅0650、松本駅0805、バス乗車0835、中の湯0950、上高地1138、横尾1515
12月25日(日)曇のち雪。稜線上では時に風強し
 起床0427、小屋0618、三のガリー出合0822、二俣手前1000、3・4のコル1450、幕営1540
12月26日(月)曇。樹林を抜けると暴風。
 起床0430、テン場0730 4峰0950 5峰1430? 二重稜線の頭付近で幕営1510?
12月27日(火)曇のち晴(10時頃より)。風は依然、強し
 起床0400、テン場1000、横尾の歯1040、横尾の歯通過完了1230、8峰1340、横尾の頭1558、南岳小屋1630
12月28日(水)快晴。風弱し
 起床0427、発0630、肩の小屋0930、槍ヶ岳往復1040、<大喰岳西尾根>、槍平1430、新穂高温泉1740、平湯1930



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