■北ア/五竜岳東面GX稜(登攀)

2013年4月14日(日)
L山崎、伊佐見
 GVのあまりの充実っぷりに昨日いちんち放心状態でした。
 小鳥のを愛でる心優しいGUパーティとは対照的に、さえずられては「気楽でいーよな」、飛ばれては「空を飛べるのがそんなに自慢か」と心すさみまくりのGVでした。

GX稜概念図

きのこ雪(背後は奥壁)

GX稜を登るGX隊(GUから遠景)

さいごの絶壁(C沢奥壁の左面)
 2時半起床、4時前出発。
 あんまり寒くない。


 昨日の踏み跡をたどり、シラタケ沢に降りる。
 もなか雪で膝までのラッセル。スキー隊は苦労しそうだが、現在我々も苦労中。このままラッセルを続けて高度を下げていくと登り返しにえらい苦労しそうなので、GVI・V中間稜末端付近で右岸斜面にあがる。

  ……をひ、どこに向かって直上してるんだ伊佐見。全力疾走で中間稜に突っ込んでくんぢゃない!

 深めのラッセルトラバースをしているうちに夜明け。昨日じっくりと観察したGVが見えてくる。ああよかった。実は、闇ルーファイがけっこう不安だったのは秘密だ(特に伊佐見に)。

 急な雪壁をこなして稜にあがり、やっぱり膝上ぐらいのラッセルを継続。


 む、あれはGU隊。こっちの方が高いやん。これならば15時に帰れる(かもしれない)と高度を上げる。


 第一の核心は右からの支稜との合流点。キノコ雪状の小ピーク。
 いったん降りて 左の小ルンゼを登れば、という意見もあったが、下降距離があるのと雪崩が出ているので却下。切れ落ちた雪壁からブッシュづたいに左の雪稜に出て、てっぺんでスタンディングスノーバービレイ(山崎リード)。

 そのあとも小キノコ雪で土木工事をしたり、のんきに歌っている小鳥に悪態をついたりしつつ高度を稼いでいくと、圧倒的な奥壁が頭の上にのしかかってくる。


 しかし、その手前の小岩峰も巨大なキノコ雪になっていてこれまた悪い。
 記録では左に懸垂してトラバースらしいが、今季の雪の状況では問題外。だいたい懸垂支点も見あたらない。
 やや躊躇しつつも手前に露出している岩を左に巻き込んでキノコ雪を乗り越す(伊佐見リード)。打ったハーケンは殴打一発で回収できた。


 さてラスボス核心部。
 対面効果もあるのだろうが、ぶっ立っていて高くて全く登れる気がしない。しかも右に左に小雪崩がばんばん出ている。

 大系では「左のルンゼが定番で、右も行けるが悪い」と紹介されている。
 でも、左なんて行けないから!!。ルンゼ下部の雪が着いた露岩帯絶悪状態。
 かといって、右は下部の雪壁ではじき返される危険性大・・・。
 しかたなく、中央突破を試みるしかない。

 支点もビレイ点も取れないので、フリーで約30m登り、草が出ていた場所でザイルをつける。
 自分がビレイヤーでも止める自信は全くないので、最初は紐だけ引いてビレイはさせず。
 ブッシュから突き出した氷に穴をあけてのシュリンゲA0は後ろで伊佐見にビビられたが、右手のアックスはちゃんと決まってたから!
 5mほど登ってようやく指二本ぐらいの這い松が掘り出せたので、ピンを取ってビレイに入って貰う。

 しかしそこから上の雪壁が激悪だった。
 雪がざくざくで、スノーバーなんか指一本で引っ張り出せる始末。
 最後の垂直部ではアックスもきかないスノーバーも浮くで、ランナウト実質15m!マジ泣き寸前。
 抜き手で穴を掘ってそこに指をかけて登ること数歩、這い松にシュリンゲをかけた時には膝・腕・肩・心がガクガク。よくも登れたことよ……。

 決して良くはないものの、今までに比べれば天国の雪壁5mで頂稜についた。


 12時半登攀終了。久しぶりに痺れるクライミングであった。


記)山崎

【行程】
2013年4月14日(日)晴
 西遠見山BC0330、GX稜下0600、GXの頭1230、BC1545

【メモ】
体系のアプローチと異なり、以下の点から一番D沢側の支稜を登ったような気がします。
 @取り付きからD沢が見えていたこと
 A主稜上に着いてやっとG2稜が見えたこと
 B「急な雪壁をこなして稜にあがり」と一言でしたが、稜に上がるまでだだっ広い雪壁が延々長々続いたこと
あとキノコ雪のもう一つの解決法は左じゃなくて、右へ懸垂でキノコの下をトラバースらしいです。恐ろしいですね。
(by伊佐見)

【写真】
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