吾妻連峰/最上川松川

【日程】

2015/7/19 - 20 (前夜発一泊二日)

【メンバー】

佐藤、加藤、佐野

【報告】

吾妻松川といえば、温泉のテンバ、火山性の青白い水の美しい滝と釜が魅力的だが、吾妻一番の険谷と聞く。いつかは、と思っていたが、この週末の行き先として思いつく沢の中で一番行きたいと感じたので、ここに決定した。

7/18

宇都宮の加藤邸経由でJR奥羽本線関根駅23時過ぎ着。到着時は雨。残念な天気にメンバーのテンションは下がり気味。作戦会議を兼ねた入山祝いもそこそこにさっさと寝る。駅舎には小さなカエルがたくさんいて、寝ている間に顔や、足にひっついてきた。

7/19 朝まで小雨、後快晴。

加藤さんの大きな目覚まし時計が5時に鳴る。しかし二度寝して、5時15分頃に起床。ときおり小雨のぱらつくイケてない天気だ。駅で準備して大平集落奥へ移動。松川神社をすぎると、大きなガレージのような建物があり、その先は砂利道の登り坂だ。濡れた砂利道は嫌だし、下山時の回収のこともあるのであまり奥に入りたくないと思いながらのろのろと走らせると100m位の所に止められそうなころがあったので、そこに駐車する。

矢沢出合い付近から入渓。雨はやんでいたとは思うが、「今にも降り出しそうですね」という感じ。予報では9時くらいから晴れるんだよおー。

沢は早々にナメとなり美しい。水は他の記録の通り、濁っていてる。ただし、ミルキーブルーというよりは、グリーンで、鯉が住んでいるような公園の池かドブ川の色という感じで、ちょっとイメージが違う。これは最近の雨のせいかもしれないし、もともとこういう色なのかもしれない。

そして、ドーンとひょうたん淵の滝。これは左岸から高巻くが、土壁をひたすら登る感じで、長いし意外に悪い。尾根まであがり、尾根上をに沢に向かって進んで、懸垂3ピッチで下降。序盤から消耗した。一日目はこの巻きの登りが一番しんどかった。

「大釜のある17〜20m直瀑」らしき、左岸から支流が滝で出会うところは、その支流の枝沢の左側の流水溝をシャワークライムで登って巻く。ロープ使用。

三俣の滝は左側から登り落ち口を対岸に渡る。スラブ状で落ち口付近がすべりそうで怖い。滝壺が沸騰していて嵌ると危険なので、トップはノーピンでロープを引いて登った。

鮎島の記録で、治田さんが草付きからリッジへと登ったという40m大滝は、少し手前から一段上がって、草付きを灌木を拾いながらトラバースし、ロープを出して佐野さんが悪い草付きをいっぱいまで登りピッチを切る。ここで作戦会議。やっぱり岩側は悪いと言うことで加藤さんが灌木帯を直上。

樋状の滝は、右のルンゼ状から登る。ロープ使用。残置ハーケンあり。

やがて、明道沢出合。河床が真っ赤に染まり、一見してこれまたやばそうな水に見えた。実際、ものすごく渋くて鉄くさい。

本流はゴルジュとなり、これを左岸から巻く。上にはいろいろゴミが散乱していて、記録にあった通りだった。使えそうなオタマがあったので、拾った。適当に踏み跡をたどっていくと、ロープと鎖があってそれを伝って谷に降りられた。しかし、絶壁によく、こんな弱点があるものだ。

しばらく行くと巨岩ゴーロ地帯。まだか、まだか、と進むとついに左岸に温泉発見。なるほど、温泉脇のテンバはちょっと狭いし、増水に耐えられそうにない。しかし、周囲に快適そうな場所はないので、ここに泊まることにする。 なんとか日暮れ前に、整地とタープ設営、薪集めと着火、入浴を終え、飲み始めることができた。 ちにみにこの温泉、湯船は10人くらい入れるサイズだが、泥が堆積しており、沼と化している。その上、ぬるいのでオタマジャクシがたくさん住んでいる。 そんなわけで快適に入浴というわけにはいかず、汚れずに入れるのは一人がやっとという感じ。ちょっと勇気が必要だが、入ってしまえば案外と快適だった。 しかし、パイプの刺さっている方からのぬるいお湯と、そのすぐ左下の岩陰から熱いお湯が出ており、湯量は豊富なので、泥をなんとかして、温い方のお湯の流れを工夫すれば、かなりまともな風呂になるはずだ。

焚き火しながら飲んで、寝転んで、気がつけば満点の星空が広がっている。焚き火の火が衰えると、対岸にホタルが瞬き出す。沢で蛍を見るのは始めてだ。

7/20 未明から朝まで雨、後快晴。

夜中、雨が降り始め、加藤さんがタープ下に移動した。そのとき、私も目がさめたので、ついでにザックと沢タビをタープしたに引き込んでおいた。

ときどき目を覚ます程度だったのでよくわからないが、雨は強くなったり弱くなったりしていたように思う。なんとなくシュラフカバーが冷たく感じ、足がタープの外に出ているのかと思ったりもした。そしてまた寝てしまう。次に足が冷たいと思ったとき、シュラフカバーがゆらりと浮き上がり漂うような感覚。瞬間、「あ、増水だ!」と飛び起きた。時刻は3時40分。うっすらと明るい。

外を見れば焚き火はなくなり、でもまだ、焚き火の側に置いていた荷物はそこにあった。靴を履き、タープとロープを回収しているうちに、さらに増水は進み、それらは無くなっていた。やばい、どんどん増水している。焚き火のところにあった荷物は消えていた。とにかく、回収できるものを回収し、樹林の中に上がる。 沢は、全体が真っ白の激流になり、岩が全く見えなくなった。 核心ゴルジュの入り口の滝の水しぶきが、薄暗い中でも遠目に見ても分かるくらいに吹き出している。「黒部ダムの放水みたいだ」と加藤さんが言ったが、まったく、そんな感じ。 ここで、立木の間にタープを張り、食器を使ってラーメン2個を半分ずつ4回に分けてつくって食べた。焚き火缶や私の食器は流されてしまったので、加藤さんの食器があって助かった。 その間、水は引きはじめ、岩が見えるようになってきた。3時間くらい待てば行動可能なように思えたのでほっとし、うとうとしながら待つ。7時過ぎ、寒くて我慢できなくなったのと水が大分引いたので、温泉に戻って、温泉に浸かりながら待った。着衣のままオタマジャクシと一緒に温泉に浸かり、うとうとと。加藤さんが「友達じゃないんだけど」というオタマジャクシたちは、ときどき息継ぎするために水面を往復している。過去にも今後もありえない入浴シーンだ。それにしても、この温泉をこんなに活用することになるとは思いもしなかった。

水が引く速度は遅くなっており、いつまでも待っていられないので、9時半頃出発する。ロープをつけて渡渉したが、とくに問題はなかった。昨日の様子を覚えているので、水量と色がまだまだ異様で怖い。特に色は、土壌の養分がとけ込んでいるのだろうか、醤油かコーラか黒ウーロン茶か。透明度はそれなりにあるが、深みはどす黒く見える。 温泉テンバの対岸あたりから高巻きに入る。適当に100mくらい登り、右へ。子尾根に上がるところが崩壊しておりロープ使用。そのままずっと先まで高巻いていこうかと思ったが大変なので、子尾根をのっこし急斜面を木を伝いながらだましだまし沢に降りた。

次の滝もこの水量では無理なので、右岸から高巻き。下降は懸垂になった。

そこからすぐに大平温泉だった。階段を上がると、煮炊きの臭いがした。時刻は12:00、調度お昼時か。あー、よかった。無事に脱出できた。

あとは車まで戻るだけだ。途中、大平温泉へ向かう人や車と何度もすれ違ったが、結構人気があるのだろうか。

下山後は、正月に天元台〜若女平の山スキーの帰りに寄った小野川温泉へ。小さな温泉街ですが、雰囲気もお湯も非常によい。お勧め。米沢ラーメンもうまかった。


内容の濃い沢でした。当日は、「増水事件のせいで、沢の記憶が消し飛んでしまったよ」などと話していたのですが、そうではないようです。もともと、いろいろありすぎて詳しく思い出せないくらい、見所満載なのだと思います。

増水は、忘れられない体験となりました。被害は、佐藤の新品の釣り竿(これは痛い)、食器。佐野さんの焚き火缶、食器、軍手、プラティパス等で、行動に支障のないものだったのが幸いです。 反省点は、基本に忠実にということです。テント場を高台に、そうしない場合は避難経路の確認やフィックスロープの設置。荷物を散乱させておくのは論外。そのとき晴れていれば、やっぱり流されそうな場所に設営することもあるでしょう。それでも、いざ増水した場合に備えて、逃げやすいように準備しておく癖をつけておくことが大事だと思います。寝込みを襲われると、寝ぼけているので手際が悪いです。私は夜中に沢タビとザックをタープ内に移動したことを忘れていて、まず、それらをきょろきょろと探してしまいました。意外に時間はあったと思います。

増水を予想できたかどうか。観測データを見てみると、天気図からは読みづらいけれど太平洋側と北側の高気圧に挟まれたところが気圧の谷となっており、そこに沿って午前二時頃に新潟あたりで発生した雨雲が、急速に発達しながら午前3時から4時にかけて我々の頭上をしていったようです。 (7月20日の天気) アメダスの米沢の時間雨量は、2時台14.5mmがピーク。この数字が極端に大きいとは思えないし、集水域もそれほど広くはないと思います。前日まで雨が続いていたので保水力がいっぱいだったのかもしれません。

2015.7.28 佐藤益弘

【記録】

7/19 発6:45?-矢沢出合7:00- ひょうたん淵8:00-三俣11:15-明道沢出合16:30-テンバ17:30
7/20 発9:30-大平温泉12:00- 駐車地14:30

【写真】