甲斐駒ヶ岳/黄蓮谷右俣

2015/12/31〜2016/1/2
細谷、高橋

12/31、天気:快晴

6時、竹宇駒ケ岳神社〜11時、5合目コル〜13時黄蓮谷沢床〜14時坊主ノ滝〜15時二股、ツエルト泊

竹宇駒ケ岳神社駐車場で車中泊。「無理しないようにしましょう。」と確かめ合って出発したのに、高橋さんはどんどん先へ進んでいった。相変わらず、入山の荷物の重さで喘いだ。若い単独者が追い抜いて行くので、声を掛けた。六丈ノ沢から下降して、坊主の滝下に出て、右股を登るとのことだった。黒戸山が間近になった辺りでは、下山してくる男女2人パーティに遭った。5合目コルから下降し、二股で泊まったが時間切れを予想したので、引き返してきたとのこと。5合目コルから下降情報を得た。後でわかったことだが、今回、全装を担いで入山したのは彼らと私達だけだった。

5合目コルに着き、三つの下降ルート案を話し合った。@案は五丈ノ沢沿いに下降する、A案はガイドブック通り、コルから下降し、黒戸山から北東に延びる尾根に乗り、沢床に至る、B案は先程の単独者の情報のように六丈ノ沢を下降する。六丈ノ沢の下降点は不明だし、連続する階段を登るのは厳しいので、却下。結論は、高橋さん持参の少々古いガイドブックのコピーを基にしてA案にした。B案は、単独者や七丈小屋泊の登山者にはトレンドであることが、後にわかってくる。

コルからの下降はしっかりした登山道から始まり、次第に踏み跡らしくなり、所々消えたりした。赤布があり、沢登りの下降路にもなっているらしい。かつて、高橋さんは、黄蓮谷を遡行したという。同行者がいれば、私も遡行してみたい所だ。沢床に降り立ってからは藪漕ぎをして、坊主の滝下に着いた。

坊主の滝1P(30m、V)高橋さんリード。人気ルートなので、バケツもできている。昨年、大谷不動で一緒に練習して以来のクライミングであったが、自信をつけているように見えた。2P滑滝は細谷リード。

滝上で、泊。氷を割って水がとれたのでガスの節約になった。

1/1、天気:快晴

6時発〜14時甲斐駒ケ岳〜16時7合目テント場

二人の寝起きの言葉は、「寒かったですね、眠れましたか?」だった。高橋さんは寝息を立てていたので、「良く眠っていましたよ。」と教えた。細谷は肩の腱ショウ炎が疼いて、良く眠れなかったので羨ましかった。

暗いうちに出発した。滑滝は巻いて、最初の小滝(15m、V)は、高橋さんリード。細谷はフォロー中にアイゼンが外れたが、腰を下ろせる窪みがあったので、付け直した。これからが不安になってきた。奥の千丈ノ滝(15m、V)細谷リード。高橋さんから、ロープ引き上げが遅いという指摘をうけ、今日のテント内で教えてもらうことにした。2P滑滝、高橋さんリード。

この後は、殆どラッセルであった。途中、3人パーティ(内、二人が速かった。軽装だから速いのは当然であるが)が追い着いてきた。七条小屋泊で、未明、六丈ノ沢を下降してきたとのことだった。広川さんのガイドブックで案内されている軽量化・未明の小屋発は、トレンドの登りであるらしいが、フォーストビバークをする段になった時はかなりの寒さを覚悟しなければならないだろう。以後、高橋さんと速い二人がラッセルをしてくれた。

インゼルの後、ガイドブックでは、奥の滝があるルンゼに入るようになっていたが、高橋さんが見た所、氷の付きようが薄いようなので、1本左のルンゼに入った。このルンゼには、ガイドブックには載っていない小滝(15m、W)があった。バケツもできている。高橋さんリード。3人パーティはノーロープで行ってしまう。遅い三人目の人を置いて行ってしまっている。パーティの態をなしていないのではないかと心配になった。 ラッセルの後、一般路の9.5合目に出た。荷物を置いて、甲斐駒を往復。念願だった黄蓮谷からの甲斐駒が獲れ、嬉しさもあったが安堵する方が勝っていた。三人パーティは、小屋に帰って新年会をするそうだ。羨ましかったので高橋さんに持ちかけた所、岩小屋に泊まろうと逆提案された。8合目まで下りて来て岩小屋を探したが見つからなかった。さらに、7合目テント場まで下りて来て、整地してあるテント跡があったので、ここでビバークすることになり、ホッとした。 昨夜とは違い、今夜は新雪から水を作ることになり、かなりガスを使った。中缶2に加えて小1を持参してきているので、心強い。昼間のロープ引き上げのシステムを教えてもらった。長い間、単独行をしてきてトレンドには疎いので、最新の技術やウエアの話を聞けるのは嬉しいものだ。

1/2、天気:快晴

5:45、テント場発〜1120、駒ケ岳神社駐車場

昨夜も寒かった。風はなかったが、標高は昨日より650m高い。−10度位か。背中はエアマットに付けたきり離せなかったし、腱ショウ炎も疼いた。高橋さんはホカロンを貼り、効果があったようだった。

ヘッデンを点けて未明の出発。途中、六丈ノ沢への下降点を探していくことにした。小屋から下山すると、木橋で六丈ノ沢のコルを渡り、小ピークを進み、階段が連続する急下りの下り口に「怪力霊神」の石碑があり、六丈ノ沢の尾根に入る踏み跡が確認できた。逆コースのときは、連続する階段の急登の後、ひょっこり尾根線に立つ地点である。この尾根を下降して坊主の滝の下に出れば、藪漕ぎは少ないだろう。

下山後は、寒かった夜、楽しみにしていた「むかわの湯」に浸った。

(細谷記)