残雪期剱岳源次郎尾根

メンバー:高橋、小池、渡辺(記)
期間:2018年4月28日〜5月1日(前夜発2泊3日)

4/27 西国分寺→信濃大町→扇沢(無料駐車場)

剱岳八つ峰・R4などを計画している伊佐見隊の一角、山崎さんを大町駅でピックアップして扇沢へ。 無料駐車場がどこだか分からないので、途中の路肩の広い所(既に3台ほど駐車)に駐車して、軽く飲む。 眠くて仕方ない。

4/28 快晴

6:30扇沢 8:30室堂(9:00発) 11:35別山乗越(剣御前小屋前) 12:20劔沢夏のテント場周辺 12:40黒百合のコルから派生する沢と劔沢の出合付近 14:15源次郎尾根末端平蔵谷側BC

遅れてきた伊佐見隊の伊佐見・マッシーと挨拶もそこそこ車を再出発。(彼らは黒部ダムから内蔵助谷〜ハシゴ谷経由で真砂沢に入り、明日は八つ峰とのこと。いや〜大変ですな…)

既に最奥の有料駐車場のわずかに手前に広がる無料駐車場は満車。さすがゴールデンウイーク。その手前のスノーシェッド途中から左に入ったところにある無料駐車場も満車(ただし、下山後に見ると、どうもさらに左側の、川を渡ったところにも駐車場が広がっている模様)。

スノーシェッドの大町側出口のところにある無料駐車場に駐車し、身支度して出発。

チケット売り場は、6時前だというのに、都内のどのラーメン屋よりも並んでいる。 そう、このチケット屋、ネット無し、前売り券無し、当日販売のみという、昭和ストロングスタイルを貫いているのだ。

幸い始発に乗り込むことができたが、トロリーバス→徒歩で黒部ダム横断→ケーブルカー→ロープウエー→トロリーバスを短時間で乗り継ぐので、慌ただしいし寝る暇が無い。

ハッキリ言ってつらい。

おまけに、高橋さんと小池さんで、何やら密約があり(山スキーをやりたい小池さんと、源次郎1本でいいと思っている高橋さんで取引があり、高橋さんのスキー装備を小池さんが担ぐという事になったとあとで知る)、小池さんのボッカ重量が本人の限界を超えていたので少々手助けしたため、ますます疲れる。

しかも渡辺はヘッドランプを忘れるという大チョンボ。高橋さんの車中泊用ヘッドランプをお借りし、電池が怪しいので途中で2本300円也の単四を4本買ったりして、本当に落ち着かない。

室堂について、混雑の中で身支度し、室堂を出発したのはちょうど9時ごろ。

みくりが池に下る前から、今日越えなければいけない別山乗越が見え、別山乗越へ至るまでに一旦雷鳥沢に下らなければいけない現実に毎度のことながらめげるが、嘆いても仕方ない。足を動かすだけだ。高橋さんたちは別山乗越への登りをスキー使用。より疲れそう。

案の定、スキー組は別山乗越でヘロヘロ。徒歩のナベが先行。適当に足を下すだけなので夏より楽。

残雪期の源次郎尾根末端は、一応幕営の記録があるものの、安全かどうか分からなかったので、夏の劔沢テンバ付近から先は偵察しながら進む。武蔵谷や平蔵谷の上部には、いまにもくずれそうなキノコ部分があり、正直なところ武蔵谷より下では張りたくない。とはいえ楽はしたい。

クロユリのコルと劔沢の出合付近で安全そうな所を見つけたが、やはり登り返しのつらさを思い、源次郎尾根末端まで駒を進める。あっという間に到着。

末端の平蔵谷側はちょうど平らになっており整地の必要なし。平蔵谷にスーパーハウスくらいのブロックが転がっていて気味が悪いが、こっちに転がってくる雰囲気ではない。まあ大丈夫だろう。

高橋さんと偵察に出て、取り付きのルンゼを確認後、宴会。

4/29

5:00源次郎尾根末端BC発 6:00源次郎1峰左尾根上 7:15源次郎1峰 8:05源次郎2峰懸垂点 8:50テント場跡 9:55剱岳山頂 10:40平蔵のコル 11:30BC帰着

4:30に出るはずがモタつく。小池さんは結局テントキーパー。高橋・ナベで取り付く。

取り付きのルンゼはテン場からわずか50m。既に2パーティほどが準備しているが、BCで全部準備していた我々が半馬身の差で先行させてもらった。

約1時間、よく締まったルンゼを延々と登る。概ねダブルシャフト。やがてルンゼが左尾根へ吸収されていくので、そのまま左尾根に上がる。

ここから先、雪が少なく、部分的に夏道?の藪を漕いだり、雪田となって残っている斜面を登ったり。このあたりの雪田が一番急だったが、ダブルのダガーポジションで問題なし。ルーファイが若干難しい。トポでは右に出るようなことを書いていた気がするが、基本的には目で見て一番簡単そうな所を登った。視界が無かったら時間がかかるかもしれないし、運が悪ければ変な所で岩が出てきたりしてハマるかもしれない。我々はピーカンを満喫しながら登行。ツイている。

源次郎1峰から先はトレースが残っており、源次郎1峰を下った後の登り返しではかなり体力温存できて助かった。一方で「このままトレース追跡か…」とちょっと残念な気分にもなる。

八つ峰の方を見れば、単独の人やらパーティやらが見える。あのどれかが伊佐見達か?まあとにかく登ったり降りたりで、間違いなく源次郎より大変そう。

我々の源次郎の方は、源次郎1峰の下りで若干肝が冷えた他はさしたる難所もなく2峰の懸垂点へ。バッチリ杭が出ており、30mロープ2本で何の問題もなく下降。出だしで他パーティの後塵を拝む形になっていたらここで渋滞となっていたはずで、全くもって運がいい。

あとはトレースを追ってのんびり頂上へ…と思っていたら、真の核心はここからだった。

ちょっと歩いた先にブロックを積んだテント場跡があり、そこから先はノートレース。

おそらく昨日ここに泊まったパーティが今朝出発、朝なのでクラストを利してトレースを残すことなく登って行ったのだろう。(逆に言うと、先ほどまでのトレースは昨日雪が腐り始めてからつけられたものだろう)

まだ9時前だというのに既に雪は腐りきっている。

トレースを付ける喜び! < 脛まで埋まる苦しみ!(悪くすると膝下まで)

しかも気温はマックス。汗をかかないよう、牛の歩みで登る(八つ峰から見ていた伊佐見達は「源次郎に取り付いている人たちのなかで、高橋さんたちがぶっちぎりで早かった」と言うが、主観的にはスローモーションで登ってました…)

尚、高橋さんは芍薬甘草湯を既に投入済みで途中から「ナベ頑張って!」モード。

ところどころ開きかけのシュルンドがあったりして、まるで夏の雪渓のようだ。違うのは足のズボりか…

しかし、いくら苦しくても、足を動かしていればいつかは山頂に着くのである。ありがたい原理原則ではないか。

社会では、いくら頑張っても報われないことだってあるのだから…

偽ピークにだまされたのち、やがて本物の山頂。

「ピーク!」

「やった!」

大パノラマを堪能したのち、下降開始。カニの横這いは相変わらずエグイ。こんなところが「一般登山道」なんて言っていいの?

結構な人数が別山尾根から登ってくる。我々は平蔵のコルの便所の脇から平蔵谷を下降開始。高橋さんはシリセードでガンガン下っていく。尚、ナベが下部の方で右岸から給水。ちょうど雪田の下に岩場があり小滝を形成しているので、よほど雪が多い年でなければここで汲めると思われる(平蔵谷出合から登りで10分くらい?) テントに帰ると、小池さんが鍋に雪を入れて、自然解凍で水づくりしていた。どんだけ気温高いんだ、という話である。

さっき補給した水で作った水割りに舌鼓を打ったりしていたら、なんと真砂沢にベースを張っていた伊佐見パーティが酒を持って遊びに来てくれた。

八つ峰の感想を聞いたり、マッシーの瓶で担ぎ上げたラム酒を飲んだり… 素晴らしい時間であった。

伊佐見達は、本日八つ峰を登った後長次郎谷を下降。明日は剣尾根R4の予定だったがどう見ても凍ってなさそうなのでどうしたもんか…とのこと。 (のち、源次郎尾根とチンネ中央チムニーに切り替え、いずれも完登とのこと)

4/30 快晴・微風

5:30BC 7:30別山乗越 10:00室堂

高橋さんの登山靴・ハーネス、共装のロープ2本、ツエルトなどなどを担いで扇沢へ向かう。重いが、まあ25キロはないか?学生の頃は35キロ以上担いでこのあたりを歩いていたわけで、日数が違うとはいえ、軽量化の工夫だけはうまくなったわけである。

高橋さん・小池さんは本日別山乗越まで上がった後、真砂沢をスキーとの事。昨日もBCで飲んだくれていたら大量のスキーヤーが(おそらく真砂沢を滑降した後)劔沢を上し返してきていたので、人気ルート、すなわち楽しいルートなのだろう。

あちらは空身なので当然ぶち抜かれるものと思っていたが、結局一緒に別山乗越に着いてしまった。別れの挨拶をし、雷鳥沢へ下る。幸い本日は昨日程気温が高くなく、かつ、そよ風が吹いているため雪が腐っていない。アイゼンをサクサク効かせて降りる。それにしても長い。

雷鳥沢でアイゼンを外し、みくりが池あたりの登り返しで死にそうになりながら室堂に着いた。 信濃大町から電車で松本に出て、高速バスで帰京。鈍行で帰った方が良かったのではないか?というくらいに渋滞した。

テクニカルメモ

下山メモ

(ナベ)


<高橋さんの下山報告&短信>

報告は( )内です。ビールにたどり着いて書いてます。

高橋隊、室堂ターミナルで小池ちゃんと別れて、無事終了です。小池さんは残って今晩(ミクリガ池のほとりの温泉に浸かって)レストし後続隊の到着を待ちます。

ナベ(高橋の山靴、ザイル、ハーネス、アイゼン、スパッツ、登攀具一式をザックにつめてお持ち帰り。俺たちは空身でスキーだからゆっくり来いよとテン場でサヨナラしたが途中で追いつかれ乗越まで同行。ほんじゃ乗越まで自分で担げよだよな。因みに初日も高橋の山靴はナベに歩荷してもらったのです。ナベの打ち合わせ不備の指摘参照)と昨日の朝別山乗越で別れた後、別山山頂(今エアリア見たら北峰の方が高いのな。低い方しか登ってない...)から真砂沢滑走。長次郎谷出合の伊佐見組のテントで酒(平蔵谷BC戻ってから雷鳥沢、最低でも劔沢キャンプ場までベース上げるつもりだったのにい、こいつ逃げたよ by小池の心の声。ほんじゃ私もジン頂戴!)、ラーメンを振る舞って貰い(マッシーが高橋のスキーセット装着してどっか行ってしまって帰って来ないので)昼寝した後千鳥足で平蔵谷のBCへ戻る。因みにあの方達(伊佐見隊長、前衛マッシー、後衛山ちゃん)は源次郎尾根から10時過ぎに戻って文庫本(中東戦争全史。一章が紀元前から始まってる〜 by伊佐見。図書館やないで、買ってきたん***(※文字化け) by山崎)など読んでました。今日はBCからチンネ往復に変更する予定(R4氷ダメそうだし、アイゼン山靴で左稜線かなあ by伊佐見)と言ってました。また、後半戦の天気(特に寒気が)を気にしてました。

さてこちらは今朝平蔵谷出合から登り返し(別山乗越にて。どうすんの? by小池。一の越なんだろ! by高橋。よし!by小池)ガリガリの不快な雷鳥沢を下り一の越乗越を横目に見ながら(近くに見えたけどエアリア見たら1時間あれば行けんじゃん)室堂に帰着。この重さでこの暑さじゃ黒部平への下山無理でしよ!(それにアリの行列だったしな) の言葉を小池ちゃんから貰ったぞ。ナベ

高橋は只今扇沢に着きました。

ナベがいなかったらどうなっていたの?って山行でしたが、いたからいいんでしょう。合積カーゴはありません。船腹に余裕があり、中甲板が空いているため念のためpart cargoと入れましたがそもそも大阪着の観点からあり得ません。源次郎尾根と真砂沢やれて天気のおかげです。ああ楽しかった(タンクローリ軍団いかれてるぜ 笑)