■南ア/大武川赤石沢
2004.10.1-.2
太田幸介、鮎島秀明
予想だにしなかった台風の来襲により、金土で行けそうなところは南ア・奥秩父あたりだけ。それならばっということで、前から太田さんが猛アピールしていた赤石沢の本流を詰めることに急遽決まる。2週連続の有給願いは評判が悪かったが、なんとか認めてもらって(有給の小出しは良くないと学習)韮崎まで。っが、先週と比べてかなり寒いぞ〜。やはり内陸だからかなぁ。シュラフカバーだけじゃヤバそうだからインナーシュラフもって行こうっと。
横手の登山口にジョギングセットをデポしてから大武川林道の人面橋より手前のゲートまで車で行く。そこから15分で人面橋工事現場で、右岸につけられた道を辿ると土砂崩れで沢へ下りなければならなくなる。そこから何個か滝が出てくるので右岸を巻いたりしながら行ってヒョングリの滝からは左岸のほのかにわかる道をたどり、ようやく赤石沢出合。赤石沢に入ったあとも滝は何個か出てくるがすべて右岸から巻いていき、いい加減疲れた頃に赤石沢大滝が出現。実は今回、この大滝を登ることが主眼なのだ。
以前、太田さんがこの沢へ入ったときに直登ラインが見えたらしい。っで、どうやら未登。確かに目前で見るとなんとなく登れなくはない気がしないわけではない。しかし、濡れた花崗岩特有のヌルヌルさとガバのなさからかなりしんどいクライミングになることは必至。シャワーにもなるし。っというわけで30分ほど見極めてからやはり左岸から巻くことに。グラつく木から慎重に懸垂下降20mで沢へ下り、あとは沢沿いに進む。っがスラブとチムニーかなり悪い。何度か空身で登って荷揚げするパターンを繰りかえし、ようやくAフランケの基部に到着。始めて見るAフランケは確かに凄まじい威容をもって眼前に居座っている。私にとってはこの景色を見にきたのだ。この素晴らしい景色を前にできる岩小屋にツエルトを張り、一晩明かす。
夜は寒かったはずだが、結構快眠できた。またもイヤらしいスラブから始まり、10mのチムニー滝。太田が空身で登り、鮎島はユマーリング。水はチョロチョロだが全身濡れる。次のチムニーは鮎島がスラブを10m登って太田が10mフェースからクラックを登る。いずれも悪い。もう岩登りの範疇だ(沢靴だが…)。Bバンドを過ぎるとようやく赤石沢の核心部へということになるが、もう結構疲れている。
フランス人のチムニーは鮎島がリード。もちろん、フランス人の足の長さじゃないとオポジションできないワイドチムニーは足の長さが足りないので、その左のクラックから登るわけだが、これもかなり悪い。出だしはショルダーであとはずりずり上がる。ようやく残置ハーケンまで辿りついた(ここまで5.8くらい?)と思ったらここからが核心。CSがあってフリーでは無理っぽい。なんか風化しているようなCSに黄エイリアンをかけてアブミにのりこんだら、やっぱり外れて5m落下。肘を打った以外は怪我はなかったが自信喪失し太田さんにバトンタッチ。サクッとキャメ0.5を決めて登っいた。私は簡単にユマーリング。
次の25mチムニーも太田さんがリード(出口のCSにキャメ1と0.75で人工)にし、私はユマーリングで抜けると奥壁の基部にようやく到着。もともと奥壁は登る気はなかったので第1バンドを伝って八合目の岩小屋まで行けばあとは黒戸尾根を下るだけ。3時間半で横手の登山口まで下り、太田さんに車まで走っていただく。
始めて見る赤石沢の雰囲気はたしかに素晴らしかった。Aフランケ赤蜘蛛は傍目に見ても素晴らしいルートだし、それ以外でもどこかのルートを登りたいとも思う。しかし、私は花崗岩が苦手なのだ。今回もなんだか結局、連れていってもらったという感じの登山だったし、充実感もまったくなく、ただ登りこまないとなァと反省の念ばかりが下山後浮かんでくる。まぁ、花崗岩のクライミングはこれから好きになることはないと思うが、甲斐駒を登る以上はこれを練習しないといけない。
太田さんはフランス人のチムニーでは「ピエールを感じた!」、全体的に「垂直のゴルジュだ!」と楽しそうだった。っが私は打ちのめされただけだった。赤石沢まで長く、赤石沢に入っても長く、急傾斜で、夜は寒く、酒もなく、核心部で落ち、黒戸尾根で2000m下り、そこから車まで30分ジョギング(太田さんがやってくれた…)。まったく人間様に優しくないところである。天気は良く、2000m近くまで下りてきた紅葉を愛でられたのには慰められたが、すっげぇ疲れた。
赤石沢を下から詰めあがり奥壁左ルンゼを継続するのは自然なビッグルートだ。いつかはやってみたい気もするが、もういいような気もする。大滝より上は巻くことは許されない「垂直のゴルジュ」。私はピエールを感じる余裕もなかったが、いい経験になったのは間違いない。
2004.10.04 鮎島 筆
【記録】
10月1日(金)快晴
大武川林道終点0525、赤石沢出合1100、赤石沢大滝1230、Aフランケ岩小屋1530
10月2日(土) 快晴のち曇
岩小屋0700、奥壁基部1300、八合岩小屋1315、横手1715
@赤石沢大滝
AAフランケ出合
Bフランス人のチムニー