丸山東壁


2004.10.22-29
神谷(東京YCC)、青山

10.22(金) 晴/雨 アプローチ
8時新宿発の高速バスにて信濃大町へ。山は丁度紅葉のさかり。黄色が多い。扇沢までは快晴だったが、山を越え黒四ダムに着くと黒い雲。内蔵助谷出合に着いたころ雨が降り出し、あわててテントを張る。夕方取り付きの下見。テン場から岩場の基部までは30分ほど。

10.23(土) 雨/曇
昨夕からの雨が朝まで降り続いた為いきなりレスト。

10.24(日) 快晴 左岩稜
フリー、人工、岩ルートなのに木登りの要素も多く、何でも有りの面白いルートだった。素晴らしい快晴で岩から眺める黄葉も最高。ちなみに私はあぶみ架け替えは初体験。意外に楽しい。左岩稜へは、一ルンゼを詰め、途中シュリンゲの置かれた小さなケルンから踏跡を右へトラバースしていくと緑ルート取り付きで、そこから左上し岩棚に一段登ったところに残置ハーケンがあったのでそこから取り付いた。アプローチシューズは基部にデポし、一応ビバーク用意を持って登攀開始した。

1P(神谷) 中央壁末端から取り付き、いきなり垂直ブッシュ登り。出だしブッシュが抜けそうで怖かった。
2P(青山 以降つるべ) 木の凹角から垂壁、カンテ上へ ここからルートらしくなる。 
3P カンテの垂壁を人工であがり、バンドを左へトラバース。気持ちいい。 
4P 5m近く木登りをし、枝から右のフェースに人工で取り付く。ゆさゆさ揺れる木登りが沢の高巻きのようだ。
5P 岩を左の灌木帯から巻くような形で取付き直上。
6P 簡単なブッシュを進み広場へ。短いが5P目とつなげるにはザイルが少し足りない。
7P 簡単なブッシュからフェースの人工。長いピッチでぐんぐん進む。
8P 浮石の多い簡単な凹角から上部凹角は左に回り込み、洞穴のある大バンドへ。居心地はいまいちそうだが、2人は寝れそう。
9P 洞穴の上を10m人工で抜ける。はじめのピトンが遠くシュリンゲを置いていってもらう。乗り越すのにエイっと勢いがいり、その後の人工もひとくせあり。   
10P 落石の巣といった凹角で非常にもろい。いくつか落としてしまう。A1となっていたが取れる支点もなかった。凹角出口の支点を目指し直上したが、岩が不安定なので途中左の草つきへまわりこむべきだったか。ビレイも怖かったと思う。
11P 垂壁の人工から凹角木登り。
12P 広いバンドを右端までトコトコ歩く。先日遡行した棒小屋沢と爺ケ岳が見えうれしい。
13P 灌木登りから、1ポイント人工、草付きのバンドを左上。ザイルいっぱいでピッチをきる。
14P バンド左上の続きから、凹角右壁を人工で。途中で支点がなくなり上から垂れ下がる枝に投げ縄、あぶみ、さらに架け替え。残置シュリンゲもあり皆同じ事をしているようだが、枝はしなるし折れないか緊張した。樹林帯に入り終了。なんだかすっきりしないが、これ以上登っても樹林が続く様子だし、他の記録によると稜線へは途中崩壊して危険らしい。14P終了点から少し左へ回り込み、同ルートを懸垂で降りた。途中岩間と草付きにザ
イルが引っかかり2度登り返しをし、ビバークすることもなく暗闇になるぎりぎりに
地上に戻れた。

【5:25 テント発  6:25 登攀開始  14:35 終了点 14:45 下降開始 17:35 
取付着】


夜、月が明るくヘッドライトが要らないほど。散歩に出かけると、月に照らされた川の流れや河原、滝、壁、幻想的な世界。


10.25(月) 晴 右岩稜
左岩稜で少し疲れたので、長くなく簡単そうなところをということで右岩稜にとりつく。中央壁をはさんで左岩稜の反対側にあたり、見た目もブッシュの目立つ左岩稜に比べすっきりしていて魅力的。が、そうは甘くない。あまり登られていないようで、ルート図とも様子が違う。所々迷う。簡単なはずの後半も難しいうえ支点がとれなかったりして最後まで気が抜けなかった。もしかして前半は右岩稜のバリエーションか右岩稜フランケ(『岩と雪』79号の記述を見ると近い気もする)だったのかもしれないが、よくわからない。

1P目(神谷) 取り付きを探しうろついていた地点が、すでにルート図の1P目終了点展望台のようだったのでそこから取り付く。(ルート図の1P目はブッシュの詰まった凹角であまりそそられない)アブミ架け替えの人工。
2P(青山) 人工の続き。新しそうなリングボルトに惑わされ、最後小さなバンドへ恐ろしい灌木登攀をしてしまう。が、その先支点が途絶える。とりあえずここでピッチを切る。途中からカンテの右へ行くべきだった様子。フォロー途中から右のスラブへ3P目リードに切り替えてもらう。無駄に怖い思いをした。
3P(神谷) 引き続き人工中心。このルートは全体にピンが遠く、アブミはほぼ最上段、たまにフリーで行けということなのか、中途半端に遠いところもでる。『日本の岩場』のルート図とは何だか様子が違う気がする。支点の重ねどりできるところで適当にピッチをきる。
4P(青山) ブッシュ混じりカンテ。登り始めてじきに終了点があったが通り過ぎ広いテラスへ。心はこれで終了、と安心したら大間違いだった。
5P(神谷) カンテ側バンドは砂がついていやらしそうなので、広場右奥のブッシュ凹角から2ルンゼへ。ザイルがやたら木にからまる。
6P(青山) ザレていて少し気持ちが悪い。残置が少ないのでカムも使用。下手にチムニー状に入ってはまった。ルート図によるとここから80m3級のブッシュとチムニーで登攀終了とのことだが、もっと長いし悪いし支点もあまりとれず話が違う。
7P(神谷) 草付きスラブ。左に行くも悪く、戻り右から登る。悪いうえ、かなりのランナウト。
8P(神谷) 傾斜はないが引き続き悪く支点もなさそう。途方に暮れかけたが迷っている時間もなく、神谷さんに行ってもらう。こういうところにいつも弱い。ひどく怖いランナウト。途中一ヶ所チムニーの手前に支点あり。50mいっぱいでガレたバルコニーで腰がらみ。
9P(青山) 左へトラバース、終了点を発見。これで降りられると喜ぶ。
翌日からは冬型の悪天の予報であったので早く終わらせなければという思いがあり、しかしルートがいまひとつ不明、後半は時間切れと懸垂支点が果たしてあるのかを気にしながらの登攀だった。

懸垂一回でホテル丸山のある大バンドへ。そこから緑ルートを下降。眼下に近づいていく黄葉のパノラマがこれまた最高。ハング50m懸垂は思い出に残る懸垂下降リストに入れようと思った。地上に無事降り立った時にはとてもうれしかった。

【6:20 テント発  7:25 登攀開始  14:55 終了点(バルコニー) 15:05 下
降開始  16:15 取付着】


10.26(火) 雨
焚火をしたり読書をしたり。当初4泊の予定をしていたが、帰るのが惜しくなり下山を延長。食料食い延ばしで少々ひもじい。黒四ダムに食事をしに行く。ガスカートリッジも焚火で節約。

10.27(水) みぞれ雪 緑ルート3P目まで
正面壁の中央の見栄えするスラブとハング。見ているうち登ってみたくなった。右岩稜とは対照的にルートに迷うことなどありえなく、ひたすら支点を追いかける。午後、快方に向かうという天気予報に反して雪がきつくなるなか3P目までFIXしに行く。昨日から冬型になりぐっと冷え込み、明け方からの雪で山の上はすっかり白くなっている。登っていてもビレーをしていてもやたら寒い。先週、甲斐駒の沢で濡れたのよりはましと自分に言い聞かせる。

1P(神谷) 岩がびしょ濡れなので出だしのフリー部分が怖い。1本目、2本目がとても遠い。
2P(神谷) 滑りそうなので、続けて神谷さんにお願いする。フリー部分には古いシュリンゲがあった。ほぼ人工。
3P(青山) 濡れていても安心の人工とわずかにフリー。ぼろそうなボルトに慣れておらずついつい支点を取り過ぎる。自然と時間もかかる。30mなのにギアを使いきってしまい反省。ザイル3本をFIXし登攀具もデポして帰る。来たときよりさらに周囲の山は雪で白くなっている。

【12:00 テント発  12:40 登攀開始  16:10 3ピッチ目から下降  16:40 
取付着】



10.28(木) 快晴 緑ルート4P目から
雨の後にはちゃんと晴れの日が来るのだ。うれしい。岩も昨日よりは乾いてきている。しかし岩場の上から氷のかけらが降ってくる。FIXもしたことだし15時までに最終ピッチまで抜けて降りたい。寒い壁でビバークする気はないので、1つのザックで食料・水・ライトのみ携行、神谷さんに持っていただく。ありがとう。

昨日の所までFIXを登り返す。ザイルは一部凍っている。ユマール使用がまだ2回目の私は、プルージックよりずっと楽だと感心した。
4P(神谷) 三日月ハングからスラブ。人工のみ。太陽が待ち遠しい。寒い。
5P(青山) お日様の下で人工と一部フリー。昨日の反省を活かし支点をまびいてみた。草に凍り付いている氷が落下してくる。当るとびくっとする。
6P(神谷) スラブから右上。珍しく直上ではないので進み方に少し頭を使う。一部フリー。
7P(青山) 簡単な草付きから中央バンドへ。そのままバンドを左へ歩く。太陽がだんだん壁の向こうへ去ってしまう。
8P・9P(神谷) ギヤが足りなくなり大ハングの手前で一度きる。左へ抜ける大ハングは映画みたいでかっこよい。一度やってみたかった。私も楽しくフォロー。一応アブミ架け替えのイメトレだけでもしておいた甲斐があった。
10p(青山) 人工からチムニー木登り、人工。途中なぜかハーケンを見落とし切れ落ちたブッシュへ向かいかけ焦る。時間がかかり反省。
11P(神谷) フェースから木登り。樹林帯で終了。人工主体の緑ルートも締めくくりはまたも木登りだった。
取り付きまで懸垂下降。一度斜めに降りる6P目部分で引っかかり、プルージックで登り返しをした。今日も懸垂最中からの眺めは最高。
 
【5:15 テント発 5:35 取付着  5:50 ユマーリング開始  6:25 3ピッチ目
到着  6:40 4ピッチ目開始  14:25 終了点  16:15 取付着】


10.29(金) 晴 下山
去りがたい思いながら下山。来たときよりだいぶ葉が散り、立山も白い。大町温泉に寄り、薬師の湯600円。極楽。焚火のススはしつこかった。

本チャンルートは先日の谷川岳に続けて2回目。山のまっただ中にいるという感じがいい。(しかも丸東はアプローチが近くて楽。)黄葉が美しいうえ、シーズンの終わりで誰もいない静かな壁というのも気持ちよい。今回の3本ともルートどり、支点の取り方、ボルトの首へのシュリンゲ掛け、ハングでのアブミの使用、連続する懸垂下降、何もかも新鮮で面白かった。沢とも共通するようでいて人工的なところは知らないことが多い。自分なりにスピードを心がけても時間がかかることも今後の課題。つらかったのは、小さめのクライミングシューズで登ったため足先が耐えられなく痛くなったこと。緑ルートではビレーだけでなくフォロー最中も踵をぬいで登っていた。