■丹沢/西沢本棚沢[溯行]

2005.7.3
高橋弘、寺本久敏、佐野智子

トポ
 "高橋さーん!もう4時半だから降りようよ!佐野ちゃんもメシ食ってないからダメだよー"
 F2を越え、F3を右らかまいていると、対岸の尾根から寺本さんが叫んでいる。そうかもうそんな時間なんだ。まだ2時か3時くらいだと思っていたのに。

 3匹の猿宜しくシャワーにうたれて5時間半近く。
 ぼろぼろの岩をだましだまし攀じり、最後は夢にうなされそうなランナウトのはてに、ともかくも高橋・寺本・佐野の3人は本棚70Mを登りきり、落ち口に立ちました。本棚にへばりついていた時間の記録をつくったかもしれないが、それはわれわれの魂の存在証明であり誇りである。天空から豪快に水を吐き出している滝の瀑風を浴び見物客注視の中取り付き、登ってる最中にもはるかな下に入れ替わり立ち代わり見物客が訪れていましたが、終える頃には梅雨の長い日もようやく傾きかけひっそりとしていました。WE DID IT !!

 1P (寺本) 30M W+/A0
 2P (高橋) 20M A1/V-
 3P (高橋) 25M V+/A1

 ルートは右端から登り始め、中段で下から見えないバンドを渡って壁の真ん中に立ち、取り付きから眺めたときにまさかあのラインではないよねと話していた水流脇の空間に身をさらけだし、最後は行かねば全く見えないスラブから草付き(激悪!左のリッジを行くべきだったのか?そちらも岩がもろそうに見えたのだが)。1P目リードする寺さんからして足がミシンを踏んでいる。ピッチを追うごとに壁は傾斜を強め、岩は崩壊の度を増していく。乾いた岩はどこにもない、いたるところから水が滴っている。テラスはしぶきの中で、曇り空だと、雨だかなんだかさっぱりわからない。あぶみはもう使いまくり。上の体感グレードは岩のコンディション、つまり崩壊度によっている。ムーブは基本的に正対3点支持しかない。教訓: 本当に欲しい時にはRUNNINGは取れない。
 20年前(19年前かも)に後輩3人とやつらのリベンジに付き合い、はじめて本棚を目にし圧倒された。そのときは1ピッチ目のテラスで、あまりの寒さに撤退したが、1P目はそのときより難しくなっているような気がした。戸崎、高橋、高野よ俺は登ったぜ。ん十年後になってしまったが。
 ところで、悪い悪いなんて書いているが誤解されてはこまる、一日中とても楽しかったのである。
 大滝右岸の巻き道をたどり、取り付きに戻ると本棚は登る前より立って見えた。

(P.S. 藤沢山岳会2004年4月11日のネット上の記録が参考になりました。水温8度!半袖に見えるが?尊敬します。)

高橋 記

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