阿能川本谷右俣〜阿能川岳〜左俣下降


2005.11.23 青山 
         
ピークはちゃんとあるけれど、道も人の気配もなさそうな山を歩きたいと思った。手
元の地図から登山道ののっていない、きれいな尾根があり、沢筋も延びている山を選
んでいたら、あれもこれも気になり始めて数日寝不足になった。沢から雪と薮をこ
ぎ、ケモノ道さえないような薮稜線に出たら、北側に真っ白な谷川の山々が見えた。

この季節の足回り、フエルトと雪の相性はどちらかというと悪い。さらに奥秩父では
フエルトが凍りつき、雪や氷がない所でもよく滑った。良い策はないか、鋲付き長靴
だとかいろいろ考えて、思いつきでメッシュ生地にやわらかなゴム底の靴(1000円)
+ネオプレーンの靴下 を試してみた。近所のサンダル屋で以前買った川遊び用の靴
だ。水の中も冷たくないし、水切れもいい、雪の中を歩いても寒くないし、フエルト
ほどは多分滑らない。雪山なのに遠慮なく水にジャポジャポ入れるのは、何か自由に
なった感じがする。ただしフニャフニャな靴なので、たまに脱げる。フリクションは
普通の運動靴より効く、けれどここの岩はとてもぬめっていた。

右岸の車道を歩いて関越自動車道がトンネルに入る横から、沢へ向かう。駅からここ
まで1時間半。山の中に車がつっこんでいくのを横に見るのは変な感じがする。砂防
ダムを右から越えて林道に合流すると、小さな祠があり、すぐ林道終点。さて入渓、
水流の石は苔でやたら滑る。進むうちに、ちらほらだった残雪が増えてきて、日影に
はつらら。転びたくないのと濡れたくないのとで、主に沢の横を歩く。自分と同じラ
イン取りをしていたり斜面の登りが大変そうだったりと動物の足跡に共感を覚える。
熊っぽいものもあった。一度猟銃のような音を遠くで聞いた。雪の下の石で滑った
り、氷を踏んで割れて水に入ったりしつつ、最後はササ薮漕ぎラッセル。山頂近くで
は膝上ぐらいまで雪も増え笹や灌木の密度も濃くなり、せっかくなのでワカンも使い
雪と笹にのった。稜線から谷川岳方面がきれいに見える。すぐ隣なのに、ここが里山
の初冬ならば、あちらはべた雪で完全な冬山という貫禄。稜線はシャクナゲも出てき
て進みづらい。尾根を下ってもいいかなと思っていたけれど、この薮では間違いなく
今日中に帰りつけないだろうし、沢下降(沢の横の斜面トラバース)に切りかえた。
阿能川本谷沢自体は、ヌメるし、土もズルズル、そして暗い、とあんまりな印象。足
元に草が茂っているからか南っぽい雰囲気を感じ、関東(というか谷川)にもこんな
谷があるとは意外だった。二俣までは踏み跡があるが、その先は人の気配が全然なく
て山の中に一人でいるという感じがしてよかった。

雪がどんなだか見当がつかないので冬靴・アイゼン、念のためオーバー手袋や目出帽
まで過剰な装備を持っていきながら、軽やかなペラペラの足元のまま山行を終えた。
沢タビよりさらに裸足の感覚で意外といい。一応足慣らしの為、舗装道に出てからは
冬靴に履き替え、里で履くと一層、重くて大きくて大げさな感じがすると思いながら
帰途についた。

【6時JR水上駅-7時谷川岳PA付近-7時半林道終点入渓-12時山頂-3時林道終点下山】