■頚城/鉾ヶ岳 金冠谷
2005.9.16-.17
太田幸介、鮎島仁助朗
鉾・権現。滝の内沢で有名なこの山域には、まだ数知れないほどの険谷があるらしい。確かに登山大系にはそのようなことが書かれている。
パイオニアワークという響きほど心地よいものはない。ほぼ登り尽くされて、そのようなものが見当たらないような日本に一筋の光。それを感じた。東面の湯沢川金冠谷。この山域でも大きい流域の1つであり、下山後の便も良い。これだ。滝の内を想定して、重いガチャと4日分の食糧を詰め込み、いざ。
9月16日(金)晴
駐車地から藪を漕いで沢へ下る。登山道マークが地形図にはあるが、そんなものは見当たらない。まずは1つ目の堰堤を右から越えるべく、水流をわたるが、その後も藪である。予定通り右から越え、2つ目の堰堤は高くなく、水流の右脇から直登。3つ目の堰堤を左から直登するが、かなり悪い。体感としてはボルダーグレード4級はあるだろう。
白滝を右に見やり、その後もゴーロを歩いていくと、だんだんと両岸が高くなってくる。しばし行くと右岸から鋭い切れ込みがあり、そのためか、本流にはその対岸に雪渓の残骸がある。沢は右へ大きく曲がると、大きなゴルジュ地形となり、F1(15m+5m)2段滝が出現する。圧倒的であるが、近づいてみると水流右が登れそうであったので、空身で登ると見た目どおり、それほど難しくはない。クラック豊富でよくカムが決まる凹角状を15mほど登り、そこから左へトラバースして1段目の落ち口に立ち、そこから水流を5mでF1の落ち口に立つ。V+ぐらいである。
次はF2(10m)が水流を左へ曲げながらも落ちているがそれはシャワーを浴びながら右からガレを伝うように簡単に登ると、一気に沢は開け、権現沢との二股となり、快適な河原となる。
しばらく休憩して、右の金冠沢へと入る。
すぐゴルジュ地形となり、小滝が3つほど連続するが、すべて簡単に登れる。少しゴルジュの中のゴーロを行くと、F3(25m)が出現。登れるかどうか、しばらく窺う。確かに、傾斜は緩く、確かに登れそうではある。しかし、クラックはなく、リスも見たところ1箇所走っているに過ぎないところで、リードで突っ込んでいくのはかなり勇気がいる。フォローならきっと行けるのであろうが・・・。というわけで左岸から流入している水流から巻く。しかし、この巻きも最後が泥つきとなっていて嫌らしい。最後は懸垂下降10mでゴルジュの沢に戻る。沢に戻って、下を見ると25mの上にF4(5m)とF5(8m)があることが判明。特にF5の8m滝はどう見てもボルト連打でなければ登れない代物であった。これは今後の課題として残しておくことにしよう。
沢は再び開け、すぐにまた二股となる。右へ行けば、鉾ヶ岳へ直接突き上げる沢であるが、見るからに平凡そう。なので、まっすぐ行くとF6(8m)のCS滝。まともに水流を受け、苦しい壮絶なシャワークライミング。ゴーグルをつけていてもコンタクトレンズが外れるほどだったらしい。フォローのユマーリングでもかなり苦しいが何とか行く。
小滝をこなしていくと、沢は大きく右に曲がりそこにF7(15m)。脆い左壁を登ってエイリアンでランナーをとり、そこから水流を浴びながらのトラバースでハイライトな登攀である。岩が脆く、スタンスが崩れる中の嫌らしいクライミングをこなしつつも右壁に渡り、そこからは水流のホールドを見つけながら3mで落ち口に立つ。核心部分である。
沢は再び左へ曲がり、また右へと曲がったところにF8(7m)とF9(6m)。F8はまたまたシャワーである。フリーで抜けるが、ヌルヌルで嫌らしそう。フォローはユマーリング。F9は右壁から登るが、ホールド、スタンスともにヌルヌルである上にすべて外傾しておりものすごくいやらしい。巻くのも悪いので登るしかないが、小さいけれども第2の核心とも言え、侮れない。
これを過ぎると、あとは小滝の連続で難しくはない。頑張れば稜線に抜けられそうであったが、それほど急ぐこともないので、適当なところを整地して、幕とする。
9月17日(土)晴
本流は左であるが、稜線に抜けるのは右のほうが早そうだったので、右を選択。途中、泥付で嫌らしいところもあるが、それほど藪漕ぎもうるさくなく登山道に飛び出た。そこから鉾ヶ岳までは15分ほどだった。
権現岳経由で下山。気温が上がり、バテながら何とか下る。登山道には似つかわしくないはさみ岩や胎内くぐりなど楽しい登山道であった。
2005.9.22 鮎島仁助郎