北岳バットレス 下部フランケ-Dガリー奥壁
 
2002年岳人に連載されていたカラーグラビア新日本のlong & free ルート特選(注*)の本ルートの紹介がふるっていた。"その快適すぎる内容はアルパインと一口に括ることはできない"。これで興味をそそられないクライマーはいるか?まあそりゃいるだろうが、快適すぎる?オーマイガッ なんてこった。一度でもフリークライマーであったならばなおさらだ。その頃何年もザイルを使っていなかった私だが、なぜかその号は買っていて切り抜いてファイルしてあったのだ。いつかきっと登るぞとは思っていなかったが。
 
甘い記事に踊らされた結果は、趣旨に沿えずAO。下部フランケの10aのピッチは全く登れそうにありませんでした。ヒーと思ってる間に足を滑らせ左手でシュリンゲをつかんだところまではいいとして、耐えていた右手のカチに強烈な負荷がかかって右肩を壊しました。ちょっと静養して治るつもりですが、それにしてもここのところ一年に一度はどこか痛めます。はあー
 
それはそうと、夏雲わくバットレスのコンディションは最高で、そんなに暑くも無く、8本歯の稜線上の登山者より次第にこちらのほうが高くなっていく爽快感と硬い岩に多彩な内容は絶品。個人的に特にしびれたのは奥壁の2ピッチ目と3ピッチ目。ハングを越えた後の広大なスラブはジャムした足が抜けなくなるほどバッチリですが、二人の最大サイズ長島さんのキャメロット一番ではどうしても小さすぎてきまらず、悲しくなるほどランナウトしてしまい、クラックが切れたあと右に移る一歩はビビりました。でも気持ちいい!3ピッチ目はオフウィズスから城砦ハングのチムニーまで長嶋さんリードで50Mぎりぎり。苦労して体をこじ入れるとトンネルのようにオフサイズが延々とつづく。"長嶋さん俺もうだめかもしんない"と泣き言が入ってしまいましたが、たまりません、笑みがはじけます。
 
終了点からお花畑のなかの踏み跡をたどり北岳山頂へ。私はバットレスデビュー。一方、長島さんは南アルプスデビューで片手に余る貴重な100名山ゲットです。アイスでさんざん麓を引きずり回されて山頂には立ったことがなかったそうで。
 
8/5: 西国分寺0700 - バス芦安/広河原1040/1150 - C沢出合テンバ1600 - バットレス下部岩壁偵察後天場戻る1800 (二股から長嶋さん7Lの水を担ぎましたがC沢には水がドウドウと流れてました)
8/6: 起床0300 - テンバ撤収出発0400 - 第五尾根支稜取り付き0500 - 下部岸壁・下部フランケ・Dガリー奥壁計13ピッチ - 4尾根終了点1030 - 北岳山頂1130 - 広河原着1500 - バス1600
 
2006年8月5-6日
高橋・長嶋
 
注*: ネットで岳人バックナンバーを検索すると新日本特選には海金剛スーパーレイン、瑞がき山ベルジュエールルート、錫杖注文の多い料理店等ロクスノラインナップですが、バットレス下部フランケーDガリー奥壁がクラシックで異質です。NO.11で中途半端に連載が終わり次号から"マイフェバリットルート"に変わっています。
 
記)高橋