■九州/傾山 ベニガラ谷

2006.8.5-.6
宗像、鮎島仁助朗
8月5日(土)晴のち曇ときどき雨
 5時半に起床し、朝食後、宗像家を出発。久々に宗像さんと山に行くので、まぁ車内もそれなりに楽しい。ただ、裸足の運転はいかがなものだろうか?もちろん、渋滞などはなく御泊に到着。まぁどこから入渓すれば良いのかまったく分からないが、さすがに集落の中から入るのは躊躇われる。また、薮こいで入渓というのもポリシーに合わないらしい。10分ほど迷った挙句、御泊集落から払鳥屋に300mほど行ったところに立派なログハウスがあり、そのお宅脇から沢へと向かう草に埋もれた舗装路があることを発見。ログハウス入り口あたりに車を勝手に停めさせていただき、舗装路を下ると沢であった。舗装路は対岸に続いているが、橋はすでに流れてなくなっていた。まぁ正解なのだろう!
 入渓すると、うきゃー速すぎるぞ。宗像ペースは。なんだよこれ。まぁ負けたくないのでついて行くけども、このまま行けば記録の10〜12時間どころではないな。確信。すぐ行くと堰堤が2つあり、右から巻くと、なんだか堰堤がダムみたいになっていてバックウォーターになって、かつ二俣になっている。右は水流が流れているが、左は伏流。地形図は左なので左へ行くが、まったく遡行図にはそのようなところはない。おかしいな。
 少し行くと、水流は復活して、もう少し行くと花崗岩のナメとなる。すぐに終わってもう少し行くとゴルジュになる。うーん。遡行図にはこれはないのだが・・。だいたいそもそも、記述と遡行図がまったくあっていない。よく分からん。っで、このゴルジュを左からヘツっていくと、私だけ1度落ち、そこを越えて右に渡ってさらにスラブを登るところでもう一度落ちた。悔しいが、ドボンだけですむので問題はない。花崗岩のスラブが非常に滑りやすく、骨折した左足の柔軟性のせいにして言い訳を試みる。6mほどの滝は右の滑りやすいスラブから越え、その後もロープを出すほどではないが、滑りやすいヘツリと楽しくジャブジャブできるゴルジュを過ぎると平凡な渓相。それを行くとまたきれいな花崗岩のナメ。それがあっという間に終わるとまたゴーロ・・というような渓相。パッと谷は開けて左に曲がるところは5mの泳ぎが必要だが、流れは速くないし水も温いぐらいでちょうどいい。
 またさらに進むと、15mほどの滝がでる。ここでロープを出す。私リードで水流左から登って中段上のバンドでモロに濡れながら水流を潜るところが一見怖そうで小心の私は前後にハーケンを打ったが、案外安定しており、よほどくぐってからの直上が滑りやすそうだ。それでも総じてV級であるが、楽しめる。上には橋げたがあった。どうやら遡行図を書いたヒトと記録を書いたヒトはまったくの別人で、図を書いたヒトはここから入渓したようだとの結論に達した。
 なおも速いペースで進むと、逆くの字でかかる20mの滝。すぐ上には15mの滝がかかっている。これはどうやら支流の滝らしいが。右のスラブからいけそうだということで宗像さんが行ってみるが、嫌らしそうなので戻ってきた。結局、簡単に右から巻いて水流に戻る。その後は、順調に高度を稼いでいくが、やはり前半の飛ばしすぎか、ペースは落ちる。
 三俣らしいところを真ん中に選んでなおも進むと、水流は伏流となり、涸滝をいくつか越えると水流復活し、小ゴルジュの中に15mの滝。宗像リードでいく。取り付きは水たまりとなっており、足がつかず泳いで取り付いて完全にシャワーとなりながら越えたが、しまった。ハンマーを下に置いてきた。とはいえ、置いてきてしまったのはトンカチ。宗像さんはメットを忘れてきているうえ、ハンマーもなくトンカチなのだ。そのためリードする際は私のハンマーと取りかえっこするのだ。という私も、ナイフとコンパスを忘れてきているのだが・・。まぁともかく、せっかく登ったのに一度懸垂下降してそのトンカチを取りに行き、またシャワーの中登っていく。宗像さん曰く、「シャワークライミングの練習をしている奴、始めてみた!」あぁ疲れた。
 前半の泳ぎとこのシャワークライミング、さらに速いペースが祟って、完全にバテバテだが、まだ昼。宗像さんはまだ元気そうだ。少し行くと左からガレ谷が入ってスラブ滝10m。これはノーロープで越えると、両岸に広がる大岩壁の中から20mの滝が落ちている。この滝、明らかに登れなさそうだ。っで、すっかり水に濡れた資料を読むと・・。うーむまったくわからん。“水流の中を登るとスリルがあって面白い”という滝か?。いやぁどう見ても登るにはものすごく気合の入った登攀が必要だし、ハーケン5枚じゃとても心許ないぞ。まぁ明らかに登れなさそうなので、まぁ何とか巻けそうな右壁から大高巻きしようと思ったが、嫌らしい。やはり滝を直登できるのか・・ということで再度沢に戻って、もう一度見たが、どう見ても気合が入ったクライミングをするかなくそれを避けるにはやはり右からいくしかない。運悪く、空はゴロゴロ鳴り、小雨が降り始めてきている。なんだか雲行きが怪しくなる中、行けるところまで行って、岩壁に阻まれたところから15mロープを出してなんとか稜に出たが、高度感があって嫌らしい。さらには、虫がブンブン飛んでそこから懸垂下降で、確かに残置スリングがある立派な木があるが、空中懸垂をしなければならず、我々が持っている50m一本=25mで足りるかどうか・・。意を決して、家庭持ちの宗像さんが下りていくと、ギリ20mの懸垂で大丈夫だった。あぁ良かった。本流を見ると、なおも登れそうもない滝が2つ3つ続いていたように見え、もう疲れきっていてことなく、また右岸から巻きに入る。巻き終わってようやく沢に入ると10mスラブ滝がかかっているのでこれを左から巻いた。宗像さんは、どうやらおかしいといっていたが、確かにまったく資料と合致しない。まぁでも水は流れているし、方角も合っているようだけれども、資料の記述・遡行図とまったくあわない。ウームまったく分からん。分からない。やはり、沢登りなんて資料なんて持ってこなければ良かった、いや少なくとも資料を読みながら登るもんじゃないなという結論に達した。
 この巻きに時間がかかったのだろう、いつの間にか時間は3時半を示し、ちょうど滝上が平らであったので整地して、タープを張る。
 西牟田針葉樹会長更迭事件などで話は盛り上がる。
8月6日(日)晴
 宗像さんはタープは初めてだったそうで、寒がっていた。朝から焚き火をして、暖を取ってから出発。朝食はカップラーメンだ。山行中にカップつきのラーメンを食べるのは初めてだが、麺は崩れていないし、まぁ1泊なら嵩張らないしでなかなか利点があるようにも感じられる。
 どんどん小滝は連続するがロープを出すことなく上がっていくと正面に壁が出てくる。左に回りこむようにくぼ地から稜線に上がっていくと、登山道に突きあがった。登山道を上がって傾山。あいにく、高曇りで祖母山までは見渡せなかったが、昔、宗像さんたちが再開拓したという二つ坊主岩は間近に望むことができる。本当に岩は硬そうだが傾斜はきつくて大変そうだ。実際も、オーバーハングが多発し非常に困難なエイドクライミングになるようで、今現在、頂上からこれだけ目立つ岩で硬い岩にもかかわらず誰も登っている人はいないらしい。まぁそうだろうな。谷川幕岩でも誰も登ろうとしないんだもんな。そのうえ九州だもんな・・。
 1時間ほど休憩して下る。標高を下げていくに従い気温が高くなり、非常に暑い。こういう炎天下では林道歩きも長く感じられるが、大分の田舎の集落はすごいところにあるもんだ。

 この山行を一言で総括するとしたら、“わからない”山行だったといえるのかもしれない。上流部では溯行図やHPの記録を見てもどう考えても我々が辿った道筋で一致しないのだ。私がシャワークライミングを練習した15m滝はどこの記録にも出てこないし、苦労して高巻いた20m滝もどの記録にも見当たらない(但し残置スリングはあったので来た人はいるのだろうが・・)。逆に、上流部で連続するというナメ滝は我々が辿ったところにはなかった。???である。っで、どこで違ったのか・・と考えてもまったく思い当たる節はない。我々は完全に本流沿いに来たつもりなのだが・・。三股かな?
 とにかく静かでいいところだった。九州で10本の指に入る名渓だとのお品書きにウソはないし、宗像さんが述べるには川上本谷よりいい谷だったらしい。日本でBest100に入るかどうかは疑わしいが、九州を代表する谷を登れたことにまずは一入である。

【記録】
8月5日(土)晴のち曇ときどき雨
 0730御泊、1530幕地
8月6日(日)晴
 0700幕地、0820稜線、0845傾山、1100駐車地

2006.8.16 鮎島仁助朗 筆