■丹沢/玄倉川ザンザ洞本谷[溯行]
2008.6.1
高橋弘、寺本久敏、田中美穂
ザンザ洞本谷の渓相
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11時間行動のうちザンザ洞の遡行に要したのは3時間。
並じゃない名称に惹かれて沢登りを丹沢で始めた頃から登ってみたいと思い続けてきたが、この効率悪さが故に今まで行けてなかったのである。昔はシーズンを外れればユーシン(これまたエキゾチックな名称じゃありませんか)まで車が入れたが誰も車なんて持ってなかったし、何年か前からは隧道内壁崩落の危険で小川谷出合いすぐのところに車止めゲートが設置されている。因みに自転車を持ち込める隙なんてない。何かにおびえるようにトンネル入り口が金網でがんじがらめにされてた上にオーバーハングしたバラ線によるクライマー返しまでついている。こうしてアプローチに難があるとはいえ一泊してまではなあ・・・という訳で、ある意味難度が高くなっているわけだ。同角沢までが意欲の限界ではなかろうか。他の山域の沢がオープンする前のこの季節、丹沢行ってみようかという気分に毎年なるのだが今回は東御築江が霧散したのをいい機会にザンザ洞が目的地として自然に浮かんだ。日帰りとはいえいい体トレにもなるだろう。とうわけで寺さんも"とうにでもしてください"としぶしぶ了解。
さて例のクライマー返しのおかげで林道から玄倉川本流に降りなければならない区間があるのだが、そこは本流が大きくヘアピンカーブしているところで林道は岬状の基部を隧道でぶち抜いているので以前同角沢に行ったときもそこがどうなっているのかうかがい知れない部分だった。モチコシ沢出合手前(青崩隧道入り口から降りる)から玄倉ダムまでの区間は"ああーここが丹沢の黒部"と呼ばれていたところだろうな。石英閃緑岩のゴルジュは、淵に深く水を湛え白と青の世界。そう、小川谷廊下の規模をでかくしたような感じ。滝はないが通過するのにへつりの連続で泳ぎも強要される。林道封鎖のおかげでここを通過できて本当に幸運だったと心底思える。発電ダムと林道ができるまえの昔の玄倉川をしのびつついくとダムで遮られ林道に戻る。ユーシンからザンザ洞までの檜洞本谷がこれまたいい。やはり白い岩で谷は開けて水量が多く綺麗な沢筋だ。ザンザ洞に入ると・・・・さすがに神通力も尽きたか、普通の沢だった。印象が薄い。最初と最後の滝が肝のようだがきっとそれを登らなかったからだろう。最初の本谷F1は一見して登るのを拒否。二の沢のF1を登って巻いた。真夏で且つ渇水であれば取りつく気がするんだろうか。最後の大滝は心がちょっと動いたが、取り付きの岩を寺さんがコンコンとハンマーで叩いたらぼこぼこと岩がはがれたので心置きなく巻いた。同角山稜に抜けてユーシンまでの下山は"こんなに登ってねーのにな"ってくらい長く感じた。
帰りはあのゴルジュを泳ぎ下るのかと思うと夕方になってきたし寒そうで気が重かったが、いけるとこまで林道をたどると一旦川原に降りてすぐ登り返すだけで例のゲートはやり過ごせた。何だ、本流ゴルジュ辿らなくってもユーシンに行けるんジャン。知らなくて良かったー!"東のナメはどうなっているのかねえ。えへへ"などと話しつつ車まで戻る。
丹沢はもう緑濃く、湿気がなく青空の気持ちのいい一日だった。
【記録】
6月1日(晴)
玄倉林道車止め発 0630 - ザンザ洞出合 1100 - 同角山稜キレット 1400 - 車止め1730
高橋 記
ザンザ洞は短いながら滝が多く面白かったけど、倒木が多くちょっときたない感じは否めませんでした。やはり玄倉川本流遡行に尽きるでしょう。長くはないがヘツリ・泳ぎが楽しめます。去年登ったモチコシ沢大滝も見てきました。
ユーシンロッジは休館中だが立派な建物に驚いた。トイレも水洗で水が流れたそうな。先行者は釣り人が一人。本流を遡行したと思っていたが、たぶん青崩隋道を通過するために一旦本流へ降りただけだったのだろう。
ユーシンまでは片道約6km。帰りは簡単に青崩隋道を避けることが出来るので、行きは本流を遡行し帰りは水に濡れることなく林道歩きでPまで戻れる。沢初めにはちょうど良かったかな?
記)寺本