■足尾/松木川ウメコバ沢チャンピオン岩稜[登攀]

2008.7.13
高橋弘、寺本久敏
 我々はチャンピオンに挑む資格があったといえるだろう。
 なにせハンマーを忘れても、煙草をやりながら余裕を持って(?終ってしまえばなんでもいえるの典型か)登れたのだから。それなりの戦略はあった。朝3時起き、4時にヘッデンとチャリンコのダブルランプでアプローチしたのだ。
 俺とチャンピオン岩稜の歴史は古い。
 後輩の女の子がどこかの男に岩登りを教えてもらってきて俺達に日和田山で何度か手ほどきしてくれ、鹿沼の岩場で修行を積み、ほんとの岩山に登る準備が調ったと思い込んだ俺達は150mあるという足尾ジャンダルムに遠征行ってみて(交通の便が悪く3泊4日ラジカセ持参)その日本離れした荒れ果てた光景に圧倒されながらも、初日ジャンで腕慣らしをしたあと、登山体系のここも登れそうだなということで、翌日ウメコバ沢末端壁に挑んだのだった。ルート長550m!(カッコいい)ではあるが、ピッチグレードが4級なら大丈夫というわけだ。結果は・・・岩屑の堆積だらけでイメージしていたロッククライミングの真反対、乗った岩ごと滑り落ちそうで緩傾斜になるほど恐ろしかったこと、どこがルートかさっぱりわからなかったこと、終了点から見下ろす水晶岩が迫力あって岩の王国の只中にいることが全てのマイナスを打ち消してくれたことを覚えている。一番簡単なここがこれじゃチャンピオン岩稜なんてどんなに恐ろしいとこなんだろうと登山体系をみて恐怖していたのだ。登ってみて、岩は案外に硬かった。各ピッチ大きなテラスがあり、隣に平行してルンゼが走っていて高度感からびびることはなかった等々は、終ったからいえることであって、重要なのはとにかくチャンピオンに向ったことで、そして幸運にも登りきることができたということなのだ。

 3時におきて寺さんは車載道具のレンチの握りにテーピングをまいて携行用のシュリンゲを結びつけている。前夜ハンマーを忘れたことが発覚し"鮎もカムだけで登れるって言ってるし、いい機会だからカムだけで行くしかないでしょう。でもハーケンは寺さんのから使って行きますからね!"ということになったのだが、残置が惜しくなったのだろう。実際打ったのは二本。一本は手で抜けた。もう一本はスパナを全く受け付けなかった。労働の成果は重くて邪魔になっただけだった。薄暗いうちからじとーとした暑さで太陽が出たらどういうことになるのだろう。チャリ(寺号:ママちゃり、高橋号:息子の21段変速)は案に相違して結構体力を消費して、ちょっとした坂でも降りて押さなければならない。漕ぐ背中は汗びっしょりになりこんな暑さで登れるんでしょうかねえと不安を抱えながらアプローチの歩を進める。取り付きがわかるか心配だったが、案の定R7先のインゼルを乗り越してR7におりるとどれを登るのかわからなくなる。鮎から聞いたとおり目の前のやつだとすると岩峰が重なって一本の岩稜に見えない。一方、ちょっと上流にあるやつはきれいな岩稜になってウメコバ尾根に突上げている。持参した写真をみてますますわからなくなってやばかったが、上流の岩稜の基部にKCCルートの刻印を発見し、やっぱり目の前のこれがチャンプと同定できた。大きな前進。取り付きで沢足袋からクライミングシューズに履き替えていると・・・ん・・・・あれは・・・"寺さん、対岸に日が当たってますよ。こっちは日陰ですよ!"もうもらったような気分になってしまう。
1P (高橋、V)
 取り付きを示す何ものもないので適当に上を目指す。岩が硬く、フリクションも利き快適な登攀を予感させてくれる。稜上のテラスの左端、浅い凹状壁の下にリングボルトを発見。そこまで。
2P (寺本、W)
 左手のフェースから稜に出て目立つチムニーの下まで。
3P (高橋、X-)
 垂直のチムニーは下部2条に別れているので左側の浅い溝から登る。このピッチからカムが使える割れ目が出現し始め、ピッチを追ってだんだん多くなって、終了まじかになると割れ目はいくらでもあるがもろく崩壊しそうで逆に使えなくなってくる(が、ランナーの必要も感じなくなってくる)という花崗岩の一生をルート上でたどれる。特に奮闘努力は要さない。垂直部を越えたところにテラスがありそこまで25mくらい。
4P(寺本、W)
 稜状の岩峰二つを越えていく。最初の岩峰は正面から右のスカイラインを快適にザイルを伸ばす。
5P (高橋、V−)
 右の凹角が楽そうだったが、ザイルの流れが悪くなりそうなので、そのまま残置ハーケン一本ある正面稜上を登る。取り付きでバランスを要する。上部は浅いバンドをひろって左上して稜上に戻る。4Pに引き続き快適。楽しい。稜上に戻るとすぐ目の前に核心のハングがある。あれ?7P目じゃなかったの?しかたなくビレイポイントを5m先のギャップの底まで移動する。
6P (寺本、V/A0)
 見てすぐ難しいとわかる核心部。ハングの出口のクラックを掴んで立ち上がるとき足場があるかが勝負に見える。ぬけそうなリングボルトの下にシルバーがまぶしいハンガーボルトが追加されていた。寺さんはピッチを譲る気配も見せずヘルメットをパンパンと叩いて突っ込んだ。ハング前後にカムを5個設置したのでビレイする方は安心感がある。一方寺さんはサイズ選びでパンプしてA0。ハングを越えた後も暫しザイルを延ばす。リードじゃないので別物ながらフォロー体感はフリーでX+といったところか。
7P (高橋、W)
 取り付き右のルンゼ状を選択したが、そこが足場がなくちょっと悪かった。ザイル一杯のばしてもろくなってきた稜上まで。
8P (寺本、V)
 もろい細い稜上を辿ってから右上。
9P (高橋、V-)
 そのままR7上部に入ってウメコバ尾根に抜けられそうだがとりあえず真っ直ぐ稜上を辿る。ザイル一杯伸ばしたらウメコバ尾根は右すぐそこにせまり、右に10mトラバースすればつきそうだ。
10P (寺本、V+)
 トラバースしたら鮎に難癖つけられそうなので(真のチャンプではないとか何とか)上部板状の岩で蓋された左のルンゼ状に回り込みチャンピオン岩稜の頭までダイレクトに登る。完登!ピークは平らな岩で、まず2度と目にすることはないであろうここからの光景を焼き付ける。
 ザイルピッチは3P目を除いて全て35-50m。
 下りはすぐ脇のR7がクライムダウンするにはいまいちなのでもう一本向こうのR7右股?まで行って見たがさらにいけてないので戻り、立ち木までクライムダウンしてザイル2本を結んで懸垂。その後はザイル一本の懸垂と歩きが交互に。下のほうになると懸垂ポイントにシュリンゲが残してあった。
 当日は我々がもう相当上部にいた昼頃、3人組がやってきて中央岩峰(ずっと下に見える)の凹角ルートに張り付いた。我々が中央岩峰に戻ったときには既に終了していなかった。行きに苦労したチャリは帰りでは真価を発揮して、ほとんど漕ぐことなくあっという間に駐車場到着。途中チャリで追い越した3人組はぎりぎり夕立につかまってしまった。
 太田・鮎島氏の記録は大いに助けになりました。




【記録】
赤銅公園発0400 - チャリでジャン手前の第二ゲートまで - チャンピオン岩稜取付0700 - チャンピオンの頭1300 - P戻り1730

【装備】
エイリアン: 青/緑/黄/赤/紫 (青・緑は長嶋さんから借りた。紫はキャメ1番とかぶるのでいらなかった。)
キャメロット: 3番/2番/1番x2/0.75番x2/0.5番/0.4番/0.3番 (3番はいらない。同サイズ2本はいらない。)
ハーケン: 10本 (ハンマーによる回収不能のため逆にたくさんになった。予定では5本。実際の使用は2本)
ナッツ: 一応持っていったが使わ(使え?)なかった。
水: 二人で1.5リットル。ザックはフォローが担いだ。

こうしてみるといつの間にか二人併せれば一式近くが揃うようになり感慨深いものがあります。しかし、携行するのは重いですね。重さで落ちそう。

高橋 記