治田さん宅を22時30分に出発。羽生ICから東北道をひたすら北上して鹿角八幡平ICで下りる。ETC深夜割引を活用して6500円程度なり。鹿角から山越えで太平湖を過ぎるが、クネクネだ。クマゲラ保護センター近くのノロ川橋のところに車を停めた。着いたのは6時前。3人交代(私を除く)で運転しており、それぞれで仮眠を取っていたので、準備をしたらいきなり出発となる。
3つの記録(成瀬・青島P、鮎川P、木下P)はどれもノロ川林道から、支尾根を越し支沢を下降して入渓していたようだが、どう地図を見ても小又峡右岸を走る登山道を下って取り付いたほうが賢明。3時間ほど時間をかけて登山道を化ノ沢出合まで歩く。この登山道はどうせ下りだろうと甘く見ていたが、アップダウンが激しくとても消耗する道だが、時折見える小又峡の渓谷はとてもすごい。でも、実際のところこれから突破しようとしていることを考えると<あぁ見なきゃよかった>と思うし、少しだけ化ノ沢の岩質はヌルヌルで、ステルスラバーソール沢靴で来た私と高橋さんは、<あぁ失敗した>と思うことしきり。しかも、わたしはウェット下を忘れてきており、かなりブルーである。そんな感情は1.5mの幅の水路が200mも続いている化ノ堰を見ると増幅・・。
三階滝までで遊歩道は終了。準備をして三階滝で準備をしてまずは左岸巻き。スラブ登りから木登りだがウェット完全装着ではかなりヤバく、いきなり気持ち悪くなる。三階滝のあと、3〜4個ほどの釜をそのまま捲いたところで、懸垂下降せずに降りられるところがあったのでそこで沢に下りる。このあたりの雰囲気は、すごい。今後が思いやられるのような渓相である。
下りた直後の釜は右からヘツリ、次は2段3m滝。これはいきなり、泳がなければならないが、ちょっとわからないしロープ出すかと思ったら、すでに高橋さんが荷物をおいて取り付いていた・・。まったく見通しも立たないのに、ロープも引っ張らずよくやるよ。。まぁここは案外、しっかりしたカチが右壁にあって越えられたが、やはり後続はロープが欲しい。ということで、一人ずつ荷上げフォローで越えて、そのまま倒木をエイやと登る(写真@)。
まさに釜川右俣の三ツ釜の渓相でさらにヘツリ・つかり・ショートの泳ぎ+這い上がりでそれぞれを越すと6m滝。これはもう、ノリにノッている高橋さんがもう準備をしている。ロープだけお願いして、左壁の勝ちを拾いつつ、ハーケン2個を打って越えるが、マントル以外はそれほど難しくはない。
さらにヘツリ・つかり・ショートの泳ぎ+這い上がりで進んでいくと大きな岩盤となり、休憩。溯行図と照らし合わせるとどうやら成瀬さんたちが泊まった岩盤のようだが、まだ時間は12時前。とりあえず、このあとすぐに六階滝があるはずなので、空荷で偵察をしに行く。右へ曲がり、左へ曲がるとドカーンと出てきた。治田さん、高橋さんと相談すると右壁は木が生えており、それを伝えば登れそうだということでTryしてみるということになるが、やっぱり遠くから見ると、ところどころつながっておらず、厳しいスラブのぼりになりそうなところもありそうだ。ってなわけで、定石どおり先ほどの岩盤から右岸を大高巻きする。今回は、三階滝の教訓を生かし、ウェットは脱いで暑さ対策万全で。しかし、それでも厳しい。もっとも、しっかりと木が生えているのでまったく緊張するところはないのだが、なにせかなり高いところに走っている登山道まであの治田さんハイペースで一気に上がるのだからたいへんなのだ。登山道にでてからも、いろいろアップダウンがあり、体力を使うが、まったく下り口がわからない。結局、扇ノ沢までいってしまったので、扇ノ沢の右岸リッジを越えたあたりで懸垂下降を15m+20mの2回で沢床に下りたが、なんとも変なところに降りてしまい、そのままヘツって安定したところでまたウェット装着。
さて、もうそこが扇ノ沢出合であるが、資料によると良い幕営地はあまりなく、この先に行くよりは戻ったところにいいところがあるらしい。っで泳ぎ下る(写真A)。 100mほど下ると確かにいいところがあり、まだ時間は早いがそこに泊まることにした。薪も豊富、いざの場合の逃げ場もあり、いいところだ。さらに、ちょっと下ったところにはぽっかりと穴があいた滝(写真B)があり、なかなか風流だ。
朝 7時前からいきなりの泳ぎで始まる。うぉぉ寒い。扇ノ沢をすぐ左から25m滝で入れると佳滝。これはまったく弱点がなく、右岸のスラブをロープを20m出して安定した木まで登り、潅木伝いにトラバースし、15m懸垂下降をしてスラブを横切り、そのまま潅木を下ると落ち口に出られる。
そしてすぐさままた泳ぎ。そして1日目の渓相そのままにヘツリ、つかり、ショートの泳ぎ、這い上がりを繰り返して進んでいく。ロープを出すところはないし、水も冷たくは無いし、流れも急ではないが、ひたすらヘツリ、つかり、ショートの泳ぎ、這い上がり・・そのパターンを繰り返す。
一つ飛び込み(写真C)のあと、釜淵のドンツキに 6m滝(写真D)。これが核心のようだ。ステルスラバーで「鬼に金棒」の高橋総長にここも任せる。右壁にリスがつながっているところから登るが、これが案外見た目よりも厳しく、アブミの要請だ。幸い、1個だけ持ってきていたのだ。リスはあり、ハーケン連打でのA1トラバースで越える。確かに、見た目ガバだし、スタンスも豊富そうに見えるが、傾斜は強く、ホールドも実際のところ甘いカチで厳しい。荷揚げし、順次越えていく。
このちょっといったところでようやく幕営可能なところがあるが、昨日泊まったところからここまでまったくいい場所はなく、昨日の幕営地の判断は正しかったことを知る。その後も毎度お馴染みになってしまったパターン―ヘツリ、つかり、ショートの泳ぎ、這い上がり―をくり返していく(写真E)が、なんとなく先ほどと比べると、その渓相がやさしくなってきたように思える。しかし、それにしてもこの沢ではステルスラバーはとても有効だ。見よ!このヘツリを(写真F)。なにせ、フェルトでは両手をつけてようやく越せる厳しいスラブでもステルスではノーハンドでOK。フェルトの限界を治田さんは痛感したようだ。
しばし行くと、左岸からコブツキ沢が滝で流入し、すこしいくと沼ノ沢が流入する。ここまでが小又峡ゴルジュで、さっきのパターンを繰り返すことになるが、それにしても1日半ずっと素晴らしい光景がつづき、それが当たり前になっていたことはとても恐ろしいところだ。このあとは、ずっとゴーロが続くので、ウェットスーツの上はしまい、なおも行くと釣り師現る。どうやら小物ながら結構、釣れるらしい。確かに、小又峡ゴルジュ内でも結構いたし、雰囲気的には大きいものがたくさんいそうで、高橋さんは竿をもってこなかったことをとても悔しがっていた。
親滝を左岸から巻くと川幅いっぱいの平水。なんとも東北の悠久さが感じられるところで、治田さんが“キモ”(普通は気持ち悪いという意味だが、ここではチョー気持ちいいの意味らしい)と連発していた。しかし、ここの岩がヌルヌルでたいへんで、いい加減に疲れるし、実際のところ右岸には登山道がすぐそこに走っているのだが、そこを行ってしまっては負けのようでがんばる。ようやくノロ川橋が架かれば、車まではすぐそこだ。
今日は橋下のところで、治田さんが持ってきた4人用テントでキャンプ。テントを張ったとたん、雨が降り始めて意外と早くついたことが吉と出た。(なお、巡視員に焚き火と幕営を戒められたが、黙認?された)
朝 3時おき。だが、みんなその前からどうやら起きているようだ。何せ、耳元を不愉快なブーンという音が連発。朝起きてみると・・・・。思い出したくないね。あの蚊の多さ。100匹はいる。ひたすら叩くが、それだけで手のひらは血だらけになる。皆吸われていたのね。高橋さんだけが防虫ネットを持ってきていたが、さすが準備がいい。
ウェットやライジャケ、幕営具などのいらない荷物は車にデポして、軽い荷物で登山道を歩き、桃洞赤水分岐まで。桃洞沢と赤水沢のどっちを登りどっちを下るかなんて実はどっちでもよかったのだが、治田さんによれば赤水のほうが長いナメだそうなので赤水沢を溯行にあてる。分岐から10分ほど左岸をつたう登山道を行くと、プールを越えていきなり出ました。ナメ。ナメ。ナメ。ナメ。・・・・ずーっとナメ。ひたすらナメ。なんじゃこりゃ。空は白やみ、森がきれいなところで、ひたすらナメの絨毯・・。治田さんでも二口大行沢よりずっと良く、No.1といっていた。これを見たらとても関東にナメがあるとはいえない。それにやたら魚がウジョウジョいる。ハヤかと思いきや、どうやら岩魚だ。それに尺上もいくらもいる。高橋さんもこれには感動していた。兎滝を越えるとさすがに魚はいなくなったがそれでもナメは終わらない。本流から分かれてもナメ。源頭まで行ってもナメ。ナメ。ナメ。ナメ。ナメ・・。このままナメのまま桃洞沢との乗り越しまでいってしまうんではないかと思ったが、さすがに藪漕ぎ開始のところでナメは終了。でもそれまでナメなんだからすごいというより他ない。
一方の桃洞沢というと・・。源頭は普通の沢なんだね。でも、下っていってどんどん支沢を集めていくに従い、ナメになっていく。太陽に映えてキラキラ光るナメもまた最高だ。途中懸垂下降を 2回して、いくと桃洞滝。天気も青空が広がり、とても清々しくナメに映える。そこからは登山道があるが、無視して赤水との分岐までで、あとは登山道で駐車地まで。確かに、治田さんの言うとおり、のぼりを赤水、くだりを桃洞と取って正解だったような気がした。