■越後/三国川野中沢ジロト沢左俣[溯行]

2008.8.31
鮎島仁助郎、渡辺剛士

100m大滝をノーロープで駆け上がる
 土曜日夜。なんだか、ずっと霧雨だ。参るぜ。泊まった三国ダムの立派な食堂の軒下は雨がしのげてよかったが、なんとも憂鬱。予報もビミョーだし。ま、行ってみてダメそうだったら適当にAルンゼに転戦ということで話はつけておく。もちろん右俣は論外だ。長渕、聞かなかったから本当に気合も入らない。
 朝起きて移動。雨は上がっているが、予報では午前中は曇で15時から雨。早く出ることに越したことはない。野中の集落から10分程度の林道終点で車を停める。ゲートは一つ突破させていただいた。日曜なので工事はやらないだろうからね。
 林道終点からは年代物の吊り橋を渡って奥へと延びる道をたどれば10分程度で滝沢との出合。ジロト沢に入ると、重松越への道が続いているはずだがよくわからないので、沢づたいに行く。ほとんどがゴーロみたいなものだが、時折滝があったりナメがあったりもする。が、ロープを出すということは無い。
 正面にドカンと一筋の流れが見えるようになるとAルンゼ出合だ。当初は「ヤバい状況ならAルンゼだね」とかはなしていたが、大丈夫そうだ。いやいや、Aルンゼなんて眼中に無い。右俣だ。とにかく布晒ノ大滝から続く右俣は本当にカッコよいのだ。ちょっとあれを登っている自分を妄想すると、ウフフだね。登れたらの話だけど。ま、あれを登るとなったら二日前に誘ってどうというシロモノでは絶対にないし、こういう予報で突っ込むものでもないね。
 このあたりからはゴルジュっぽくなって、滝を巻いたりしていくが、これまたロープを出すということでもない。Bルンゼ出合の滝壺には岩魚がウジャウジャっていた。ここは釣れるかな。
 布晒がドカンとさらに目前まで迫るとそれに目を取られて左俣との二俣は見そびれてしまいそうだ。ま、そんな感じで左俣が始まり、すぐ30m先で左俣の100m大滝だ。ここまで林道終点から1時間半。
 取付きでクライミングシューズに履き替え、じゃんけんでリードを決める。うーん、また負けた。ナベじゃんけん、通算5連敗ぐらいだろうか。なぜかナベには勝てねぇな・・。
1P目(ナベ、40m、V+)
 取り付きは水流のずっと右の小ルンゼっぽいところから。取付きには、セルフにもならないリングボルトがある。傾斜は寝ているので、一見、楽勝っぽいが、出だしがちょっと細かい。エヘッ、ゲロりますと、私落ちました・・情けなや。でも、そこを越えてしまえば、ロープ操作が追いつかないほどの楽勝スラブを左上して40m伸ばした潅木でピッチをきる。結果的にノーピンでロープが欲しいのは出だし5mだけ。
 2P目・・・。うーん。「ロープいらないんじゃない?うん、そうだね。」ということで、ノーロープでおよそU~V級程度の簡単で心地よくてスッキリしていて登るにつれてちょっと怖くなるスラブを50m登り、水流を横切りそのまま水流沿いを30m。途中、怖いところもあったりするけど、簡単なところを探しつつ行けば、結果的にもロープをつけなかったことを後悔もしなかった。
 この上はスラブ滝が2つ連なる。コレはちょっとロープが欲しいということで鮎島リードでスラブ滝を左から取り付きギャグにしかならない小枝程度の潅木をランナーに右トラバースで一つ目の滝を越え、2つ目は右から潅木を伝って落ち口へ30m。ま、V+というところか。
 これで100m大滝は登りきり、沢は小康状態になる。普通の小沢に小滝が連続という渓相をクライミングシューズのまま巻いたり登ったりするとすぐに略奪点下。略奪点下の滝を右から巻くようにリッジに出ると、略奪点。
 この略奪点。いいよ。すごくいいよ。滝がリッジをはさんで左へ右へと水が分かれていてるなんとも珍しいところだが、そういうことより眺めがなんと言っても半端なくいいのよ。天気はも予報が外れて快方へ。しかも快晴になりつつある。すっかり気分がよくなり略奪点で大休止。見渡すスラブの大伽藍が心地よきかな、よきかな。防水デジカメを新調し、この絶景の前でヌード写真を撮りたいと突発的な妄想し始めたナベを横目にスラブを順々にA、B、C、D、右俣、E、Fと見ていく。あれ、ヒトがいる。なんと右俣の布晒大滝取り付きにヒトがいるではないか!まったくこの見えない天気の中、右俣に取り付こうというのか。こっちは左俣ですらオッカナビックリ来たというに、なんというチャレンジャー!すげぇな。さっきの言葉は当てはまらないヒトもいるんだなー。ちょい、気合をおすそ分けいただいた。ありがトゥーー。
 ゆっくり休んだあと、晴れて神々しいスラブ滝80m。80mといっても略奪点から見えているところが30mぐらいしかないわけで、100m滝以上に威圧感もなく、これまたノーロープで。水流左からスラブを登り始め、途中で適当に右に渡り、最後の滝は、左から巻くように登ると大滝終了。
 ここでクライミングシューズを脱ぎ、沢靴に履き替えた。あとは一気に傾斜を緩める。ただ、なぜか幅1.5mで深さがヤバいゴルジュがあったりする。ここはツッパリで越えると沢は右へ折れ、心地のよいナメ滝やなんとも言いようのない“癒され小沢”となった。
 時間はまだ9時半。このままどんどん行きたいところだけれど、大兜山まで行っても藪漕ぎが長いだけ。適当なところから右岸の尾根目指して登る。
 うん、でも、ショートカットしたつもりだったけど、甘かったようだ。すんげぇ藪が長いのよ。30m上がれば稜線に出るという記録もあったのだけれどまったくそんな雰囲気は無い。天気は快晴。若干、熱射病になりかけながら藪をこぐ。そのうえ、この藪がまたハードで地形もわかりづらいのよ。GPSの力も借りながら、なんとかなんとか展望台といわれるところにつくと、すぐ下にさっき辿った左俣が流れていて、がっくり。とにかく、あまりの小沢の気持ちよさに進みすぎたようだ。正解は、あの1.5m幅ゴルジュを越えて右へ沢が折れるところをまっすぐ登れば、すぐそこが展望台だったということなのだろうか?なんだか、1時間以上、無駄な藪漕ぎをしていたようだ。でも、次は、バッチリだね。
 展望台からはまた、藪を30分弱こぐ(展望台からは意外と踏みあとがあったりする)と変な小屋。雨量計なのか?まぁここからはしっかりとした道があるのでラクチン。この道、ちょっとでも傾斜が強いところはロープが張られているし、人間様にとっても優しい道なのだ。13時には駐車地に下れた。

 うん、そんなに難しくなかった。“ジロト”っちゅうと「すげぇ難しい」という印象を持ってませんか?実のところ私はそう思ってました。記録だって難しそうなこと書いてありますからね。しかしながら、クライミングシューズを履いた我々(ここがミソ!)は、100m滝も80m滝もまったく難しいとは感じられず、とってもとっても癒されたわけです。当初の計画通り、「さよなら俺の夏、慰安山行'08」となったわけです。
 さよなら俺の夏・・はともかくジロト、いいっすよ。右俣はともかくとしてですね、ジロト沢左俣は西ゼン・登川米子沢・神字川金山沢の“越後癒し3強”の一角に間違いなく食い込む素晴らしい沢だす。なにしろアプローチは至近、沢に変化があって難しくない。そしてあの眺望!略奪点ならびに展望台の眺望は本当に素晴らしいッ!眺望だけなら、間違いなく上記3つよりもいいね。I reary think so..。上記3強へすでに行かれた方、ぜひ、ジロト左も・・。ナベは、3強にも行って評価してくだされ。
 さてさて、あの右俣パーティはトマの風パーティ3人組らしい。翌日、月曜日の午前中ナベからの提供情報でCatch。記録早いなー。ともあれ、刺激されたね。うん、漠然と「左俣登ったらジロトはもういいな」とか思っていたけど、あれを見ちゃうと俄然やる気出てくるってもんだ。やるっきゃないね、ナベ。来年、よろしぅ頼んまっせ。

2008.9.3 鮎島 筆

【記録】
8月31日(日) 曇のち晴
 林道終点駐車地0520、二俣0700、溯行終了点0930、展望台1115、駐車地1300

【使用装備】
 ロープ50m×1、クライミングシューズ各自
※クライミングシューズは非常に有効。(無ければロープ張りっぱなしで時間がかかると思われる)
※ハーケン、カムなどは使用せず。

【写真】
ジロト沢右俣大滝(布晒ノ大滝)を背景に。 ジロト沢左俣大滝(100m滝)
略奪点にて右俣大滝(布晒ノ大滝)を見下ろす 略奪点を見下ろす。(水流が右と左に分かれてます)
1.5m幅ゴルジュ(落ちたら悲惨よ) 左稜の藪漕ぎ(この辺はまだマシのところ)