白山/大畠谷右股遡行〜開津谷左股下降


期間:2008年9/12〜9/15(前夜発2泊3日)
メンバー:L高橋弘 鈴木(仮名) 佐藤益弘 渡辺剛士(記)

概要:9/12東京〜高岡  9/13桂湖〜入渓〜大畠谷二股 
        9/14右股大スラブ〜稜線〜開津谷左股下降〜開津谷二股  9/15開津谷を下降して下山



とにかく行っちまえ!あとは神頼みだ!

オバタキ。あの「日本の秘境」にも出ていたスゲー沢。「大畠」をオバタキと読むと知ったのは最近。
俺なんかに登れるのか?と思わないでもなかったが、ピンポイントな悪さでは結構修行を積んできた。
泳ぎであの「蝉の渓谷」より難しいところが出てくるはずが無い。
脆さで「ワニ口の大滝」に勝るところはそうは無いだろう。
岩登りだってそこそこやってきた。夜行日帰りで毎週のように出撃し、そこそこ体力もついたはず。
あとは総合的な経験だ。天気さえ良ければ…そう祈るような気持ちで迎えた週末だった。



9/12(金)2000西国分寺 2600ごろ高岡駅

日本海側からのアプローチ。交代で寝るはずが寝まくったのは俺だけ?すみません。
時々天気予報を携帯で調べるが、出てくるのはネガティブな予報ばかり。
高岡駅前の有料駐車場に泊めて、駅の正面広場でオープンビバーク。


9/13(土) 小雨〜曇り〜晴れ
0400ごろ出発  0650桂橋の駐車場発 0755二段30m滝 1020下部ゴルジュ連瀑帯を抜ける 1525二股

関西から出撃の鈴木さん(仮名)と合流して高岡発。桂湖畔の便所でウエットなどを履いて登攀準備するが、いかんせん天気が悪い。シトシトと降っている。
正直行きたくねーなー、こんなんで大畠谷なんてやれねーよー、と思ったがなにせここまで来てしまったので行くしかない。
それとなく「転進」という単語を口に出してみたがみんな相手にしてくれない(実は高橋隊長もちょっと迷っていたらしい。
「ナベと二人だったら出発できなかったね」とは本人のコメント。当初は2人で突っ込む予定だった。なお、同じ日に入渓したトマの風パーティはこの雨で入渓を遅らせたらしい。そりゃそうだよな…)。
再び車に乗って、どんづまりの桂橋を渡ったところの広場に駐車して出発。


駐車場で最終準備。シトシトと降ってます。

大畠谷出合には立派なつり橋が架かっていて、上からでもダム湖に魚がうじゃうじゃいるのがわかる。ちょっと戻ってコンクリ小屋の裏から下降。ボートを浮かべた釣り師がいたが、あれだけうじゃうじゃいても、別に入れ食いというわけではないらしい。

入渓してちょっとの間は伏流していたが、すぐに水量が出てきて、30分も歩いたらいい感じの沢になってきた。
それにしても佐藤さん歩くの早すぎませんか?このままでは滝が出てくれないと、歩きでバテそうなんですけど。
そんなことを思っていたら都合よく滝とかが出てきてめでたしめでたし。
ちょっとしたクライミングを楽しみながら遡行していると、で、でたー、下部の核心30m滝!

…実はこのあたりあんまり記憶に無くて、メーリングリストで記録を初出した段階で同行者に補足してもらいました。

記録(日本の渓谷97)では左岸から大高巻きしているが、我々はとりあえず落ち口狙いで左岸に取り付き、岩&草付登攀ときわどいトラバース、そして懸垂で落ち口に乗り移った。俺はこの時、初めて本当に泥壁にハンマーのピックを叩き込んでいる人を見た(佐藤さん)。それくらいにヤバイところだったが懸垂以外ではザイルは出していない。鈴木さん(仮名)が先頭に立ってスタコラ登っていってしまったからだ。
「ナベ、俺だけこのまま高巻きしていい?」 by佐藤さん(登攀中・落ち口方面への結構ヤバいトラバースを前に)
「こんなところでザイル出さないなんてあり得ない」byナベ(登攀中・ゴボウ位の潅木がホールド)&佐藤(登攀中・泥壁ハンマーがホールド)
「この滝が山行の中で一番ヤバかった」by高橋隊長&佐藤さん(例会中)
「鈴木さん(仮名)ロープ引いてくれよ」by高橋隊長(例会中)
など、技術的にヤバいのにザイルを出さなかった反省意見が現場&事後の例会中に噴出。
結論として、またもや
「鈴木さん(仮名)をトップに立たせるな(どんどん行っちゃうから)」
「ドント・ビリーブ・鈴木さん(仮名)見込み」
といった経験則が蓄積されてしまった。
(久々に例会に参加された奥村さんは笑いながら「アイツに先頭歩かせたら駄目だよ〜」と軽く笑い飛ばしていた。どうも山登魂古株の間では常識らしい)

※このとき、高橋さんは共同装備分けで「鈴木さんこれ持って」とザイル1本渡していた。実は鈴木さんはザイルをすでに1本担いでいた。あとで「高橋さん、大学山岳部のシゴキみたいですね?」と突っ込んだが、もちろんわざとではない。よく覚えていないけど、ザイルを1本余計に持って来たことの影響もあった?(ザイル袋の奥にもう1本入っていたそうです

結果として鈴木さん(仮名)は一眼レフ・寝袋・ザイル2本というあり得ない重量をかついだままここをノーザイルでリードしたわけ。ハハハ…。

 左/最初の方。いい感じに面白い。
右/最初の方。なかなか風格がある。

 
大滝を下から観察。

で、そのままゴルジュを進む。遡行図では特に何も書いていなかったのでまあ大したことないだろう、と半ば自分に言い聞かせながら。ところが、やっぱり出ました登れない滝。釜の左側のルンゼ状から高橋隊長がリードしてザイルを引いていった。これは途中までランナーが冗談みたいな奴しか取れず、結構シビアそうだった。


驚く隊長。その先には…

 左/やっぱり出てきた登れない滝
右/左手の凹角(ルンゼ)から小巻きして登る

ゴルジュを抜けると河原状に。「天気悪かったらこの河原でいいか」とか言っていたが、なんだかだんだん回復模様になってきた。河原を歩いていると、高橋隊長がひょいっと手づかみで魚をキャッチ。増水してできた水溜りみたいなところに取り残されていた奴だ。「こんなにやせてる奴、食う気しねーよ」と本流にリリース。何か「いいことしちゃった」感があってちょっと和む光景だ。いいね。それにしても、遡行図上ではこの河原、短く書いてあったが、えらく長い。1時間は歩いた気がする。
そして100馬力男鈴木さん(仮名)&マラソン・トレイルランナーで「帰宅中に電車内でビールを飲み、酔い覚ましにランニング」する佐藤さんがガンガン飛ばす。
虚弱体質の隊長&ナベにとってこのペースに合わせるのはある意味ゴルジュよりヤバい。ゴルジュまだなんですか!?
気がかりだった雪渓はなかった。まだ二股にないとは言い切れないが、ここにないということは上もそんなには無いに違いない、と勢いづく。


素手で魚をキャッチした隊長。この後リリース。天気が良かったのはこのおかげ?

ようやっと上部のゴルジュ開始。ちょっとしたクライミングとへつり、を繰り返し、時にはザイルを出して進む。今回、高橋隊長と鈴木さん(仮名)は秀山荘オリジナルシューズ「忍者」でブイブイ言わせている。やっぱりタビとは立ちこみで大きな差が出る。一箇所、ザイルがないとためらわれるような滝の右側の凹角を、ビビる俺と佐藤さんを尻目に高橋隊長がひょいひょい登っていってしまい、困る。ザイルをたらしてもらったが、いやー沢タビには厳しい。鈴木さん(仮名)も楽勝で登ってしまった。参ったね。俺はなんとかカチを拾って登れたが、「沢では常に軍手」派の佐藤さんはカチが拾えなくて難儀していた。ここで悲劇発生。ビレイ用にぶち込んだハーケン(カンプの高級品)がなかなか抜けず、高橋さんがミニバイルでグイグイ引いていたらピックが折れてしまった。「2000円のハーケン抜くために、その何倍もするバイル駄目にしたら何にもなんねーよ」と嘆いている。「もう十分もと取ったでしょ」「グラインダーで尖らせたらまだ使えるんじゃ」などと慰めるが、本当に気の毒だ。

 左/上部ゴルジュを攻める
右/同じく上部ゴルジュ。時々ザイルを出した。

 
左/悲劇の6m滝。ホールドの細かいコーナーを登る。
  右/悲劇のミニバイル。

その次の釜は俺が泳いで突破。一応ザイル出したが必要なし。そのあともちょっとしたシャワーが出たりと、まあ一言でまとめると「楽しい」。ここまでそれほどヤバクもなく、かといって簡単すぎず、ちょうどいいくらいの難しさだった。
だがそういったジョイフルな感想はあっさり消し飛ぶ。大畠谷の象徴とも言える、二股周辺の大スラブが目の前に現れたからだ。象徴っていうか、しまいにはこのスラブを「オバタキ」と呼ぶようになっていたような?まあとにかくデカい。二股にタープを張りながらじっくり観察するが全然登っているところをイメージできない。目の前にあるにもかかわらず現実離れしている感じだ。

幸い流木は豊富にあり、大満足の焚き火を起こせた。


到着直後の二股と、オバタキ全景

 左/まだタープオンリー。ちょっとだけ雪渓が残っている。鈴木さん(仮名)は冷蔵庫として利用
 右/やっぱ焚き火。これがなきゃやってられない。



朝焼けのオバタキの右股。心なしか初日より小さく見える。
右股ゴルジュから左岸スラブに見える顕著なルンゼに入り、スカイラインとなっているトサカ状のリッジに出た。ちょうどブッシュがあるあたりが2p目終了点。
普通はルンゼを詰めたり、ルンゼ右手のスラブからブッシュに出るらしい。


2日目出発前。オバタキをバックに。


9/14(日)晴れ
0700二股発 0900左岸スラブ取り付き 1120スラブ上部ブッシュ帯 1155右股大滝上へ懸垂
1410ごろ稜線 1450開津谷下降開始 1620ごろ開津谷二股

超寝坊。原因は前の晩全然寝てないことと疲れ、そして明け方の冷え込み。「なんか寒いな」と思ったときに起きていればちょうどよかったんだろうが、寒さで目が覚めた俺、佐藤さんともに取った行動は「シュラフカバーを被りなおして再度スリープ」。ますます遮光&防音されて日の出にも気付かなかったわけだ。

しかしそれでも朝から焚き火を起こし、優雅な時を過ごす。朝日を浴びている「オバタキ」はなんだか昨日より小さく、そして寝て見える。「なんか登れそう…」などとポジティブ系の発言もチラホラ。俺は殊更「楽勝じゃね?寝てるジャン!」などと口に出して言霊のパワーを借りようとしていた。

右股ゴルジュへ突入。滝3つくらい突破すると、かなりぶっ立った滝出現。記録(日本の渓谷)ではここから左岸スラブへ突入しているが、我々は滝の左のリッジを高橋隊長リードで攻める。ここが治田さんの記録に出ていたX級ピッチだ。隊長は一瞬、リッジから滝につっこもうとしたがヤバいと思ったのか結局リッジを登った。フォローしてみると、うーん、この傾斜でこのモロさはヤバイ。しかも難しいのは、残置ボルトの下のセクションなのでかなりプアプロ。(プロテクションは残置ボルト1と隊長が自分で打ったハーケン)

 
左/猛烈な右股ゴルジュ
右/ショルダーをしようとしているところ。土台は鈴木さん(仮名)なので、その辺の脆い岩より安心。

 
左/X級リッジと滝。脆いです。
右/リードして荷揚げ中の高橋隊長と、フォローしながらハーケンを回収する鈴木さん(仮名)


「吸盤がないと無理」な滝。

なおも続くゴルジュの先は、手足が吸盤じゃないと無理な大滝。というわけでここから左岸スラブへ突入。顕著なルンゼ(凹角?)を直上して、トサカのようなリッジに出ることにする。

1p目 鈴木さん(仮名) 50m V+ 脆い

まずは鈴木さん(仮名)がリード。50m一杯に伸ばす。傾斜はそこそこあるものの凹角状で上りやすい。それよりも浮石とプロテクションのとりにくさが問題。結構ランナウト。ビレイ点はルンゼのど真ん中で支点もあまり良くない。


2p目 ナベ 40m V+ R かなり脆い

ルンゼから一旦右に出た後戻って、そのあとルンゼから左に出てじりじりと尾根状を進み、リッジ下の岩の層が変わるところを左トラバースして潅木(結構太い)でビレイ。ビレイ点までノープロ。まあフルボッカ&沢タビで落ちずに登れたのでいいとこV+なんだろうが、それにしても浮石が多い。岩自体はそこそこ硬いのだが。おまけにクラックも少ないし、リスもハーケンを打つとエキスパンドしてしまい使えない。ビレイしながらふと沢底を見ると、なんと他パーティがさっきの滝左リッジに取り付いている。こんなところで人に会うとは。その後、ビレイしていると、落石が鈴木さん(仮名)の頬を直撃する瞬間を目撃してしまった。どうやらロープの流れで落石を誘発してしまったらしい。幸いたいしたこと無かった。目とかに当たらなくて良かった。

3p目 高橋隊長 30m U

リッジを詰めてコルへ。潅木が多いので問題なし。それよりも眼下の右股ゴルジュが凄い。

4p目 ナベ 30m U

そのままスラブを詰めて潅木帯へ。



 
左/右股左岸スラブ・ルンゼ1p目をリードする鈴木さん(仮名)
右/それをビレイする佐藤さん。「奥が吸盤無いと無理」滝。


ビレイする鈴木さん(仮名)。この後ナベがトサカ状リッジ基部まで。見てのとおり浮石多し。

手違いでザイルが3本もあるので、後続がフォロー(プルージックorタイブロック)している間に1人がどんどんザイルを引っ張るシステムを採用。高橋隊長リードでトサカ状リッジの向こう側のコルまで伸ばし、一回ピッチを切る。高橋隊長のビレイは俺で、その間に潅木にFIXして佐藤さんがタイブロックで登り、佐藤さんがビレイ点についたら固定解除して鈴木さん(仮名)をビレイという形。その後俺リードで待望の潅木帯へ。


右股の大滝をリッジから激写。
「吸盤がないと無理滝」の先は、上から詳細はうかがい知れない釜を持った滝がいくつかあるようだ。
それを越えると、この大滝にぶち当たる。「人類には無理」です。


2p目をフォローする高橋隊長。リッジの突端の屈曲点が例の「吸盤がないと無理滝」。
右股ゴルジュの続きが見える。う〜ん、これ無理。水線突破されるのは22世紀か?


4p目終了点から。下の二人は3p目終了点のコル。ちなみに鈴木さん(仮名)が構えているのはデジタル一眼レフ。
「一眼レフは重くないと手ぶれしちゃう」らしい。あんなの担いで登るとは…。


ここでザイルを解き、潅木帯をちょっと登った後、草原を左へトラバースし、そのまま尾根を下降して(密ヤブ)、最後は懸垂で沢に戻る。沢は、ゴルジュで気合を入れすぎたのか、癒し系の景観となっている。癒されながら右股本流を詰めるが、記録で15m滝と書いてあるところで「左の方が楽そうだ」と左の支流に入ってから大変なヤブコギになる。鈴木さん(仮名)パワーで突破。凄い藪だった。鈴木さん(仮)は「ラッセルじゃないんだから、トップもラストもおんなじだよ」とおっしゃっていたが、いやいや、ラストの方がやっぱりラクですよ(俺は終始ラスト)。稜線の登山道は今にも廃道になりそうな感じだったが、ヤブコギよりは100倍マシ。多分1591ポイントよりちょっと南くらいの小ピークに出た。

ちょっと登山道を歩いて(廃道寸前は部分的)、分水嶺を確認し、草原から開津谷へドロップイン。開津谷の下降はマジで楽勝だった。(「沢は登り返しがなくていいよな」by高橋隊長)記録の右股ではなく、仙人壁に近い左股だったが全く問題なし。
途中で他パーティと遭遇。トマの風パーティだった。先々週もジロトで会ったな。奇遇すぎる。大畠谷右股から尾根を越えて開津谷へ入ったそうな。隊長は「早いですね〜。あなた方なら今日中に下山できるんじゃないですか」などと言っている。一見おだてているように見えて「俺たちは二股で泊まるからそこんとこヨロシク」という主張が見え隠れしているように見えてしまうのは下種な勘ぐりか?

二股でタープ張っていたらトマパーティも二股到着してツエルト張ってた。俺以外の三人は歓談しに行ったそうだが俺は酔いつぶれて一人先に寝てしまった。ちなみに鈴木さん(仮名)は、トマにも名が知れていた。さすが。
(「こうやって名が売れていくんだな〜」by高橋隊長)


 
左/右股ゴルジュ最後の大滝(「人類には無理」滝)を上から激写。
右/同じ沢とは思えない大畠谷右股の上部二股付近。癒し系です。

 
左/稜線。このあたりから開津谷へドロップインした。右に見える岩壁が「仙人壁」。みるからにボロい。
右/下降しやすい開津谷。

 
左右/呑んだくれ軍団と焚き火 。この後ナベ以外はトマと歓談。ナベは呑みすぎで轟沈。


9/15(月) 高曇り
0610二股発 0705左岸に大滝を望む 0830ごろ砂防ダム 0920駐車場

今日は寝坊しなかった。最後の焚き火を楽しんで、下降開始。さっさと降りて世界遺産巡りだ!というノリであるが、一人鈴木さん(仮名)だけは「えー小川山行こうよ」などといっている。下降は、一箇所古いボルト1本で懸垂(もちろん3人目まではテンションを掛けずにテストするバックアップシステム使用)が怖かった他は楽勝。それにしても、下山路くらいにしか思っていなかった谷だが、なかなかどうして、立派な谷である。特に支流の大滝はすさまじく、「あれが大畠谷にあったらもっと面白かっただろうに」と思わずにいられない。

 
左/出発前。 
右/開津谷の連瀑帯。

 
左/傾斜の強い階段状の滝をクライムダウン。ちょっとためらわれる傾斜であったが、先頭を歩いていた佐藤さんはためらうことなくあっさり下ってしまった。ええ〜、勘弁してくださいよ…
右/懸垂中。ここはカムでバックアップして支点をテスト。ラストのみ残置オンリーで下るシステムを採用。

やがて砂防ダムが出てきて、左岸の半分自然に帰りかけた林道に入り、それを辿ってダム湖へ出た。

帰りはお約束の白川郷・合掌造りの集落見学。まだ朝早かったが温泉が開いていて助かった。集落の見学では、用水路で見た魚の生態系が実に興味深かった。

「ほら、流れに向かって先頭にいる奴が一番でかいだろ。先頭にいるから一番エサたくさん食えるんだよ。最初に大きくなった奴がそのまま先頭キープしてどんどん大きくなるんだよ。人間も金もってる奴がさらに金持ちになるだろ?それとおんなじだよ」(高橋隊長談)。

その後に通った白川郷の重文・和田家を見て、うーんなるほどと納得。学んで2分後にケーススタディできた。何しろ納屋の鴨居(?)にまで飾り彫りがしてあるんだから…
白川郷内でほう葉味噌も食って、満足し帰京した。帰りは松本経由。小仏で渋滞につかまりそうになったので葛野川から奥多摩に出て西国分寺で解散。


開津谷支流の大滝。すごい。

 
左/帰りは白川郷見学。
右/世界遺産だからね。


【感想】
雪渓もなく、初日の出だし以降は天気に恵まれたのでよかった。
まあ岩登りは目茶むずいところもなく、泳ぎも1箇所くらいしか無く、つかりっぱというわけでもなく、巻きも「超」ヤバイというわけでもなく、気合十分で相当恐ろしいというイメージのある「5級」の沢に挑んだ俺からすれば、「あれ、こんなもん?」と思わないでもなかったが、それは上述のようにコンディションが良かったからで、ひとたび荒れたり、「日本の渓谷」のように雪渓が多かったりしたら「5級?ふざけんな!6級だろ!」とか言ってるんだろう。
まあそういう細かいところは置いておいて、だ。楽しい沢であった。長く、デカい。そして手ごたえのある沢であった。
しかし、コッチは相当まじめに準備してきたのに(ザックに水抜きの穴を開けたりetc)、「地図用の防水袋がねえ」くらいはまあ分かるとして、「遡行図がねえ」だの「ザイルが袋の中に1本余計に入ってましたよ」だのと、みなさんリラックスされて挑まれたようで…。グラップラーバキで言うところの「攻めの脱力(シャオリー)」を実践しとる。鈴木さん(仮名)に至っては寝袋と一眼レフで激重。あり得ん。
俺以外のメンツにとって、オバタキは週末レジャーのちょっと延長くらいだったのかもしれない。でも俺には「憧れの沢」であり、「久々に挑む長い沢」ってことでヤルマンだったのよん。楽しい沢を登れてよかった。めでたしめでたし。


使用登攀ギア:薄刃ハーケン、エイリアン小サイズ2、TCU#3、キャメロット#0.75 
※ハーケンが有効。厚さ・長さを色々取り揃えるべし。大体薄刃系の長短を各2〜3前後で足りると思う。ロストアロー(厚刃ピトン)、アングルは使わなかった。大畠谷二股までは、上部・下部ゴルジュともにクラックが意外とあり、小型カムも有効。

記)渡辺

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