■富士山西南面 深沢

2008.10.26
鮎島仁助朗、佐藤益弘
 昨秋、佐藤さんと剣ヶ峰大沢の岩樋部を溯った。大系の記述にある「4kmに渡るナメ」はどこにもなかったが、それを残念なんてまったく思わない、本当にものすごく楽しい沢であった。そう、大沢岩樋部は「特B」発祥の沢だ。ショルダーハーケン、トンネルくぐり、エイド・・。水は流れていなかったが、既成概念を覆す素晴らしく楽しい沢で、ものすごい充実感があふれていた。我らは「富士山の沢は最高に面白いぞ」という意見で共通し、大沢岩樋を終わった直後に来年もよろしくと約束を交し合ったのだった。ターゲットは深沢。地元、富士宮山岳会のホームページの「富士山の沢」特集で一番興味深い記述があるのが深沢だからだ。

腹立たしい程つづくナメ
 西臼塚駐車場で前夜泊。朝、富士を見ると雪がまったくない。
 車を進めて、高鉢駐車場に車を停めて車道を歩く。しかし、車を停めたのは「新」高鉢駐車場で、もう少し上、そこから5分ほど歩いたところに「旧」高鉢駐車場があり、こっちに車を停めた方がよかった。そこから10分で旧2合目林道入り口(バス停跡あり)。そこからこの林道を下る。それを忠実に辿り、分岐を右に辿り、さらに30分で深沢出合。途中、いろいろな沢が横切るが深沢だけは堰堤がある(銘板あり)ので、それを目印にすればよい。しかし、この林道歩きの最中、大雨にたたられ、気分は限りなくブルー。出合につくころにはやんだが、この雨は頂上付近では雪だったようで頂上はなんだか白くなっている。
 堰堤を2個越えると30mナメ滝。左右分かれてまき気味に登る。続いて沢は垂直の壁となって20m滝として落ちているが登れないので、左岸から支流のように入っている沢からまくが、結構悪い。滝上は滑床となるが、また30m滝。これも左岸まき。
 この滝上から、ナメが始まる。途中5mぐらいのボロボロ滝があるが、あまり記憶がないけど弱点を突いて、だいたい登ったと思う。あとはナメにしては傾斜が強い、スラブにしては傾斜が緩いという微妙な傾斜の岩盤がつづく。本当にイヤになるほど続く。
 二俣を左にとってからもそんな岩盤が続く。普通、ナメってうれしいものだが、これほどまでに腹立たしくなるのも始めてだ。微妙な傾斜だし、曇り空だし、濡れているし、かといって水が流れてないしね。いや、高度感もあるし、紅葉もきれいなんだけどなぁ、晴れていたらもっとキレイなんだろう。一つ、5m滝をロープを出して強引にカムでのA0で登ると、またナメ。しかもこれまでで一番、規模が大きい。でも、俺はもう飽きた。森林限界までくると、風が冷たい。酸素も薄い。なんか白いものもある・・。疲れているし、早くお中道を・・。
 風は時折、突風のようなものも吹き始めた。上はまだ岩盤が続いているが、雲で覆われて冬富士の雰囲気を漂わせている。うちらはもちろんそれに対応する装備はない。「お中道ないですけど、もう、トラバースしましょうよぅ」と佐藤さんに言ったら、賛同してくれた。あぁ、パートナーが「陸上競技」シャツを着た佐藤さんでよかった。
 途中、突風に煽られたり、雪が混じった砂というか礫というかの不安定な斜面に何度も体勢を崩されながらもトラバース。さむーい。なんとか、新五合の建物が見えてくると赤沢だ。ここでようやくお中道がわかった。お中道はかなり下のところを走っていたようだ。注意して登っていたつもりだったけど、いつの間にか通り過ぎていたようだ。
 赤沢は砂の斜面なので、走り下る。楽しい。ひざにまったく負担がかからないのがうれしい。やがて滝が現れるが、右岸巻きでくだり、市兵衛沢と合流すると車道が左岸に近くなるので這い上がる。そこから駐車地は20分ほど。いやはや、疲れた。
 確かに、特異性がある。ナメが目当てならば大当たり!?あのあと、富士山頂まで詰めれば本当にBigだろうし。でも、もうフジナメはもう満足しました。評価「B」というところがいいところでしょう。

2008.10.28 鮎島 筆

【記録】
10月26日(日)雨のち曇
 高鉢駐車場0710、深沢出合0830、二俣1030、溯行終了点1235、赤沢横断点1330、駐車地1450

【使用装備】
 ロープ30m、エイリアン緑  ※ロープは10mあれば十分。

【写真】
ナメ?スラブ?いや、溶岩盤と言ったほうが良いものが飽きるほど続く。 雪が混じった森林限界をトラバースする。後に見えるは駿河湾と伊豆半島。景色はいいよ。


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