■南ア/濁川本谷[アイスクライミング]

2009.1.10-.12
山崎洋介、鮎島仁助朗、佐藤益弘、佐藤(無所属)、八木(ベルグ松涛会)
 最初は戸隠P1尾根に行く予定だったが、二つ玉通過後、強力な冬型が予想される中で突っ込むのはちょっと勇気が出ない。冬型といえば南アということで、アルパインアイスへ計画変更。
 この濁川本谷は資料を読む限り、純粋なアイスクライミングというよりは冬季溯行型アイスであり、それほどテクニカルではないと思われ、また基本1泊2日行程なので5名と大人数でも2泊3日から大丈夫そうだと思い選んだわけだ。というわけで、まったく思いいれもなく、また対して期待もしていないわけだが・・。
 なお、登山大系では濁川だが地形図にも看板にも「神宮川」とある。山崎さんによると、それはここに工場を構えるS ントリー社の意向によるものだとか・・。確かに、「濁川で作ったウィスキー」よりは「神宮川で作ったウィスキー」とした方が外面いいからね。まぁ別にどっちでもいいけど、ここではそれら一企業の思惑に踊らされず、つまりは地図や現地看板によらず登山大系表記で統一させていただこう。
20mの美しい氷瀑(右岸から巻いちゃった)
 7時半に小淵沢駅で関西組と合流。佐藤号で濁川のいけるところまで行くが、前日の雪はやはり結構降ったらしい。2WDの佐藤号は苦戦する。結局、林道ゲートまでいけなかった。
 林道ゲートまでは10分ほど。そこから30分ほどで大堰堤で林道終了。右岸の階段から越え、日向沢を越えるとさらに堰堤が2つある。変な高巻きになるのかなと思ったら、2つとも左岸側にきっちりとハシゴがかかっていたので良かった。越えると少し河原のあと、クネって小ゴルジュ。氷結していないので左岸まき。なおも行くと、30mぐらいの滝がかかっており微妙に凍っている。
 ヤル気満々なので、関西組は流芯の左側から山崎リードで、関東組は右から鮎島リードで登る。まぁ寝ているし簡単だろうと思ったし、実際にV+程度なのだが、逆に微妙な傾斜で昨日降った雪が積もっているし、薄氷だし、ザック重いしでかなり怖い思いをする。また、長さもだまされて、50mロープじゃ少し足りない。途中ピッチをきる。我ら関東組が取付いた右ルートは氷の薄さがヤバく、すんげぇ怖かった。特に落ち口は、全然繋がっておらず、トーマスさんは完全に踏み抜き、意を決して流芯をアイゼンで渡った結果、関東組は完全にびしょ濡れになった。この最初の滝にてすでに疲労困憊である・・。我らも左から登ればよかった・・。
 意気消沈とはこのこと、もうヤル気なくなって、さらにトボトボと歩くと、鞍掛沢との二俣だった。この二俣は結構わかりづらく、最初はわからなかった。
 二俣を右に入ると10mぐらいの雪に埋もれかかった氷瀑がある。有志で登り、なおもゴーロのようなところを水ポチャに気をつけながら登ると明るいゴルジュとなる。いきなり20mぐらい。関東組はノーロープで、関西組は念のためロープを出して登る。これもV+程度だろう。あとはそれなりに高度を上げるゴルジュをこれまた水ポチャに気をつけながら登り、何個かの小滝をダブルアックスでノーロープで越えるとといつの間にか沢は左に曲がり、どうやらゴルジュは抜けたようである。トポでは二俣からゴルジュ上までかなり時間がかかるように思われるが、実際はそうではなかった。
 ゴルジュを抜けると傾斜は緩くなり、きっと氷床なんだろうなぁというところが続く。残念ながら昨日の雪で足首くらいの積雪があり、氷ナメは見えないが、やっぱり「冬の沢登り」風情があっていいね。すぐに、斜瀑60mがあり、そこを全員ノーロープで越える(V程度)と、とっても「泊まって下さい」的な素晴らしい平坦地、しかも水がすぐに取れる場所があった。まだ時間は早いが3日間の行程なので、今日はここまでとする。  その晩の持ち寄りナベはなんだか美味しかった。やっぱ肉だね。

 4時半起床の6時半出発。
 いきなり、積雪足首くらいの氷のナメ(要するに見えないけど、アイゼンは良く刺さる)を辿る。
 このあたりからは不愉快な水ポチャを警戒する必要もないような感じになり、いいね。1時間ほど歩くと左岸側に立派な滝が見える。50mの氷のスラブの後垂直部が50mぐらい。山崎さんはとても登りたそうにしていたが、我慢してもらった。
 やがて4段20m滝。これはノーロープ(V+程度か)。続く、30m滝は念のためロープを出した(これもV+程度)。
 二俣っぽくなり左は20mぐらい、右も10mぐらいの氷瀑がかかっている。本流は右だと思い右を登った(Vぐらい)が、本流はどうやら左のようだ。尾根を越えて本流に戻るが、本流には続いて20mの滝が続いており、残念ながら一緒に巻いてしまう形となった。残念・・と思いきや、山崎さんだけはそれをよしとせず、わざわざ20m滝下に下り、フリーソロしていた。上から覗き込むと結構、顔がマジだった。本人曰く、W程度あってチョイ怖かったとのこと。< br>  しかしこの滝上から素晴らしい氷瀑が見えた。20mの直瀑、しかもバッチリ凍っている素晴らしいものだ。遠目、大同心大滝ぐらいのものはありそうだが、よくよく近づいてみるとW+程度だろうか。とにかく、とても素晴らしく、見栄えのする滝である。でも、この重荷を背負って上ること、そして初心者が2人いることから右岸から巻き、とりあえずこの滝を見れただけでも良かったねとすることにした。山崎さんはもちろんこの判断に納得はしているけれど、やはり残念そうにしており、再来週ぐらいに尾根から下って、このあたりにベースを張って(実際この滝下辺りはとても良い平坦地でベースにはちょうど良い)さっきの100m滝とかを登りに来たいとか行っていた。もちろん、ワタシやトーマスさんが同行する気もないのは言うまでもない。
 この滝を越えるとほぼラッセルとなる。ちょっくらパックされた雪の上を先頭の八木さんはアイゼンですいすい歩いていくが、残る男性 4名は体重が原因だろうか完全にハマる。とてもアイゼンじゃ追いつけないので、ワカンに履き替える。そこから稜線まではすぐだった。
 稜線でツボ足になり、小休止。あぁ谷の中は寒かった〜。2日間とも空は快晴だったが、谷の中で日が当たることは一回もなかったからね。稜線は日が当たり、暖かいが今度は風がビュービュー吹付けて、寒い・・。まぁでも、稜線の樹林の間から見渡す限り甲斐駒は晴れているが八ヶ岳は雲に覆われているところを見ると、今日は結構強い冬型なんだなぁということが実感でき、戸隠よりはかなりマシだと慰めるほかない。
 あとは稜線をツボ足で下るが、これがコケまくり。アイゼンつけるかという感じだが、そうなると逆に疲れるしで・・。結局、最終的につけることになったが、本当に良く転び、果てしなく疲れてしまった。ワタシと八木さんは日向山に登る気もなく、尾白川林道に下山(残り3名は空荷で登っていた)。尾白川林道の東屋には15時着。錦滝は…残念ながら下部がつながっておらず、登るのはムリそう。でも、やたらヒトがいて、その他の氷結具合を聞くと、どうやら他は凍っているようだ。< br>  この東屋の前でテントを張る。この晩は、麻婆ナスでご飯も多く、腹は膨れたが、なんだか満たされない。やっぱ肉が足りないね。

 4時半起床の6時出発。
 前の晩話し合って、今日は私が車回収に、残り4人はせっかくだから平田ルンゼにアイスをしにいくという。もっとも、山崎さん以外は皆帰りたがっていたのだが・・。
 駐車地までは2時間半ほどだったが、途中から雪が降り出し、また路面も凍っており、もちろん2WD・チェーン無の車では尾白川林道ゲートなんて絶対ムリ。ちょっと挑戦したのだが、スタックして、運よく通りかかった車に、3時間かかって救出してもらった。車回収はあまり意味なかった!?。まぁ1時間ぐらいは短縮できたと思う。
 平田ルンゼは松竹梅の滝は快適に凍っていたらしいが、途中から大雪で「まぁまぁ」というのが印象らしい。13時20分ごろ合流。
 が、今日のメインはなんといっても「ぼんち」。14時半の閉店時刻に間に合うかどうかギリで高速を使ってなんとか閉店3分前にたどり着いた。この日の行動食を抜いたお陰で、みんな完食です。特記すべきは、マモル君があの中華丼を完食したこと・・。すごいゼ。甲府駅で関西と別れて、帰京。でも、関西組は帰るのも大変だ…。東京に住んでてよかった〜。
 どこかで酷評されていたような記録も拝見したが、いやいやどうしてどうして。確かに、アルパインアイスという割にはどこかの顕著なピークに突き上げていない点で魅力を欠くのは否めないし、金曜日降った雪の影響で氷床はすべて雪で覆われていたのでトポにある「氷の天国」もちょっと誇張だったし、また難しいところがあるわけではないし、氷だけを楽しみにする方なら物足りないだろうと思う。
 けれど、なにより重荷を担いで沢の中で泊まり、稜線に抜ける充実感は何物にも代えがたい。この感覚を味わえる冬季溯行ができる沢が日本にそうはない中、アイスに困難度を求めない私にはとても貴重な存在なのだ。それに、「氷の天国」とはいかないまでも、やっぱり「それなりに氷の谷」よ。想像力を働かせると確かに天国、そうでなくとも少なくとも雪に埋もれて何もなかった黄蓮谷右俣よりは「アイスバレー」という感覚があって、山頂に抜けるそれと比較してはムリがあるけど、ちょっと濁川のほうがよかったかな・・なーんて思う次第。八木さんとマモル君も「こういうアイスってエエわぁ」と楽しんでくれたようだし。
 つまりは、まったく期待していなか、なんか当たりくじを引いてしまった気分。あぁこういう氷を少なくとも1年に一度は味わってみたいものだね。来年は、シレイ沢か中ノ川本谷だな!興味ある方、よろしく!

2009.1.13 鮎島 筆

【記録】
1月10日(土)晴
 駐車地0900、大堰堤0930、二俣1200、斜瀑60m滝上幕営地1500
1月11日(日)快晴
 幕営地0630、稜線1130、日向山1430、尾白川林道錦滝幕営地1500
1月12日(月・祝)雪
 幕営地0610、松竹梅滝下0840、ゲート1200

【使用装備】
 ダブルロープ50m×3、スクリュー×10、4-5人テント、ワカン各自、ダブルアックス各自
※5人いたため、ロープを出す滝は2ルートで登攀。そのためロープ3本、スクリュー10本をもっていったが2人なら1本・スクリュー5本で充分だと思う。

【写真】

二俣前の40m滝を登る

鞍掛沢と別れてすぐは巨岩帯

ゴルジュの小滝を登る

ゴルジュの小滝を登る

右岸の100m滝

4段30m滝はノーロープ

続く20mは念のためロープを出して

20m滝上から

20m滝をフリーソロする山崎さん

美しい20m滝

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