西伊豆/雲見崎 「時人参上(仮称)」


期間:2009年1月17日(夜行日帰り)
メンバー:鮎島 渡辺
記録:渡辺
形態:ロッククライミング

雲見崎の3ライン
 「修学旅行」からの帰途、鮎島氏から「時の旅人登らない?」というお誘い。
 彼なりの優しさなのか、それとも「ビレイしてくれるならなんでもいいよ」という山登魂らしさ(?)なのかは分からないが、まあとにかく面白そうなことは間違いない。ほぼ二つ返事でOKした。「タイムトラベラー」。私の心象風景に合致したルート名でいい感じだ。


1/16 アプローチ  京王多摩センターに集結後、鮎島車で東名高速を西へ。渡辺は爆睡。申し訳ありません。
 それにしても西伊豆・・・「恋人岬」、「巨大だるま」「時々道路沿いに立っている白い彫刻(?)」「加山雄三ミュージアム」などなど、突っ込みどころ満載でおもしろい。
 雲見集落の手前の路肩にいいところを見つけたのでテンパろうとしたが、鮎島ICIゴアライトテントは強風でしなってしまいとてもではないが落ち着いて寝られそうにない。車内を整理して車中泊。
 というか、ものすごく風が強い。二人も乗っているEKワゴンがぐわんぐわん揺れる。

 鮎「高橋さんだったら、朝起きてこんな風だったら『無理に決まってんだろ。城山にでも転進しようぜ』とか言うだろうな」
 ナベ「いや、うちらもそれを視野に入れておいた方が・・・」
 鮎「まあ、とりあえず取り付くだけ取り付いてみよう」

 という感じで寝る。

1/17
9:00「時の旅人」取り付き 13:30終了点

 ゆっくり起きて、雲見神社の駐車場でガチャを着けて出発。ものすごく急な階段でのっけからパンプ。
 1つめの建物を過ぎて、さらに長く急な階段が目に入りうんざりする。が、登ってみるとすぐに2つめの建物が出てくる。建物手前から左に入る。顕著なふみあとなのですぐ分かる。
 少し歩くと噂のアンテナ群。踏みあとは上の方へ続くものと、一番下のアンテナから下のほうへ続くものと2つがあったが、後者を選択。すると、少し下りコルに出ることができた。思っていたより簡単かつ短い。
 このコルからは岩壁が見えるので、ココから先は間違えようがない。虎ロープを辿って下り、最後は懸垂1発でゴーロの浜へ。ここで「時の旅人」を観察。なるほど、「直上裏参道」取り付きの左下に顕著なバンドが左へ伸びているのが分かる。
 とりあえずそのバンドから左上し、顕著なピナクルまで行こうと決める。
 問題は風で、昨日ほどではないが、そのせいで波が高く、バンドが時折飛沫を浴びている。うーむ、海に持って行かれるほどではないと思うが、恐ろしい・・・ナベがじゃんけんに勝利で先発。
<1P目> ナベ W
 「直上裏参道」取り付きの大岩から下って、飛沫におびえつつバンドをトラバースし、そのままバンドを辿って左上。カムでランニングを取れる。
 少し行くと、右のフレーク状か左のフェースかで迷う部分が出るが、ナベは左を選択。
 フレーク基部にキャメ(確か0.5あたり)を決めて乗っ越し、ピナクル状テラスまで。セカンドの鮎氏は右のフレークからフォロー。その場合はW+くらいありそう。キャメの3番と2番でビレイしたが、別にピナクルに引っ掛けてもOKと思われる。2P目は左トラバースしてフレークに行くのかと思っていたが、下からの偵察では見えなかった右手に、顕著なクラックがあったのでこちらでまちがいないだろう。
<2P目> 鮎→ナベ 5.9
 鮎氏が右上するクラックを攻める。しかし悪い。エイリアンを1つ決めて、クラックの左壁の縦ホールドを使おうとしていたが力尽きてナベに交代。
ナベ、キョン(フリ)で上のホールドを取ってその上まで行くが、そこでエイリアンを決めた時点で力尽きてテンション。レストしたあと、右壁の偵察と左壁のムーブ組み立てにさらに1回ずつテンション。結局、3テンションでクラックを突破。ジャムは1手も出ないし、ホールドはガバガバなのだが、傾斜がそこそこあり、それに何といってもナチュプロなので怖い。
 岳人の記録に「クラックを抜けて、脆いフェースを立木まで」とあったので、脆い(一部を除いて言うほど脆くない)フェースでロープをどんどん延ばしたが、何しろ残置皆無で、弱点を追い右に左に屈曲してしまったため、流れが悪くなり最悪。
 脆いフェースを抜けると、目の前には美しいスラブがあったのだが、残りロープではスラブの中にある立木までは届きそうもなかったので、仕方なく左の草付きをトラバースして立木でビレイした。途中にテラスやクラックがあったので、早目に切るべきだった。
 フォローの鮎氏は、ロープにだまされて脆いところに入ってしまったようで、ホールドが壊れて悲鳴をあげながらフォール。ビレイ点が左寄りだったため少し振られていた。以降鮎島氏は「今日はビビりで行きます」を連呼。
 なお、落ちた際に、彼は何か大切なもの をなくしたらしい(あるいは大きな何かを得たとも言える)。

<3P目> 鮎 V
 草付きを突き切ってスラブに戻り直上して、適当な立木まで(といっても、実は腐っているんだけど・・・)。とても快適なピッチ。前のピッチを短めに切っておけば草付きを突き切る必要もない。
 このあたりから、岩が妙にスラビーになり、カムが決まりにくくなる。後の眺めが最高。

<4P目> ナベ V+
 出だしから、リッジ状をへどが出るような木登りで登る。うんざりしたところに、一旦樹林が切れて、左手にスラブ、正面に尾根(もちろん木登り)があった。迷わずスラブへ。ノーピンで10mくらい登るとスラブは樹林の中へ消える。傾斜の落ちた樹林の中でビレイ。

<5P目> 鮎 W-
 正面の、樹林とスラブのコンタクトラインから、右へ出てスラブへ。下から見ていたらなんて事のないスラブだが、フォローしてみると、傾斜こそ緩いが30mランナウト であった。お見事。従ってグレードは甘目。スラブが樹林に消えたところでビレイ。
 鮎「いや〜、スラブを避けて左の樹林を行くって手もあったんだけど、スラブはどう見てもV+くらいだしさ〜」
 まあそうなんだろうけど、正直なところ「俺がトップでなくてよかった」と思った。頑張れば、スラブに点在するポケットからカムで取れるかもしれない。

<6P目> ナベ V+
 目の前にカンテが立ち塞がり、その一段下がった右手にはスラブか見える。迷ったがカンテに取り付く。最初の垂直部を越えてカンテ上に乗ってしまえば楽勝と思われたが、しかしそう甘くなく、最初の垂直部が抜けられない。色々試していたら次第に左へとトラバースしてしまい、結局カンテを左から巻き気味に登って回り込む形になった。カンテに出て、木登りと岩登りを交えながら進み、頂上壁下の樹林でビレイ。

<7P目> 鮎;V+〜W-
 左手のスラブから、最後の垂直岩壁基部に走るクラックを辿って右トラバース。最後にリッジに移るところは高度感があって怖い。神社の手摺りでビレイ。
 終了点からの見晴らしは確かに最高だった。
 急な階段を降り、頂上のお社に参拝して、下のお社でも手を合わせた。
 鮎島氏が「小銭がない」というので、10円玉と5円玉を渡した。「十分にご縁がありますように」という願掛けだが、俺の方は「まずは職にありつけますように」という状態であるし、一方の鮎氏も、毎週出撃していたらなかなかねえ…(ジムや、御岳のボルダリングに毎週出撃すればあるいは?)。< br>  帰りに、やたら塩味のする眺めのいい露天風呂に入り、沼津の魚市場前にある「魚河岸丸天」でがっつり食べて(本当に量が多い。そして店員は肝っ玉かーちゃんばかり)、大満足の一日となった。
<雑感>
 明らかに 初登時とは違うところを登っていますが、まあどうでもいいでしょう。ここはスポーツではなく冒険のための岩場なので。< br>  このルートは「簡単」だけど残置がありません。

 だからキャメやエイリアンを駆使しなければなりませんが、前述のようにそれほど難しくないため、落ち着いて対処できます。さらに、いざとなればたいていの場合は樹林を使って巻けます。
 従って、私のような下手くそでも、何か「俺はクリーンクライマーだ!」みたいな気分にさせてくれます(私の中では、クリーンクライマーは大抵うまい人なので、「俺はクリーンクライマーだ!」=「俺は上手いクライマーだ!」 という気分にもなれます)。
 そういう貴重な岩場なので、残置は控えたいものです。(というわけで最終ピッチの新しい残置ハーケンはテイクアウトしてきました)
 ルートとしては、下部3P目までは(ルートファインディグを間違えなければ)藪もなく快適です。選んで登ればそれほど脆くもありません。そしてロケーションは最高です。
 風が弱ければ真冬でも登れ(風が強いときはおとなしく城山など他の岩場に転進した方が賢明)、ナチュプロ主体で登れるということで、もっと人気が出ても良いと思います。
 弱点としては、東京からだと遠いこと、スケールが中途半端であること、上部でやや藪がうるさいことでしょうか。
 まあ、今回食べた沼津「魚河岸丸天」や、鮎島氏オススメ・土肥集落「土肥中浜」交差点近くの千歳寿司(ファミマのちょっと横)なんかと、温泉をセットにして「西伊豆・クライミング+温泉&魚介類でゆったりツアー」と最初から考えておけば、旅行みたいなモンで楽しいです。

最高グレード 5.9(核心のクラックは、いざとなればカムによるエイドも可能。その際はエイリアンがちょっと多めに必要かも)
持参ギア キャメ0.5〜4番(※2番までで十分) エイリアン1セット 8mmロープ×2 スリング・ヌンチャク適量 
※エイリアンにくわえて、そのあたりのサイズのナッツもあると心強いかも
※ハーケンは、持って行ったが使わなかった。大抵カムや木から取れるので不要だと思う。
※グレードは体感。ランナウトピッチは甘めにつけている

文責:渡辺

【追記】
 当初は、時の旅人を登るつもりで取付き、途中からなんか違うなーと思っていたが、核心部(2P目)は同じだろうと思って「時の旅人」再登記録としてアップしたが、2月に対岸の千貫門を登った際に1ヶ月前に登ったラインをよくよく観察し、初登ラインと比較すると核心部すら全然違うことが判明した。ルート上には残置がなく、また登った記録が見あたらないので新ルートと思われるが、それほど難しいラインではないため、すでに登られているかもしれない。同定の意味でも発表したほうがいいと考え、岳人に発表させていただいた。このとき、「時の旅人」と「直上裏参道」から二字ずつもらって、祝タイムマン娑婆復帰というメッセージをこめて「時人参上」という名前を仮に付けさせていただきました。(by鮎)

<1P目>
<1P目>
<2P目>
<2P目>
<2P目>
<3P目>終了点。実はこの木は腐っている
<3P目>終了点。実はこの木は腐っている
<4P目>ロケーションは最高
<7P目>見た目は簡単だが行ってみるとちょっと高度感があって怖い

<7P目>最後のスラブ。眺めよし

<終了点にて>


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