■西伊豆/雲見崎「直上裏参道」ルート[クライミング]

2009.2.22
高橋弘、寺本久敏
クライミングの4コマ
 寒かったなーって言うのが第一印象です。とはいっても、この季節の山岳地帯の風雪を思えば児戯に等しいのは認めますが、伊豆のクライミングに過剰な南国のイメージを持って臨んだ我々には厳しいものがあったのです。

 前夜のドライブで何度も窓から手を出して外気を探っては"おかしいですね〜寒いですよ"を連発。雲見にはテントを張れるような場所がなく、少し土肥方面に戻った道路わきにテントを張った。寒さでビールも進まず早々にお開き。朝方、暴風がやってきて風上に寝ていた俺は何度か体を持ち上げられた。飛ばされないようにテントを撤収するのがこれまた大変だった。
 日の光が差し込んでくれば風も収まるだろうと期待して噂の急階段をアプローチ。シングルロープだったので海辺に降り立つのに2回懸垂を要し、最後は空懸である。懸垂ポイントから壁を観察した。う〜む、立ってるなあ。壁と言うより崖っぽい。岩が硬いことを祈るのみだ。樹林帯に入るまでの3p目までの概要はつかめたつもりになったが、壁に入ればまたわかんなくなるんだろうな。因みにシングルロープにしたのは事前の情報により藪がきつそうだからである。どうせ支点も取れないんじゃラインが屈曲することもないだろうし、やばい支点で退却するのも考えずらい。ただ、プアプロの場合細いダブルの方が衝撃を吸収してくれるだろうしなあ、という不安はあったが、寺さんの持ってきたシングルは聞けば9.7mmだというのでシングルザイルに決定。やっぱり楽だった。

1P(寺本)30m 5.8
 ラインは明瞭。終了点の洞穴ハングもはっきり見えている。そばによると壁の傾斜も人間味を帯びているぜ。クラックにカムで支点が取れる。洞穴ハングのトラバース開始地点がちょっともろくバランスを要するがアングルが一本残置してあったのでありがたく利用させてもらった。もしこの残置がなかったら寺さんはやはりここにアングルを打ったに違いない。ルート中残置はこれ一本のみ。
2P(高橋)30m W
 洞穴ハング左のガバをあがってハング上のバンドを右に移動して、登りやすいところを選んで全体に右上し壁が立ってくる凹角下まで。ルート全体を通してガバは岩ごと抜けそうで怖い。噂の本領発揮といったところだ。フェースは薄く欠けるのでとにかく3点支持だ。出だしカムでランニングを取った後は適当なクラック・リスがなく最後までランナウト。まあ、落ちそうもなかったんであんまり探しもしなかった。木が現れたところで終了すればよかったのだが崩れそうなバンドを一段上がってしまい、手持ちの全てのナイフブレード3枚で後続をビレー。
3P(高橋)45m 5.8
 二つある5.8のピッチをお互いに分ける為に引き続き私がリードさせてもらう。打ち合わせ通りである。こんな岩ではホールドに強引さが必要になる5.9以上なんて無理!と言いたい。凹角を2mほど登って左のカンテに乗り移り、回り込んで裏を見てみるとガバが続いている。が、崩れそうで怖いので慎重にすすむ。カンテに出たりフェースを登ったり灌木に挟まったりと快適ではないがルーファイも含め高度感のある楽しい?というかおいしいピッチだ。終了点の大木の手前の3-4mのフェースが核心。欠けないでくれと念じて2,3手伸ばす。このピッチはカム、灌木とランニングはそれなりに取れる。フォローは灌木を通り抜けるのがザックが邪魔になって苦労する。眼下の海はコバルトブルーを期待していたのに太陽光線が弱いためどす黒い青で、沖にまで強風の白波がたっている。
4P(寺本)45m W-
 出だしは簡単そうに見えるがいやらしい。時々出てくる岩も侮れないものがある。が、灌木・藪が優勢。こういうところはザックを背負ったフォローが大変だ。
5P (高橋) 40m U
 灌木も密度を再び緩め楽勝。頂上岸壁ハング下に出る。終了点の右手にはゆるいスラブ壁とその上部の電光型のフィスト越えサイズの崩れそうなクラックが見えている。
6P (寺本) 30m W
 冷たい風がビュービュー吹いている。寒さマックス。煙草がすぐ燃え尽きる。だもんで、また新しいのに火をつける。ザックには水1L、ジョギングシューズ2組、行動食に加え、アプローチのとき着用していた二人のダウンが入っていたのに登り終るまで思い出すことなかったのは痛恨だった。頂上岸壁の岩はすっきりしている。ハングの根元のフレークにキャメ2番をセットして右にトラバースしていく姿はかっこよくてうらやましさを覚えるのを禁じえない。トラバースが終って右のリッジに乗り移るのがちょっと怖い。灌木でランニングをとった後はフィナーレの緩いスラブを一登りで展望台の手すりだ。フォローしてみると例のフレークはバッチリ硬く、ああ下部岸壁もこんなだったらどんなだろうと詮もないことを考えてしまった。
 寺さん、ありがとうございました。脆い岩を"たいした事ないじゃん!"と言うのには恐れ入りました。私にはもっともっと修行が必要です。きっと、寺さんが記録すれば違った印象の記録になったはずですね。出発前、駐車場での我々の準備を見てかわいい女子大生が近づいてきてあれを登ると言ったら"キャー!ギャー!! スッゴーイ!!! ・・・・・カッコいいですねっ"なんて言われて気分よかったですね。
 岩峰は気持ちいいです。ホールドを騙し騙しソロ〜リと行くのはフリーというよりは沢登りに通じるものがありました。

記)高橋

【記録】
2月22日(日)曇
 取り付き0830時頃? - 頂上1230時

【装備】
シングルロープ9.7mm x 50m、キャメロット3〜0.3番1s (3番は使わなかったが使えるかも)、エイリアン赤〜黒1s、ロックス1s(使わなかった。携行していることも忘れていた)、ナイフブレード3枚 (必要でしょう!)、アングル1枚(使わなかったけど必要でしょう)

【写真】


















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