■西伊豆/千貫門「如月八番地」(仮称)ルート [クライミング]

2009.2.28
鮎島仁助朗、佐藤益弘、鈴木さん[仮名]
 富士山剣ヶ峰大沢プラン。でも、前日まで天気が悪い。富士宮山岳会のHPを見ると、前日および前々日に雪が降るとほぼ絶望らしい。そんなんで、どうせダメだろうなぁと思っていたが、鈴木さん(仮)から「ワカンもってかへん?」とのメールが・・。ウッ、ヤル気なのか!?なんだか、「トリカブトのコピー」を思い出すパターンだが、木曜夜に鈴木さんから「やっぱワカンを使うようだとムリやし、転戦も考えてフラットソールにせぇへん」とのお達しが。
 当日。富士駅で集合し、富士山に向かうも、やはり雨。アプローチだけでも確認しようということでドライブ。でも、結局効率の良いアプローチを探すために、河口湖まできてしまった。時間は9時。もう富士山はやる気は出ないが、今日は無駄にするにも時間が早すぎる。どうするか?近い御坂でアイスをやる案もあったが、なんかやる気も出ない。というわけで、私のイチオシ腹案の千貫門にいくことになった。なにより、3Pで5.6というお手ごろグレード、さらには3時間あれば終わり、またそれなりにアドベンチャーなのがよいというのが感性にビビっときたのよ。
千貫門全景とルート
 御殿場経由で行ったので結果、富士山を一周してしまった・・。沼津で渋滞に巻き込まれ、その後も伊豆温泉に向かうバスなどトロい車が走っていて焦るが、ナビを駆使しクネクネ抜け道を荒い運転で切り抜け(佐藤さん、鈴木さん、ごめんなさい)、なんとか13時には雲見に到着。
 アプローチは千貫門入り口がそれほどアピールされていないためにわかりづらい。我々は最初は行き過ぎてしまった。雲見温泉バス停近くの看板でようやく確認し、雲見入谷バス停前に車を置く。そこから峠への入り口まで3分、さらにそこから階段を3分登って峠、そこから階段を3分下ると浜辺、そこから1分で千貫門・・つまりはたった10分というフリークライミングゲレンデもびっくりの近さなのである。なお、浜辺から千貫門の間のゴーロを除けば、この間はずっと舗装されているするので気分的にはサンダルでもOKだ。
 危惧していたもしや、満潮で千貫門に渡れないのでは・・という懸念はまったく逆で、偶然にも完璧に干潮。ホンマに千貫門って陸から離れるのかい?というぐらい完璧に陸続き、こんな干潮を利用してバァちゃんは磯で海草を取っている。先週の高橋さんの報告にある「オホーツクの海」はどこへやら、海は穏やかに凪ぎ、水も透き通って美しい。あぁいいね。ゴーロを30m歩けば、千貫門に到着。さてさて、もってきた地球クラブのトポを見て、ルート確認・・。って、なんでそんなところを登るのかい?という感じ。なにせ、遠くから見ると結構、傾斜があるように思えたのだが、近づくとそんなに傾斜がない。まぁ、大ハングは厳しそうだけれど、その右を回り込むように行けば、まぁスッキリと直登するラインで登れそうなのである。ということで、既存ルートではなく、そのラインで行くことで合意。取付きに登攀具以外は全部デポし、私のリードで登攀開始。なんていったって、鈴木さん(仮)に1ピッチ目を任せると、へんなところに行きかねないからネ・・。

1P(鮎島、W-、30m)
 出だしはちょっと右へ。すると、ボルトがある。でもサビサビでまぁあまり意味なし。ボルトからは地球クラブルートから離れ、直上。脆い岩を騙し騙し登り、クラックに入る。それなりに、カムが使えるのがうれしい。っと、磯海草バァちゃんの黄色い歓声が聞こえる。なになに、「危ないよ、危ないよ、危ないよ」・・。連呼やんけ。そんなに危なっかしい登り方してるのかな・・。って、手に持ったデカホールドが崩れた。大岩は落ちていく、フリーフォール。かなりの大岩で真下にいる佐藤さんと鈴木さん(仮)は逃げまわる。そして、佐藤さんのボディに見事に入った!でも、衝撃は少なく、まぁ無事らしい。ゴメンね。これを見た磯バァの歓声はとうとう「止めなさい」連呼に変わってしまった・・。もちろん、私も動揺が隠せず、そこから5m登ったところでピッチをきってしまった。あぁ情けない。頼りない潅木と、ナイフブレード2本をぶち込んで、ビレイ点とする。フォローはなぜか2人同時並行して登ってくる。鈴木(仮)さん曰く「だってトーマス君の後ろを登るといつ落石あるかわからないから、平行して登る方がまだマシ・・」納得。
2P(鈴木、W+、45m)
 ここはエースの鈴木さんがリード。下から見ると、凹角をダイレクトに登れそうだったが、まぁ確かに登れそうだが、あまりに脆そうだ・・。それにこのビレイ点はその凹角の真下で明らかに落石の通り道。鈴木さんにできれば凹角は避けてくださいネと一応はお願いするが・・。
 まずは右上してバンド(このバンドは足場は安定しているものの、あまりいいリスはなく、ビレイ点には向かない)。ここまではよい。しか〜し、鈴木さんは我らのお願いを完全に無視。凹角に入っていくやんけ・・。やめてくれ〜。っで、この部分、それなりに傾斜がある。まぁガバも多いのだが、下から見るとそれらの節理の大きいホールドがその節理こそ抜けそうで、見ているほうもヒヤヒヤ。しかも、それはヤバいでしょという摂理に体重をかける段にいたっては、本当にドキドキものである。気があるところで一段落。でもロープはまだ半分。もう少し上り始めるが、「なんじゃぁ、蜂の巣あるぞぉぉ」、うっそぉぉ。確かに、よくよく見ると立派なそれらしきものが・・。最悪だね。って、死んでいるようだ・・。よかった。結局、その後もものすごく摂理ごと落ちそうな、岩々を騙しだまし登るクライミングでビレイ解除。結局、鈴木さんは落石はヒトツもさせなかった。お見事!なお、フォローした我ら、特にサードだった私は石落としまくり。一箇所、完全にスタンスが崩れ、足ブラ(ホールドがガバだったので助かった)になったときは思わず悲鳴を上げてしまった・・。あぁ怖かった。
3P(佐藤、V、40m)
 10mもいけば山頂っぽかったが、いやいやどうして。40mほどロープを伸ばしていくと山頂だった。このピッチは潅木が生い茂っているのでそれほど怖くはないが、ちょっと悪いところもあったりするのでロープは必要だと思う。

 千貫門の山頂はちょっとしたガレ場だ。波勝崎方面の眺めは良いが、雲見崎方面は潅木で覆われており、あまり視界はよくない。でも、人工物は一切なく、なかなか立てない頂上だけにうれしい。ちょっとだけ佇んでしたを見ると、だんだん潮が満ちてきたような気もする。まだ大丈夫だろうが、休憩したところでメシも水も下においてきてしまい写真を撮る以外何もすることがないので、そそくさと登ったところの右側のラインを懸垂下降。立派な木を支点にまずは40mで、そこそこの潅木。その潅木を支点に50mいっぱいで取付き点に到着。本当にナイスな距離でした。
 しばらく、下で佇み、またもや10分かけてクルマまで戻った。
 翌日は海金剛に行く予定だったが、朝からの雨で断念。結局、この合計3時間の千貫門だけを登りにきたという感じになったが、まぁそれなりに良かったんじゃないですか、鈴木さん!?我らの思いのままに登れたし、アドベンチャーだったし、まったくの初登かどうかは疑問が残るものの、一応初登ラインなのかなっと思わなくはないし。ということで勝手にルート名をつけさせていただきました、「如月八番地」。初めは「大沢右岸稜」(当初行くはずだったルート。でも意味わからない)や「柔道一直線」(脆弱な直登ルートなので。でも他のルートで使われていそう)、「鉢王閣」(蜂の巣がある凹角を登るから。でも響きが微妙)などなど、いろいろ案があったけれども全部ボツ。如月八番地もまぁあまり意味はないけど、それなりに響きはいいでしょ。 翌日は海金剛に行く予定だったが、朝からの雨で断念。結局、この合計3時間の千貫門だけを登りにきたという感じになったが、まぁそれなりに良かったんじゃないですか、鈴木さん!?我らの思いのままに登れたし、アドベンチャーだったし、まったくの初登かどうかは疑問が残るものの、一応初登ラインなのかなっと思わなくはないし。ということで勝手にルート名をつけさせていただきました、「如月八番地」。初めは「大沢右岸稜」(当初行くはずだったルート。でも意味わからない)や「柔道一直線」(脆弱な直登ルートなので。でも他のルートで使われていそう)、「鉢王閣」(蜂の巣がある凹角を登るから。でも響きが微妙)などなど、いろいろ案があったけれども全部ボツ。如月八番地もまぁあまり意味はないけど、それなりに響きはいいでしょ。
 さて、家に帰ってHPをみるとシーカヤックであの門をくぐるのは定番ルートらしい。なるほど、シーカヤックか。伊豆の海岸にはいろんな岩礁があるが、彼らもそうすれば登れるんだろうし、視野と選択肢が拡がるだろうなぁ。まぁ、瀬戸内に転勤にでもなったら、手を出してみようっと。もっとも、結局はフリーソロになるけど。
 あっ、富士山!忘れてた。当初の目的は富士山だったのよね。まぁ帰りの東名から見る富士の裾野は白い景色となっていたし、とうとう最後まで姿かたちは見せてくれなかったしで、絶対にムリだったでしょう!まぁ条件難しいね。それに気象状況が決定打で断念したのだけれど、それ以前にみんなちょっと余裕なかったしね。私も実は年に2回しかない繁忙期でちと忙しいし、トーマスさんも会社が変わったらしいし、山崎さんも中国人とインド人の部下に囲まれて恒常的に忙しいらしいし。今回、懸案だったアプローチについてはヒトツの結論に落ち着いたので、まぁ来年に出直しです。今後、長い付き合いになりそうだなぁ。

2009.3.3 鮎島 筆

【記録】
2月28日(土)曇ときどき晴
 駐車地1315、登攀開始1340、千貫門頂上1535、取付1620、駐車地1700

【使用装備】
 ダブルロープ×2、クライミングシューズ各自、カム[#0.1〜3.0]、ナイフブレード×2、スリング多数
 ※40mロープだと下降が面倒かもしれないので50mロープがオススメ

【写真】
アプローチと千貫門
千貫門途中から見るアプローチ
1P目をフォローする佐藤と鈴木
2P目をフォローする佐藤と鮎島
3P目をリードする佐藤
千貫門山頂に到着
2回目の懸垂下降
夕暮れの千貫門前でたたずむ鈴木
千貫門全景とルート


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