■西伊豆/波勝崎赤壁「サンセットウォール」(敗退)[クライミング]
2009.3.29
鈴木さん(仮名)、鮎島仁助朗、渡辺剛士
波勝崎といえばクライミング的には海金剛だが、どちらかといえば観光的には赤壁のほうが有名だ。どんな観光資料にも海金剛は書いてないが、赤壁のことは書かれている。そして、赤壁にはすでに3本ほどルートが拓かれているらしいとの話を聞き、抑えておきたいとかねがね思っていた。今回、西伊豆岩登り合宿を開催するにあたり、目玉にとすえたのだが・・。
赤壁を懸垂して敗退する
前日の雲見崎「時の旅人」を順調(?)にこなし、国道沿い発見したいい広場で幕営。しかし、ナベのメスナーテント、最悪です。長嶋さんがキレるのもよくわかる、この結露具合!・・・。
波勝崎苑のゲートを無断でスルーし、海岸まで。海岸沿いの歩道を200mほど歩くと、歩道は終わり。ちょっと悪い岸壁を登ってトラバース。小尾根上を上がると、踏み後らしきものにぶち当たり、そこを進むとちょっとした小沢に降り立った。資料(CJ21)によれば、ここからチンポコ岩(失礼、でもそう書いてあるのだからしょうがない)まで登るとあるような図なので、忠実に登る。すべてが踏み後のように見えてきっと層じゃないような斜面を藪をちょっとこぎながら登り、ようやくチンポコ岩(失礼)。こうかくと、あっさりたどり着いたように思えるかもしれないが、実はこの時点で1時間半が経過・・。もうこの時点で、疲労困憊なのである。なにせ、アップダウンが激しく、藪も濃くはないが、それなりでしかも痛い!トゲトゲしたものが多いのだ!しかも、このチンポコ岩(これまた失礼)についてもまだ赤壁が見えない・・。イヤになっちゃった~ん!このチンポコ岩(たびたび失礼)初登<巨大●リ部分は厳しそうだが、反対側はスラブで実は簡単にフリーソロできそうなのだ!>で今日は納得しようかという雰囲気に鮎&ナは早くもなったが、もちろん鈴カリさんは許してくれそうもなく、一度ちょっと下った後、しょうがなくなおも上り始めると・・。ガーン、どうやら赤壁の上についてしまったようだ・・。道間違えた・・。っえ、まだ鈴カリさん、やるの!?しょうがない。今度は元北道を少し戻り、今度はトゲトゲしたイヤらしい藪にいらだちながら海へ降りるようにトラバース気味に下る。・・・見えた。っデ・デカい・・。それに、モロそー。
でも、壁を見るとやる気が出てくるというもの、それに下部は緩いスラブなので簡単にいけそうなので、いけるところまでいってみるかという感じで取付くが・・。
1P(コンテ、50m)
鮎島を先頭に緩いスラブを木に沿いながら登る。途中、リングボルト2つがあるが、それを通過し、急傾斜になるところの木でビレイ点をこしらえた。
2P(渡辺→鈴木、Ⅴ+、30m)
急傾斜体。下から見ると、なんとなく摂理があるし、傾斜もそれほどはなさそうな感じなので、ナベがまず取付いてみるが、一段上がったところで、全然動けない。どうやら、摂理は全部逆そうで、しかも緩く見える傾斜も全然で、傾斜が強いらしい。20分?ほど粘っていたが、あきらめて戻ってきた。
ここでエースの鈴カリさんに交代。
ナベのラインとは違い、右上するラインから木を伝って最後は左へトラバースして木まで。ビレイしている我らには、スンナリ行ったようには見えたが・・。フォローしてみると・・。あぁイヤだ。なにせモロい。すべてが浮いている。私が踏んだ大フレークはそのまま落ちてすごい大音響で海まで落ちた・・。それに木も邪魔だ。まぁ体感Ⅳ+ぐらいの右上をこなして、最後の左トラバース・・・。っえ!?ウソでしょ、鈴カリさん。こんなところいったんですか。何せ、ほぼ垂直の崩壊壁。いやー、手も足も全部浮いています。しかも、ほぼ垂直・・。お~い・・。マジで!?「何でも言うこと聞きますっ」ということで、鈴カリさんのビレイ点からアブミを連結してもらって後続はA0で越えて、ビレイ点まで。どうやら鈴カリさんも大変だったようで、魂抜かれるトラバースだったらしい・・。
3P(鈴木、Ⅵ?、15m)
上にもマダ難しそうな壁が続いている。鮎&ナは、こんなヤバい壁から早く帰りたい気持ちしかなかったが、もちろん鈴カリさんはゆるしてくれるはずもない。すぐ上に見える木まで行こうと鈴カリさんがリード体勢に入っている。「何でも言うこと聞きますっ」といってしまった以上しょうがない、もちろん、鮎&ナはユマーリングで行く気である。
鈴カリさんは空荷で登っていくが、案の定、途中で詰まった。どうすんのかなぁ~?と思っていたが、覚悟を決めて突っ込んでいたが・・。落ちた~~。エイリアンで止まったらしい。良かったね。覚悟を決めて突っ込む→5mフォールということを4回(!)ほど繰り返す・・。ナベなんかフォールするたびに、あのエイリアンが抜けて、ピンが次々と抜けて、しまいにはこの木までも抜けるんじゃないかと運命に目を背けている。すでに帰る気満々の鮎&ナは鈴カリさんの悪態をひそひそ声で繰り返すが、2ピッチ目で「何でも~」宣言をしてしまった以上、それほど強気には言えず、「ボルト打ってもいいですよ」とか「あんまりムリしなくてもいいですよ」とか「生きてるって素晴らしいですよね」とか落ちるたびにやんわりと言うのだけれど・・ねっ。ナニがそこまで鈴カリさんを追い込ませているのか・・。いや、させてしまったのか。
・・・トライすること2時間。やっと(!)あきらめてくれた。やっとのことで届いた細い潅木を最後にして、ロワーダウンで降りてきてくれた!あぁ、還れる~。よかった~。
あとはビレイ点の木から懸垂下降1ピッチで取付き点まで。
下から見ると、あぁ全然登ってないのね。もし鈴カリさんが、登ったとしてもまだ壁の1/4しか登っていないように見える・・。それに、ガイチ氏の記録を見ると、鈴カリさんが何度もトライしていたところはやはりフリーでは厳しいはず。Ⅵ‐、A1。しかも、その上ではAA2+のラープ3連発+フック連発のアメリカンエイドが入るらしい。ム・ムリです。
帰りの道も憂鬱だったが、チンポコ岩(最後に失礼)まで上り返さなくてもいけるトラバースルートがあることを発見(踏み後はないよ)し、行きの労力より1/3ぐらいで帰れた。
無断で入った波勝崎苑で何か言われるかなーと思ったが「あ、赤壁登ったんですか?すごいですねぇ」というまったく逆の反応をされ、肩透かし。それでもちゃんと入園料500円/人は支払いましたよ。なお、鮎号のラジオアンテナはサルにぽっきりおられてしまいました。アンテナは絶対にしまうように、これ教訓です。
まさに、生還です。途中から本気で我が家が恋しくなってしまった。久しく、こんな気持ちになることはなかったのだが、あいやーっ。
岩雪125号は手に入らなかったので唯一の資料だったCJ21号のガイチ氏の記録。だいたいが、サルがどうとかSMプレイがどうとかで、とにかくヤバい雰囲気をまったく感じさせないような書き方をされているので、甘く見ていたが、グレーディングは甘くはない(フラットソールなら多少は甘く感じるものなのだが・・)し、でかいし、脆いし、傾斜強いし、弱点ないし、とにかく赤壁はとってもキビシーのです。とにかく、人生の尊貴さを堪能できました。いいよ。いや、冗談じゃなく、一見の価値はあります。西伊豆随一のデカさで、迫力大有りです。
う~んでも、宣言します。鮎&ナは赤壁にマジで取り組めたことを胸に、勉強できたことを心に、赤壁から卒業することを。いやいやいや、行けばわかるさ、触ればわかるさ、オイラ達の気持ちに。
でも、鈴カリさんはまだまだいきたがっていましたっ・・・。オーブ君、どぅっ?アプローチぐらいは教えられるよ。まぁとにかく、たとえば2日がかりで落とすとか、登るためにはもっともっと気合を入れる必要がありそうな壁であることは確かなようです。
2009.4.1 鮎島 筆
【記録】
3月29日(日)晴
波勝崎苑0530、取付き0730、撤退1345、赤壁取付き1430、波勝崎苑1600
【装備】
ダブルロープ50m×2、エイリアン(#0.1~#0.5)1s、キャメロット(#0.5~#4.0)1s、軟鉄ハーケン1s、スリング多数、クライミングシューズ各自
※3ピッチまでの装備。過去の記録を読むと上部を登るためにはラープをはじめとしたハーケン類多数、スカイフック、アブミが必要とのこと。ボルトも必要かもしれない。
※アプローチ用に軍手は必須!!ないと壁に取付く前にやる気をなくします。
※波勝崎苑の人もサルもフレンドリーですが、入園料は払いましょう
【写真】
2ピッチ目。もろいがこれはまだ序の口
魂のSカリトラバース。フォロー苦笑いしてA0するよりほかなし‥
3P目のラインを読むが・・
懸垂下降・・助かった
波勝崎苑へは強引に下る
赤壁アプローチ
山登魂ホームへ