期間:2009/5/10(前夜発日帰り)
形態:沢登り
メンバー:鮎島仁助朗、大部、渡辺(記)
確か4月だったか、例によって鮎島プロデューサーが「東福寺沢」なる聞いたことも無いマイナーな沢を提案。一旦は流れたものの、「連休明けだから軽い沢やりたいね」ということでチーム㎥(立方メートル)が久々に集結した。
5/9(土) 飯能→神ヶ原
飯能で鮎島車に乗り込むと鮎P(プロデューサー)が早くもお疲れモード。草野球で3塁打かっ飛ばしたせいらしい。いつものようにバカ話をしながら西上州は神ヶ原集落へ車をかっ飛ばした。オンサイトアプローチにも関わらず鮎島Pはトポにある浄水施設に迷わず到着。集合が早かったのでずいぶん長時間宴会した気がする。
5/10(日)6:30起床 7:30出発 8:40二股 8:50左股左沢大滝 9:25左股左沢を引き返す
9:45左股右沢大滝 11:35左股右沢撤退開始 13:00駐車場
朝、足音で目を覚ます。浄水施設の点検らしい。林道のど真ん中に駐車&幕営していたので怒られるかなと思ったがオッサン二人は俺達など眼中にないようで、テント内からの挨拶にもフツーに返事して去っていった。
真夏日とのことだがまだ5月なので全員ウエット装着で出発。林道を詰めていくとすぐに巨大砂防ダムに遮られた。右岸の踏み跡を辿って巻き、遡航開始。
しばらくは平凡な植林&チャートの沢で奥多摩チック。「外れじゃねーか」、と思っていたら釜&小滝が現れ始め、両岸も西上州らしいボロ壁が屹立し、俄然面白くなってきた。たいした水量でもないのに釜が異常に深い。脆い岩質のタマモノか?水につかるのは拷問級なので釜は巻くようにしたが、若き血潮をたぎらせたオーブスは時々泳いでいた。
二股までは部分的に難しいところもあったが、まあ落ちてもドボンで危なくはない。
二股で休憩したあと左股へ。このあたりから猛烈なゴルジュ地形となり巻きは論外。左股はすぐに二分し、左沢と右沢に分かれる。すぐそこに左沢大滝が見えていたので、水流右の一段上がったところでザイルを出した。
■左股左沢大滝 15m W
出だしが悪く、残置ハーケンが非常にありがたい。水流を越えるとエイリアン〜キャメ#1でランナーが取れてほっとしたが、ヌメリで滑りそうなのが非常に怖い。滝上にはまことに都合のよい木があり、こいつでビレイ。鮎島P・オーブともに問題なくフォロー。
滝の上は極めて平凡。鮎島Pは5分くらいしか歩かないうちに「つまんねーから戻って右沢行こうぜ」と言い出し、さすがにそれはどうかと思ったが、それから2分もしないうちにナベも同意し、さっさと引き返して左股右沢を見に行くことにする。オーブスは常にイエスマンだった。
で、左股左沢大滝を懸垂し、すぐそこの右沢に入っていってすぐに右沢大滝が見えてきた。おおー、右壁が弱点そうだな。さっそく滝下でザイルを…と思ったら、先頭を歩いていた鮎島Pはなぜか右壁に突入。中段ほどにあるボルトやハーケンのビレイ点で止まった。フエルトソールのナベ&オーブにはそこまでノーザイルで上がるのはなかなかシビアで、それでも沢靴のナベはなんとかビレイ点に上がったものの、沢タビのオーブスには相当厳しいものがあるので、ザイルを垂らしてアンザイレンしてもらい、そのままビレイに入ってオーブ君にリードしてもらうことになった。
■左股右沢大滝 25m X A0
ビレイ点から残置にA0で一段上がり、階段状のフェースを左上気味に上がっていくが厳しそう。そこそこ残置はあるようなのだが。
そのうち上部の藪に突っ込んだので一安心、さああとは落ち口へ左トラバースだね…と思ったら全然ザイルが伸びない。藪には日が差しているが、ビレイ点は日の差さないゴルジュゾーンなので寒く、ナベはウエットの上からドカヤッケまで着込んでしまった。
ようやく「解除〜」の声がかかり、鮎島Pがユマールでフォローしたが、「悪い」だの何だのと叫んでいる。うーん、ビレイ点からは全然寝ているように見えるんだけどな〜。早く俺の番にならねーかな〜、で、やっとサード登攀開始。
…ヤバいねこれは。
傾斜は緩いけど全部逆層、下から見えるクラックは脆くて使い物にならずプロテクションはおろかホールドにすらならない。当然すべて濡れている。幸い、所々にリングボルトの残置があり、これのおかげでかろうじて小便チビル級クライミングなのだが、もしなかったら色々大事なものが脳から消し飛ぶクライミングをリードは体験できただろう。打った奴すげーよ。どうやって両手離したんだよ…。
もちろんこれをリードしたオーブもすげー、今日のMVPはオーブだな、と思ってフェース上部へ。もうすぐ草付きというところでビレイ点の鮎島Pから「そこからが核心だぜ!」と言われたが半信半疑のまま草付へ。
悪い!
スラブの上に極めて薄い地表が乗っかり、そこに頼りにならない草や潅木が生えている。しかも時々トゲ植物だったりもする。ランナーもスタンスもホールドも、全てが信用ならない。よく、厳しいクライミングを記述する際に「ゴマカシが効かない」なんて書かれることがあるが、ここでは「全てをゴマカす」ことが必要となる。一番大事なのは、不安な心を「多分大丈夫!」とゴマカす能力だろうか。フォローですらこれである。いやー、よくリードしたよ。ビレイ点に到着して、鮎島Pと「オーブを一軍に推薦しよう」と意見が一致。もし初登だったらルート名を「オーブジェネレーション」とかにしたのに、残念。ちなみにビレイ点は都合のいいクラックのたくさんある側壁にカムをカマしていた。
さて、この上も猛烈なゴルジュ。
深い釜を持つ5m滝は今日まだ見せ場の無い鮎島Pリード。
■右沢5m滝 W-
ハングした右壁にカムをカマしながら落ち口まで行ったところで、乗り越しの際にヌメリに足をとられてちょっとすべったが、カムがガッチリ効いていたため問題なし。鮎島Pは本日ステルスソールだが、ああいうヌメリではやはり本領発揮できないのだろう。フォローしてみると全く同じところでビビってしまった。
少し進むと12mのチューブ状滝が出てきて、一瞥して撤退決定。出だしさえ人間3段脚立とかすれば突破できるかもしれないが当然激シャワーとなり、寒すぎてそんなことする気にはならず、さりとてなんとか行けそうな左壁も、さっきと同様悪そうで(しかもトラバース)、そしてこれを登ってしまったら50mロープ1本で撤退できるのかという不安もあったが、何よりも「僕たちそれほどヤル気マンマンてわけでもないし〜」ということなのだ。
探すと支点も何とかなるもので、一切残置せずに下降できた。右沢大滝の懸垂では一回モロ水流に入るので、水量が多いときはヤバいと思う。
下りとなってしまえば浸かったり泳いだりも楽しいもので、ドンドン浸かったり飛び込んだりしながらあっという間に駐車場へ帰ることができた。
いやー今回も大当たりでした鮎島プロデュース計画。さすがです。
いやしくも「創造的登山」を標榜する山岳会にあって、彼はそういう意味ではぶっちぎりでエースでしょうね。
俺ももうちっと資料漁りに精を出そうと思います。
装備:エイリアン1S、キャメ#0.5〜1、ハーケン長短各2程度、ウエットスーツ、ザイル50m(仮に左股右沢同ルート下降するなら50m×2ないとつらいかも)
アドバイス:傾斜の強いところとぬめる所の両方に対応できる沢靴はベストチョイスだったと思う。少なくとも沢タビはベターではないと思うが、オーブスがそれで核心をリードしてしまったので何ともいえない。
地形図:神ヶ原
概要:概要:http://map.yahoo.co.jp/pl?type=scroll&lat=36.09639012&lon=138.82868188&sc=8&mode=map&pointer=on&home=on&hlat=36.09830306&hlon=138.82684611
遡行図:山好会HP(http://sankokai.main.jp/page057.html)
中流域。小さい滝にも深い釜がある。 |
簡単に巻けるのに泳ぐオーブ君。 |
中流域で一番悪かったへつり。まあ落ちてもドボンです。 |
左股左沢大滝をフォローするオーブ君。 |
なぜか左股右沢大滝右壁をノーロープで登り始めた鮎P |
左股右沢大滝。簡単に見えるけど超悪い。 |
右沢5m滝をフォローするオーブ君 |
「無理でした!今から帰ります!」 |
激シャワー懸垂 |
下降中。真夏は楽しいだろうけど… |