■会越/鬼ヶ面山東面 肩ノ沢左俣ニードルルンゼ [登攀]

2009.6.6
鮎島仁助朗、大部良輔
 オバタキ、オーヤクズレ、ミカグラ、イチノクラ、サナシ、カクネサトにガンガラシバナ―――。これら日本を代表する大パノラマを傲岸にならびたてれば、本当によく行ったもんだと感慨深くもなる。しかし、まだ、オニガヅラ東面の風景に触れてもいなかった。
 今回、初めて足を踏み入れるうえで、どこのルートを狙うか悩んだが、結局、ニードルルンゼを狙うことにした。肩ノ沢左俣ニードルルンゼは、確かにオニガヅラの中央核心部ではなく、それに短い。また、技術レベルもさほど高くもないと思われる。でも、一番奥のルンゼで鬼ヶ面の概念はわかる。それに、あのオニガヅラだから、レベルは高くはないといいつつも、総合的な悪さは当然含まれるはず。なにより、手持ちの写真では荘厳な雰囲気がすばらしく、ここを狙いを定めることにした。
 気合を少なからずこめて望んだ金城山Sスラでは、気合は完璧に空回りだったが、今回はきっとそんなことにはならないだろう。

ルートを確認。矢印がニードルルンゼ
雪渓をつめて取付きに向かう 5P目の大CSを潜り登る
 4時半に起床予定だったが、早くに目覚めてしまった。田子倉の浅草岳登山口の広場には、我々の車のほかにもう一台停まっている。その車の主も、ちょうど起きたようだ。どうやら、釣り師らしい。あまり参考にならない情報をいただき、5時前に出発。
 二俣までは登山道を使う。当初は、只見沢の状況があまりよくないという話だったので登山道標高800m地点からマンモス尾根末端に向かって下る予定だったが、只見沢を忠実にたどることにした。
 只見沢の水はやはり冷たい。足を30秒もつけていられないぐらい。しかし、股までも浸かるところもある。いひゃぁ、きついぜ。でも、増水時はわからないが、沢の溯行に関しては水の冷たさを我慢すれば、それほど難しいものではない。右岸から三つ支沢を流入させると、本流には顕著な10mの滝が出てきた。これが魚止めの滝だろう。登れる雰囲気ではなく、右岸から巻く。巻きは多少悪いが、ロープを出すほどでもなく、再び滝上に出れば、マンモス尾根の末端台地はすぐそこだった。ここまで、少し雪渓の残骸があるが、概して沢は出ていた。
 αルンゼなどの支流を右岸から合わせ、三俣手前で休憩。ここからは、鬼ヶ面の概要がだいたいわかる・・。って、登山大系。すごいね。あの図が、その図の通りに展開されていた。素晴らしいスケッチ力だ!っでニードルルンゼ・・・。っげっ。あれかよ。う~ん、シビれるなー。ニードルルンゼがあんなにカッコいいシロモノだとは思わなかった。俄然、緊張感が増し、やる気が出てくるってものだ。
 沢は雪渓に覆われ、乗越沢、滝沢との三俣となる。ここからの景色がまたよい。特に、滝沢のナカ滝・・・。かっちょいぃぃぃ!。次はアレだな、と思いつつ、一番右の沢へ進路を取る。少し行くと、雪渓が途切れ、滝が出ている。これがドーム滝。右岸から巻くように行き、雪渓に再び乗って上手い具合にシャワークライムすれば、問題ない(雪渓から滝に乗り移るところがチョイ怖い)。
 滝上は再び、雪渓に覆われている。そして、滝下と比べて傾斜が強いように見える。ここでアイゼンをつけることにした。オーブは軽アイゼン。そして、私はアルミの10本爪アイゼンだ。いつもなら、軽アイゼンしかもって来ないが、特に今回は取付きのシュルント処理が核心のひとつだと思っていたので、わざわざ持ってきたのだった。
 これが大正解。肩ノ沢は上部で段々傾斜が強くなっていく、オーブの軽アイゼンでは厳しそうなところもあるが、私はまったく怖いとも思わない。オーブも安定している私が下で待ち構えているから安心して登れるというもんだ。
 ドーム滝からが長く雪渓を登ると、ようやくニードルルンゼの取付きにたどり着いた。問題は、雪渓から岩場に無事渡れるかだ。這いつくばって、繋がっているかを確認・・。う~ん、一箇所どうやら繋がっているが・・。落ちたら奈落の底だな・・。無造作にロープなしで行こうとするオーブ(若いっていいね)を引き留め、雪渓からロープを出して岩に取付く。

1P(大部、25m、Ⅳ+)
 気休めに一番デカいロストアローを雪渓にぶち込んで、いざ雪渓にぶら下がる・・・。足がつかないらしい・・。最終的には、飛び降りる感じ(!)で対岸に無事、たどり着いた。
 対岸に渡っちゃえば、そのうえは階段状に見えたので容易だろうと思ったが、ところがどっこい。悪い!左からは残置ハーケンがあったが、傾斜が強すぎて悪く、右から登ることにしたが、泥つきなのと、すべて逆層な感じで、カチすらない。オーブがそれでも、慎重に一番簡単そうなラインを見出しながらのぼり、安定したところでピッチを切る。確かに、悪い。
 ピッチをきったところでクライミングシューズに履き替える。しかし、そのころから生憎の雨・・。しかし、これから戻るほうが地獄だ。そもそも、雪渓を下るのは怖すぎるからね。
 そのうえは、ただのルンゼ状なので、ノーロープで約50m。するとCSがルンゼをふさいでいるので再びロープを出す。
2P(鮎島、15m、Ⅳ)
 CSを左から越える。少し傾斜が強いが、意味ないところにボルトとCSでしっかりとカムでとれるランナーがあるので、思い切り登れるのはうれしいもの。CSの上の石で切る。
3P(大部、15m、Ⅳ)
 さらにもう一つCSがふさいでいる。左壁から巻くように登る。ボルトが一つあった。傾斜は強いが、コンクリートに小石を埋め込んだような岩質なので、それなりにホールドがある。CSのうえでピッチを切る。
4P(鮎島、25m、Ⅳ‐)
 ルンゼを忠実に登る。簡単だと思ったが、それなりにいやらしい。途中でエイリアンでランナーは取れる。だいたいがずっと突っ張りのぼり・・。疲れた~。大CSの中でハーケンをぶち込んでピッチを切る。
5P(大部、25m、Ⅳ)
 明らかにおいしいピッチをオーブに譲った。瑞牆の「トムソーヤ」ルートのように、CSを潜り抜ける。しかし、これがザックを背負ってだと本当に疲れる。このころから、だいぶ気持ちの余裕が出てきて、「スカートだったらパンツ見えちゃう」という軽口も。全然埋まっていない工事用ボルトまで。

 そこから上は、ロープはいらなさそうなスラブだった。ロープをしまい、コンクリートに小石を埋め込んだようなスラブを100mほど登ると、稜線の登山道に藪漕ぎもなく到着した。やったね。
 霧雨で視界はなく、また寒いので、そそくさと浅草岳経由で帰る。浅草岳にはこんな天気だったが、結構ヒトがいた。カップラーメンの匂いがとても芳しい・・。
 下山途中から、プわっと視界がはれ、「鬼ヶ面眺め」から鬼ヶ面が一望できた。うわぁぁ、イイねぇ。やっぱり大パノラマだね。山頂からは2時間かからずに駐車地へ。
 ニードルルンゼは、事前の予想に違わず、技術レベルはそれほど高いとはいえなかった。しかし、これも想像通り、総合的に悪かった。とくにシュルント。たとえば、今週末行って取り付けるかどうかはわからない。おそらく難しいだろうと思われるが、その場合、ニードルルンゼに取り付けもしないのだから、やはり総合的に条件を見極めるのが難しいだろう。
 それにしてもオニガツラ。やはり、いい。サナシはもう卒業だが、オニガツラはこのニードルルンゼが始まりだ。
 まず、マンモス尾根の末端で夜を明かすこと。そして、次。それはもう決めてある。冬ならマンモス尾根。そして夏には・・・。ウシシ、やっぱり滝沢!!誰の目の視線を捉えて離さないあのナカ滝の荘厳な姿よ。鬼ヶ面沢などもいいが、やはり、次登るのならアソコなのだ!それなりの覚悟が必要なことは重々承知してあるが、是非とも気合を入れて望みたいものだ。充実したい方、大募集中!でも、来シーズン以降ね。。

2009.6.9 鮎島 筆

【記録】
6月6日(土)曇ときどき雨のち晴
 駐車地0445、取付0715、稜線1100、浅草岳1130-1200、駐車地1410

【装備】
 ダブルロープ50m×1、ナイフブレード×1、カム(#0.1~1.0)、アイゼン各自、クライミングシューズ各自、沢靴各自
※ロープは2本もって行ったが、一本のみ使用。30mでも事足りたかも・・。
※アイゼンは必須。但し、二人とも軽アイゼンでは取付きまでに苦労する。

【写真】
左/只見沢をつめる。雪渓もあるが概して沢。 右/三俣手前でルート確認。矢印がニードルルンゼ。カッコいいです。
 

左/鬼ヶ面奥壁。赤丸がニードルルンゼ  右/鬼ヶ面中央壁。
 

左/ドーム滝手前。  右/雪渓を辿って奥壁に向かう
 

左/雪渓をつめて取付き。ここまでは天気はマズマズ。  右/1P目をリードするオーブ。悪いです
 

左/2P目のCSまではノーロープ  右/2P目をフォローするオーブ
 

左/3P目のCSを左から登るオーブ  右/4P目をフォローするオーブ
 

左/5P目大CSを登る。ザックを担ぐと厳しい登り  右/大CSを抜ける。スカートだったら確実にパンツ丸見えのところだ
 

左/最後のスラブを登る  右/浅草岳山頂にて記念写真
 

左/登山道から鬼ヶ面を望む。一筋の滝が、滝沢のナカ滝


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