<木曽川支流/柿其川本谷>

期間:2009/8/29-30(夜行1泊2日)

霧ヶ滝の左壁を攻める大部


山域:木曽
メンバー:渡辺(L&記録)、鈴木(仮)、大部
形態:沢登り
地図はこちら

俺の今年のテーマは
「未踏の沢」
「山登魂が会として未遡行」
などである。
会員としても、個人としても、幅を広げたいのだ。

で、ザクロを予定していたのだが色々あって柿其渓谷となった。名古屋ACCが「日本の渓谷98/99」にて知らしめた木曽の渓谷だ。
ザクロとくらべるとえらくレベルが落ちたが、遡行図と記録からは楽しさが伝わってくる。

ググってみたら、そこそこ遡行者もいるようで、性格的には「エスケープ容易なゲレンデ的大型渓谷」ってことで、関東における葛野川小金沢みたいなもんか。

遡行図からは相当険悪なゴルジュが予想されたので、投げヘキセン(!)なども用意したが、結果として、険悪ゴルジュというよりも泳ぎを多用する大渓谷という性格が強く、ライフジャケットやウエット(鮎タイツ)が大活躍(下部で大活躍したが上部ではあまり…)であった。
ちなみに今回のMVPはオーブで、今回の箴言は「ナベの踏み方には愛がないねん」 であった。


8/28
21:00小田急唐木田 25:30ごろ南木曽 26:00柿其渓谷駐車場

唐木田にて鮎島車を借り受け、一路中央道へ。途中ガス欠の危機に陥り、オーブに「入山前から車手押しとか、あんまりドラマチックなことはしたくないですね」などと突っ込まれる。
南木曽で鈴木(仮)さんを拾い、柿其渓谷の駐車場にて幕。

8/29 曇り時々晴れ
5:30ごろ起床 6:30ごろ発 7:15ごろ牛が滝を巻いて入渓 9:55霧ヶ滝  11:10箱淵 12:15雷滝 13:10二股 14:20大沢橋(遡行打ち切り) 16:00ごろ駐車場

6:30起きという予定だったが、なぜか一時間以上前に全員起き、出発。
荷物が軽い。そりゃそうだ。なにせBC形式 なのだから。

まずは渓谷沿いの遊歩道を歩く。
すぐに牛が滝が出てきたが全然可能性が見出せないので、左岸のあずまやの上の石でできたベンチから藪に入り、途中で踏み跡をはずして懸垂1発。すぐにしっかりした踏み跡に合流し、楽勝で牛が滝の上に出る。

さてここからだ。

白とオレンジの花崗岩、そしてエメラルドグリーンの流れ。
最高の渓谷美を堪能しつつ、いい渓相の河原を歩くとすぐに淵。
日本の渓谷98/99の名古屋ACCの記録は、なにしろ時期が早かったり遅かったりしているせいで淵の巻きに終始しているが、真夏の気温とライフジャケット、ウエットスーツで完全武装して強気な我々は、当然正面突破。
最初の淵(トロ?)は20m程度で、遡行図(40m)ほどの長さは無い。
今日は水量も少なく、危機感無くゆったり泳ぐことができた。
その次の釜はナベのクロール&へつりで突破。一応ザイルを出した。

やがてねじだるの最初の滝5m(と思われるところ。淵が多すぎてよく覚えていない)。
左壁の前傾チムニーを鈴木(仮)さんリードで突破。体を振ったりして完全にフリークライミングのムーブ。
簡単に左から巻けるので「意味ねえ〜、こんなところ鈴木(仮)さんしか登らね〜よ」と大部と二人でブーブー言っていたら、なんと上のテラスには黒く塗られたハンガーボルトがあった(が鈴木(仮)さんは気付かず腰がらみビレイ)
大部を腰がらみでビレイする鈴木(仮)さんに俺は「この際だから残置無視で行きましょう!」などと先鋭的なことを抜かしていたが、それも「BC方式」などという山を舐めた戦略を採用した罪悪感からで、ならばせめて戦術的には先鋭的に行きたいと思っていた。

それにしてもこのチムニー状、

・無理ラインだよね
・残置要らないよね

という二重の意味で呆れたのであった。

もちろん最も美しい&楽しいラインではあるのだが。ナイスリードでした。

河原を歩いたりちょっとした淵を越えたりすると霧ヶ滝。10mちょいはあるだろうか。
遡行図では右岸の展望台に上がっているが、左壁から滝の落ち口に抜けられそうなラインがある。
最後の落ち口が滅茶苦茶悪そうだが、下の釜は深いし、潅木でピンはとれそうだしやってみるか、ということになる。
ここまで見せ場の無い大部リード。

<霧ヶ滝 12m> W+
左の岩からバンド伝いに右上し、悪い岩&泥壁を騙して一旦一段上がって都合のいい頑丈な潅木からランニングを取った後、ちょっと下がって落ち口へ恐怖のトラバースをして突破。
フォローしてみたら、泥壁でスタンスの草付をはがしてしまいテンションこいてしまった。忍者を履いてきているのだが、こういうところでは足裏感覚がないと怖い。まあリードでなくてよかった。
泥を剥がした跡のクラックに赤キャメを決めてあったり、オーブの苦労の跡が見て取れる。
一段上がって潅木のカラビナを架け替え、ちょっと下がって恐怖トラバース。途中の一手が極めて悪く、手は外傾したヌメヌメスローパのみ。
ここでは忍者がバチ効きであったが、リードでしかもフエルトソールの大部は相当怖かっただろう。実際何度も行きつ戻りつしていた。しかも、いかにもハーケンの打てそうなリスがあり、リードの大部はハンマーレスで来てしまったことを後悔しただろう(ハンマーレスを言い出したのはナベですが…)
ビレイ点につくと、大部は、エイリアン3つの完璧な支点で、腰まで浸かってビレイしてた。ナイスリード!
サードの鈴木(仮)さんもちょっと渋い顔をしてフォローし、二人で大部をヨイショした。

この先、両岸はぶったっているが大した滝や淵はなく、白とオレンジとエメラルドグリーンのコントラストを楽しみながら登る。
すると、立派な橋がかかり、その下は淵になっている。ここが箱淵。遡行図には40mなどと書いているがいいとこ20m。ただしとっかかりは皆無に等しく、ライフジャケットを着込んでいたナベ&大部は苦も無く泳いだが、舐めてライフジャケットをザックにしまっていた鈴木(仮)さんは溺れかけていた。(ザックが頭に当たって息継ぎできなくなっていた)
横で泳ぎながらそれを見たときは「いわんこっちゃない。『あついねん』とか言ってる場合じゃねーだろ」とむしろ気味の良ささえ感じたが、鈴木(仮)さんが上流で岸に上がっている大部に「ヒモ!ヒモ!」 と叫ぶに及んでどうやらマジらしいと気付き、急いで自分のザックをはずして「浮き輪にしてください!」と渡す。
もちろん浮き輪みたいに全体重かけたら、なにせ全然荷物が入っていないザックなので浮力もビビたるもの、沈むに決まっているのだが、そこは鈴木(仮)さんも心得たもので、上手いことビート板みたいにして頭だけ浮かせて呼吸を安定させていた。


以降も淵がドンドン出てくるのでどれが溺石淵だかわからないまま雷滝に着いてしまった。
遡行図には「落ち込み程度」などと書いているが、突破しようとすると、左岸からのへつりではひょんぐった水流を越えねばならず無理。右岸をへつるのも流れがあって無理。となると左岸から流心を突破して右岸のスラブに張り付くしかない。なかなか思い切ったラインどりで楽しい。

その後も二股までは時々淵が出てきたりして楽しいが、二股を過ぎると淵より河原歩きが優勢となりちょっと中だるみしてくる。
まあ河原歩きといっても、花崗岩のコントラストが美しいのでOK。
水量が少ないため、遡行図に「ザック吊り上げ」「シャワー直登」などと書いてある滝は三者三様でそれぞれ好き勝手に登れる始末。
いかにも面白そうな北沢を見送り、ナメリ沢出合の少し先の大沢橋にて遡行を打ち切る。
林道を1時間強歩いて駐車場に帰り、南木曽駅前のスーパーでつまみと酒を大量に買い込んで(このとき、某氏は「靴下がないねん」と言って裸足で買い物をしていた ことは強調しておきたい)、駐車場の近くの空き地で宴会となった。焚火こそ無いものの、豪勢な飯に大満足であった。

柿其川牛が滝

柿其渓谷の流れ

牛が滝。絶対無理。 入渓してすぐ。やはり花崗岩は最高。
柿其川遡行 柿其川の淵
遡行図の「40m淵」か?ご覧の通り20mくらい。 楽勝で泳ぐ。
シャワーだぜ 柿其川の滝
結構ゴルジュだが、総じて簡単。 どう攻めるか協議。
全力クロール! へつり
男ならクロールでしょ。 柿其川の下部はヌメリが少なくアクアステルスが有効。

柿其川ねじだる

柿其川ねじだるその2
多分ねじだるの入り口。フリーで前傾チムニーを攻める。 ここは左からサクッと。
霧ヶ滝手前

柿其川霧ガ滝

霧ヶ滝手前の淵。 霧ヶ滝。明らかに左から登れそうだが最後の1歩が読めない。
霧ガ滝をリードするオーブ ビレイするオーブ
オーブ特攻。このあと踏ん切りがつかず迷っていた。 霧ヶ滝上にて。金星をゲットしご満悦のオーブ。

柿其川霧ヶ滝をフォローする鈴木さん

霧ヶ滝上のゴルジュ
フォローの鈴木(仮)さんも渋い顔。 霧ヶ滝上、素晴らしいゴルジュ。
霧ヶ滝の先もすばらしい

箱淵1

スンバラシー 箱淵にかかる橋。

箱淵2

箱淵3
箱淵を泳ぐオーブ。 箱淵を上流から。
柿其川溺石淵

大垂付近?

いかにも何かありそうなゴルジュが続くが、実は結構簡単。(これは多分溺石淵) こんな素晴らしいところに橋が架かっているのがちょっと悲しい。(確か左岸の支流にかかる橋)
箱淵を越えてもちょっとした淵はたくさんある。 ここでも泳ぎ。
 柿其川雷滝  

雷滝。流心を横切る攻撃的ラインで突破。 古めかしい橋が結構かかっており、こういう橋なら許せる。
柿其川中流の二股
二股。ココから先は河原歩きが主体となる。 二股から先でいちばん顕著な滝。どこでも登れる。

霧ヶ滝を展望台から

霧が滝を展望台から。よく登ったよ。 山屋として最低ですが、ビールは最高です。



8/30 雨のち曇り
6:30林道ゲート発 8:20大沢橋より入渓 10:45銚子滝 11:30釜を持つ6m滝 12:15支流より林道にあがる 15:00ごろ林道ゲート

4時起きしようねといっていたのに1時間寝坊。しかし、飯を食っている間に雨がやんでモチが上昇したので結果オーライか?
林道ゲートまで車を走らせ、ゲートに車を置いて大沢橋まで2時間近くの林道歩き。こんなんやるなら全装備かついで適当なところで幕にした方がよかったんちゃうかとも思うが、昨日の宴会(文字通り酒池肉林)みたいなことはできないだろうから一長一短か。

大沢橋より沢に入り、すぐに小さい釜を持つ5mほどの滝(遡行図の「7m右岸巻く」だろう)。ここは朝イチ泳ぎでつらいところだがどう見ても「落ちてもドボン」で安全であるのでナベが立候補して泳ぎ&凹角のクライムで突破。エイリアンがバチ効きであった。
その後淵を泳ぎ&へつりで突破してしばらく歩き、鈴木(仮)さんを踏み台にして(「ナベの踏み方には愛があらへん」by鈴木(仮)) CS滝を突破すると銚子滝についた。
実は、牛が滝の上からここまでいわゆる「完全遡行」をしてきていたので、「できれば銚子滝ものぼりたいなあ」と思っていたのだが、見た瞬間それは無理と悟る。
ハーケンのエイドも含めて半日かければいけるかもしれないが、ハーケンはないし今日中に帰らねばならないのでおとなしく右岸のルンゼから高巻く。踏み跡がしっかりついており、結構遡行者が多いということが伺える。
以降はヤル気がなくなり、「いつ上がるか」が問題となる。
猛烈シャワー(多分遡行図の、銚子滝すぐ上の5m斜爆+3m+3m)、ヌルヌルの右壁登り(遡行図に「9m美爆フリーで直登、快適」と書いてあるやつ、忍者では相当厳しかった)、釜泳ぎ+滝ボルダームーブ取り付き(遡行図の6m釜を持つ)などをこなし、上部の二股で支流の左股に入り、ちょこっと行ってから右岸の藪に取り付いて約15分のヤブコギで林道に出た。
今まで滝・釜・淵・河原など、多様な沢の面白さを味わってきたので、シメに遡行図にある「30mナメ」を楽しみたかったのだが残念ながら時間切れだ。帰りは鈴木(仮)さんも大部も免許が無いので、俺一人で、夏休み最後の週末で絶対に渋滞する中央道を乗り切らねばならない。それを考えたら12時遡行打ち切りでも遅いくらいだ。
上まで行きたかったら全装備を担いで沢中一泊すべきだった(その場合は釣りができたら最高だろう)。
ゴルジュだけ楽しみたかったら両夜行日帰りの、二股で遡行打ち切りで十分だと思う。(銚子滝まで行くと左岸の林道に上がれなくなり、帰りの林道が右岸林道となってかなり遠回りになる)

長い林道を歩く。
昨日の林道と違って、渓谷の横ではなく、山腹につけられているので、谷が一本入るたびに思いっきり蛇行するので気がめいる。
「どこかから本谷に下りて、左岸林道に取り付けないか」と思ったがそんな作業道はなかった。
やっと南からくる林道と合流するか、というところで本谷に降りれそうな作業道をみつけたが、ここまできたら変な博打をせずに林道を歩いたほうがいいということでそのまま歩く。
三人とも「1132の三角点あたりから、東に伸びる尾根を下れへんかな」と妄想していたら、なんと本当に「十二兼駅方面近道」とか書いた登山道があって超うれしかったが、調子乗って転んでしまい膝を強か打ってしまった。

まあそんなこんなで思ったより早く下山できてよかったが、やっぱり渋滞に飲まれてしまったのであった。

<装備>
個人:鮎タイツ、ウエット上
共同:ロープ30m、エイリアン1S、キャメロット(#0.75〜1)

<テクニカルアドバイス>
・巻くなら特に装備は必要ないが、突破をやるならウエットやライフジャケット必須。
・上部に行くほどヌメリが多いです。日帰りでやるならアクアステルス、泊まりor我々の一日目終了点(北沢の先)より上をやるならフエルトがいいと思います。
・もし釣ったら下山後に(本当は入山前に)遊魚券買いましょう。
・霧ヶ滝登るならハーケン&ハンマーはあったほうがいいです。


二日目、大沢橋下で準備。なぜか男前な鈴木(仮)さん。 まあさすがに水量は減ってきている。
巻こうと思えば丸ごと巻ける「7m右岸巻く」の滝(だと思う)。 が、当然突っ込む。

とりついてしまえばこっちのもの。 と思っていたがスタンスに気付かずちょっとロス。

登攀価値こそ低いものの、いい渓相が続いてうれしい。 古い橋は趣があってよいね。

「淵10m右岸をへつる」の淵か。まあ泳いだけど。 銚子滝下のCS滝。鈴木(仮)さん土台だと安心感が違う。

柿其川銚子滝

銚子滝。可能性がないこともないが一日がかりだろう。 銚子滝上でも激シャワー。

「フリーで直登り快適」とか書いてある滝(と思われる)。この辺まで来るとヌメリが多く、アクアステルス的には死活問題。 「6m釜を持つ」滝。泳いだほうが簡単だし安全。

さすがに寒くなってきました。帰りの渋滞も心配・・・ なんだか植林といいヌメリといい岩の色といい奥多摩チックになってきた。(でも花崗岩)

遡行図の1:2の二股から左股に入って林道に上がりました。 スペースが余ったので1泊目の晩をば。いや、飲んだなあ。


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