2009.09.20-22
治田 敬人、細谷 宣朗
岳川オオサク沢~早池峰山~御山川ツボケ沢(下) ~滝川又一沢~猿ケ石川(下)~七郎沢
「ハヤチネ」という発音。早池峰と書く。いったい何でこの響きがたまらなく良いのだろう。もちろん山自身もそれは重厚ですばらしいが、まずこの名に惹かれてしまう。かれこれ15年以上になるだろうか、僕はこの早池峰に厳冬期にスキー縦走を試みた。そこには写真で見る夏の姿はなく、強風と極寒が、作り上げた巨大シュカブラが林立する凄まじい姿があった。岩峰が多く稜線はスキーは使えず、青森椴松(オオシラビソ)の密な植生にコテンぱんにやられ、4日間かけて、何とか鶏頭山へ切り抜けたのだった。
しかし、ハヤチネの響きからの呪縛は逃れられず、早池峰の沢を懇願するようになった。当会でも新進気鋭の鮎氏がコメガモリ沢の岩稜をやっているが、その感想はともかく実にうらやましかった。
時は満ち、高速料金千円時代が到来する。行かない理由は見つからない。一人でも行きたい。で、蓋を開けたら何といぶし銀の異名をとる細谷御大が手を上げてきた。しかも沢は初めてに近い。しかし御大のクライムの底力はいやというほど加須の人工壁で拝見している。また沢道具を買い込み勉強しているようだ。これは面白い。さらにやる気が湧いてきて、現地にGOしたのだ。
始めに言うが結果は、岳川オオサク沢、御山川ツボケ沢、滝川又一沢の三本の成果。そしてオマケの石上山ハイクと満足いく内容だった。
9月19日
仮眠に使った、うすゆき山荘は至れり尽くせりで快適。
早朝から岳川に降り、笛貫ノ滝を見物。本流を下降しオオサク沢へ。中部までゴーロで長い。ナメ滝が出始めると一気に連続して滝また滝で高度を稼ぐ。枝上に分かれるため水量も多い沢を詰めていく。資料の大滝80mと100mの存在ははっきりとはわからなかった。ただ連瀑帯なので、どう取るかは各自の判断だし、違う支沢にそれはあるのかもしれない。
地図でも浅い切れ込みだからほどなくしてヤブに突入する。弱い下草でなくで木々の間をすり抜けるのは体力を消耗する。
ハイ松から岩峰を目指し、やっとこ稜線だ。気分爽快。早池峰がでかく鎮座している。ミニ縦走で中岳から本峰へ味わい歩くが、この高山性もたまらない。
頂は人も多く、りっぱな避難小屋がある。反対の御山川水系へ移るため、平津戸への山道を急降下。細谷氏は足袋に爪があたるらしくのんびり下る。
御山川の本流の出合近くに駐車地があり、そこにツエルトを張り本日は終了。
初日からフル行動で、早くも疲れ満載。
(発6:30~出合8:00~稜線12:30~頂14:30~幕地17:30)
9月20日
林道を歩き、本流ツボケ沢に入渓する。当初握沢を計画していたが、あまりに地図でも小さいので、この遠方地で外れると辛いので、ネット検索していたら写真付きの良い沢が見つかった。それがこれだ。
深山味あふれる滝と釜、ゴルジュも浅く、遡行して楽しい。そんで寺さんに伝えたいが、ここは●●も豊富、しかも超でかモンだ。でも来る機会はないか?上部で真打の大滝のご登場。気持ちよくフリークライムだ。
そこを越えると一気に勾配も緩み、だらだらと森の中を彷徨い、笹ヤブに突入だ。笹からやはり岩峰を繋げて鶏頭山に到着。このヤブもかなりの辛抱を要するが、ヤブにもRFというものがあり、いかに薄い抵抗のない所を選んでいくかという勉強にもなる。下山はこれも急降下だが、秋の日和になぜか和むのだ。
今宵も、うすゆき山荘のお世話になり、同宿の秋田のハイカーと早池峰を褒めあった。
(発6:30~稜線11:30~頂13:30~うすゆき山荘17:00)
9月21日
小田越から横通しの道を使い、滝川の又一沢をやる。出合までもけっこう長い。又一の滝は、上部のナメ床と合わせてりっぱなもんだ。しかし登れない。そいで左側からの巻きでナメの脇をヒタヒタと進む。
しばらくはゴロ石帯だが、ナメ滝が出てくると、それが延々と続く。滑りやすく嫌になるほど続くが、その内大石の裂け目登りが続くようになり、手を突っ込み足をこねらし、さらに大股開きでこねくり、黙々と登るようになる。それも飽きたころ、また例のヤブとの格闘が始まる。ここもご多分にもれず
強烈。ヤブというより大木だ風雪に苛められた偏曲がった木々の間を、すり抜けるのだが、体はぶつかり恐ろしくエネルギーを消耗する。ここに来て、いぶし銀・細谷御大は日頃のランと長距離走の鍛えこみで、ワイの嫌な顔とは反対の楽しみの笑みを浮かべていた…。という状況はワイの想像だが、とにかくも100m1時間の消耗戦だった。
抜けて薬師岳。端正な三角形の山はどこも憧れだが、これがその山だ。目の前の早池峰の名声に隠れてはいるが、どうしてなかなかの誉れなのだ。
山道を駆け抜け、小田越にある小屋で打ち止め。いやね、予定では沢を続け猿ケ石川から七郎沢への継続と泊り分の荷で進んだのだが、「もう、いやだ」とヤブに負け小屋に戻ったのだ。
(発6:30~又一滝8:00~頂14:30~小屋16:30)
9月22日
今日は帰宅日だ。大腿やふくらはぎは毎日の急な登降に疲労パンパン。だけど即帰りたくない。行き掛けの駄賃の山プランがあるのだ。つまりは、わざわざその山のためには出向かないが、近くに行けば登ってみたい山という奴。遠野三山の一つ、石上山が選ばれた。にわかハイカーに変身だ。
ところが、これが中々の上玉で、道は急で息は上がるし、鎖や梯子の連続に緊張するしで、実に本格的。最後は頂で、山や人生談義で締めくくる。
その楽しいハイクのツケは高速の大渋滞で払わされ、眼精疲労と座り疲れがさらに加わった。でも北上高地の山いいすね、沢は標準すがお勧めっす。
(ハイクは往復で約3時間。本峰から稜線沿いに三角点のある本頂がある)
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