会越/常浪川大蕎麦谷沢右股
期間:2009年9月19-20日(前夜発翌朝帰り1泊2日)
メンバー:渡辺(L&記録)、佐藤、大部
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大蕎麦谷沢右股80m大滝をランナウトしていくトーマスさん
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形態:沢登り
地図:ページ一番下にあり
昨年、佐藤さんと御神楽沢本谷スラブを登った帰り、栄太郎新道からすごい光景が見えた。
大蕎麦谷沢だ。
俺の目は、大森山から派生する尾根からまるで沢全体が滝のように流れ落ちる沢に、佐藤さんの目は、真っ暗で全く様子が伺えない二股ゴルジュに、それぞれ釘付けとなった。
それぞれ微妙に思惑は違うものの、「大蕎麦の右股に行こう」と例会で飲むたびに確認しあった。そしてこの五連休、佐藤さんが無事休みを取れて、さらに柿其川の帰りでアタックした甲斐があって大部君を誘うことができ、車もボッカ(二人だとザイル二本担ぐのはつらい)も問題なし。一年分の思いをぶちまける体勢が整った。
9/18(金) 久喜〜津川〜楢山集落〜惣又(ソノ又)谷林道〜林業用の広場
久喜駅に着くと、もう大部君が待っていた。東武側は、田舎ヤンキーがガチャガチャやっていて北関東らしさがただよっていたが、トーマスさんが車を寄せたのはJR側だった。文明の利器(携帯)のおかげで問題なく合流。シルバーウイークということで結構混んでいて、テントに入って寝たのはもう3:30くらいだったか。
9/19(土) 晴れ
6:30起床 7:40発 7:45大蕎麦・ソノ又二股〜11:45二股ゴルジュ入り口 13:10二股 14:50二股ゴルジュ右股側の出口 15:35大滝 16:15幕営地
まずは下部廊下帯だ。登山大系の記録ではごくあっさりと「二股まで7時間半」としか書いていない。
一方で、入手できた資料の中で唯一まともな記録である「わらじの仲間」の年報20号(1996年)では、「前に左股をやったので下部廊下は省略」とあっさりかかれていて参考にならない。
唯一参考になるのは地形図と「わらじ」が4時間半で二股までついているという事実。
これらのことから、「多分、両岸ゴルジュだけど沢の中は河原状なのか、あるいは踏み跡がくっきりついているのかのどっちかだろう」と考えていた。
林道の大蕎麦谷沢・ソノ又沢二股のちょっと下の駐車スペースには釣り師と思われる車が停めてあり、自然保護かなんかの行政の看板と、「入山禁止・○○区」とか書いた手作りチックな看板があったが「すんません×3」と言いつつ踏み跡を辿って遡行開始。
すぐに大蕎麦・ソノ又二股になるが、左岸に踏み跡がついておりこれをそのまま辿ると、古いつり橋で右岸に渡ることができた。
しばらくはこの踏み跡を快適に飛ばす。「わらじの4時間半はこういうことだったんだな」と思っていたが、踏み跡は徐々に藪と化していく。何より我慢ならないのはススキ。
俺が子供の頃、ガキ仲間は「包丁葉っぱ」と呼んでいたが、まさにその通り、歩いていると顔面に当たり、切り刻まれる。とうとう我慢できなくなり、約40分くらい歩いたところで、崩壊地形を利用して沢に下りる。
すると予想通り、両岸は立っているものの中は河原。快適に飛ばす。しばらく行くと、駐車スペースに停めてあった車の持ち主がご夫婦で釣りをしていた。挨拶をして抜く。
「このまま二股まで河原歩きか」とうんざりしていたところ、左から割りと大きな支流が滝をかけて合流してきたところから沢の様子が変わり、巨大なCSによって構成された迷路状のゴルジュとなる。洞窟内に入ってハングをカムエイドとかで中央突破もできそうだが、我々は今日中に右股に入らないといけないので、左岸側から登る。
「いやあ楽しかった!」とちょっと満足していたが、この後も、時折平凡な河原歩きを交えつつも、美しい花崗岩ミニゴルジュや釜を持った滝が断続的に現れ、泳ぎ、つっぱり、へつりなどを駆使して進む。総じて「適度な難しさ」で、しかも「落ちてもドボン」で済むのでありがたい。
秋の日差しの援護射撃もあって、たっぷり楽しめた。どうやら大系の7時間半は、こういう釜や淵を全部巻いた場合の時間だろう(ウエットスーツがなく、泳ぎや浸かりを極力避けていた昔の記録にはよくあることだ)
やがて大岩壁が視界に入るようになる。「あれが二股ゴルジュかな?」と言いながら進むとやっぱりそうだった。
入り口の釜を持つ小滝は突破できそうだが、その上が無理そうなので、一旦右岸に上がって偵察してみたが、小滝の上にはナメ滝が続き、その先には20mの登れない滝が立ちふさがっていた。
20m滝の右壁に弱点らしき草付きが見えたが、かなり頑張らないと登れなさそうだったので、一旦小滝の下まで戻り、おとなしく左岸から高巻く。
出だしから急な草付で油断できない。途中トラバースできそうなラインがあったが、高さ的にさっきの弱点あたりに出そうだったので、さらに高巻く。
途中岩が出てきたのでザイルを1P出す。大部リード。問題なし。岩の上からトラバースして、二股へ降りる尾根の上でビレイしていた。
ここから沢床に降りたいが、この尾根も急なので懸垂しないといけない。しかし適当な支点が見当たらず、仕方なくさらにもう一段上がって太いのを探すが、微妙な奴しか見当たらない。
仕方なく「こいつでいいか」と妥協してスリングを巻いていたら、右脇になんと古いスリングの巻かれた枯れ木があるではないか!こんなところで残置に会うとはね。スリングで木が圧迫されて枯れてしまったのだろう。が、「通せるものには全部通せ」という大学時代の教えの通り、このスリングにもザイルを通して懸垂。沢床まで降りたら40mくらいだったが、途中の歩いて降りれる尾根までならザイル半分くらいで済んだので50m1本でも足りると思う。
沢床に降りると、巨大な側壁を持つ左股がガビーンと奥へ続いており、我々の進路である右股もこれまた10m滝がガビーンと立ちふさがり登攀不可能。これらの光景は懸垂地点からも見えるので、懸垂前、トーマスさんは「あんなん上れないからこのまま巻いちゃおうぜ」なんて言っていたが、この夏それでひどい目にあったでしょう!こういう場合はとりあえず降りてみるもんだ。
案の定、滝の左壁は逆層のフェースが(ランニング用のボルトを打てば)登攀可能に見えたし、左岸(右側)には明らかに登れそうなスラブがある。左壁は厳しそうなので左岸のスラブから巻くことにする。ザイルを出し、沢床でビレイ。渡辺リードで1P伸ばし、スラブの左側中間部の潅木でビレイ。
次のピッチを佐藤さんにお願いし、スラブから左の尾根を乗り越して沢に戻るラインを取るが、トーマスさんはまいている途中に「10m滝の上にさらにナメ滝があるよ〜」といってそのまま沢沿いに藪をトラバースしていってしまった。「滝の落ち口」を目指すのが巻きの美学でもあり常道でもあるのでコレはおかしいと思ったが、まあラインはそれぞれのエゴでいいと思うので(スタイルにはモラルが要求されると思うけど)、モヤモヤした不満を「時間かけすぎっすよ!」という形で吐き出す(我ながら後輩の取る態度ではないなあ)。
ちなみに、ちょっともどってナメ滝を見てみると普通にクライムダウンでき、よって下から写真も取れた。
この先は、小滝が連続する楽しい沢となるが、何か妙にヌメりが多くなってきてちょっと難儀する。(トーマスさんはいつものICI渓流タビだが、俺と大部君はアクアステルスの秀山荘忍者)。
やがて右から大きな支流(ほぼ1:1)が降りてきて、その先には2段40m?50m?とにかくでかい滝が立ちふさがり一見して左岸巻きを選択。わらじの記録では、ルンゼから左岸のピナクルごと高巻いており、記述からは簡単そうに見えたので、何の心の準備もせず、滝の手前のほうから草付に入り、トラバースしてルンゼに入る。が、草付きもルンゼも悪く、特にルンゼ内はかなり悪い。
ここまで特に悪いところは無く、「ああ、初心者が2発目くらいにやる泊まりの沢としてちょうどいいレベルかな」位に思っていたが、ワンミスでアウトの泥&潅木&岩のルンゼは延々と続く。トーマスさんは一度力尽きかけて、デイジーを木に直巻きしてテンションかけていた。さりとてザイルを出すほどでもなく、中途半端だ。いちばん危ないパターンだろう。とっとと出してフィックスすべきだった。
振り返ると例の大滝の一段目と二段目の間には巨大な釜があり、「撤退の際は落ち口からあの釜に飛び込めばこのルンゼ降りなくて済むな」とか思った。もちろん本当にやったらぺしゃんこだろうけど。
苦しい思いをしながらピナクルの右肩(コル)に出て、そのまま少し下ると、大滝で沢床が上がっているおかげで、あっという間に本流へ流れ込む枯れ沢に出ることができた。
この枯れ沢を30秒下ると本流だが、降りたところの右手(枯れ沢の上流側)にこれ以上ないくらいのいいテントサイトがあったのでココで幕。流木を集めて焚火をしたが、地形的に焚火を集めにくかった。まあなんとか一晩燃える火にはしたが。
ナベは流木集めの傍ら、目標の左岸大滝沢を偵察。「う〜ん、なんか汚くねえ?しかも本流のほうが全然よくねえ?」と言いだしっぺなのに思ってしまい、とりあえず写真に収めて焚火を囲いながら二人に見せるが、もう二人とも宴会モードで判断は明日に持ち越されることになった。焚火の周りで酔いつぶれては冷気に起こされ、を繰り返し、23時ごろツエルトに入る。
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下部廊下。ゴルジュ状だが基本歩き。時々股下まで浸かる。 |
結構いい雰囲気よ。 |
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左から支流が入ると、巨岩の迷路が始まる。 |
洞窟内で激写。 |
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浸かってのへつり。晴れてたのでつらくはなかった。 |
へつりを失敗し泳ぐ大部。 |
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楽しいゴルジュが断続的に出てくる。 |
時々だが泳ぎもある。ここはトーマスさんが気合で這い上がる。 |
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いい渓相。 |
さむい日はキツイだろうなあ。 |
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そろそろ二股ゴルジュが近づいてきた。 |
二股ゴルジュ入り口。 |
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入り口の小滝。 |
おとなしく左岸を高巻く。 |
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左股方面。両岸絶壁ですな。 |
右股しょっぱなの滝。どうみても無理ですな。 |
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右股しょっぱなの滝を左岸から巻く。 |
右股に入ってもゴルジュは続く。 |
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やがて二段の大滝。 |
大滝左岸のピナクル。こいつの基部のルンゼから巻いた。 |
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巻いている途中から二段大滝を撮影。すごい釜だ。 |
高巻きを終えると、わらじの記録の通り幕営適地があった。 |
9/20 曇り時々晴れ
4:30起床 6:30発 9:35大滝 12:05大滝の落ち口 14:40雨乞峰 16:45林道 18:30ごろ
惣又谷林道の駐車スペース
標高が低いおかげか、ぜんぜん寒くなかった。朝から焚火を起こして優雅なラーメンをハラにいれ、遡行開始。
ヌメリの多い小滝をいくつか越えると、左岸からの支流が、これまたヌメったナメ滝をかけている。当初はこの沢を登る予定だったが、どうみても本流のほうが面白そうなので本流遡行に決定。
この時点で、そもそもトーマスさんもナベもこの左岸の支流を登るつもりだったので、この先がどうなっているか全然頭に入っていなかった(ので、この後の80m大滝で魂を抜かれた)。この後は、そこそこ手ごわい小滝が連続する展開で、両岸が立っているため巻きは論外。
2段10mくらいの右からかかる滝をぬめりに注意して越え、5mくらいのチューブ状の滝はナベがぬめりに耐えながらツッパリを駆使して突破(ザイル使用)。
両岸立っているとはいえ谷は明るく開け、一旦平凡になったのでキジなど打って小休止。
巨大CSを左から越え、このあとの汚らしい8m滝もザイルを出し、大部が抜け口のCSを変態ムーブで突破。その次の滝は似たような感じだったが激シャワーで、先行したトーマスさんはシャワーを浴びつつ弱点をついて簡単に上まで抜けたが、続く大部はシャワーに躊躇している間にヌメリに足をとられて滑落。頭が下になってズリ落ちてきた。ちょうどカメラを構えていた俺は一瞬「シャッターチャンス」と思ったがすぐにそんなことしている場合ではないと気付き、カメラを土方ヤッケにつっこみ大部を起しにダッシュ。幸いザックがクッションになってなんともなかったが、この後大部はかなり慎重になっていた。
このあたりから沢はちょっと開けてくるが、両岸は相変わらずいやらしい草付で、なるべくなら巻きたくないのは同じ。ところがチューブ状の3m滝が2〜3つほど続いており、ヌメリがひどくて正面突破はとてもじゃないけど無理。右岸側から小巻くが、一段上がるまでが悪く、一部岩も混じる。サワタビで立ち込みの弱いトーマスさんに、アングルを打ってお助けスリングを出す。
沢は一旦平凡になり、ちょっと藪っぽくなってくるがその奥にはピナクルが林立している。地形図でも岩マークが出ている。
この藪を抜けると80m大滝がドガンと目の前に現れた。俺もトーマスさんも右股本谷については資料をあまり読んでいなかったので「うおーでけー」とビビル。しかも、これまた水流はヌメリが多そうだ。左壁、右壁どちらも登れそうだが、潅木からプロテクションがとりやすそうな右壁を選択。
ここでトーマスさんはクライミングシューズに履き替える。渡辺・大部は忍者のままで突っ込むことにした。
※グレードは超適当です。
<1P目>
40m Wくらい 佐藤
右壁の出だしから左上気味に登って水流の右端に入りキャメ#0.5を決め、今度は右上して木でビレイ。セカンドで登ったのでグレードはさっぱりわからないが、結構ランナウト。
<2P目>
25m Wくらい ナベ
木を右から回り込んで、草付を左上し、ハーケンを1本打って、ちょっとした段差を都合のいいカチやらガバやらに導かれて登る。下からオブザベしたときにランニングに使えると思っていた潅木は、ホールドを追うと遠ざかってしまいとても悲しい。
この上の、取り付きからも核心に見えた段差は、予想通り木登りで突破できたが、傾斜が強くてパンプしてしまいテンション。ビレイ点の木を右から回り込んで左上したため、非常にザイルの流れが悪く、この段差を越えてすぐのところでピッチを切る。落ち口が左上15m程先に見えるが、水流の中はぬめっており厳しそうだ。
<3P目>
15m Vくらい 大部
水流を渡って左に行ければ乾いた壁があるが、ヌメリで一度足を取られている大部は無理せず右の藪を木登り。といっても結構悪い。ボルト一本打てば綺麗に落ち口に抜けれるだろうが、時間的にも倫理的にも論外。
ここでビレイをはずし、藪をこいで左トラバースすると落ち口に出られた。下を覗き込みたいが恐ろしいので、それぞれ立ち木からデイジーでビレイを取ったりして覗き込み「おお〜」と驚嘆の声を上げる(ちょうど同時期、おんなじことやって滑落した有名人がいるみたいだなあ…ビレイは大事だ)。
大滝の上の小滝を2つほど越えると、10m滝。トーマスさんが左の草付を直情して上の藪に行くが、悪いらしくバイルでステップを切っている。
下で見ていてめんどくさくなったので、途中まで追いかけてから右上し、藪にぶら下がりながら落ち口に出た。
が、このあたりからトーマスさんも俺もお疲れモードでトップをきるモチが枯れてきた。
昨日からの疲れに加え、大滝で気力を削られてしまったようだ。
ヌメヌメの4m滝は、本来ならザイルを出すか巻くべきであったが、俺もトーマスさんもめんどくさくなっていたので、ラスト2手で苦しんでいる大部君に正面突破してもらうことにし、「スポットしてやるから大丈夫!」「ガンバ〜」などと声援を送りつつ、「大部、登ってくれないかな、そしたら楽できるのにな」と無責任な期待を抱く有様。
大部は期待に応えて左のセロリみたいな草やニラみたいな草を騙して見事完登(大部いわく「この滝がいちばん悪かった」)。
ところが、「なんか上もヌメヌメで踏ん張れません!」「適当な木もリスもありません!」と困っている。「もういいよ、お前沢床でマグロみたいに転がって、全身フリクションしてくれ」と非情な指令を出すが、「あ!ちょっと待って、いいとこ見つけました!ここなら大丈夫です!」と心強い返事。連結した長スリングを容赦ないゴボウで滝を越えると、大部はその先の釜に浸かって踏ん張っていた。さすがM男!「登ったことより、ビレイを褒めてください」とは本人の弁だが、登ったのも凄いよ。
この先はいよいよ源頭の雰囲気。顕著な二股は、左に見える涸れ滝が論外に見えたので右に入る。
その先もまた小さい二股上になるが、これまた右のチムニー滝がめんどくさかったので左に入る。藪はそれほどでもなく、水が流れるところは幅30cmほどのスラブ状になっていて、ここが藪の弱点となっておりとても楽。一箇所涸れ滝があったほかはさしたる困難も無く、稜線の手前の広い草原状に出た。
ココから見る新潟方面にちょっと感動し、草原を突ききってラスト10m藪をこぐと登山道に出た。
荷物を降ろして、雨乞峰へ。10分もかからず雨乞峰へ着いた。昨年御神楽沢を登った時は単なる通過点で何の感慨も無かったがあったが、今回は水源のピークとなるので満足感がある。写真を撮って、室谷方面へ下山開始。
ところどころぬかるんでいるものの、ピクニックコースとして素晴らしい。快適に下り、林道へ。林道を一時間ほど歩き、橋を渡り、常浪川の左岸についた道をトボトボと歩く。
ここからさらに2時間はかかるのでうんざりする。途中で県道に上がり、アップダウンに苦しむ。
「後からタクシーとか通らないかな〜」と思っていたが、なんとしたことか、名古津バス停の時刻表には、一日3本しかないバスのラスト一本の時刻が「1807」と書いてあるではないか!時計を見ると、現在時刻は17時55分。「やった、バス乗れるよ!」と俺は喜んだが、時計を持っていない大部&ザックにつけてるけど疲れて見る気ゼロのトーマスさんは「は?なんで?もう終バス終わったろ?」などと言っている。「いやだから、今まだ17時55分なんだって!」と繰り返すが、要領を得ない。疲れて60進法や24進法を忘れたのか?
ようやく二人とも理解し、まだ時間があるのでもう一つ先のバス停まで行こうということになったが田舎のバス停は間隔が広く、途中でスノーシェッドが見えたので、さすがにトンネルの中では留まってくれないだろうと思い、ザックを置いて県道脇でバスを待つ。
やがて来たバスをヘッドランプを振りかざして止め、「すいません、楢山までのせてもらえますか?」と言ったら笑顔で「料金はいただきますよ」といわれた。ヒッチと勘違いしたのだろうけど、この辺じゃバス相手にヒッチする奴がいるのだろうか。前の中ノ川といい、トーマスさんといく山ではいい人と会うなあ。
運転手さんは親切にも林道入り口で降ろしてくれた。林道を15分ほど歩き、車を回収。この時間から帰京を目指すのはつらいし、そもそもそんな元気が無い。早々にもう一泊決定。
御神楽荘は20時までだったので余裕で入浴できたが、飯の方は風呂から上がった時にはオーダーストップで、津川ICの方に走って上手い具合にあったポッポ(トッポだっけ?)とかいう定食屋で三人ともカツ丼を食って、津川駅近くでテント張って飲んだくれた。
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出発してすぐに、当初目標としていた左岸の支流が見える。(前日撮影) |
本流との出合にかかるナメ滝。キタネエ・・・ |
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というわけで本流を遡行。 |
ヌメリの多いチューブ状の滝はつっぱりで突破。 |
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ゴルジュ状が続くが一旦やや平凡になる。 |
すぐCS滝が出てくる。 |
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トーマスさんもナベもハマりました。 |
次の滝も似たような感じだがシャワー。トーマスさんはシャワーを意に介さずさっくりと。(大部は躊躇し、ヌメって滑落) |
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ヌメヌメのチューブ滝が続く。 |
右岸から巻くが一部悪く、アングルを打つ。 |
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藪を抜けると80m大滝がガビーンとそびえる。 |
左壁も可能性があるが、潅木のある右壁を選択。(以下大滝の写真) |
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超ヌメる滝。横の草も頼りにならない。 |
新技・釜ビレイ |
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雨乞峰にて。 |
ちょっと紅葉が始まってました。 |
9/21 (月)
早朝、東北道を飛ばして帰京。上り線の渋滞を尻目に、3時間で帰ることができた。
大蕎麦谷沢右股。大系にすらロクに載っていないマイナーな沢だが、栄太郎新道から見た時にビビッと来た感性を信じてよかった。本当にいい沢だった。
美しく、厳しく、そして楽しい沢だった。
資料探しがまず努力を要し、見つけた資料も下半部は記載されていない上に簡潔な表記。沢の中に残置は懸垂のスリング1本のみ。自分達の力でやり遂げた、という思いが、満足感を底上げしているのだろう。こんなマイナーな沢を一緒に計画した佐藤さん、5連休なのに1泊2日の沢に付き合ってくれた大部君に感謝。
これからも、年に一本くらい、こういう沢をやりたい。
装備:ツエルト、ザイル8mm50m×2(1本でもいいかも)、ハーケン長2短2アングル1(各自4ほんずつ持って行ったが、パーティで1セットあれば十分)、ボルトキット(使わなかったが、ラインを読み間違えた場合いると思う)、メトリウスマスターカム#1〜3(一度も使わなかったが使えるところもあると思う)、キャメC4#0.5〜1(各サイズ1回ずつくらい使った)、ウエットタイツ(必須)、軍手(ヤバイところでヌメリをふき取るために必須)、クライミングシューズ(大滝で活躍)
アドバイス:下山は、車二台あったら楽だろうが、無理せず林道終点にタクシーを呼んでおくか、室谷集落からのバスの時刻に合わせるのも手。林道&県道を歩くのはちょっとつらい。足回りはフエルトの方がいいと思う。下部ではアクアステルスのほうがいいのだが、右股に入ってからはヌメリが多くてあまり活躍できないし、80m大滝はクライミングシューズに履き替えたほうがいい。また、軍手が大活躍した。軍手でごしごしするとヌメリがとれる。カチを掴みたい人は指先を切っておくといい。
変化があっていい沢です。
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