2009/10/18 治田 敬人 / 高橋 弘
題名のとおり、「攀じり沢」の筆頭に、この東御築江沢が挙がる。
表現的に、急すぎて狭く、たるみもなく、水流も細く小さく、通常の沢登りとも言い難し。
また、壁という構成とは程遠く、ルンゼとも言えず、岩登りの感覚と感触とも違う。視覚的な景観面でも同じで、沢?岩?なのだ。
とにかくも山登りであることは紛れもない事実で。あえていうと「攀じり沢」となった次第である。そう、オツクエとはそんなとこなのだ。
高橋登攀隊長との水無川真沢は、昨年現地で不調により涙を飲んだが、今年こそと悲願 した。結果は何と3週連続の不天候のため断念。
これにはメゲたが、作戦変更でオツクエだ。
当初登攀隊長は乗る気でないのが、携帯からひしひしと伝わってきた。んま、それもヨシ。
そうなれば単独で、どこかをやろう。東のナメなんてどうだろう?他にも探せば満足できる山は見つかるだろうと考えた。
ところが晴天の霹靂。二日前の昼に「やってやるぜ、オツクエとやら」と携帯からの声が響く。
やっとわかってくれたのか。ワイと隊長が組めば、そこそこのところはやれる。癒し系も、まったり系もこのパーティでは考えられん。
つうことでオツクエの始まり始まり。
10月18日(日)
アプは住んでいる位置の関係から、現地合流形式。2時半に起きて5:45に着くと、隊長は既に車を揺すぶるほどの大イビキをかいていた。
起こさないように、すき屋の大盛り牛丼で朝飯だ。おっとリーダーはワイだが、めっぽう登攀に強いので、勝手に隊長と記す。
現地のやり取りで、「隊長、さあ隊長、どうしますか隊長」とやっているわけではない。
出合までに客を連れた、プロガイドの志水氏に出会う。
ワイもそのうち、かわゆいギャルなんぞをガイドして、手取り足取り、腰を取りなんてことしたいなんて、ちっとも考えていなくもない。
オツクエの出合はしょぼい。前日に降雨があったのかしっとり濡れている。易しいそうだが、隊長はそれすらも見抜き、いやらしいなとつぶやいている。
早速登りだす。いや、ワイですよ。気合はないし、それなり攀じろうと思っていたけど、中盤のクラックのところで、実に滑る。足が決まらないよ。
無理して上がって体を持っていかれると指先を傷めそうだったので、えんやこらとスリングをわしづかみだ。
これを一回やったら、あとはもうその繰り返し。フリーに戻ろうと思っても、足がとにかく滑るんで戻れんのよ。実力ないねー。
続いて、ナメ滝が続く。これもなにやら、ノーロープでは進みづらく、様子見ということでスタカットで攻めていく。
幾ピッチか登り、緩くなると、ロープを解くが、すぐにまたロープ無しでは妖しい滝が現れる。
トップ隊長はハーケンを必死に打ち込むがリスが浅く、跳ね返されてしまう。右上の浅いクッラクにエイリアンを決めて、あっさり越えていった。
さらに二段のCS滝は右から巻くが、沢に戻るトラバと下降がいやらしい。
そうこうしてると、目の前が明るくなって岩壁が広がってきた。大滝のご登場だ。大滝なのに、水量がしょぼく滝としての貫禄は今一。
1ピッチ30m・Ⅲ-(治田)
左の潅木から回り込んで大きなテラスまで。古いボルト有り。
2ピッチ30m・Ⅴ+~Ⅵ-(高橋)
滝芯に近づくと古いボルトが離れて2本ある。ここからがRFに悩む。
水線を右に越えて対岸に行き凹角を攻めるルートも読めそうだが相当に悪い。
ボルトの直上は問題外。少し左側のフェースが行けそうだと隊長がバランスクライミングで攀じりだす。
見ていても凄い迫力のクライミングだった。その上で水流をわたりフラットなところで終了。
3ピッチ40m・Ⅲ+(治田)
そのまま凹角状を登り、滝の段差のところで水流に戻り、対岸の木でビレイ。
隊長はノーピンを理由に、スラブというか寝ているフェースを直上。
その感想は5.9くらいで、ピンがないのでリードは厳しいとのこと。ここで後続パーティが登ってくる。
3人で出合F1の滝を続いて登ってきたパーティだ。トップは気合を入れて攀じっている。
そのルートは、先に記したRFの水線左岸側のラインであった。
彼の気合を応援すると同時に遠目に目が合ったので挨拶を交わした。
それほど気合の入ったクライムだった。
4ピッチ50m・Ⅲ+(高橋)そのまま登り、左上の立ち木ラインにロープを伸ばす。
5ピッチ50m・Ⅲ(治田)
実質4ピッチで終わっているが、安全を期してさらに伸ばす。
二つほど小滝を越して左の立ち木でビレイ。
6ピッチ50m・Ⅳ-(高橋)
既にまったく大滝は終わっているが、上のナメ滝も外傾していやらしく見えたので伸ばす。
案の定小滝の左側は、あまいホールドの連続で支点も取れず、セカンドにとってはアンザイレンは正解。
その先までスタカットしたかは、正直記憶にない。思い出せない。
だからたいした事はないんだろう、と思ってはいけない。ロープは解いてもそこそこいやらしく、油断できない小滝がある。
登れずに右から巻く滝、さらにその上の、長いスラブ滝も左草付きの登り、と楽しめる滝が続くのだ。
もうボチボチ源頭の雰囲気で、陰惨なルンゼの登場を期待していた。それはなぜか?
それがオツクエの窓に抜けらる合図だからなのだ。
まったくその通りで、そこより右のガレ支沢を50mも登ると、窓にご対面だ。
「御築江の窓」岩稜に引っかかっている巨大な大岩。
その下が窓状で獣や人が行き来できる。ん、人はこんなとこ何回も行き来しないか。
予想以上に大きく、谷底のチョックストンは理解できるが、稜状によく乗ったもんだと関心することしきり。
記念撮影終了後に、鶏冠尾根を目指す。踏み跡状が続くが皆迷っているらしくそのままトラバすると、オツクエの大岩壁に出てしまい宙に浮いてしまう。あちゃ。
少し下ると岩壁の基部を横切るふみ跡に乗かっれる。急登ひとしきりで山道に合流。
後は「空荷を背負いて急坂を下るが如し」の人生訓をならい、あっという間に駐車場に着。
雰囲気は冒頭のとおり。それを理解するのは、自身が出向いて窓を踏んでくだされば体感できる。
そして、なるほどとうなづき、沢?岩?なんて振り分けすんのがバカらしくなるだろう。
つまりは奥秩父の東沢の東御築江沢の左俣とはそういうところなんだ。
* 行動タイム:駐車地6:15~出合8:30~大滝下9:50~上11:40~窓12:40~鶏冠尾根13:30~駐車地15:00
山行にあたりMOTOさんのHPの記録がたいへん参考になりました。ありがとうございました。
これを読んでも読まなくても礼は言いたかったのだ。
佐梨奥壁の第3スラブでもバッテングしたし、MOTOさんの国内の記録はすばらしいものがあるのだ。
今後も良い山を願っています。
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