■日光/柳沢川赤岩沢(溯行)〜柳沢川本谷(下降)

2010.7.10-.11
治田、大部
 天候は極めて不順。職場のアメダスで雨雲の動向は絶えずチエックするものの、やばそうな気配はぬぐえない。んま、現地で判断するしかないか?でも6時間後の深夜は前線抜けて何か星空か?何て淡い希望も乗せて、大部勝負師と一路奥日光へひた走る。
 鹿沼を越えて強烈なそれは来た。そこそこに降っていた雨が、豪雨に変わり窓を叩く。高速ワイパーでも前方は不視。こりゃやばい。道路は排水できず、ザ、ザーと水の抵抗が強烈だ。今までの経験した中で、最悪の沢へのアプローチ状態だ。
 でもなぜか、やばいんだけど、自然の猛威も受け入れるワイがそこにいる。どうにもならなければ、本当にどうにもならない。でもそれでも、本当かどうかはわからない。残された選択は、その中で、どうにかやるだけなのだ。
 でも予報は凄い的中で、3、40分も過ぎれば、その豪雨も落ち着き、現地に着く前に上がってしまった。駐車場では星空が瞬く。いったい誰の顔がいいのか?
赤岩大滝
 起床は4:45分で低公害バス5:30発で西ノ湖入口下車。林道から赤岩滝にGO。体が暖まったところで、本流から分かれて堂々の大滝登場。
 見えるところ4段90mという。でかいが写真でも先入観があり、想像以上ではなかった。また登攀ラインの側壁の幅が想う以上に狭かった。しかし、大滝としてまったくもって見事な肢体であることは言うまでもない。早速登攀準備。ワイトップだが、取り付きの岩が異常に滑る。安い岩靴のせいか。毎度マルチの岩には苦労しているが、これはそれを超えている。そのためまた沢足袋に履き替え、登攀開始。

1ピッチ・V+ 45m(治)
 下部リッジ取り付きから少し上から登り出す。スタートが少し悪い。後は寝ている岩をそろりと登り、太く低い針葉樹のテラスで終了。残置支点はそこそこにある。

2ピッチ・W+ 30m(大)
 テラスからリッジ状を登り、途中より左の草付き凹角に入る。濡れているが支点はボルト、ハーケンが多い。凹角ラインはやがて急になるので右にトラバースしてボルト支点でピッチを切る。この右から直上数歩が、ホールドが 細かく悪い。

3ピッチ・X−A0 30m(治)
 ピッチスタートで左に移り、壁の中央を直上だが悪い。支点がなくなり、ホールドが極小。束ねた細い草に支点を設け、さらに伸ばすが支点はない。壁は濡れており、まったく嫌になる。大きい浮いた岩の地点でさらに傾斜が増す。左側にも残置が見えたが浮いた岩が怖いので、右に移動すると、不思議にボルト、ハーケンが出てきた。その直上もしかし悪そうだ。支点があるので背伸びしてクリップしたあとフリーで試みたが、足のホールドが抑えきれずスルッと滑りフォール。約2、3m。欲を出した結果だが幸い無傷。それではとA0の動作で切り抜け、最後の小壁も一気に登れば、4段は終了。

4ピッチ・V− 50m(大)
 そのまま左岸を登り、トラバース気味に5段目30m滝の中断まで。

5ピッチ・V− 30m(治)
 そのまま滝右側の草付きを登り、6段目のスタートまで。

6ピッチ・W+ 30m(大)
 ナメ上15m滝の左を登る。見た目以上に、ヌルヌルで嫌らしい。慎重に体重移動で滝頭へ抜ける。

7ピッチ・W 30m(治)
 最後の7段目はナメ上10m滝。水流を渡り、右から攻める。 滝の上部が外傾していてそこそこ悪く、アングルハーケンを打ち、タイオフして万一の 墜落を最小限に抑えてから登る。

 赤岩滝の登攀は、やはり岩壁のそれでなく、沢の大滝登攀だった。決して易しくはない。逆に凄く滑りやすく、乾いた難しい岩より、はるかに怖く危険な要素が漂っていた。支点は全体に多いが、悪い所の肝心な箇所にないのだ。つまり核心なのに絶対落ちられない。誰でもが登れる大滝ではないが、実に沢・岩のこなせる御仁には一押しだ。

 さて、上部は平凡とのことだが、闊達として明るい沢筋で気持ちよく登れる。ナメも少し、さらに詰めあがる分岐は小滝で出会い、その上の地形から謎の伏流水の泉あふれる源泉など、魅力はたっぷりある。
 地図の扇場の源頭は歩きやすく、迷ったものの午後2時前には錫の水場に出てしまう。ここは実に良い。山深く静かで落ち着け、人工物は道標以外何もない。年数えるほどの岳人しか泊まることはないだろう。早いがここを今宵の宿にする。
 国立公園内の焚火禁止も、小さければいいだろうと試みるが、メタもすくなく不発に終わる。明るいうちから酒を飲み、勝負師と語る。何をってか、ボルダーか?ハイグレードのフリー?んなことはない。染み渡る岳河山水を語りましたよ。覚えてないけどね。


 翌日は天候も崩れる為、4時起床、5時半発で6時には錫のテッペンに立っていた。これも文句なしにうれしいポイントだ。3月の番長との山から再びの訪れだが、雰囲気から当時は1〜1.5mの積雪があったようだ。
 下降する柳沢本流まではけっこう急な笹の下降で滑りやすい。分かりやすいコルから降りるが、急で楽しく、何回かは資料のとおり懸垂下降を交える。しかし、ま、できえる限りクライムダウンを試みたので、ロープのお世話にならず楽しい下降だ。渓相は、明るく倒木はあるものの、ナメ床ナメ滝が続き、心ウキウキで、彼女と来たいな?なんて気分にさせる沢だ。
 短いので休憩なしに赤岩沢の出合についてしまう。まだ、8:30。低公害バスに9:54乗車で、赤沼駐車場。事前に中禅寺湖にうまいカツ屋の情報があったが、11:45から。勝負師と相談し、いくらなんでも45分は待てないと下道を飛ばし、行き付けの鹿沼の定食屋で腹を満たす。

 赤岩大滝からの柳沢本流下降のセットは、正直いってお勧めの一品だ。二日でお釣のくる余裕の山旅。大滝登攀はやや難しいが、稜線の錫の水場の雰囲気が最高でくつろげる。登攀が嫌なら、柳沢の右俣から左俣本流のつなぎだっていいだろう。右俣は行っていないが、出合からナメ状美瀑が続き、興味をそそられる。どうぞ、お試しあれ。

治田 記

【写真】

@赤岩大滝の下部、勝負師も小さく写る

A大滝は4段90mが見えている。圧倒ものだ

B沢の中部で分かれる分岐は小滝で出会う

C謎の泉が湧き出している。水量豊富で冷たく、辺りの森は別天地

D柳沢本流の左俣の右と左沢の出合。誰かいる

Eなんだ大部がころがっていたのか?

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