|
|
|
|
|
|
| |
「運動靴で雪壁登るの怖い?」あっさり言われてしまえばしょうがない。ま、雪壁じゃあ支点もとれないし、落ちればF1流心までまっさかさまだからね。さらに岩壁上をトラバースしていけばF1の上に抜けられそうなので、そのままトラバースを継続するが、これがめっぽう悪いんですな。風化した花崗岩のざらざら壁のなかから丁寧にスタンスをほじくりだしながらのランナウトピッチ。真下を見るとかなりの水量を落とすF1の真上。高度感というよりは、その迫力に圧倒されるトラバース。リードと同じだけ怖いはずのこのピッチを、荷物をかついだまま、「怖かったぁ〜」と言いつつも顔色ひとつ変えずにフォローしてくる佐野さんも相当な強者ですな。今後の登攀への自信が深まります。
「うん」
「スラブ濡れてるよね〜」いろいろと言い訳は続けるが、二人そろってやる気なくしていることに変わりはなし。まわりじゅうすべてが切り立った下又白にあって唯一の「まとも?」なルートが、アプローチで登ってきた菱形ルンゼ。菱形岩壁の右ラインに沿って稜線まで抜けるルートだ。ここを最後まで登って上部に抜けることにした。
「寒くてもう身体ががちがち!」
「ちょっとこの荷物水吸ってえらい重いねぇ〜」
「こんなの背負って濡れたスラブのリードは無理!絶対無理!」