■赤城/粕川(銚子の伽藍)

2010.9.11
鮎島、佐藤、大部(=山登魂)
 思えば2年前からこの赤城粕川に行ってみたかった。
 確か、ハイキング本だったと思うが、それで見た「銚子の伽藍」は明らかにすごかったのである。しかし、記録もなく、登れるかどうかは甚だ疑問。大滝があるとかないとかでボルト連打になりそうな予感もあり、後回しにして、その他の行きたい山を優先していたら、ついつい時間が経ってしまった。
 しかし、ずっと気になる存在で、ふとインターネット検索をかけると、昨年、ぶなの会にやられてしまった…。「しまった〜」と思うも時すでに遅し。が、その記録と写真は私の期待を裏切るものではなく、逆により強い興味を引き出してくれるすばらしいものだった。それ以来、この赤城計画は優先順位を30段飛ばしぐらいで高めていた。

不動大滝

銚子の伽藍入口

6m滝のフォロー

銚子の伽藍真っ最中

10m滝をリードするオーブ

出口5mCS
 高崎ICで降りて赤城へ向かう。
 ここは、すでに、なんか「いい感じ」の『ヘル中』(中学生withヘルメット)天国。
 「制服(ジャージ)+ヘルメット+自転車」というイケてる組み合わせは、田舎に行くと良くみる風景だが、そういえば、小川山というか、その麓の川上村では自転車通学だけでなく徒歩でも被っていたような…。そっちこそ、交通量が少ないだろうに…と不可思議だが、どちらかというと群馬より川上村の方に隕石が落ちそうなイメージがある(とくに根拠はありません)ので、それはそれでありなのだろう。
 ちなみに、田舎育ちの私の後輩が教えてくれたのだが、ヘルメットにピップエレキバンを貼ると、その磁力のおかげで、隕石が当たらなくなるらしい…。山でもヘルメットにつければ落石がそれていく…というのは甚だ「???」だが、それでも、「M男注意」シールよりは実用性があると思われるので、興味があれば皆さんもぜひ!

 そんな「ヘル中」ネタはさておき、粕川左岸の駐車地。
 可愛いうさぎ面の「自然を大切にネ」の像があったりする。駐車地から滝沢不動尊までトラバース道を歩く。途中、「猿の口から出る水場」があるので水を飲むが、汚い。また「国定忠治の顔抜きパネル」があったりするので、ここは「オーブ、わかってるな」→「はい…」と国定忠治になってもらった。記念写真を一枚、パチリ。
 立派な山門を持つ滝沢不動尊で安全祈願(賽銭はナシ)し、さくさくと不動大滝へ。それにしても右岸のユンボー音がうるさい。何を作っているんだろう?

 さて、不動滝。うん、デカい。32m(実測)あるそうな。なるほど。でも、アイスクライミングの記録があるらしいが、ホンマかいな?季節には修験者達が行に励んでいることもあるらしいが、今回はいない。滝に打たれたら痛そう〜〜。うん、「オーブ、やっとくか?」→「っえ、いやいやいや。これはちょっと…」。
 来た道を戻り、忠治の岩屋へ。2ヶ月間ほど、この岩屋で隠れていたらしいが、もちろん、入ってみる。おおー、すずしいー。それに、なるほどデカいし、暗い。宴会ができそうだ。

 そんな寄り道はさておき、高巻き。忠治の岩屋より下流から左岸を高巻こうとするが、変なもろい岩壁がずっと続き、全然わからん!岩壁帯をオーブがノーヘルで取り付くが、もろくて悪そう(一瞬、落ちそうになっていた)…。あぶねー、「ヘル中の精神」を見習えよ!後続は、もちろん、ヘルメットを被り、さらに上からロープを投げてもらい、安全登山で越えた。
 そこを抜けてしまえば、岩壁帯の上の踏み跡を延々トラバースできる。但し、岩壁帯のちょっと上をたどっているので、ちょっとでも滑ったら、たちまち50m落下…、ちょっと恐ろしかったりする。それでも、一軍の仲間入りしたオーブの的確なルーファイが功を奏し、途中からは赤テープばっちりの踏み跡に合流、滝上の堰堤上に下り立つことができた。結局、不動大滝を越えるのに1時間程度かかってしまった。

 さて、そこからは延々とゴーロである。…石がゴロゴロ堆積した変化のない広い河床をしばらく遡ると堰堤。右から越えられそうだったが、堰堤を乗り越す最後の数メートルが礫岩の崖。いけなくはなさそうだが、落ちたら痛そう。
 ここは安全策を採って高巻くが、これまた適当なところがない。結局、結構、下流まで戻って左岸のルンゼから大高巻きした。堰堤、ふざんけんなよー。

 その先も延々とゴーロである…。長い…、暑い…。いやー、9月とは思えないこの暑さ。今年は異常気象である。くわえて、かなりのペースで歩いていたので、脱水症状になりかかってくる。ボーっとしてくるし、いやーきつい、長い。
 右岸から、汚いナメで2本ほど支沢が入ってきて、これほど汚いナメはないようなナメをちょっと行くと、二俣

 二俣を左に入ると、ようやく滝らしい滝が出てきた。これがきっと、「かめ割りの滝」というヤツかな。頑張れば、2/3までは登れなくはなさそうだが、落ち口が激シャワーできつそう…ということで定石どおり右岸まき。
 そのすぐ上で6m滝がある。いちおう、オーブが見に行くと、「頑張れば登れなくはなさそうです。どうします?」というので、「じゃぁ、巻こう!」と偵察を無視することにして(別にこの滝を登りに来たわけじゃないし…)、続いて右岸巻きをしていく。赤テープ伝いに行くと、結構な大巻きになってしまい、そのまま10m(?) 滝を越えたところまで来てしまった。なお、沢を降りるところにはトラロープがあった。けっこう、来る人はいるみたいです。

 すぐに6mのCS滝があるが、これは登れない。左岸から小さく巻くが、落ち口が崩そうで、ほんのちょっと怖かったりする。
 この滝上はちょっと大岩帯になって場所を選んで進むと、やっときました、銚子の伽藍の入り口…。
 おっおぉぉぉぉぉーーーー。す、すっげぇぇすー。今まで見た中で、"2番目"にすごい圧倒的なゴルジュがここにあった。いやー、すげぇぇぇ。それ以上の感慨はない。
 ここまでのアプローチは案外遠く、脱水症状にもなりかかったが、その疲れを打ち消すような圧倒的な景観である。


 休憩して、装備をつけ、割れ目に入る。ちょっと小滝を行き、2mCSを思い思い越えると、6mの滝が出現。そして、この淵で、岩魚がいた。それもデカい奴。人間様に気付かれてもまったく動じず、悠然かつ傲然に泳いでいた…。そういえば、けっこう下流でも魚が走っていたが、この猛ゴルジュの真ん中にもいるとは…。粕川恐るべし。
 さてさて、この6m滝は激シャワー確実で、ロープをつけた方がよさそうだ。
 もちろん、「恒例の」ということで、お約束どおり、ダチョウ倶楽部を「どうぞ、どうぞ」を試みることにする。

 「トーマスさん、やります?」→「いやー」→「トーマスさん、やらないなら私やりますよ」→「いやいやいや、鮎さんやるなら、ボクが…」→「・・・」。

 結局、今回も、「どうぞどうぞ」は不発に終わったのだった。
 というわけで、鮎島リード(空荷)。ちょっとスタンスが細かく、また想像通り激シャワーをくらい、程なく足が攣りかかるが、クライミングシューズはいているんで「っうっしゃー」と越える。なお、途中、支点なんか取れないので、要注意。
 上では都合がよく、エイリアン黄色が効く割れ目とナイフブレードがバチ利きのリスがあるのでフォローのビレイ支点は完璧である。フォローも当然、激シャワーなわけで、オーブもトーマスさんもマジ顔で登ってきた。

 ゴルジュはなおも幅は4~5m程度、側壁は20~30mの完璧に圧倒的。その中を進むと、10m滝。左壁を登れそうだ。ここは、一軍の仲間入りをしたオーブがリード
 空荷で進み、なんか残置があるらしい…。ただの鉄杭である。運動会の保護者席を仕切る「ペグ」みたいなヤツあるじゃん。あんな感じの直径2cmぐらいの鉄杭が半分ぐらい刺さっている。これにタイオフして、あとは水中に戻り、登っていった。さすが、一軍。安定した登りである。
 さて、荷揚げ後、フォローしてみると、この鉄杭、グラグラしているじゃん。効いているかどうかは限りなく怪しい・・。また結構もろいのね。でも、W級は超えない程度かな。技術的には、最初の6mの方がいやらしいかも。なお、上のビレイ点は得体の知れないボルトだったが、こっちは完璧に効いてそう(2本あるし)なので、信用が置ける。

 さらに幅は3m程度、側壁も高い圧倒ゴルジュがつづく。それにしても、暗い…。「ヘッドランプが欲しい〜」という程度の暗さである。上を見上げると少しの隙間からしか青空が望めない・・・。おそらく、今まで行った中では一番の井戸底ゴルジュの真っ最中にある。
 そのようなところを、なおも進む。狭く暗いゴルジュが屈曲を繰り返し、雰囲気満点・・・。でも2~3個突っ張りで登るCS滝を越えて、最後のCS5mを突っ張って登ると、終わった…。本当にあっけなく、終わった。そして、終わったところに登山道が走っている。「あれ、なんだったの」という感じがする。夢・幻だろうか…と思うぐらいのあっさりとした終わり方…。
 振り返って、ゴルジュを覗き込むと、イヤーすごい・・・。まさに暗黒の地獄がある。而して、前を望むと…。…あるのは、明るい平和な天国だ。


 時間は、13時半。結局、1時間ぐらいしかいなかったが、何とも余韻に浸る。しかし、まだ時間は早い。銚子の伽藍前の滝を登ればよかったかな♪とも思うが、まぁいいや。
 「やっぱり、ピークを取ってなんぼでしょ」というトーマスさんの強い希望で、今後、絶対に登らなそうな長七郎山まで空荷ピストン。1時間半もかからず、往復できたが、あぢ〜〜。それまで、あえて飲まなかったが、粕川の水に手を出し、がぶ飲みしてしまった。

 あとは、つつじが峰通りを下山。あまり手入れされていない道だったが、それなりに短くて助かった。最後の林道に出る部分に嫌なトゲトゲヤブあり、腹立たしい。
 駐車地では、なぜか地元の方と思われる年配の方が5~6名おり、宴会を始めそうな雰囲気である。忠治の岩屋でこれからやるのだろうか…。こっちとしては、気分的には恒例の「まっぱ」で硬派な山岳会を見せ付けたかったが、理性が勝った。
 確実に「すごい景色」を目の当たりにすることができます。あの、「なんじゃ、こりゃ」という一条の筋。そして、「ヘッドランプ欲しー」というくらいの暗さ。そして、「なんだったんだろう」というあっけない終了。「R口と同じ感動Again」といった感じです。ちょっとアプローチは遠いけれど、確実に「特B」評価はつけられます。平凡な沢登りに飽きられた方には、ぜひとも一投足することをおススメします。あとは、頑張って、二俣先の3連瀑を頑張って登ればさらに充実するんだろうなぁー。でも、そこがメインじゃないからね。
 どちらにしても、あー楽しかった。トーマスさん、オーブ、ありがとうございました〜。それに、ぶなの会、亀岡さんの記録は、たいへん参考になりました。この場を借りて、御礼申し上げます。

2010.9.13 鮎島 筆


【記録】
9月11日(土)快晴
駐車地0905、不動大滝下0935、不動大滝上1030、二俣1145、銚子の伽藍入口1220、伽藍上1330-1350、長七郎山1430、銚子の伽藍上1510、駐車地1620

【使用装備】
ダブルロープ30m×2、小カム適宜、ナイフブレード
※ロープは30m一本で十分だった。
※ウェットはいらなかったが、確実に激シャワーになるので、季節によっては…。でも、秋は、水がつめたそう…。
※鮎島はクライミングシューズ、他2名は沢タビ。この沢は、ヌメヌメが一切ないので、ステルスラバーの方が有効かも。



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